理屈抜きに楽しめ意外性にも富んだ遊び。ロジカルな数学ゲームとは別ものだ

16 数と計算の遊び系 かずとけいさんのあそびけい

 

〈数と計算の遊び〉は、言語遊戯のうち数、数字、計算が深く関与する領域を取りまとめた系統である。言葉遊びとしての奥行きは期待できないが、幅広い分野からいくつもの頭脳的遊戯が生み出されている。

遊びとしての来歴も古く、上代すでに須佐之男(すさのおの)(みこと)が、

 八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を

という、記紀歌でも最古の作品にみるように、数詞を畳語に巧みに折り込んでいる。

 現代、数遊びは幼児向けを含めデジタル系統、ゲーム形式のものが目立つ。ここで扱う〈数と計算の遊び〉は、大人を対象に、ソフトな発想を重視したアナログ系統の分野とご理解いただきたい。

《参考1》                                                          沢致貞

数学ニ、算ト勘トノ二ツアリ、仮令ヘバ、十ノ物ヲ二人ニ等シク与フルニ、一人ニ五ツ宛ナリ、是ハ十ノ物ヲ二ヲ以テ割レバ知ル也、其十ノ物ハ、二ニテ割レバ知ルト云ハ勘也、扨二ヲ以テ割ルハ算也、此二ツヲ弁ヘ知ルベシ、勘有テ算知ハ、物無フシテ人ニ与ヘントスルガ如シ、算ヲ知テ勘無キハ、物有トイヘドモ与フルコトヲ知ヌガ如シ、故ニ算勘ハ相離ズト知ルベキナリ &(ちゆう)算式(さんしき)

《参考2》

                                                  羅山口述

凡物の数は本来円きもの也、一より十と数ふれば長短あるやうなれども、九は数の極也、十に至れば又一となる、故に一十と云ふを過

ぐれば、又十一と云ふ程に円きものなり、円き中におのずから長短もあるべし

&『梅村載筆』人

 数遊び〔Can Stockウエブサイト〕 

 

16数と計算の遊び系の目録(五十音順)

 

数取り語呂

数取り頓知短歌

数取り文句

数の符丁

数え歌〔近代〕

漢字算法

勘定俳諧

小町算

算学遊戯題

算術謎なぞ

助数詞遊び

数字の考え物

数字のトリック話

大数遊び

名数遊び

和算和歌

 

 

数取り語呂 かずとりごろ 

数字の音訓や慣用の読みを利用して一般の語句になぞらえる遊びを〈数取り語呂〉と名付ける。

卑近なところでは電話番号や店舗名まで、あらゆる分野に応用されていて、きわめて実用的な遊戯である。

 ハートを射止める「愛の方程式」〔ミネルヴァのトリビアHPより〕

【例】

数字つづり句(伝承)

▽889514=はやくこいよ

▽17580141=いなごはおいしい

▽494979788=しくしくなくなはは

▽7971104=なくないもとよ

▽81、5963=はい、ごくろうさん

▽0833731=おやすみなさい

電話番号読み

▽3387=みみはな(耳鼻科医院)

▽4126=よいふろ(銭湯)

▽6480=むしばゼロ(歯科医)

▽8141=パイよい(麻雀荘)

▽341・9696=みよいくろぐろ(かつら屋)

数学数字覚え(伝承)

▽π(円周率) 3.14159265 358979 3238462 643383279…→産医師異国に向かう。産後厄無く、産婦御社に。虫散ざん闇に鳴く。

▽√2=1.41421365…→一夜一夜に一見ごろ

▽√3=1.7320508…→人並におごれや

▽3/4π(球体積)→身の上に心配あるので参上

sin(斜辺分の垂辺) cos(斜辺分の底辺)tan(底辺分の垂辺) →はるうらら 水車(サイン) 停車(コサイン)す 水底(タンジエント)

 

数取り頓知短歌 かずとりとんちたんか〈数取り頓知短歌〉は、〈語呂合せ〉の機知を働かせて作った短歌を解読する遊び。既成作品の判読のほかに、課題作成という楽しみもある。

