大自然の恵みから生まれた土の匂い濃きご当地伝承の民謡・里謡なつかし

 

Ch.8  民 謡

 

 

Ch.8 民謡 目録 (五十音順) 


雨乞唄 阿波踊り 出雲安来節 磯節 潮来節 田舎唄 伊予節 因州因幡節 追分 おけさ 踊り唄 踊り口説 おばこ節 音頭 川崎踊り唄 木遣節 雲助唄

黒田節 巷謡 木挽唄  小室節 在郷唄 作業唄 さんさ時雨 獅子舞唄 常磐炭坑節 諸国盆踊唱歌 甚句 相馬節 ソーラン節 太鼓踊り唄 田植唄 だんべえ節 地方唄 中古里謡 手踊り唄 名古屋節 農兵節 鄙唄 舟唄 方言唄 豊国節 北海追分 盆踊り唄 馬子唄 民俗歌謡 民謡 民話唄 八木節 安来節 

 

湯揉み唄 よさこい節 米山甚句 琉球節

 

─────────都道府県別人気の民謡

 

アリラン 

 

 

 雨乞唄 あまごいうた

旱魃のとき、農民等が中心になって降雨にあわせ五穀豊穣を祈念するための歌謡。里謡に多く見られ、たいてい踊りを伴い、雷鳴を表す太鼓を打ち鳴らす。地域によっては旱魃にかかわらず、秋の実りのために歌舞だけ恒例に行われることも少なくない。

【例歌】

雨乞唄〔福島県〕 あまごいうた 

♪雨たんもれ〳〵や、水たんもれ〳〵や、竜宮たんもれ〳〵や。(北会津郡)

♪あんめたんもう竜王え、沖から雲立つて来た、みぬも笠もたまらないー、ざあーざあーと降つて来た。(石城郡)

──里謡、近代に採取、『日本歌謡集成』第十二巻

 

阿波踊り あわお

〈阿波よしこの〉とも。徳島県の民謡で、全国的に有名である。

由来は二説あり、①天正時代、徳島築城を祝って蜂須賀侯が無礼講踊りを城下の民衆に踊らせた。②別名どおり、江戸後期に〈よしこの節〉から転じて成り立った。形式上は盆踊り唄に属するが、その域を超えたインターナショナル・フォークソングである。というのも現在、〈阿波踊り〉にかかわる連や団体が海外を含め数百を数えるというから、人気たるや半端ではない。

 【例歌】

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 阿波踊り あわおどり 

♪阿波の殿様 蜂須賀侯が

今に残せし 盆おどり

アーラ エライヤッチャ エライヤッチャ

 ヨイヨイヨイヨイ

笹山通れば笹ばかり 石山通れば石ばかり

(いのしし)豆くうて ホーイホイホイ

(以下、はやしことば略)

♪踊り踊らば (しな)よくおどれ

品のよい()を 嫁にとる

踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆なら 踊らにゃ損々

♪顔は見えねど 編笠越しに

主を見そめた 盆踊り

ひょうたんばかりが浮きものか

わたしの心も浮いてきた

いけソラいけソラ 池田の町まで いかん

 か コイコイ 

──盆踊り唄、成立期未詳、『日本民謡大観』中国・四国篇

 

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高円寺阿波踊り *台湾における披露

 

出雲安来節 いずもやすぎぶし

出雲地方で歌い継がれてきた本来の方言安来節である。

訛りの土臭さは、他のいかなる正調安来節をも排除してしまう正統を誇っているではないか。 

 

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正調安來節 

【例歌】

出雲安来節 いずもやすきぶし

♪私しや雲州(ウンスウ)平田(フラタ)の生れ、十里(ズール)二十里(ニヅール)三十里(サンヅール)(フガス)の果から西(ヌス)の果迄(フク)ずり、引張(フツパ)つて来たものを、今更(フマ)なら暇とらぬ、(フロ)い世界に主独(ヌスフト)り。

──民謡、昭和初期まで伝承、『俚謡集拾遺』 

 どじょうすくい人形〔米子駅舎内で公開〕

 

磯節 いそぶし

九十九里海岸に太平洋の荒波がくだけ散るさまから〈磯節〉の名が付けられた。

漁師が櫓拍子に合わせてうたった小唄が水戸芸者等により座敷唄として広められ、民謡化したもの。昭和に入ると演歌や流行節にも〈擬似唄〉が出て、関東を中心に広まった人気唄である。

