名付け分野を多彩に遊戯化、実用性も高く今ではイチオシ人気になっている

17 命名遊び系 めいめいあそびけい

 

名付けを言語遊戯化することを〈命名遊び〉と総称している。なかには商品名などのように、遊びを離れて商業目的に使われているものもあるが、それとて形態上は言葉遊びの要素を多分に含んでいる。

姓名はじめ物名や商品名などは、他の類似存在と個別化するために便宜的に付けられる符号でしかない。ところがこの符号、ひとたびマスコミで喧伝されたり当たりをとったりすると人をたちまち有名にし、商品をヒットセラーに化けさせる。そして思わぬ「言霊(ことだま)の不可思議」を現代人に思い知らせてくれる。

現在、新生児の命名や商業ネーミングの実用書が何冊も出ているように、命名分野は間口が広く、庶民にとって格好の興味の対象となっている。さらに人は、単なる符号としての本来の姓名に満足せず、別に号や筆名、没後の戒名まで付けたがる。こうした曲折の過程で、遊びの要素がどんどん加味されることになり、〈命名遊び〉という大輪の花を咲かせるのである。

《参考》

命名の対象                                             荻生まとめ

現在すでに、森羅万象大半の事物を対象に名付けがすみ、〈呼称〉もしくは〈名詞〉として存在する。命名分野においても呼称の整理が進み、なかでも「人名」と「地名」はその区分が個別に及んでいるため、種類の多さでは他に抜き出ている。識別化情報処理が生んだ結果である。

例として、生物界で鳥類を例に引くと、その個体数は全世界の人口数をはるかに超えている。しかし鳥類は固有名詞をもたないから、類→目→科→属→種といった生物学分類法に従っての一般名詞だけですみ、その数も限りがある。

しかし個別標識をもつ人名や地名の場合は、事情が大きく異なる。古代、集団社会での名付けは敬神行為に結びついていたことが、古代、各地で編纂された風土記によって断片的に語られている。また「盟神(くか)探湯(たち)」に見るように、命名行為は冒してはならない聖域でもあったのである。

ここで命名の範囲について触れてみたい。

〈命名範囲〉つまり呼称の対象は、すでに多様な分野に見られ、限りなく増殖しつつある。参考までに、人名以外のそれら主なものを五十音順に列挙してみよう。

家=加盟、家号

階級=族称、属称

会社=社名、社号、企業名

学者=学位、博士号

学徒=修士号、博士号

活字=字号

神=神号

官職=官号、官名、つかさ名

器物の部分=名所

脚本=大名題、芝居名

行政=都道府県名、市名、郡名、町名、村名、町所(ちようどころ)、在所名、字名(あざな)

刑罰=刑名、罰名

国家=国名、国号

爵位=爵号

職業=職名、職種名、

書籍文章=書名、文献名、資料名、史料名、題目、題号、題章、表題、タイトル、編題、章題、外薟、外題

商家=商号、屋号、暖簾名

芝居=外題

商品=商品名、銘柄、ネーミング、ブランド

生産物=品名

中国=唐名、漢名

寺=寺号、寺名、山号

堂=堂号、堂名

年=年号、暦号

土地=地名、郷土名、故郷名

犯罪=罪名、刑名

病=病名、疾病名、傷病名

やまとことば=大和詞、和訓、和名

 

 

 

17 命名遊び系の目録(五十音順)

 

悪名付け 

渾名

当て字名

異名遊び

異類異名尽

擬物人名

戯作の外題

酒の異名

山号寺称遊び

誌名種々

書名三昧

人名擬き

西洋人当て字名

俗称・異名〔酔っぱらい〕

俗称・異名〔遊女〕

長名

珍姓奇名

ネーミング

流行名

筆名

ふざける名

普通名詞的人名

彫名

命名遊び〔雑載〕

 

悪名付け  あくめいづけ 

特定の集団の人々を対象に、からかいの通名を創作して付けること。

うだつの上がらない官僚を「木っ端役人」、自動車運転手を「運ちゃん」、盗賊を「ドロ的」などという類だ。ののしるときなど、自然発生的に口にしがちである。

ただし〈悪名付け〉は、個人をからかって呼ぶ〈渾名〉とは別して扱う。

【例】

涙法師 かな法師

人を嘲りいやしめて法師といひ、又坊。発意(ぼち)ともいふ、凡虫といふに通うふ、鄙吝(しけ)(むし)。しはん坊の類種々あり、按ずるに此俗語ふるくよりあり、&『用捨箱』八

*出典ではこの後、法師の悪名に「なみだ法師」「せちべん坊」「かな法師」「痩法師」「掃除坊」「とちめん坊」などを引き合いに出している。

 

渾名 あだな 

当人の本名以外に、人物特徴などから他人が勝手に付けた名前を〈渾名〉あるいは〈又の名〉〈一名(いちめい)〉〈異名(いみよう)〉〈ニックネーム〉などという。本人にとってあまり歓迎したくない内容のものであるのが普通である。

人は幼児から渾名の洗礼体験をもつ。中学へ上がる頃には二つや三つは〈渾名〉を付けられるし、自身も先生や他の友達に付けて面白がったりする。したがって〈渾名〉は、よほど悪質なものでないかぎり、むしろ親称として受け止め、むきになって拒絶しないのが社交上の心得というものだろう。

〈渾名〉の傑作は、本人の個性を飾る勲章になりこそすれ、傷つけるようなことにはならないと思う。そして〈渾名〉こそ、最も身近な言葉遊びでもあるのだ。

【例】

古今有名人物の渾名                                        荻生まとめ

天圧(あめおす)の神(神武天皇)、算左衛門(会田安明)、甘藷先生(青木(こん)(よう))、憂国のドンキホーテ(赤尾敏)、人間機関車(浅沼稲次郎)、貧乏公方(くぼう)(足利義昭)、トンヤレ宮さん(有栖川熾(ありすがわたる)(ひと)親王)、女彦左(淡谷のり子)、一万田法王(一万(いちま)()(ひさ)())捨聖(すてひじり)(一遍上人)、ミスターカルテル(稲山(よし)(ひろ))、     眼千両(五代・岩井半四郎)大雷(おおいかづち)(梅が谷藤太郎)木食(もくじき)上人(応其)、赤穂の昼行灯(あんどん)(大石良雄)、笑わず屋(金井三笑)(ジャン)聖(阿佐田哲也)、早稲田の大風呂敷(大隈重信)、強盗慶太(五島慶太)猿面(さるめん)冠者(かじや)(豊臣秀吉)、さまさようせい(徳川家綱)、夜嵐お絹(原田キヌ)、財界ご意見番(三鬼陽之助)、白足袋宰相(吉田茂) &『日本人名関連用語大辞典』

《参考》

東条大将を軍曹呼ばわり    山口重次

かえって石井参謀に伝えなさい。東条軍曹なんかに戦争が出来るわけがない。わしの見通しに明らかに負けた。本土決戦なんぞというても、軍曹には及ばんことだ。&『悲劇の将軍 石原莞爾』

*石原(かん)()(18891949)は陸軍軍人で中将。板垣大佐と組んで満州建国を推進し実現した。昭和三(1928)年に関東軍主任参謀となると、亜細亜の盟主としての日本を位置づけ、自身の史観思想を集成して『戦争史大観』を著す。己の理想の一端が満州国の誕生で実現、面目躍如たるものがあった。強烈な個性をもち敵も多かった。掲出は、太平洋戦争も終結近いある日、東北軍管区報道部員の一中尉が石井参謀の命令で石原に戦局見通しの伺いに派遣された時、石原がその中尉に言った言葉である。石原の東条嫌いは徹底していた。時の陸軍大臣で陸軍大将の位にある東条を一挙に軍曹まで降格させ、「東条軍曹」と呼んではばからなかったのである。