【例】

万葉戯笑歌より                                          よみ人しらず

言云者三三二田八酢四小九毛心中二我念羽奈九二           

→ことにいへばみみにたやすしすくなくもこころのうちにわがおもはなくに

『万葉集』巻十一

信州碓氷(うすい)峠の伝説歌二首

                                                             よみ人しらず

八万三千八 三六三三四四 一八二 四五十二四六 百四億四百  

→やまみちは さむくさみしし ひとつ家に 夜毎に白く もも夜おくしも

 &『牛馬問』

伝 渡辺主石丸

▽四八八三十 一十八五二十百 万三三千二五十四六一十八 三千百万四八四

→世は闇と人は言ふとも正道にいそしむ人は道も迷はじ

 

数取り文句 かずとりもんく 

各句の頭または尾に数詞を織り込んで韻を持たせる形式の詞章を〈数取り文句〉という。句頭折込形式は数多あるが、作例の「大政奉還時の落書」のような句尾折込形式のものは珍しい。近代作品の場合はアクロスティック系に属する。

【例】

越前といふ人ハ (句頭数取り)

一に、太田(ママ)をふんまへて

二に、日本をさわがして

三に、さかいをこまらせて

四ツ、世の中穴さがし

五ツ、印幡を掘割た

六ツ、むせふに御趣意沙汰

七ツ、なく人たくさんで

八ツ、やしきをへいもんし

九ツ、こそ〳〵荷をはこび

十デ、とふ〳〵やしきがへ

浜松がゑを見さいなア

&『藤岡屋日記』第拾五、天保十四年

大政奉還時の落書(句尾数取り)

会津の義名は日本

徳川の味方はわつか

御譜代衆もおひ〳〵降

彦根尾州は畜生

勅使二人に多分の警

義心の御方は当時御無

早駕籠はがたひちがた

駕籠の中は顔をしかめて眉に

大阪御門は誠に残念至ご

所々の新関は誠に厳

京都の沙汰はうそ八

会津武士は一騎当

御恭順をやぶりてはす

薩摩も会津には一目

目ざす敵はまづ薩

&『世の中数取風聞』慶応四年の摺物

 

数の符丁 かずのふちょう 

俗に〈隠語〉と呼ばれているものの中に〈数の符丁〉があり、特定の集団や仲間内で通用させている。商取引などでの数字は本来、秘守に関係するものが少なくないため、必要に迫られて出来たものが目に付く。もちろん遊びではないものの、よく見ると言語遊戯的側面を多分に含んでいることがわかる。

【例】

商売人ごと 数の符牒

 禅宗僧侶のもの

一→大無人(だいむじん)(の字からを取る)

二→(てん)無人(むじん)(の字からを取る)

三→(おう)無棒(むぼう)(の字からを取る)

四→()無直(むちよく)(の字からを取る)

五→(われ)無口(むこう)(の字からを取る)

六→(しし)無冠(むかん)(の字からを取る)

七→(せつ)無刀(むとう)(の字からを取る)

八→(あな)無冠(むかん)(の字からを取る)

九→(はと)無鳥(むちよう)(の字からを取る)

 

数え歌〔近代〕かぞえうた/きんだい 

 明治・大正になっても、〈数え歌〉は俗謡や街頭演歌、軍歌、唱歌などに採用され、人気の衰えを見せない。

しかし近代においては、あまりにも数多くの亜流唄が生み出されたため、作詞側は種切れを呈し、それらを耳にするほうも食傷気味で、やがて下降線をたどるようになる。

【例】

文明開化大はやり

♪一トセ ひとつしんぱん ないづくし いろ〳〵とりよせ かぞへうた コノおうはやり/二トセ ふろにやいりごみ ゆかれない つじ〳〵らんぷで くらくない よみちはけが人 これもない/三トセ みちもなをりて わるくない おかみのせへじに ぬけめない でんしんだよりは おそくない/四トセ よこもじ手がみは かきてない それほどやりてえは ひらけない ばんごしらない 人もない/五トセ いしやのくすりは あがらない びやういんぐすりは せんじない まして女らしゆは かさがなへ(後略)