【例歌】

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♪磯で名所は大洗様よ、サイシヨネ、松が見えますほの〴〵と、松がね、見えますイソ、ほの〴〵と 後囃子「テヤ〳〵テヤ〳〵いさゝかリン〳〵、好かれちやドン〳〵、お客の性なら毎晩来い、芸者の性なら褄とつて来い、(青菜の性なら萎れて来い)一日逢はなきやおとつさんも心配、お(かあ)さんも心配、共に私もイソ、御心配。

♪磯で曲り松湊で雌松、中の(いはひ)(まち)(をとこ)(まつ)

♪三十五反の帆をまき上げて、行くよ仙台石の巻

♪水戸を離れて東へ三里、浪の花散る大洗。

──地方唄、明治二十八年頃流行、『俗謡末摘花』(文芸資料研究改編)

 

潮来節 いたこぶし

 民謡の曲節名 

常陸の水運交易地、潮来に発祥したことからの名づけ。二十六字の定型詞で、後に〈よしこの〉や〈都々逸〉などさまざまな派生唄や替歌を生む母体となった民謡である。

変化に富んだ内容の系統唄はもとより、さまざまな囃子詞を生んで、野性に富んだ短詞唄の世界を展開してきた。ただし、『守貞謾稿』巻二十三では「潮来節 常州行方(なめかた)郡潮来村に行われし曲節にて、近世、諸国に行われし唱歌、多くは鄙陋なり。その唱歌を伝へ知る人に遇はず。」と、取るに足りない扱いをしている。

〈潮来節〉は元禄の頃に〈投節〉から派生したという説(古今百首なげぶし)もあり、そうなると、投節→潮来節→よしこの→都々逸という一連の二十六字歌謡体系が構成されたことになる。 

【例歌】

いたこ出じま いたこでじま

〽いたこ出じまはまこもの内に。あやめさくとはしほらしい。よいやなア〳〵。「宇治の柴ぶねはや瀬をわたる。わたしや君故登り舟。アヽよいやな〳〵。〈根本唄〉

〽花はいろ〳〵五しきに咲けど。ぬしにまさりし花はない。アヽよいやな〳〵。

〽いろも香もなき柴かる人に。はつ音きかすかほとゝぎす。アヽよいやな〳〵。

──本調子地方唄、『粋の懐』二篇(文久二年)

潮来節派生唄 いたこぶしはせいうた

〽手鍋さげうと口にはいへど、実はのりたや玉の輿。

〽わたしや出雲に取り残されて、男冥利につきたのか。

〽わけも聞かずに腹立てさんす、それは一図ぢやだまらんせ。

〽松といふ路は木篇に公よ、きみに離れて木が残る。

〽ぶたれ叩かれあへられ揉まれ、よごしにされて又つき出されては、どこで立ちましよわが身は。

〽つらい勤もお前をたより、それに邪見なことばかり。

〽心がらとはわしやいひ乍ら、ひよんな苦労をするわいな。

〽お前ばかりに苦労をさせて、わしは苦労をせぬかいな。

〽雞にうたはれ鐘にはせかれ、夜着にもたれし思案顔。

〽かくのだますといはんすけれど、わしにかかれぬ主ぢやない、

〽知恵もきりやうもないわし故に、心つくせど仇になる。

〽三味の糸さへ三筋に分る、なぜにわからぬ主の気は。

〽ぶつも叩くも叱るもおまへ、情かけるも主ばかり。

──里謡、『辰巳婦言』(式亭三馬、寛政十年)

 潮来甚句踊りの影絵演じ〔「潮来図誌〕より」

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潮来音頭 いたこおんど 

♪揃ふた揃ふたよ踊り子が揃ふた(アリヤサ)秋の川穂よりよく揃ふたシヨンガイ

♪潮来出島の真菰の中に(アリヤサ)あやめ咲くとはしほらしやシヨンガイ

♪ここは加藤洲十二の橋よ、行こか帰ろか思案橋シヨンガイ

♪向う通るは清十郎ぢや無いか、笠がよう似た清十郎笠シヨンガイ

♪主と別れて松原ゆけば、松の露やら涙やらシヨンガイ

──地方唄、近代に採集、『日本民謡大観』関東篇

[メモ] 別題「菖蒲(あやめ)踊唄その一」。江戸時代に〈よしこの〉や〈都々逸〉を生んだ二十六字歌の原形がしっかりと残されている。ここに掲出したのは優等生詞ばかりで、実際には香取・鹿島等の参詣客が羽根を伸ばす宿場でのくだけた遊び唄が多い。