 

当て字名 あてじな 

当て字の言葉遊びの主流は〈当て字名〉ということになる。まず難読ものが優先される。たとえば鬱金香(チユーリツプ)天鵞縅(ビロード)錻力(ブリキ)亜爾然丁(アルゼンチン)等といった文字列は、初めて目にしたときに読めたものではない。

たしかに、日本語の難しさの右翼に位置するのが当て字。なかには国語学者が頭をひねっても正解を得ない難読(とくに姓名)があるというから、一般人にはお手上げとなる。

逆に、当て字の固有名詞を勝手に創作して、他人が判読に四苦八苦する〈当て字名〉をレパートリーに加えれば、言葉遊びの醍醐味も増そう。

【例】

福沢諭吉の創作「世界国尽」より

▽和新頓=ワシントン

▽雁保留仁屋=カリホルニア

▽具理陰蘭土=グリーンランド

当て字珍名店(電話帳等より)

▽遊加里=ユーカリ

▽土古里=トコリ

▽寿亭夢=ジュテーム

▽帆微笑=ポエム

▽檀緋瑠=ダンヒル

▽鍵歩飲人=キーポイント

字面(じづら)イメージ外国都市名                                                     荻生作

魔似羅=マニラ

放銃午砲=ロンドン

▽堕落天使=ロスアンゼルス

▽無愛想挨拶=ブェノスアイレス

▽熱烈混浴都=クアラルンプール

 

異名遊び いみょうあそび 

〈異名遊び〉とは、正称に対する異名や別称を茶化して名付ける遊びを指す。

 さらっと流したほうがおかしみの効果が上がる。これの分野は広く、例示もむしろ絞り込むのに苦労するほどである。また〈ふざける名〉と重なり合う場合がきめて多い。

【例】

伝承の異名

▽出雲の神(男女の縁結び)

▽町針(穴なしの針、小野小町伝説より)

▽金山寺(紀州金山寺の名物味噌)

▽聖徳太子(旧千円札。その肖像画から)

▽薩摩守(乗物の無賃乗車。薩摩守平忠度に由来)

神田の某町名              荻生作この古本屋街では読みたい本はあまりにも多くあるのに金無し(ゲルピン)なのである。高い本を買って読み終えるや売り戻し、一冊買っては叩き売って、財布を軽くする。苦学生達は活字という名の知識を得るために、懐の赤字を200mlずつ業者に売血して補う。この青春時代のジレンマから、仲間内では誰いうとなく、神保町をさしていみじくも「貧乏町」というようになった。

 

異類異名尽 いるいいみょうづくし

式亭三馬(17761822)の作『稀有化(けうけ)(げん) 異類異名尽』は、人名文字の読みを〈考え物〉に仕立てた戯作である。解答が付いているから、読んでもどうやら納得がいく。ま、こじつけもこう奔放にやられると感心するのみ。

▽上へ頭の出ぬ七の字ゆえ、上江伝七(うへえでんしち)

▽横へ出ぬ丹の字、これをも名付けて横江伝()()

▽竪から読んでも横から読んでもこいつは十だ、(たて)(よこ)(じう)()

▽平平平平 ひらだいらひらへい

▽吉吉吉吉 きちよしきつきち

▽一二三四五六 ひふみよごろく

▽七八九十一郎 なやこのじういちらう

▽千治郎 あとのせんじらう

 *このあとも似たような作がたくさん続く。

 

擬物人名 ぎぶつじんめい 

人の性格や状態などから動物や物の名に見立て通称化した命名。

維新後の社会では、人事職業を動物に擬して冷やかす風潮があった。

引例の「オッチョコチョイ節」でも、芸者をして猫と称し、流行唄に乗せている。猫と並んで、女郎の擬称は「キツネ」、いつも人をだますから。高級官吏は判で押したようにナマズ髭をたくわえていたので「ナマズ」と蔑称した。木っ端役人のほうはドジョウ髭が象徴(シンボル)だったので「ドジョウ」。時代が下り漱石『坊つちやん』の主人公は、校長を「タヌキ」と呼んでいる。

いずれも庶民階級からいささか離れた世界でノホホンと暮らしている人種への、やっかみを込めた当てこすりであった。

[]

猫じゃ猫じゃ

♪猫じゃ猫じゃとおっしゃいますが

猫が、猫が下駄はいて

絞りのゆかたでくるものか

オッチョコチョイのチョイ 

──明治二年流行の俗謡

《参考1》

丹波太郎/夏炎暑の続きたる頃、必ず西南後瀬山の方に大なる白雲毎日所をたがはず出けるなり、丹波の方にてこれを丹波太郎と云ひ、必ず太旱の象とす、小浜に限らず此の雲出れば、其の国々方角にて信濃太郎の伊勢太郎のと云ふよし、&『拾椎雑話』追加

《参考2》

西郷星の出現                                          (宮武)外骨明治十年、西郷隆盛が薩州城山で兵を挙げた際、国民の多数は西郷に同情して、彼を反逆者とは見なかつた、それで同年八月上旬より毎夜東方に現れた一つの星を「西郷星」と呼んだ、それが一枚絵にもなり「毎夜八時頃より大なる一星光々として顕はる、夜更るに随ひ明かなること鏡の如し、識者是を見んと千里鏡を以て写せしが、其形人にして大礼服を着し、右手には新政厚徳の旗を携へ、厳然として馬上にあり、衆人拝して西郷星と称し信心する者少からず」とある。&『奇態流行史』

 「西南珍聞 俗称西郷星之図」〔 梅堂国政画、明治十年〕 

 

戯作の外題 げさくのげだい 

戯作者が上梓する作品の外題は、凝りに凝っていて漢字のままだとまともに読めないものが多い。和漢混交のうえ存外の当て字が目立つ。この難読性をもって読者に頁を繰らせることができると、いささか思い上がったフシがある。

現今の映画タイトルと同じで、面白そうな題だからととびつくと、読んだあとでがっかりさせられることが少なくない。

【例】

絵と時代戯作の外題

▽的中地本問屋 あたりやしたじほんどいや   〔十返舎一九〕

▽風俗酔茶夜談 ふうぞくすいちややだん    〔多羅福山人〕

▽江戸生艶気樺焼 えどうまれうわきのかばやき    〔山東京伝〕

▽侠大平記向鉢巻 きやんたいへいきむこうはちまき 〔式亭三馬〕

▽稗史億年代記 くさぞうしこじつけねんだいき   〔式亭三馬〕

▽見徳一炊夢 みるがとくいつすいのゆめ      〔明誠堂喜三二〕

 

源氏名 げんじな 

〈妓名〉〈里名〉とも。玄人筋の女が用いる営業用の呼名。

遊女や水商売の女にとっての源氏名は、一種の見世看板である。

浮雲、小百合、澪つくし、駒吉、らん丸、ポン太……。

江戸時代どんな源氏名があったかを知るには、洒落本を紐解くに限る。これらの本は吉原から岡場所まで、まさに遊女等の源氏名の宝庫である。現代芸者の源氏名もまた、芸妓組合の名簿等にいくらでも見つけることができる。

【例】

恋衣    

仇なりと、何にこそ立てれ桜木の、初花染めの恋衣、若紫や()紫、由縁(ゆかり)もがなと夕霧の、立ち迷ひしに薄雲や、上の空なる君たちを、(なに)とて思ひ染め川や、身は浮橋の浮寝にも、せめて夢には打ち解けよ、(ねや)の月さへ枕に通ふ、独り焦がるゝ夜は長門(ながと)の、その東雲(しののめ)の鳥の声、乱るゝ露の(たま)(かづら)、いつ逢坂と心は石州(せきしう)、とめて幾夜も薫るは初音(はつね)、滝の白玉涙の淵に、沈む思ひは泉川、いつ見きとてか、小吉(こよし)かるもの歌ひしは、よしや歎かじ叶はぬとても、定めなきこそ浮世の習ひ &『松の葉』第二巻(本調子長唄、元禄十六年)