──流行唄、明治初年流行、&『日本近代歌謡史』下

ロンドン小唄      

某留学生の作詞

♪一ツとや 人のしれかし竜動(ロンドン)は 往還左右はペブメントペブメント/二ツとや 文のとりやりぞうさなく ピルロルポストニテレガラフテレガラフ/三つとや 道をきれいに塵払う 御馬で水うつウォーートリンカーツウォートリンカーツ/四ツとや よくも出来たる土地の中 蒸気車のオンドルグロートンオンドルグロートン/五ツとや いつも夜毎もきらびやか 昼にも変わらぬガスランプガスランプ(後略)

──流行唄、&『新聞雑誌』明治七(1874)年六月十八日

七福神数え歌

♪一つとせ 広い座敷にあの福の神 七人揃うてお酒盛り 琵琶を弾くやら唄うやら

二つとせ 福徳円満限りなく 増える小宝福宝 金や銀貨を箕で計る

三つとせ 水も緑も池の面 遊ぶみの亀生い茂る 月の木の間に鶴の声

四つとせ 喜びの重なるこの家 珊瑚じめの玉つなぎ 紙幣を飾りて床の間に

五つとせ いつの家内がにこにこと 出入りの人さえ恵比須顔 笑う角には福来たる

六つとせ 棟木(むなぎ)栄に積み上げて お米俵があの一万俵 さてもみごとに繩飾り

七つとせ 何から何まで抜け目なく 相続さしずの商売も 主人思わぬ白鼠

八つとせ 屋敷の構えが八町歩 金子金倉いろはづけ 裏と表に建てならぶ

九つとせ 今年は豊年万作で 五穀も成就し(かいこ)も さてもみごとに出来上がる

十をとせ 富持長者となったのも、主の陰徳ご運が開け 金のなる木が広々と

十一とせ 異国へ出たのも数知れず 金銀穀物呉服物 出舟入り船あの五千ばい

十二とせ 日本の宝はもとよりも 世界の宝は残りなく 福はこちらへ実におめでたい

──数え歌、大正初期、&『替歌・戯歌研究』

恋路文句数え歌

♪一つとせ 日ごろ太夫さんに濃いコガルるに それだにあなたは外心 イソのあわびでわしゃ片思い

二つとせ 振りや器量にわしゃ惚れはせん 私は太夫さんの気に惚れて 明け暮れこがれているわいな 

三つとせ 見れば見るほど太夫さんは 女泣かせの仇男 娑婆に太夫さんがなけりゃよい 

四つとせ 夜は忍んで太夫さんと 逢えば間もなく明けの鐘 嫌な別れをせにゃならぬ

五つとせ 粋なあなたとつれ添うからは 親に感動受くとも なんの(いと)いがあるものか

六つとせ 無性にこがれているこの私 親が添わせにゃ是非がない 二足の草鞋で永の旅

七つとせ 永の道中をはるばると 汽車や蒸気や人力で 黄金(こがね)うずまくアノ大阪へ

八つとせ 山ほど恋路が重なりて 思いおうたる二人の仲へ 人が水さしゃエェ腹が立つ(後略)

──数え歌、大正初期作、&『替歌・戯歌研究』

一匁とせ〔富山県水橋町〕

♪一匁とせ、おら石割らんとせ、石屋のもんこそ石割れか。

 二匁とせ、おら庭はかんとせ、奉公人こそ庭掃けか。

 三匁とせ、おら鯖すかんとせ、漁人(れふし)どもこそ鯖すけか。

 四匁とせ、おら柴刈らんとせ、山のもんこそ柴かれか。

 五匁とせ、おら碁打たんとせ、オヤツサマらちこそ碁打てか。

 六匁とせ、おら()押さんとせ、漁人どもこそ艫押せか。

 七匁とせ、おら質置かんとせ、貧乏人こそ質置けか。

八匁とせ、おら鉢割らんとせ、べしやらち(下女達)こそ鉢割れか。

九匁とせ、おら苦せんとせ、貧乏人こそ苦せれか。

十匁とせ、おら重持たんとせ、べしやらちこそ重持てか。

──数え里謡、近代まで伝承、&『わらべ歌民謡大全』 

歌って見て楽しい『かっぱかぞえうた』(瀬川康男作画、福音館書店) 