いたことつちりとん

いたこ出島はさていろどころハイヤハ、ほんしやをりはしたか(ざう)(ろう)、おんばさんの小便なが小便

──替唄、明治二年流行、『いたことつちりとん』(ペラ本)

[メモ] 体裁を大きくくずしたうえ、バレ唄に変わったもの。

 

田舎唄 いなかうた

田舎風の唄。あるいは、都市から田舎へ下ってうたわれた唄。

垢抜けたところはないが、さりとて里謡のような土臭さもない、どっちつかずの詞が特色である。だが分類上の定義にはあまりこだわる必要がない。

【例歌】

いけだ

♪池田伊丹の六尺達は、昼は繩帯、なは襷、夜は綸子(りんず)の、八重まはり。

[メモ] 酒造処の六尺すなわち蔵人のいでたちをうたったもの。

 田舎浮世節 いなかうきよぶし

♪これは浮世の花尽し、花の恋地(こひぢ)を並ぶれば、十二や十三つぼみ花、むすめの十七八、花盛り。

♪水にうつるは色紅葉、流す浮名の竜田川、秋は悲しい鹿の声、時雨なみだに袖しぼる。

──地方唄、明治三十五年頃流行、『明治流行歌史』

[メモ] 借り物言葉を貼り付けたような、(みやび)心のない詞である。どこの地方ではやった唄なのかは出典に記載されてなく、同様例が量産されたようだ。

ちやんぽんぽ節 ちやんぽんぽぶし

♪せなよ働け、今年の暮は、浦の背戸から嫁が来る、ずいらずらかが(ズラカガ、ズラカガ) ちやんぽんぽ。

──地方唄、明治十五年頃流行、『明治流行歌史』

[メモ] この唄はかなり地方色が濃い。

 

伊予節 いよぶし

 伊予節は松山地方で座敷唄として伝わる古里謡である。

 文化・文政時代に、これが江戸詰めの松山藩士らにより江戸で喧伝され、俗謡化して定着した。弘化三年頃に流行の頂点を迎えたらしい。 

 元唄は「松山名所尽し」とする説が有力も、考証上の決め手にはいたっていない。当時、江戸ではやった唄が一、二年たってから国入りする例も少なくなかった。

 伊予節の場合、地元よりも江戸とくに花柳界での評判が高く、幕末から明治にかけ、仕様を変えながら何度か間欠的にはやるといった珍現象を起こしている。当然、詞の総数もおびただしく多い。

 【例歌】

松山名所尽し まつやまめいしょづくし  

〽伊予の松山名物名所、三津の朝市道後の湯、音に名高い五色ざうめん、十六日の初桜、吉田さし(もも)(せう)かきつばた、高井の里のていれぎや、むらさきゐどの片目ぶな、うすずみ桜やひのかぶら、チヨイト伊予がすり。

〽縁のかささぎ渡せる橋で、お前と二人で添ふならば、春野にいでて若菜摘むとも、かたたに出でて(しづ)(なりは)ひ、君が為ならなんのその、はたも織りそろ糸車、みやこの木の葉の月もる(ふせ)()に住めばとても、チヨイトいかならん。

──地方座敷唄、江戸後期に流行、『明治流行歌史』

いよぶし〔雑載〕

稲ほ拾ひてかりがねひとつ。「女夫(めうと)くらすは中たんぼ。「土手の夜風が。れんじもれきて。三谷(さんや)でかすかにかみぎぬた。たそやあんどの、かげくらく、たまひめあたりの(きつね)()も。ちらほらと。見えず見えず火。(ひけ)()つすぎから間夫(まぶ)のひる。きやさんせ。

あくび仕ながらかゞみに向ひ「しんきながらも一人ごと「親をうらむじや。わしやなけれども。ようもこんなにぶさゐ。くないかに夜なべに。したとてもあんまりむごいどうよくな。とりわけ。はなのひらいこと。これぢやほれてのないはづよ。是非かない。

──里謡(伊予松山)、江戸後期流行、『粋の懐』初篇

花は上野か染井の躑躅(つつじ)、けふかあすかへ日ぐらしの、思ひ込んだる狐穴かゝいろはの女郎衆に招かれて、うつら〳〵と抱いてねぎしの身がわり地蔵を横に見て、よし原五丁まわればひけ四つすぎの情夫(まぶ)の客、あがらんせ。