*詞は仮名草子作者の山岡元隣(163163)作といわれ、江戸吉原の有名遊女の源氏名寄で構成されている。

 

酒の異名 さけのいみょう 

 酒類は嗜好品であるとともに、時代時代に生活した人びとの、喜怒哀楽に密着したよき伴侶である。その証拠に、古今東西を通じ酒にはさまざまな異名や愛称などが付けられてきた。「酒」は単なる汎称にすぎないのに、この表現があながち誇張でないことは、本項をひもとくことで納得していただけると思う。

 わが国における酒の又の名の大半は、大昔の中国からの渡来語、あるいは死語化した和語である。しかし一握りの語、たとえば「天之(てんの)美禄(びろく)」「忘憂(ぼうゆう)」「(たま)(ぼうき)」「般若湯(はんにやとう)」「御酒(みき)」などの漢語や古語は、いまだに生きながらえて通用している。カタカナ語アルコール飲料が氾濫している現代にあって、これらの言葉は芳醇酒のように味わい深いものがあると思う

 拙書『酒大学林』出版案内の表紙

【例】

酒の古今異名(五十音順)

赤 赤馬 阿伽陀(あかだ)(やく) あから アルコール 祝の水 うまい物 憂いを払う(たま)(ぼうき) 御神酒(おみき) 霞 ガソリン (かん)(ぱく) 麹士(きくし) きす 気違い水 狂水 狂薬 九献(くこん) 削り 糵水(げっすい) 月雪花の友 賢人 護摩(ごま)() 米のジュース 米の水 濃漿(こんず) (さか)(みず) ささ (ささ) ()(すけ) 三水(さんずい)(ひよみ)(とり) 三寸 三友の一 自己麻酔剤 熟穀の汁 酒精 汁 (すい)(こく)の精 水辺(すいへん)(ちよう) 税をかける品 聖賢 清三郎(せいさぶろう) 聖人 仙薬 掃愁帚(そうしゆうそう) 滝の水 竹の葉 (たま)(ぼうき) 竹叟(ちくそう) 竹葉(ちくよう) 適薬 天の甘露 天の濃漿(こんず) 天の美禄 流るる霞 流れの泉 飲み料 *このあと数十の呼称と解説・例示が続くが省略。&『酒大学林』5章

《参考》

酒と女の中心       添田啞蝉坊浅草のカフエーといへば「オリエント」といふ。女給の波濤(はたう)に「(うる)はしの浅草、わが浅草。」の匂ひがない。お兼、お秀、等々々。卓子(テーブル)の長い行列が荒涼としてゐる。/「(くわう)(やう)(けん)」。古い広養軒である。美人で売る広養軒である。お松、時子、菊枝、信子……無事に飲んで、ジロ〳〵彼女等の顔を眺めるところである。左様(さやう)、もう十五年も前の話になるな、こゝのお絹さんがヒロインで、騒がれたのは。恋の曲芸と冒険で浮名をうたはれたものだ。だが今は丸髷(まるまげ)を結つて「奥さん」になりすましている。広養軒にはこないだまで、そのお絹さんにソツクリな女給がゐて、その鼻の格好(かつかう)を誇つてゐたが、到頭(たうとう)お嫁に行つたさうだ。/「ロツク」。──帝国館の地階、六区の岩窟(ロツク)だ。今、浅草のカフエーの中心はこゝいらにあるらしい。まアあの狭い石段を下りて行つて見たまへ。穴ぐらの周壁(しうへき)と、真ン中に、ボツクス、ボックス、ボツクス。その中に埋まると、頭までかくれてしまふ。その風も通さぬ穴に、此の熱いのにみんな汗を流して沈没してゐるではないか。御苦労様なことだ。此の地底の突き当たりに、稲荷大明神を(まつ)つてあるといふインチキさ加減はどふだ。かほるに弓子に、愛子に、×子×子と、何だか知らぬが色ンな女が居るよ。/「ジヤポン」享楽の殿堂と自称する。東京倶楽部の下だ。器具調度が(こころよ)いといふ。/「バツト」昔の石村(いしむら)だ。これは階上だ。二十人程の女給さんをねめるよりも、階下の人の激流を眺めたまへ。/観音劇場前の、「今半(いまはん)」に「(ぐわ)(りう)(けん)」。昔は流行つたこともあつたツけが。/「ニユーオリエント」。中井桜渓(あうけい)のカフエー春秋座が消逸(せういつ)したあとの、新しい名だ。/「パウリスタ」。コーヒー屋のパウリスタで()ればいゝものを。暗い(へき)(しよく)照明の底で、腐つたピアノが(つぶや)いてゐたが、階下は(めい)々と白色電灯を(かがや)かして民衆食堂と銘を打つた。時流(じりう)(すく)はうといふのだらう。だがそれにしても()だ三割方高い。(中略)

これは正確にはカフエーではないが、本郷バー裏通りの、二(ひん)洋食「竹林(ちくりん)」。自慢のビフテキとカツレツ二品を専門といふ看板だ。テキ六十銭、カツ三十銭、私は特に美味(おいし)いとは思はなかつたが、静かな此の家の気分を愛することが出来る。小さな間口に、六つの(ていぶる)。もの静かな女給が一人。落付いて飲むにもいゝかもしれない。飲食店がどこでもデパートのやうな不体裁(ふていさい)を競つてゐる中に、流行を狙ふこともなく、特に二品(ふたしな)標榜(へうぼう)して、地味(ぢみ)にやつてゐるこゝのオヤヂの抉マガリは買つてやつてもいゝ。/雷門(かみなりもん)から駒形平行かう左側の「エビス」。雑然たる客の種類。銘酒屋のやうな気分。椅子のあしの(あひだ)のダンス。

&『浅草底流記』吼へろカフエー

 ろくろ首の娘が大酒くらい〔珍話楽索頭、安永元年〕

 

山号寺称遊び さんごうじしょうあそび

〈恵方詣で〉とも。

たいていの寺には「成田山新勝寺」のように山号に続けて寺称がついている。これにならって「○○さん△△じ」といった形の句を面白おかしく創作する遊びである。有名句に「一目散、隋徳寺」というのがあるが、形式さえ覚えればいくらでも作れる。

【例】                                                             荻生作

▽和尚さん何て漢字

▽おかみさん洗濯時

▽自己破産一大事

▽南無散々イボ痔

▽石見銀山鼠退治

 

誌名種々 しめいくさぐさ 

雑誌の誌名はまさに百花繚乱ぶりである。三号で消え去ったカストリ雑誌も含め、わが国でいったいどれだけの雑誌が刊行されたか、あまりにもおびただしい数なので見当もつかない。半世紀の時代をへだてて、その一端を覗いてみよう。

【例】

カストリ雑誌の誌名(昭和二十年~二十五年、発刊順)

りべらる 真相 VAN venus 犯罪実話 政界ジープ ピンアップ 赤と黒 変態集団 楽園 成文化 くいーん 犯罪読物 ぷろふいる 真珠 人間復興 世界の女 猟奇 共楽 らヴりい スクープ OK 情痴の顔 オール軟派 実話 人人 実話ロマンス だんらん 暗黒街 艶麗 猟奇草紙 うきよ 仮面 オール実話 ウイング 性苑 情痴くらぶ 猟奇読物 ハート スバル ラッキー 魅惑 綺談 ハッピイ エンゼル 旋風 オール夜話 アベック 夜話 ベーゼ バクロ 奇抜雑誌 新猟奇苑 情炎 桃源境 好奇 新文庫 ナイトクラブ 赤裸々 雄と雌 猟奇界 性艶 チャンス ブラック 耽奇 奇譚クラブ 夫婦生活 パラダイス 問題実話 抱擁 猟奇世界 男女 &『カストリ雑誌研究』口絵写真集