 

漢字算法 かんじさんぽう 

漢字を使って計算式に擬し、解を求める遊びを〈漢字算法〉という。

近代に作り出された〈考え物〉の一種であるが、突飛な発想が過ぎて正解を得るのは大変である。

【例】

数字専科のもの

▽13÷3 x=国名  解は「武蔵」

 *十三を三分すると六三四(むさし)

(12×1)+30 x=食物  解は「田楽(でんがく)

 十二(とうふ)()()にかけて三十(みそ)を加えるから。

&『日本文芸遊戯大全』

文字専科のもの

▽晦+人+(いわし) x=食物  解は「ぬた」

 *晦は晦日(みそか)の「みそ」、人は落人(おちうど)の「うど」これに鰯を加えるから。

▽い+に x=食物  解は「金頭(かながしら)の煮付」

 *「イ」はいろはの仮名()頭、これに「に」を付けて。

&『日本文芸遊戯大全』

 

勘定俳諧 かんじょうはいかい 

計算を主題とした珍しい俳諧が三句見つかったので掲げておく。〈勘定俳諧〉とでもいっておこう。

なおこの類の発句を「積句」といったようだが、定かでない。

【例】 

員数と積句

▽今朝はけにむ月〳〵の始哉

▽くゝたちは八十一期若菜哉

▽なつたるは十つゝやもゝの数

&『毛吹草』巻一

九九の口ぐせ                

質屋の娘嫁入りし、夫婦のなかもよかりしが、かりそめの事をも、九々の(ことば)をはなさずつかふ、たまさかなる客の間へにても、とかく九々にて物をいふ、せん方もなきはづかしさに、かの女をば去りてけり、妻、家をわかれ行くにも、なほ幼きよりいひ学びたれば、「三四十二で嫁入りし、四四十六で子をまうけ、四五二十にてさらるるよ」と。

  四四ならば十六つれて行くべきに九九にもるるかひとり走るは

  あだばなは二九の十八ささげかな

&『醒睡笑』巻五

 

小町算 こまちざん 

〈小町算〉は、一から十までの数(現代では一から九まで)を一個ずつ用いて、答がある指定数に一致させる計算遊びである。

 小野小町を恋慕した深草少将が九十九夜通ったという悲恋にちなみ、一〇〇で成就という思い入れで命名された。文学を背景とした数遊びという点で注目される。

 ロジック適用の小町算は言葉遊びか?

 元禄十一(1698)年に成った田中由真著『雑集求笑算法』という和算書で紹介されている。じつは小町算、西欧では「世紀(センチュリー)パズル」の名で普及しており、左掲の算式例もこれに従ったものである。パズルであるため、ことば遊びのカテゴリーに繰り入れるにはやや抵抗がないでもない。

【例】

小町算の算用計算式

 123+4-5+67-89 100

  123-4-5-6-7+8-9 100

  12+3+4+5-6-7+89 100

  1+23-4+56+7+8+9 100

 -1+2-3+4+5+6+78+9100

  *答が100になる帯分数計算式もあるが省略。

 

算学遊戯題 さんがくゆうぎだい 

江戸時代にも算術遊戯題(問題集)が何点か出されている。それらの目録を見ると、じつに興味ある題目がいくつも並んでいる。言語遊戯子にとっては(かぶ)り付き物で、放っておくわけにいかない。

筆生、計算に弱くいまだ貧乏と縁が切れないが、能書きは金持ちに任せるとして、お題目だけは気に入った。名付けて〈算学遊戯題〉、たとえば…

【例】

江戸時代の算学遊戯題

▽日に日に倍々

一粒の米から始まり翌日には二粒、翌々日には四粒…ト売買計算をしてとほうもない数にいたる。

▽ねずみ算

 ねずみの一組夫婦が子孫を殖やしていく、しかも驚くべき速さで天文学的数字にたどり着く。

▽烏算

 九九九羽の烏が九九九浦で九九九声ずつ鳴くと、鳴き声は総じていくつ?八桁表示の電卓で計算しても、尻切れになるよ!