──流行唄、弘化三・四年ごろ流行、『はやり唄変遷史』

[メモ] この詞のものは江戸で最隆盛期にうたわれたようである。

伊予節〔再〕

五十四帖は源氏の名よせ、君に葵は常夏の、(まこと)須磨(すま)明石(あかし)がたには若紫(わかむらさき)のはづかしく、こがれこがるゝうつせみの、()くやさつきのみじか夜に、松風夢の浮橋渡るまぼろし夜半(よは)の月ほとゝぎす。

春の遊びにとる源氏かるた、初音(はつね)ゆかしき梅が枝も、花は源平咲きまじれども、すこしまけたる紅梅は、花散る()となりしゆゑ、小蝶(こてふ)は花にたはむれ、けしき夕顔の空の薄雲かげろふとくれて行く。

恋の源氏も末摘む花よ、ひらく扇は風そよぐ、ならの小川にふねの梶の葉、こがれこがるゝ(ほたる)()の、もゆる思ひはよもぎふから、山の煙はさわらびの、もしほにみをつくして人目の関屋はたそがれに忍ばんせ。

宇治の名高きせん茶の名よせ、(ゆたか)のあけぼの鷹の爪、高尾竜門花橘や、霜の花も初みどり、雪の梅とうちとけて、めざす若芽と青柳(あおやぎ)や、すえ広黄菊白菊山本山には薄もみぢ若みどり。

つづく煎茶のその名も高き、喜撰くんじゆをなすうちに、一夜(ひとや)あくれば朝日白菊ゑがほをつぐるや福寿草、ちとせことぶき屠蘇のさけ、顔もほんのり(あけぼの)か、揃ふたつまも八重がき松にかゝりし薄ゆきや宇治の里。

船で行きましやうすみた川さして、上野のけしきをみめぐりや、土手の桜の花はちらちら、流れも清き都鳥、吹けよ川かぜ流し行く、たいこ末(しや)を引きつれて、これより花のよし原ひかりかがやく夕ざくら花の里。

三筋引き出す春霞、礼者勤めの長き夜に、しうぎ長うた宝船、さかえことぶく梅の春、(かど)(おひ)せぬわかわかと、ふしも揃ひし竹のもと、常盤(ときは)の色もかはらぬ上には鶴が舞ひ遊ぶ春げしき。

色もまさりし浅草原の、宮戸(みやと)川原の南無阿弥に、かゝる四ツ手の観世音なる念仏も、聞くに馬道の今戸(いまど)山谷(さんや)は道つづき、すみだ河原に待乳山(まつちやま)鸚鵡(あふむ)石、土手の夜風で見かへり柳やこれ申しなびかんせ。

これは新川(しんかは)名酒の名よせ、強い剣菱男山、泉川には四方(よも)(たき)(すい)、白菊泡盛玉みどり、宮戸川には満願寺、七ツ梅には三国山(ごくさん)、かみやの菊に寿(ことぶき)めでたい老松養老万年酒。

縁の(かささぎ)渡せる橋で、おまへと二人でそふならば、春里(はるの)()でて若菜摘むとも、かたたに()でて(しづ)のわざ、君がためならなんのその、(はた)も織りそろ糸車、深山(みやま)の木の葉や月もる(ふせ)()に住むとてもいとやせん。

光る源氏の御幸(みゆき)のすがた、花の夕顔紅梅の、匂ひゆかしき玉かづら、初音(はつね)知らすや鶯の、君に嬉しき(たま)(づさ)は、結ぶ揚巻ふぢばかま、綾の錦は乙女の姿シヲらしく花の里。

稲穂拾うて(かり)(がね)二つ、女夫(めをと)らす中たんぼ、土手の夜風が櫺子(れんじ)もれきて、山谷でかすかに紙きぬた、たそや行灯の影ふけて、玉姫あたり狐火の、ちらちら見えつかくれつ引け四ツ過ぎから間夫(まぶ)の客あがらんせ。

──替歌、明治二年頃流行、『明治流行歌史』 

[メモ] 出典では数十連の収載を見る。こちらは伊予節でも他の承前のものとは一味ちがい、詞のほとんどが縁語結びによる名寄せが際だっている。

伊予節〔再々〕

♪堺すみよし、反橋、通る、屋の天神五大力、お元やしろや、神明穴から、大神宮サンを伏し拝み、誕生石には石をうけ、赤前だれが出て招く、ゴロ〳〵煎餅、たけ馬に、むぎわら細工に、つなぎ貝、買はしやんせ