 *出典口絵に以上各カストリ雑誌の表紙・発刊年月日・発行所が明示されている。

現代各誌誌名より(2003年現在)

書游 ガツン! SIGHT 諸君! 第三文明 人間会議 ESSE Hanako おしゃれ工房 恋運暦 美的 ポポロ わいふ 裏ッ! 雲遊天下 開運大吉 漢字ランド 懸賞生活 SAPIO 自遊人 スケルトンファン ドーヨ! マイマイ族 唯一者 るんびにい アイユ 紅ぐるま たあとる通信 ほるもん文化 &『新聞雑誌総合かたろぐ』2003年版、メディア・リサーチ・センター刊

 

書名三昧 しょめいざんまい 

本を出す場合、書名の付け方ひとつで売れ行きが左右される。そこで各出版社は、パンチの効いた、売れ筋書名を考えるのに躍起になる。書店や図書館へ行くと、面白名前の本を見つけるのに事欠かない。こうした〈書名三昧〉コレクションだけで、それこそ優に一冊の本が出来よう。

本稿では分野を書名に限定してまとめてみた。正しくは日本十進分類法(図書館・書店などでの図書資料の分類法)における019「読書法・図書評論法」に対象を限定。品川区立中央図書館の同番号書架を渉猟して、ユニークな書名をいくつかピックアップしてみた(2004年二月現在)。さすがに本好きな人たちが著した本だけあって、タイトル一つにも遊び心が横溢している。

【例】

秀逸書籍名

『快読力』鵜飼正樹著、メディアワークス

『本読み まぼろし堂目録』荒俣宏著、工作舎

『ロマンのページにパーキング』荒川洋治著、毎日新聞社

『ヘンテコ本が好きなんだ』井狩春男著、イーハトーブ出版

『本の話何でもあり屋』井家上隆幸著、リブリオ出版

『本の宇宙あるいはリリパットの遊泳』倉本四郎著、平凡社

『三酔人諸国悠遊』谷沢永一著、潮出版社

『バカのための読書術』小谷野敦著、筑摩書房

『絶版文庫交響楽』近藤健児著、青弓社

『らんだむ・らいだあ』鶴見俊輔著、潮出版社

『トンデモ本の世間』と学会編、洋泉社

『ほんのきれっぱし』山田俊作著、同時代社

『本を読むバカ読まぬバカ』安原顕著、双葉社

『快食・快便・快読』森毅著、青土社
『皆殺しブックレビュー』佐藤亜紀ほか著、四谷ラウンド

『ページをめくる指』金井美恵子著、河出書房新社

 つむじまがりな広告/文武 〔国民新聞、大正六年七月二一日〕「つむじまがり」とは外骨翁の人物像を絵に描いたような表題である。目次を見ても常識打破の傑作ばかり、読者をけっして飽きさせない。このあたりから著者名に「売名家」を冠し、天下にはばからない傑物振りを示している。 

 

人名擬き じんめいもどき 

ある共通の特徴・特質を持つ人たち(ときには物)に象徴として与える名付け遊びを〈人名もどき〉と称しておく。たとえば田舎者には「田吾作」と、いかにも個人名であるかのように、らしき名をもって装った。

人名もどきは、差別用語などという文化破壊の野暮な規範が存在しなかった時代の、万人共通の洒落でもあった。近代文学作品や新聞記事にもこれが多出している。

【例】

伝承のもの

見物左衛門(狂言シテ役) ぐづろ左衛門(狂言ツレ役) 義左衛門(大儀に殉じた者) 土左衛門(水死人) 干左衛門(餓死者) 犬左衛門(素浪人) 只右衛門(もぐりの見物人)  癇太郎(潤症の強い子) 狼之助(凶悪な侍や僧) 艶二郎(うぬぼれ男) 源四郎(ごまかし野郎) 無太郎(金なし男) 佐平次(出しゃばり者)       折助(武家の中間) 三助(湯屋の垢こすり) 福助(飾り物のような若旦那)  (ごん)助(下僕)            権八(居候) 才六(ぜいろく)(上方者への卑称) お三どん(飯炊き女) お(きん)(持参金付きの嫁) おむく(処女) お縫(お針子) おりん(悋気強い女)

馬鹿者の人名もどき

金十郎 三太 源助 甚六 甚七 権兵衛 鈍太郎 太郎四郎 藤九郎 (もく)之助 与太郎 甘太郎 八五郎 孟八郎 でれ助

無駄口入りのもの

承知之助 いい気味之助 夢中左衛門 石部(いしべ)金山(かなやま)金吉 平気の平左衛門 知らぬ顔の半兵衛 ヤケのやん八 馬鹿の三太郎 オツにおすましの乙姫

江戸期上方の俗謡

♪視やうなら〳〵、けんくわしやうなら、あめざや信介、かりがね文七五人組、ぬれがみ潮五郎はなれごま長吉、黒船の忠右衛門に、座禅の庄兵衛〳〵、庄へかのさへ門薄雪さ &『俗耳鼓吹』

茶化し江戸川柳より

▽土左衛門お土佐の多い壇ノ浦

 *お土佐=女水死人。

▽鷹の名にお花お千代はむごいこと

 *鷹=最下級の街娼「夜鷹」。お花・お千代=「お鼻落ちよ」、詰まり梅毒の末期症状をさす。

▽助平はおいんおらんが異名なり

 *おいんらん=「淫乱」の折句異名。

明治の「合せカルタ」より

総理大臣国野(いしづえ) 陸軍大臣黒木桃太郎 大学教授花輪高 代議士日比谷(つどう) 実業化金野成蔵 番頭加世木升八 高利貸欲野(ふかし)巡査民尾守 易者岩津百当 &『家族合せカルタ』

《参考》

成瀬川土左衛門                                            山東京伝享保九年午六月。深川八幡社地の。相撲(すまひ)の番付を見しに。成瀬川土左衛門奥州産前頭(まへかしら)のはじめにあり。案るに。江戸の方言に。溺死の者を土左衛門と云は。成瀬川肥大の者ゆゑに。水死して渾身(こんしん)(ふくれ)ふとりたるを。土左衛門の如しと(たはむれ)いひしが。つひに方言になりしと八百屋お七の狂言に。土左衛門伝吉と云あるも。成瀬川が名をかり用いたるものとぞ。 (以上友人照義の説也) &『近世奇跡考』(十四)

 

西洋人当て字名 せいようじんあてじな 

文明開化期は異種文化との同化をめざす試行錯誤期でもあった。

西洋人の名前についても例外でなく、おりからの漢語ブームとあいまって、漢字表記が流行った。次の例示もそうした一つで、類音命名による〈人名(ひとのな)(もどき)〉ともみなせる。

【例】

西洋人名の日本語化

John……..(ぜん)(じ  )

  Harry……(はる)()

   Henry……(けん)()

   Hodges…..北条(ほうじよう)

   Gregory….(くら)()

   Leopold…..竜人(りようど)

   Douglas….板倉(いたくら)

  Jane……..(せん)

&『欧米礼式』明治十九年刊

開化小説に見る面妖名                                         坪内逍遥作

かくまで(かう)(じゆん)にして(すなほ)なるを、真実(まこと)の母の、かく仇名をさへ(おは)しむるは、最訝(いといぶ)かしきに似たれども、「正室(レデイ)阿朱遁(アシユトン)」は(その)(さが)厭迄(あくまで)雄々敷、前にも言へる如く、夫「維廉(ウイリヤム)」すら一歩を譲る婦人なれば、「瑠紫(ルシイ)」が更に活発の気力なきをいと甲斐なしとうち(うら)みて、唯長子なる「短王(シヨルトー)」が卓然として人を凌ぐ精神あるをのみ愛で喜び、これを憐れむこと限りなし、&『春風情話』第一篇第二套

 

俗称・異名〔酔っぱらい〕 ぞくしょう・いみょう/よっぱらい 

取材するまで、酔っぱらいに対する異名や仇名が、これほど沢山存在するとは思いもしなかった。こうした珍名奇称を見るにつけ、酔っぱらいが素面(しらふ)の人たちから格好のからかい相手にされているのがわかる。

もちろんなかには、酔漢自ら自嘲を込めて付けたものもあろう。

 あだ名の付けようもない!