▽薬師算

 碁石並べの全体数当て問題。

▽鶴亀算

 鶴と亀の足数を手がかりにした全体数当て問題。

 盗人(ぬすびと)

 盗賊団の山分け話から盗人数と盗品の額を推し当てる。

継子(ままこ)(だて)

 環状の碁石並べ図解により継子の数を当てる推理遊び。

▽小町算(244ページ)

 有名な九十九(つくも)計算。これは機転で解く。

&『江戸の数学文化』ほか

《参考》

第五 ねずみざんの事   吉田光由正月にねずみちゝはゝいでゝ、子を十二ひきうむ、おや共に十四ひきになる、此ねずみ二月には、子も又子を十二疋づゝ産むゆへに、おや共に九十八ひきになる、かくのごとくに月に一度づゝ、親も子も又まごもひこも、月々十二ひきづゝうむ時に、十二月にはなにほどになるぞといふ、年中之分、合二百七十六億八千二百五十七万四百二疋也 &『新編 塵劫記(じんごうき)』巻三

 関流七伝千葉雄七胤秀門人〔算額、天保九年〕一関和算家千葉胤秀の門弟が地元八幡宮に奉納した算額。頭書かく図はそれぞれ難問を示している。

 

算術謎なぞ さんじゅつなぞなぞ 

〈算術謎なぞ〉は、数の四則計算を基に謎なぞ化した遊びのこと。古典謎なぞ集には、この算術謎なぞを含めてあるものが少なくない。

算術謎なぞの特徴は、理詰めの計算(デジタル)だけでなく、機智の発想(アナログ)としての要素が加わっている点にある。数や計算に親しんでもらおうという発案者の願いが込められている。

【例】

算術謎なぞ種々(くさぐさ)

 ▽十三になれどもひだるい  答は「串柿」

 &『なそたて』

 *十三→()()。これに「空腹(ひだるさ)にさいなまれる餓鬼」をひっかけてある。

▽十里の道をけさ帰る  答は「にごり酒」

 &『なそたて』

 ()×五里(ごり)けさかえる→さけ。

▽牛の踊り  答は「乳鉢(にゆうばち)

 &『月菴酔醒記なにそ』

 *踊り=ゝ、→うゝしゝ→(にう)四四()

▽骨なしの十一  答は「三河の国」

 &『なそのほん』

 *骨なし→()(カワ)。十一→()()

 ▽酒の入物十何ぞ  答は「鈴虫」

 &『寒川入道筆記』謎詰之事

 *酒の入物→酒器の一で「(すず)」。十→()()

 

助数詞遊び じょすうしあそび 

助数詞下付けによる意外性ある言葉づくりの遊びである。

【例】

伝承のもの

▽男一匹

▽灘の生一本

▽三寒四温

▽居続け三晩でカネつきた

▽七難去ってまた七難

▽十んでもねえ八六だ

▽みみず千匹毛は一本

 

数字の考え物 すうじのかんがえもの

文言の代わりに数字を羅列して、内容を判断させたり推量させる遊びを〈数字の考え物〉という。なお短歌については〈数字の頓知短歌〉を参照のこと。

【例】

伝承のもの

▽一九三→一休さん

▽五九六三→ご苦労さん

▽二九一八八 八八九四二七三一→憎い奴は、早く死になさい

▽八斗四・五升九合→四畳半で一マス欠け

伊勢宮司の「布瑠の呪文」

比夫美與伊武那野胡登

一二三四五六七八九十

 これの読みは難解で、左の説がある。

 (そろへて) (ならべて) (いつはり) (さらに) (たね) (ちらさず)

 (いはひ) (をさめて) (こころ) (しづめて)

 &『巧智文学』

頓智問(明治期の伝承)

次の五つの漢字を書く場合、共通の特徴が一つあるが、それは何か。

問 題……乙 己 弓 曰 串 

ヒント……数字に関係がある。

  答……どの字も一筆書き出来る。

考え物

四十五から四十五を去て四十五残るは何や

  987654321   9+8+7+6+5+4+3+2+145

123456789     1+2+3+4+5+6+7+8+945

      864197532    8+6+4+1+9+7+5+3+245

&『昆石雑録』なんじやもんじや

 