♪まゝに逢れぬ身を持ちながら、逢へば互ひに喧嘩して、背なか合して、しばし寝入れば、金棒の音で目を覚ます、こちらむかんらなかなほり、しませむうちから、あけのかね憎らし、とても添れぬ縁なら、一所に死たいコレナモシゆりおこす

♪色はしろざけ、愛こぼれ梅、腰はほつそりやなぎかげ、わたしや味りんに、苦労紫蘇酒で、折角来たのに泡盛と、何と焼酎しやうが酒、ホンに見も世もあられ酒、その様にわたしがうるさくば、髪をおろして甘ざけと、なるわいな

♪無理に首尾して又まつち針も、主は絹針辛気らし顔もみすやはいやか、大ちやぼしらねど大ぐけしたならば、わけも菊一衿〆も、一針抜の評判(うわさ)にも、浮気と聞ばつむぎ縫い、末を案じて此胸が木綿針

♪餅が好でも喰れぬ餅は、槍持長持疝気持、太鼓餅には痛い尻もち、身持の子持の女房持、かしにもちは力持ち、提灯持にはひねりもち、砂持嬶めが焼餅、地持家持の金持は猶ほ喰へん

♪脱す羽織は嬉しいけれど、着せる悲しさ案じ越し、塞ぐ胸とは露察せずに、愚痴な一ト言主の気が、勤する身と何処までも、疑しやんすかエヽ辛気、何したら此身の辛気苦労の誠が届やら憎らしい

──替歌、明治三十七年頃に再々流行、『粋客必携新うた十八番』(赤本)

[メモ] 他にも同様の唄本が多い。同一歌でも出典により内容や流行期に差異がある。

 

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松山検番芸者の伊予節

 

因州因幡節 いんしゅういなばぶし

比較的有名な古里謡である。別題を「鬼」ともいう。明治十年になると、大阪の噺家桂文我が鬼踊りに仕立てて広め、ここからいくつものバレ唄も派生している。

【例歌】

因州因幡節

城州(ぢやうしう)都の東寺さんの。しかも羅生門のまんなかで。鬼めが三疋出逢して。先なる鬼めが青鬼で、中なる鬼めが赤鬼で。後なる鬼めがまんだらで。先なる鬼めが言ふ事にや。始めて節分に出た時にや。とらがどんの(はやし)にそやされて。目つこ鼻つこが(いたう)ござる。中なる鬼めが言ふことにや。始めて(かみなり)に落ちた時にや。腰のほねひどく折つて難波(なんば)行き。此頃ちく〳〵ようござる。後なる鬼めが言ふことにや。始めて地獄へ行た時にや。ふうづ河原のおばゝどんに。虎のかわ忘れてしかられた。

──里謡、『日本俗曲集』(江戸中期)

因州かへうた

〽因州因幡の鳥取がた、しかも大道の真ん中で、女子(をなご)に三人出合ひしが、先なる女が十六で、中なる女が十七で、あとなる女が十八で、先なる女が言ふことにや、……

──替唄、文政頃流行、『上方芸能典』

[メモ]  ……の先は書くのを憚る内容のバレ唄である。

 

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因州いなばの三人婆 *悠玄亭玉八

 

追分 おいわけ

〈追分節〉とも。里謡または民謡の一分野をさす総称。

本来「追分」は浅間山麓の往還の呼称だった。ここで賃稼ぎをした馬子衆のうたったことか ら〈追分節〉の名が付いた。したがって追分節の本場は信濃であり、次いで越後や東北、あるいは北海道の松前や江差にも点在する。

追分節は信越ならびに北日本に集中しているが、それは信濃から越後に渡り、さらに船歌として北海道入りしたためである。

注目すべきは北海追分で、北海道に移入後に独特の曲節をもつ里謡として松前追分が生まれ、江差追分を生じた。音曲愛好家のなかには、北海追分こそ洗練された追分節であり、追分節の本場であると主張する人すらいるほどである。したがって本コンテンツでは、〈北海追分〉を別し独立項目として設けた。