【例】

酔人の渾名(五十音順)

赤人 アルコール漬け 今猩々 うわばみ (えい)(すけ) 猿猴坊(えんこうぼう) (かす)()らい 亀の子連中 金時の火事見舞 下卑蔵(げびぞう) 酒亀 酒田権兵衛 酒腹 酒乞食 酒大将 左党 (ざる) 猿丸 (じや) 蛇の子孫 蛇之助 蛇平 十徳先生 上戸 猩々 猩々顔 生得大酒 酔翁 ずぶ七 ずぶ六 底無し 食印(たべじるし) だりもくり 樽抱き 樽抜き 徳利狂人 トラ 泥 泥坊 ドロンケン (どん)太郎(たろう) 奈良漬 飲み株 飲み助 飲太郎兵衛(のんだらべえ) 飲太郎 飲ン兵衛 左 左利き 瓢箪(ひようたん)(まくら) (ぼう)(だら) 飯嫌い 飯弁慶 茹で蛸 酔助 (よい)(てき) 酔たん坊 李白 (わに)の口

 

俗称・異名〔遊女〕 ぞくしょう・いみょう/ゆうじょ 

【例】

売女の称号

花魁(おいらん) 娼婦 娼妓 胡姫(こき) 彩頭(さいとう) 遊女(うかれめ) 宿(よね) 妓女(たはれめ) 傀儡(くぐつ) 傾城(けいせい) 白拍子(しらひやうし) 太夫(たゆう) 白人 太夫(たいふ) をやま 艶女(あんにや) 浮身(うきみ) 流身(ながれのみ) 忘八(くつわ) (以下は自由営業の安女郎) 夜発(やほち) (そう)() 辻君 立君 夜鷹 舟饅頭 幻妻(げんさい)

&『昆石雑録』合載袋ほか

 

長名 ちょうめい 

古典落語の有名な前座(ばなし)に「寿限無(じゆげむ)」がある。男の子が生まれ、檀那寺の坊さんに命名を頼んだ。長名(長命に通じる)をという注文だったので、坊さんは『無量寿経』の経文(きようもん)から次の名を付けた。

 寿限無(じゆげむ)寿限無、五劫(ごこう)(すり)切れ、(かい)砂利(じやり)水魚(すいぎよ)(すい)行末(ぎようまつ)雲行(うんぎよう)(まつ)(ふう)(らい)(まつ)、食う寝る所住む所、油小路ぶら小路、パイポパイポ、パイポのシューリンガイ、シューリンガイのグーリン台、グーリン台のポンポコナア、ポンポコナアの長久命、長久命の長助

と。さて、その子がある日近所の子とけんかし、コブを作らせてしまった。母親に訴えた当の子が、「寿限無…の長助が、」と長い名を使い、母親も応じてそれを繰り返す。やりとりのあと、母親が頭のコブを見せろというと、子は「あんまり名前が長いから、コブが引っ込んじゃった」と下げる。

落語にかぎらず民俗学の分野でも〈長名〉に関する伝承記録が各地に散見できる。長名や目出たい名付けは、古くから親の祈願の現れであった。

【例】

狂言より

栗の木のくぜいに、たりうたにもりうた、もりうたにたりうた、ばいばいにばいやれ、ぎんばいにばいやれ &『狂言記』外篇「昆布柿」

伝説より

阿釈妙観地白熊白羽日嶽之房 &『沙石集』巻八

前田慶次(利家の臣)の異名

あかしよつかい革袴、茨かくれの鉄兜、鶏のとつかさ立烏帽子 &『武林録』巻六

日向地方伝承より

ちきちきおんぼう、それおんぼう、そえたか入道、播磨の別当、焼山弥次郎、ちゃかもかちゃあぶるせんずり観音、久太郎べつ太郎、むこにやすっぽろぽん &南方(みなかた)随筆』

角館地方伝承より

孫々(そそ)何時迄(いつまで)毛死奴奈(もしぬな)(苗字)亀乃如(かめのように)万年生(まんとしせい)子迄生好子生好子() &『旅と伝説』十四巻

日本一の長名伝承

一丁ぎり二丁ぎり、丁々ぎりの長三郎、長太郎(たろ)びっこの長次郎、金助・紋助・半助、相川(あいかわ)・白川ターズノミ、じゃんみんじゃんみんじゃんまん坊の、天目もくのもくぞう坊、(途中四十三字分割愛)てえたらばあたら、てえてえからりのてえからり、すってんからりのノッペクロー、やりからまァどをつん出した、棒で縄ァつっぺいだ、髯さ団子を突っ刺した、てぐつくはぐつくひいれえれえと、文福茶釜に毛が生えた、すってんでれつくベーこの(つうのう)、きんぎらめめずの首の骨、ひょごつく兵庫の兵庫の守 

&『民間伝承』十一巻一号

*岩手県下閉伊郡川井村で採取の早物語の一節。

京都・東寺の正式呼称

金光明四天王教王護国寺秘密伝法院

現代の長名記録

▽藤本太郎喜左衛門埒時能(ふじもと・たろうきざえもんのようときよし)&『珍姓奇名』

▽山中いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせす子(五〇字)

&『朝日新聞』2003年一月二十二日「天声人語」

 

珍姓奇名 ちんせいきめい

日本には万余の姓名が存在し、なかにはどう読んだらいいのか不明のものもある。あるいは、思わず失笑してしまうような〈珍姓奇名〉さんも少なくない。遊びで命名したわけでないにしろ、ぜひとも言葉遊びの仲間に加わってほしい存在ではある。

 拙書『日本人名関連用語大事典』〔遊子館〕日本の人名用語を網羅した著作である。

 【例】

奈良時代の不浄名

(どろ)麻呂(まろ)岐多奈売(きたなめ)小屎売(おぐそめ)錦織(にしこりの)(おびと)()()下野(しもつけの)屎子(くそ)

*あえて不浄名をつけ、疫病や悪鬼の()きを(はら)う狙いがあったという。

 月日にちなんだ姓

正月一日(むず)四月一日(わたぬき)六月一日(うりはり)八月一日(ほずみ)八月十五日(なかつき)

 数字だけの姓

(にのまえ)(ももき)五六(ふのぼり)一二三(ひふみ)(いじみ)七七五(みつつき)(みつわた)

 一字難読の姓

(わかし)(よろう)(ようろ)(おんこ)(おんのこ)(まこと)(きたばしり)

重ね字の姓

(ひら)(だいら)子子子(ねこじ)(ひら)(たいら)(へい)(べい)(姓名)子子子子(すねごし)(しげる)(姓名)

 似た字続きの姓

伊尹(いい)(こう)(みぞ)已已巳己(いえしろ)

 数取りの姓

百人(どうどう)六合(くに)十八女(わかいろ)千万億(つもい)百目木(どめき)五日蔵(ようい)二十五里(つゆひじ)七五三掛(しめかけ)五百旗頭(いおきべ)四十八願(よいなら)四十四院(つるし)五十八公野(いつみの)