数字のトリック話 すうじの──ばなし 

「数字のトリック」自体よく使われる言葉で、いかにももっともらしい数字上の計算が、現実の常識に照応しないことから生じる摩擦を表している。

これを材にした笑話〈数字のトリック話〉も多く作られている。

【例】

胸算即答を求む                          鈴木昆石

鳩十羽樹の枝にゐるを、銃にて一羽打止めたり。残何羽や 答 一羽も無し/解 一羽を打つ。残り九羽銃声に驚きて去る。故に一羽もなし。

&『昆石雑録』なんじやもんじや

*この例、設問自体がトリッキーで、解答のほうが現実的に正しいという矛盾の面白味を呈している。

計算に嘘はない

先生が説明して、「計算に嘘はない。たとえば、一人で家を一軒、十二日間で建てられるとすると、十二人では一日で建てられる」生徒が答えて曰く、「二百八十人だと一時間で建ちます。一万七千二百八十人だと一秒。さらにまた、船一隻が大西洋を六日で横断できるとすると、六隻の船では一日で横断できます。計算に嘘なし」 &『日本語と笑い』

 

大数遊び だいすうあそび 

ダイスウでも解くのに頭の痛くなる代数とはちょっとちがう。大きな数や数詞を用い物事を「針小棒大」に表現する遊びを〈大数遊び〉と名付けた。数式など必要とせず。口先・筆先ひとつでビックラレーション()付きの作品を天下に吹聴してみたまえ。

数珠の一〇八珠がメビウスの輪廻をくぐり無限大へと収斂する摩訶不思議

【例】

説教話より                                   菊岡文坡

我世界は()(おほ)きくして悪をせぬ故に、仁義もいらず教もいらぬとの(こと)。この守一仙人が若彼宏智(くわうち)先生に逢はば、彼に三千棒を与ゆべきに、今に彼に(あは)ず。彼(わづか)に七八丈の身を、大身なりと自慢する(こころ)(うち)些少(ちいさ)き事、(たとへ)芥子(けし)粒の如し。彼世界を三千世界と限り、己が身の七八丈を大身の至極とおもへども、(まづ)世界は百億大千世界といふ。又その大身の人といふも、七八丈はおろか二十余丈三十丈乃至百丈の大身あり。彼羅(ごう)阿修羅(あしゆら)王の身の(たけ)は、八万四千由旬(ゆじゆん)あり。一由旬といふに諸説あれども、先日本道の四十町と六十町の説あり。此六十町を八万四千つんだ高さじやが、何ほどの高さであらふと思ふ。此八万四千由旬の身が大身かと思へば、極楽の阿弥陀仏の身は、又六十万億那由他(なゆだ)恒河沙(ごうがしや)由旬あり。此阿弥陀が六十万億那由他恒河沙由旬の身を(もつ)て、宏智先生を見るときは、汝を宏智が見るより又些少(ちいさい)〳〵。すればまづ宏智先生は、阿修羅王も知らねば元より阿弥陀はなを知らぬと見へたり。&成仙玉一口玄談(じやうせんだまひとくちげんだん)』巻二

*「《参考》大数の呼称」を参照。

浮世草子より              井原西鶴それより世之介は、ひとつこころの友を七人誘引(さそひ)あはせ、難波江(なにはえ)の小島にて新しき舟つくらせて、好色丸(よしいろまる)と名を(しる)し、()縮緬(ぢりめん)(ふき)(ぬき)、これは、むかしの太夫吉野が名残の(きや)()なり。幔幕(まんまく)は、過ぎにし女郎より念記(かたみ)の着物をぬひ継がせて懸けならべ、床敷(とこじき)のうちには、太夫品定めのこしばり。大綱(おおづな)に女の髪すぢをよりまぜ、さて台所には、生舟(いけぶね)(どぢやう)をはなち、牛房(ごばう)薯蕷(やまのいも)・卵をいけさせ、櫓床の下には地黄丸(ぢわうぐわん)五十壺、女喜丹(によきたん)二十箱・ばやしの玉三百五十・阿蘭陀(おらんだ)糸七千すぢ・生海鼠輪(なまこわ)六百(かけ)・水牛の姿二千五百・錫の姿三千五百・革の姿八百・枕絵二百札・伊勢物がたり二百部・犢鼻褌(ふんどし)百筋・のべ鼻紙九〇〇丸・まだ忘れたと、丁子(ちやうじ)の油を二百樽・山椒薬(さんせうぐすり)を四百袋・ゑのこづちの根を千本・水銀(みづがね)綿(わた)(ざね)・唐辛子の粉・()(しつ)百斤、その外色々品々の責道具ととのへ、……