 いずれにせよ追分節は、民謡の書冊にくわしいので、ここでは程ほどで筆をおく。

【例歌】

追分節 おいわけぶし

〽アヽエ西は追分東は関所、せめて関所の茶屋までも。

──里謡(道中唄)、江戸後期流行、『はやり唄変遷史』

追分ぶし おいわけぶし

しのび男にみの笠着せやうぞエ、宝ならべりやなにかくそぞへ。

月はさゆれど心はさえぬエ、わしが恋路のやみぢやものエ。

──里謡(道中唄)、明治初期流行、『明治流行歌史』

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信濃追分節 しなのおいわけぶし  

♪此処はどこだと馬子衆に問へば、ここは信州中仙道。

♪一に追分二に軽井沢、三に阪本ままならぬ

♪西は追分東は関所、せめて峠の茶屋までも。

碓氷(うすひ)峠のあの風車誰を待つやらくるくると。

♪さまが来ぬ夜は雲場(くもば)の草で、刈る人もなしひとり寝る。

小諸(こもろ)出てみりや浅間(あさま)(やま)に、今朝も三筋のけむり立つ。(小諸節)

♪小諸出抜けて松原行けば、いつも三筋の糸が立つ。(小諸節)

♪浅間山さんなぜ焼けシヤンす、裾にお十六持ちながら。

 *「お十六」とは三宿(三四九)の語呂合わせ。

♪浅間山から鬼や(きつ)()いて出て、ごたいしやう()れるやうな屁を垂れた。

♪浅間山から鬼や出たものを、今は世が世で女郎(じよろ)が出る。

♪浅間()(ごし)の小砂利の中で、あやめ咲くとはしほらしや。

♪浅間山から出てくる水は、雨も降らぬにささ濁り。

♪浅間押せ押せ六里が原を、押せば追分近くなる。

坂城(さかき)や照る照る追分曇る、花の松代(まつしろ)雨が降る。

♪上田おんくれ坂城ぢやおくれ、なぜか松代くだしかれ。

 天気よければ松代様の、ときの太鼓の音のよさ。

──里謡(道中唄)、明治二十年代流行『明治流行歌史』

[メモ] 初期追分節からの派生唄雑載である。

越後追分節 えちごおいわけぶし

♪傘を手に持ち何方(どなた)もさらば、えかいお世話になりました。

♪さらばといふ間にはや森の蔭、かすかに見ゆるは(すげ)の笠。

♪船の船頭とつばくらどりは、いつも春出て秋もどる。

──里謡(道中唄)、明治二十年代流行、『明治流行歌史』

追分節〔雑載〕 おいわけぶし/ざっさい

♪碓氷峠の権現様よ、私が為めには守り神、スイ、来たか長さん待つてほい、お前ばかりが可愛(かはゆ)うて、朝越なろかいなあ。

♪鳥も通はぬ八丈が島へ、新内やらるゝ此の身は厭はねど、あとに残りし妻や子は、「まあどうして月日を送るやら。

♪五里も三里も山坂越えて、逢ひに来たもの帰さりよか。

♪これを片手に皆様さらば、長のお世話になりました。

♪やませ風、わかれの風だよ、あきらめさんせ、又いつ逢ふやら逢はぬやら。

──里謡、明治二十年代に収録、『明治年間流行唄』

♪しのび男にみの笠着せやうぞエ、宝ならべりやなにかくそぞへ。

♪月はさゆれど心はさえぬエ、わしが恋路のやみぢやものエ。

──同上、『明治流行歌史』

[メモ] 地域区分が明記されていない分である。たぶん東京で真似て作られ、はやったものも少なくないはずである。

 

おけさ 

新潟県の代表的な盆踊り民謡。「佐渡おけさ」が有名である。

発祥は諸説に紛れ、元は奴唄とも怪猫伝説とも、あるいは音羽前(おとわのまえ)が広めた、いや桶屋佐助に由来するなどといわれている。

【例歌】

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出雲崎おけさ いずもざきおけさ     出雲崎友壽会

♪来いとゆたとて行かりよか佐渡へよ(ハ、アリヤサ、ヨイトヨイト) 佐渡は四十九里ヤーレ波の上

♪おけさ踊りと磯打つ波はヨ、いつも心がヤーレ波の上(ハ、アリヤサ、ヨイトヨイト)

♪鉢崎、柿崎、柏崎、(しも)へくだりて出雲崎、新潟の下は松ヶ崎、松前鰊、佐渡若布、五十嵐ほしこは砂まじ

♪こぼれ松葉を手に掻き寄せて、とのの御飯を炊いて待つ(ハ、アリヤサ、ヨイトヨイト)

♪下もは下もげて、上みは上だり、沖はおつけでへた嵐、あの船この燗へ入れたなら、定めし出雲崎問屋が繁昌しようがね

(やま)()風では高帆をもつな、風に情はないわいな(ハ、アリヤサ、ヨイトヨイト)