 数取りの姓名

▽一二三四五六七八九十郎(金沢市南町)

▽渡辺七五三吉五郎次郎三郎右衛門(福島県坂下町)

仮名回文の姓名

小池(こいけ)敬子(けいこ)小田(おだ)貞夫(さだお)(つかさ)正勝(まさかつ)

 漢字回文の姓名

清家清、蔵田倉、三輪田輪三、平林林平、三五七五三(さごしめぞう)

珍姓中の珍姓

()(いし)鳴溺(なるたそ)妻鳥(めどり)位商(やごと)化間(とが)安幕(あまり)衣非(えび)兆向(とき)防夫(あたと)酉水(すがい)紅白(いりまじり)建陽(ゆや)歌枕(かつらぎ)西花落(つゆり)小鳥遊(たかなし)月見里(やまなし)月出里(ぬだち)円満団(ほうしようだん)兄部坊(このこんぼう)羽衣(うえ)()伝法輪(てぶり)奈癸私(なきさいち)殺陣師(たてし)釈迦如来(にくるべ)言語道断(てくらだ)伊毛保利(いけぼり)曾歩曾歩(そうそう)一天満谷(いてませ)波々賀利(はばかり) &『お名前おもしろ草紙』ほか

古典笑話より

いろはのへとち左衛門    

かたのごとく、人のもてはやす侍ありしが、いろはよりほかは、仮名書の文をさへ読むことなし、あるとき、()下人(げにん)まいりて、わが名をかへたきよし望みければ、例のいろはを(かたはら)におきて、「い兵衛(ひやうえ)と付けうかや、いや、それならば、ろ兵衛とやつけん、いや、は兵衛、に兵衛、ほ兵衛」と付くれども、「いや、ただ、いま少し長うて、はねた名を付きたう御座ある」ともうしたれば、「さらば、へとち左衛門と付けうず」といへり 

&『醒睡笑』巻二

 

ネーミング commercial naming

〈ネーミング〉とは、もともと命名全般をさす概念をもっていたが、その語感の良さから、いつしか商業向け命名の用語であるかのように使われるようになった。

ネーミングは複雑多岐な内容をもち、事例も豊富。現に関連書が何冊も出ている。また企業イメージに影響を与え、商品の売れ行きを左右するため企業人はネーミングの創案に神経を払い、数々の傑作を生み出してきた。一般市場向け商品名でヒットしたものは、一企業の占有を超え流行語にすらなる。幼児がテレビで覚えたCMや商品名を口ずさみ、母親も唱和する……マスコミにのせられたネーミングは、消費者の懐ろ深くに潜入したら離れがたいものになっている。と同時に、言葉遊びの一分野でも格好の材料になっている。

【例】

企業名

白洋舎 トマト銀行 東急ハンズ ザ・本屋さん とらばーゆ 食選館 珍竹林(京都の民芸茶屋) 泥棒市場(東京の安売り店) マリンスパあたみ(熱海海浜公園温水施設)

インスタントラーメン

上海キング ラーメン紀行 チャルメラ 中華三昧 激めん カライジャン うまかっちゃん わっしょい 麺`S倶楽部 

食材

秋田小町 ひとめぼれ 紅あずま(じゃがいも) 陽水おろし(大根) 桃太郎(トマト) プラチナのきんぴら(ごぼう)

飲料・酒類

サッポロ一番 淡麗 いいちこ 吉四六(きっちょむ) 一番搾り ウメッシュ うめぇそーだ 朝CAN CHUハイ

家電製品等

ゴク楽ビデオ 最洗ターン シャワーメイト テレビアン 湿とる快 てぶらコードるす 静御前 電子手帳

その他

足軽倶楽部(自転車) ゴキブリホイホイ(殺虫剤) 禁煙パイポ けんおんくん(体温計) 漢ぺき君(漢字入力用ソフト) エバルーン(ハイテク風船) ここちE(ブラジャー) アイトーク(サングラス) 湯らり(薬用入浴剤) 植物物語(石鹸)

「エロ」がズバリ誌名に〔雑誌『エロ』の表紙、昭和三年九月創刊号〕

 《参考》

名前負け「高貴正宗」

殺人焼ちう事件は既報の如く警視庁衛生部で近県警察部に手配しインチキ焼ちう並に不正酒類を調査する一方都下の十銭スタンドバー、カフエー等を一斉検査して不良酒を押収化学試験を行つてゐたが二十五日本所区緑町四の三五三、三輪清酒合名会社関東一手販売にかかる「高貴正宗」には防腐剤フオルマリンを多量に含有してゐる旨栃木県警察部より入電があつたので衛生部寺田保健係長、伊藤警部等が両国署衛生係と協力前記三輪方にあつた同種の酒百六十樽を押収し関係者を召喚取調べてゐるが三輪方では本年四月、秋田県谷出合名醸造株式会社の関東一手販売所となり京橋区霊岸島町二の一〇大里、岡村等の商店を通じ各地方に売捌いてゐた &『報知新聞』昭和八年十月二十七日

 

流行名 はやりな 

その時どきに流行した名。

昭和二十七年春に菊田一夫作・NHK連続ラジオドラマ「君の名は」が放送されると、そのヒロイン「氏家真知子」の名にあやかって、全国の新生児に真知子の名付けが大流行した。 

また昭和三十三年十一月、正田美智子さん(現皇后)が皇太子妃に決定と発表されてから御成婚に至る数年、女児に美智子という名が激増した。大衆はこういう流行名にいかに弱いか、証明されたようなケースである。

【例】

「自由」からの借名

高知県下にては近頃産児に名を命ずるに男子なれば自由太郎、自由吉、自治之助、又女子なれば、お自由、或はお自治抔と自由自治の名を呼ぶもの多しと、同地因り出京せし人の話 &『朝野新聞』明治十五年七月二十二日

 

筆名 ひつめい 

〈作名〉〈作家名〉〈筆号〉〈ペンネーム〉などとも。筆者としての別名、雅号をいう。

実名を用いるのは好ましくないなどの理由で、文士はもっぱら〈筆名〉を用い、実名使用は珍しいくらいである。実名付きの筆名辞典といった専門書まで出ているので、改めて例示までもなかろう。

なお、日本文学の古典作家について筆名を云々するのに「ペンネーム」の語を乱発している教授先生がいるが、これは明らかに場違いというものである。

《参考》                                             荻生まとめ

筆名の類型──筆名を作りたいときの参考に(芸名等も含む)。      

⑴アナグラム型

人名はたいてい短い音数であるから、手軽にアナグラムが作れる。たとえばタレ

ントのタモリは本名が森田(一義)、姓をアナグラム+倒語化し芸名としている。

推理作家泡坂妻夫(あわさかつまお)は本名が厚川(あつかわ)正夫(まさお)で、これをアナグラム化。私事だが、かくいう

筆生も

 (うち) (やま) (ゆき) ()(本姓名)

    ↓

(きゆう) ()ちや(姓名のつづり換え成句)

   ↓

(おぎ) (ゆう) (まち) ()(さらにペンネーム化)

 と、アナグラムにのせたものである。

⑵一字残し型

十返舎一九(市九)、正岡子規(常規)、山岡鉄舟(鉄太郎)、山本有三(勇三)

⑶異表記型

 サトウ・ハチロー(佐藤八郎)戸山(とやま)ヽ山(ちゆうざん)(山正一)、吉田良子(イーデス・ハンソン)

⑷語呂合せ型

 高浜虚子()、二葉亭四命(長谷川辰之助)←くたばってしまえ、松根東洋城(豊次

  郎)