&『好色一代男』巻八

*出典の「床の責道具」から結末に近い部分。大数ではないが誇張がそれとなく巧みに生かされている。

《参考》

大数詞と小数詞                                  荻生まとめ

江戸時代の和算書として名高い『塵劫記(じんごうき)(吉田光由著、寛永四年=1627年初版四巻本)には、わが国で用いられた数詞単位の古典呼称が載っている。今日の通用数詞と比べ位取りの面でズレがあるが、史料としては興味深いものがある。

〔大数の呼称〕

一 十 百 千 万 (*以上は十進位、以下は万進位)億 兆 (けい) (がい) (じよ) (じよう) (こう) (かん) (せい) (さい) (ごく) (以降では進位があやふや)恒河沙(こうがしや) 阿僧祇(あそうぎ) 那由他(なゆた) 不可思議(ふかしぎ) 無量(むりよう)大数(たいすう)

〔小数の呼称〕

(以下、すべて十進位で)(りよう) (もん) () (りん)(以上、貨幣呼称を兼ねる) (ごう) () (こつ) () (せん) (しや) (じん) (あい)

 

名数遊び めいすうあそび 

たとえば日本三景、四天王、江戸七天神などのように、数詞を冠した同類詞を所定数集めたものを「名数」といっている。この名数に擬して内容を茶化した遊びを〈命数遊び〉と名付けてみた。同類を随筆などでときおり見かけるが、言葉遊びとしてまだ定着していない。

【例】

創作名数                                          荻生作

▽一匹女将(おかみ)=ヒモ付きでない水商売の女経営者。

二色(ふたいろ)人世=桃色(どうらく)のあと灰色(おちこぼれ)で送る男の人生。

▽三強=男の度胸、女の愛敬、坊主のお経。

▽四かん(熱くなる)=やかん、ちかん、酒のかん、親のいうこと子は聞かん

▽五かんべん=多弁、駄弁、詭弁、抗弁、(ねい)

▽六でなし=金なし、学なし、勇なし、義なし、夢なし、情けなし

▽冬の七くさ=ものぐさ、のろくさ、ぶつくさ、質草、ぺんぺん草、男女(めおと)いくさ、お笑いぐさ

 

和算和歌 わさんわか 

江戸時代に発達したわが国の数学「和算」において、庶民の日常生活に密着した計算を和歌に詠んだものがいくつか存在する。これを〈和算和歌〉と名付けておこう。例示各歌の内容については出典(吉岡修一郎著『数学千一夜』うち「長い夜話(よわ)のための物語」)を参照されたい。

【例】

米と銀の相場による代価

こめと米相場でわればかねになるかねにかくれば米としるべし

割引き計算

二わり引うちは八にてかくるさんそとは十二でわるとしるべし

割増し計算

二わりましそとは十二をかけてよし内は八にてわるとしるべし&以上『塵劫記(じんごうき)

一割引き計算

九を()けて内一割を引ケと知れ外一割は十一に割れ &『和歌算学筆記』

三角形の定理

山形はつりとはたばりかけてまた二つにわりて歩数とぞしる &『因帰算歌』

円周と直径との関係

円径に三一四一六かけ(まわり)廻をわりて円径と(なる) &『算法勿憚改(ふつたんかい)

円の面積計算

平円は径掛合(かけあわせ)定法の七八五四かけ歩数とぞしれ &『算法勿憚改(ふつたんかい)

山岳免許秘伝書〔安原千方(やすはら・ちかた)は幕末関流の算学者法名は「珠

算検勝居士」〕