♪瓢箪ばかりが浮物か、石見の鉄でも浮かせりや浮きます、出雲崎おけさは三味や太鼓で浮かせりや浮きます、私の心も浮かれ出す

──民謡、昭和初期まで伝承、『日本民謡大観』中部(北陸)

おけさ節〔雑載〕 おけさぶし/ざっさい

おけさエーヤおけさ見るとて(よし)で目をついたヨウ、とかくおけさはヤアレ目の毒じや

おけさそれそれ差し櫛落ちるよ、落ちてすたりよと手に取らぬ。

こいといふたとて往かりよか佐渡へ、佐渡は四十五里波の道。

山でけつからがした松の木ごろたの()でも、妻と定まりや辛抱する。

それそれそれがやめらりよかの、やめりや世間の笑ひ草。

主のかんしやく日頃のやまひ、それを苦にするわしじやない。

来いといふたとて、ふた子に抱いた子、這ふ子に三つなるの子に、駒下駄はかして重箱もたして徳利もたして、前坂(まへさか)のそばやへゆかりよか佐渡へ。

なんでもかんでもしてもらはねばならぬ、めくりたてたる屋根普請。

よしやれはなしやれしころが切れる、しころきれてもわしや切れぬ。

おけさ踊らば板の間に踊れ、唄はどんちやん三味線(さみ)いらぬ。

しよんできたよ梅干に紫蘇の葉、なかの種までよくしよんだ。

山にねんねこせば木の根が枕、落つる木の葉が夜着布団。

盆の十三日が二度あるならば、親の墓所(はかしよ)へ二度まいる。

胸に千把のかやたくとても、煙上げねば人知らぬ。

切りし前髪淡島様へ、あげて願ひは主のため。

おけさ見るとてよしで目をついた、よしはなまよし目の毒だ。

唄は謡ひよだ仕事は仕事だ、臼はおとなのまはしよだ。

おらが若い時弥彦山(やひこやま)かづいだ、今は年がいて、ちよこらちよいとかつがんない。

烏猫ねこおのれの(まなこ)(きん)まる円くて光りがつよい、それじやなければコネラ鼠がとられない。

おけさ踊らば板の間で踊れ、板の響で三()やいらぬ。

姑かんなりさま稲妻小姑、嫁がさつきで雨となる。

姑婆様がなぜにくかろば、とのさそだてた親じやもの。

おけさ踊と磯うつ波は、いつも心がいそいそと。

おらが殿様つきかた生れの獅子の子育ち、三間梯子の天井へ登りて、のしたりそしたりあぶなへけれども商売ならどうしよばいの、それでなければ五人家内の女房子供がソーレすぐされぬ。

──里謡、近代に採録、『明治流行歌史』

 

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佐渡おけさ *立浪会

 

踊り唄 おどりうた

〈舞踊歌〉とも。

不特定多数の群集で踊る「盆踊り唄」、粋どころが披露する「風流踊り」の二系統を柱に、踊りに合わせて小歌から歌舞伎歌謡までさまざまな種類がある。

地方に残る民謡踊り歌の場合も、多くはかつて都市で流行した後、地方へと流れ伝わり定着したものである。ここでは冷夏をおおめに上げて、〈踊り歌〉の種類の豊富さを示してみよう。

【例歌】

さんがらが踊 さんがらおどり

〽荒い風にもようやよやよ、当てまい様を、()ろか信濃の雪国へ、さあささんがらが、川ぢやざんざら柳のよいやさ、しろがね〳〵、よい手は〳〵こまの膝ぶしんがらが〳〵信濃へ遣ろか、遣ろか信濃の雪国へ、さあささんがらが。

──二上り踊り唄、『松の落葉』巻四・古来中興踊歌百番(宝永七年印本)

まん丸踊 まんまるおどり

真丸(まんまる)ござれ〳〵、十五夜の月の輪の如く、はり〳〵輪の如く、よいとんなとん〳〵、十五夜の夜さり〳〵綱挽(つなひき)女郎にうつ惚れた、まん〳〵丸やの七左が手管(てくだ)は合点か、おしつけ押へてやら可愛(かはい)のみ船や、でかした〳〵これさ。

──二上り踊り唄、『松の落葉』巻四・古来中興踊歌百番(宝永七年印本)