⑸自己特性型

 直木三十五←三五歳で筆名の変更をストップ 宿屋飯盛り←石川雅望←宿屋の亭主、六無斎←林子平←無い々尽くし

⑹詞章由縁型

細川幽斎(藤孝)←隔簾湿布帛、当暑涼幽斎、

木戸松菊(孝允)←松菊荒三径、図書共五車、

⑺自然回帰型

 柄井川柳(正道)、樋口一葉(夏子)、横瀬夜雨(虎寿)

⑻字捩り型

 木々高太郎(林髞)、宮川鰻魚(渡辺兼次郎)←鰻屋の亭主、増田喜頓(木村肇)←喜劇王バクスター・キートンにちなむ

⑼先人摸擬型

 生得大酒(狂歌師)←聖徳太子、丸木砂土(秦豊吉)←マルキ・ド・サド、司馬遼太郎(福田定一)←司馬遷

⑽対称型

 損軒(貝原益軒の旧号)、実森大←大森実、

 南田洋子(北田洋子)

⑾地名由来型

 佐久間象山←信州象山、田能村竹田←豊前竹田、大町桂月←土佐桂浜

⑿本名伸縮型

 長谷川伸(伸二郎)、岡本喜八(喜八郎)、河内桃子(大河内桃子)

⒀本名転読型

 高村光太郎(こうたろう)(みつたろう)、菊池(かん)(ひろし) 松本(せい)(ちよう)(きよはる)

⒁連想想起型

 岡麓(三郎)、畠芋之助(泉鏡花の別号)、美空ひばり(加藤和枝)

 

ふざける名 ふざけるな 

名は体を現すとか、江戸時代の戯作者・狂歌師らは意識しておどけた号を付けている。こうした滑稽な命名に対し、ここは一番〈ふざける名〉という呼称を呈しておこう。

ともあれ狂歌師のなかには人を哄笑させる狂号を持っているのに、名前負けしたのか、作品のほうはさっぱり面白くない、といった例もある。ちなみにかく申す荻生も、「(よつ)太郎(たろう)冠者(かじや)(はな)酒爺(ざけのじい)」なるふざける名を弄し、戯文作品などに号として用いている。

 花酒爺が一念発起するいでたち

【例】

江戸狂号より  (  )は本名または通称

秋廼屋颯々(あきのやさつさ)(伊藤源兵衛) 

 浅草(あさくさの)市人(いちんど)(大垣久右衛門) 

五十五十輔(いそじいそすけ)(本名未詳) 

一編舎十九(いつぺんしやじつく) (蒲原孝栄) 

上水(うえみず)下見(したみ)(久保理右衛門) 

絵馬(えま)()額輔(がくすけ)(奥田賀久輔) 

大家(おおやの)(うら)(ずみ)(久須美孫右衛門) 

加保茶(かぼちやの)元成(もとなり)(村田市兵衛) 

(から)(ごろも)(きつ)(しゆう)(小島謙之) 

()屑坊(くずぼう)(本名未詳) 

黄金(こがね)(ます)(なり)(辻多三郎) 

(さけの)(うえの)()(らち)(倉橋寿平)

三陀(さんだ)()法師(ほうし)(清野正恒)       

鹿(しか)都部(つべの)真顔(まがお)(北川嘉兵衛)

知恵内(ちえのない)()(元木網の妻)       

元木網(もとのもくあみ)(渡辺喜三郎)        

四方(よもの)(あか)()(大田直次郎)

力士の四股名(しこな)(近代)

馬鹿の勇介、電気灯光之助、ヒーロー市松、入口、(かながしら)忍山(しのぶやま)色助、釘貫弥次兵衛、白旗源治、(いのしし)鍋吉、武蔵防弁慶、浦島太郎、不了簡綾丸、膃肭臍(おつとせい)市作、凸凹(でこぼこ)太吉、自動車早太郎、文明開化、新憲法源七、突撃進、(かなどめ)(のぼる)(かずはじめ)(はじめ)、牛若丸飛之助、羽衣天昇

《参考》

落語史を飾る志ん生の改名記録                     荻生まとめ筆名や芸名を付けてはみたものの、気に入ったのがなかなかなく、何度も改名を試みた例はかなりある。たとえば昭和落語界の長老、古今亭志ん生(18901973)は、なんと生涯に十六回も芸名を改めているという。名人気質(かたぎ)が芸名一つにも凝り固まったに違いない。&『笑点 円楽のよろずガイダンス』によると、その改名の軌跡は、

 ①三遊亭朝太 ②円菊 ③古今亭馬太郎 ④金亭武生 ⑤吉原朝馬 ⑥隅田川馬石(ばせき) ⑦金原亭馬きん ⑧古今亭志ん馬 ⑨小金井芦風(一時、講釈師となった) ⑩古今亭馬生 ⑪柳屋東三楼 ⑫柳屋ぎん馬 ⑬甚五郎 ⑭(再び)古今亭志ん馬 ⑮金原亭馬生 ⑯古今亭志ん生(五代目を襲名)

と驚くほど多彩だ。おそらく姓名(芸名)判断に凝るあまり、あれやこれや迷い続け

たに違いない。

 

普通名詞的人名 ふつうめいしてきじんめい 

個別化を建前とする人名である以上、普通ははっきりそれとわかる固有名詞とする。

しかし昔の人の名前には、あたかも普通名詞と間違えてしまう類のものがある。左掲はそのうちの典型例。ほかにも沢山あるので(お岩、でれ之助、田吾作、姓では魚屋(ととや)金隠(きんかくし)なんていうのも)、探し出してみるのも一興だ。

【例】

個人の名で普通名詞

雲助  折助  三助  権助  甚助  でこ助  福助  才蔵  豆蔵  甚六  角兵衛  助兵衛  権兵衛  与次郎兵衛  土左衛門  三太夫  おさん殿  お亀  三太郎  千次郎 

&『昆石雑録』こゝろの俤

  

彫名 ほりな 

遊女や情婦(おもわれもの)が思い入れした男の名を肌に彫る。これを〈彫名〉といって、女の(みさお)立ての勲章のように扱っていた。その動機は遊びでない純粋なものであるににしても、見方によっては余興の要素が見え隠れする。

【例】

思う女の紋所                                              三田村鳶魚

この頃の彫り物には、画というものはありませんで、皆文字でありました。男に書かせて、その筆跡を遊女が自ら彫る──というのは大分凝ったやり方のようになっておりました。それは、

 勘兵衛といふものに    カンサマ(いのち)

 徳右衛門といふものに   トクサマ命

  九郎兵衛といふものに   クロサマ命

  川といふかへ名ある人に  カハサマ命

  重といふかへ名ある人に  シゲサマ命

という風に、男の名の頭字を命という字と続けて彫り入れる。また模様を替えては、

 十兵衛といふに      二五命

 九兵衛といふに      三三命

 三右衛門といふに     山 命

 藤兵衛といふに      フヂ命

 平兵衛といふに      ヒラ命

 清右衛門といふに     キヨ命

という風に彫り要れる。この命という字を添えるのは、「命に替へて」──または「命限りに」といったような心持の表示であります。

&『三田村鳶魚全集』江戸ッ子

 映画『墨東奇譚』より、永井荷風が自分の刺青を女に見せるカット

 

命名遊び〔雑載〕 めいめいあそび/ざっさい 

〈命名遊び〉の各種雑載である。

【例】

ニャンじゃねこは芸者か

♪猫じゃ猫じゃとおっしゃいますが

猫が、猫が下駄はいて

絞りのゆかたでくるものか

オッチョコチョイのチョイ(明治二年に流行)

*維新後の社会では、人事職業を動物に擬して冷やかす風潮があった。このオッチョコチョイ節でも、芸者をして猫と称し、流行唄に乗せている。猫と並んで、女郎の擬称は「キツネ」、いつ何時も人をだますから。高級官吏は判で押したようにナマズ髭をたくわえていたので「ナマズ」と蔑称した。木っ端役人のほうはドジョウ髭が象徴(シンボル)だったので「ドジョウ」。時代は下り漱石『坊ちやん』の主人公は、校長をタヌキと呼んでいる。いずれも庶民階級からいささか離れた世界でノホホンと暮らしている人種への、やっかみを込めた当てこすりであった。通称「猫じゃ猫じゃ」は維新直後に大流行。この歌に便乗し、次の「下戸じゃ下戸じゃ」なる替え歌が作られ、こちらも飲み仲間の流行歌になた。

  ♪下戸じゃ下戸じゃとおっしゃいますが/下戸が、下戸が一升樽かついで/前後も知らずに酔うものか/オッチョコチョイのチョイ

古歌より拝借名(芸能人)

▽有馬稲子──有馬山いなの笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする(大弐三位)

▽天津乙女──天津風雲の通ひ路吹きとぢよ乙女の姿しばしとどめむ(僧正遍昭)

▽幾野道子──大江山いくのの道は遠ければまだふみも見ず天の橋立(小式部内侍)

▽霧立のぼる──村雨の露もまだひぬまきの葉に霧立ちのぼる秋の夕暮(寂蓮法師)

▽小夜福子──み吉野の山の秋風小夜ふけて古里寒く衣うつなり(参議雅経)

都内銭湯名ベスト5

  朝日湯 ②松の湯 ③恵比寿湯 ④稲荷湯 ⑤栄楽湯 &『神田っ子』3号

浅草芸者の源氏名(昭和)

歌丸 男女丸 文丸 らん丸 よし丸 ちか丸 栄丸 きく丸 太郎 秀太郎 扇太郎 一郎 次郎 駒次 五郎 光五郎 秀也 千也 君夫 省吉 正巳 &第十五回「浅草会」(昭和四十六年)発表

風変わり薬名

ヘモゾール(痔疾治療剤) アヌゾール軟膏(痔疾治療剤) イボコロリ(いぼ取り) 風ケロット錠(風邪薬) ブランドレス膏(外用薬) うどんや風一夜薬(風邪薬) 御陀羅尼助(胃腸薬) がんがん軟膏(外用薬) 雪美人(外用薬) 愛の母E(婦人用保健薬)  月さらへ(婦人薬) 子宮玉(婦人薬) 的中液(強精剤) 一二三(不明)

プロレスラーの二つ名

金狼(上田馬之助) 革命戦士(長州力) 涙のカリスマ(大仁田厚) 鉄人(ルー・テーズ) 黒い魔神(ボボ・ブラジル) 仮面貴族(ミル・マスカラス) 狂虎(タイガー・ジェット・シン) 銀髪鬼(フレッド・ブラッシー)

丸山菊大会の出品名(初出七名分を抄出)

──享保二年九月二十七日 於丸山也阿弥

▽多福庵     甘露水、(まん)(ぞう)供養(くよう)、絵合

▽中村休圃    摩加侘(まかた)(こく)麒麟(きりん)(もう)(みつの)(よど) 

▽藤川氏     都の月、秋の御調(みつき)、万歳がみね

▽隅田兵左衛門  (みやこ)(かがみ)砂金袋(しやきんふくろ)雨露(うろの)(しただり)

▽宮野氏     玉手箱、やまと歌、間垣

&京なわて三条下ル町松葉屋・上村四郎兵衛板行

群馬県の性神名

*性神を祀る淫祠は全国にまたがるが、数では群馬県が群を抜いている。

▽金精明神──新田郡境町にちんざの麻良神。

▽福守神社──麻良のお守り札で有名。

▽琴平神社──高崎市、子持ちの麻良。

▽木福サマ──勢多郡芳賀村

▽麻良諏訪──多野郡鬼石町、ベッチョ岩との合祀。

▽キンマラ薬師──勢多郡荒砥村、麻良立ちの神。

▽べべ観音──白郷井村の陰陽石で有名。

▽富登石──碓氷郡磯部町信照寺内。

▽夫婦岩──群馬郡権田村、ほか。

 鹿島神社の性神(群馬県藤岡市)

《参考》

                    作者未詳

かくて茶方の人々、此のよしを見るよりも、かねて(たく)みし事なれば、極上の(せい)(やう)の介殿を惣大将として、朝日 奥山 森 祝 ()文字(もじ) 河下(かわしも) 木幡武者 永井 尾崎に上林(かんばやし)、さて栂尾の名園、田中 山本 池 閼伽(あか)() 深瀬 ()(はた) 逆淵(さかさゑん) 乗一(ぜういち)(はたけ) 小畠 天狗畠 禅賀院(ぜんかいん)の御影堂(ゑいどう)の園こそは、殊に名を得し強者(つはもの)なれ、栂尾よりも分内(ぶんなひ)も、構へよきとて残りなく、宇治にぞ籠居(こもりゐ)たりけり、さて国〴〵の強者、江州に粟津の三郎、八幡山の好忠、伊勢茶の三郎好粟、嵯峨西山の名茶園、残りなくこそ集まりけれ、大将の、その日のいでたつ装束にハ、茶碗色の直垂、枯茶縅(からちやをどし)の鎧著、茶作の小脇差、右手の脇に差しにけり、三尺八寸の大太刀に、いで青葉色の左右(さう)籠手(こて)、湯の花縅の(わひ)(たて)、茶の実形の兜を、茶首に着なし、長七寸八分明六歳、茶墨黒の駒に、金覆(きんぷく)(りん)の鞍置かせ、その身軽げにちゃんと乗り、別義そゝりの人々を、弓手(ゆんで)右手(めて)に相具し、気色して見えしは、いかなる諸白生酒も、恐れつ(べう)ゾ見へにける、かゝりける所に、土園の煎茶之助申けるは「此宇治の里ゝ申は、ゆへ有所なり、古へ高倉宮、合戦に打負けたまひ、(げん)三位(さんみ)頼政、同く討たれたまひけり、弓矢の門出(かどいで)勿体(もったい)無し」と申ければ、諸茶の軍兵みな気を失ひ、(はな)()もなくぞ見へにけり、こゝに(たかの)(つめの)(むかし)殿(どの)と申人、すゝミ出て申されしは「みな〳〵不覚に見え給ふものかな、それがし例を語つて聞せ申べし、それ茶堂(さだう)の命ハ、炉中の(うつみ)()、飲むも飲まるゝも夢の(たはむれ)なり、きのふ見し茶も今日は無し、昔の有さまも、今は変はるなるぞ、(いにし)へ高倉宮、御自害の巷と申とも、それは去りにしはるかの昔、軍と申ハ、時の企事(はかりごと)によるべし、たゞ(きほ)ひかゝつて大福(だいぶく)をたてかけ、弱き武者には、茶の粉を食わせ、強きに酒をふせがせよ」と、只一人の下知によつて、皆〳〵色をなしつゝ、平等院を本陣に定め、茶色の袱紗(ふくさ)、風になびかせ、いかにも(たぎ)つて待たるは、たゞ(はん)(くわひ)楽阿彌(らくあみ)も、これにはいかでまさるべき、此事日本にかくれなし

&『酒茶論』

 女のうずく官能を表紙で活写〔与謝野晶子の歌集『みだれ髪』表紙、明治三十四年〕 表紙のタイトル文字が官能趣くがまま、情緒いっぱいに躍っている。

アラカンの改名披露〔映画『鞍馬天狗』ポスター、嵐寛寿郎プロ、昭和三年七月〕 往年のチャンバラ大スター、アラカンへの改名披露を抱き合わせて