江戸小町踊唄 えどこまちおどりうた

〽ぽん〳〵ぽんは今日明日ばかり、

明日(あした)は嫁のしほれ草〳〵

向ふのお山の角力取草を、

ゑんやらやつと引けば御手てが切れる、

おてゝの切れたに御薬やないか、

お若衆さまのお手ぐすり

──踊り唄、江戸後期見聞、『わすれのこり』上

[メモ] 七夕に少女らが町を踊り歌いながら練り歩いた、という。

さつまをどり

月の八日はお薬師様よ、薬師まゐりのあるその中で、ちらとみそめし大振袖よ、どうであの子にや忍ばにやならぬ、忍びそこねたもしその時は、長い刀できらりよウとままよ、サマテンレツサマテンレツ

内のかか見てよそのかか見れば、立てば引臼すはれば牡丹餅(ぼたもち)、あるく姿は(なべ)(ぶた)の化物、サマテンレツテンレツ、せけせけせけせけとんがらし、一貫三百十しんまい、これしこ出してもまだ☓☓ない、糠に釘打ちやお前の意見、豆腐に(かすがひ)しよらがなア、せけばつたのばうしはり、どゝいがどんならどどんがどん、サマテンレツテンレツ

──踊り唄、維新期流行、『明治流行歌史』

太閤踊 たいこうおどり

〽からと日本へ名をあげし、さらば太閤秀吉の、由緒をこゝにしらぶれば、国は尾張の中村に、築阿弥弥一といふ猟師、妻が日吉の権現へ、立願こめて懐胎し、程なく男子を生みにけり。その名をなづけて日吉丸、育て上げたる八つのとき、寺へやれども、経読まず。夏は水あび子守唄。(一志郡)

──踊り唄、流行期未詳、『日本歌謡集成』第十二巻

盆踊り唄〔東京都板橋区〕 ぼんおどりうた

盆のナア十三日に踊らぬものは、木仏金仏ヤレサヨウ石仏(ハ、ヨイヨイト)

諷ひなされよお諷ひなされ、唄ぢや御器量は下りやせぬ

踊をどるなら品よくをどれ、品のよいのを嫁にする

揃ふた揃ふた踊子揃ふた、稲の出穂よりよく揃ふた

伊勢は津で持つ津は伊勢で持つ、尾張名古屋は城で持つ

──東京都板橋区下赤塚の伝承盆踊り唄『日本民謡大観』関東篇

 

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時代祭「風流踊り」 

見踊り *上原敏・新橋喜代三

日向橘「ひょっとこ踊り」 *日向橘ひょっとこ踊り保存会

 

踊り口説 おどりくどき

踊りに合わせ作った口説節、すなわち叙事詩的物語。

河内音頭・江州音頭・八木節などの民謡がよく知られている。全国的には京都の祇園踊りが華やかで有名である。

上方古典では江戸初期の『道念節』はじめ明暦頃からの作が『落葉集』『万歳躍』などの集に見られる。

【例歌】

けいせいをどりうた 

〽戯れ遊べ世の中は、恋と濡れとの色競べ、何れを春とわけなまじ、色の山路(やまぢ)のわけよい(ふう)の、蝉折ひつこきたてかけなどに、お江戸元結を巻きたて〳〵、くる〳〵〳〵と廓羽織の、はつは大小つかみ差し、一振り振つた風俗は、如何な女郎衆も張り強い、すんとした心、春の泡雪打融けて、(ながれ)物憂き起臥(おきふし)も、間夫の男を浮か〳〵と、思ひまゐらせ(1文字不明)べく〓(1文字不明)の、文を遣手の目を忍ぶ夜の、はや四つ門のうつゝにも、しん気かわいでよい気で暮す、恋よ来い〳〵、銚子盃(いら)ち酒、酒の勢和泉の国に、隠れ御座らぬ大十郎様は、好いた男の、水の垂るやうな濡れ人様と、思ひ付く日がはや地均(ぢなら)しで、胸はだく〳〵八人づきの、石をつく〳〵月夜に釜の、抜けて行く程いとしさ勝る、そこで遣手が目の鞘外し、付いて居るから是四も五もくはぬ、二階三階追上げられて、どうでかうなる階子(はしご)を引けと、上りつめたる心中故に、元の廓の憂きふし勤め、今は身請と敬つて申し、奉るの、いろは根本(こんぽん)太夫職、扨ては天職姿なり、先づ江口の始めより、君といふ字を書き初めて、世々の末にはよねとよみ替へ、僭上大尽、閨の(とぼそ)にひき籠り、常闇の夜見世となりけるを、八百万の末社たち、おろせが宿にて是を嘆き、神楽を以て、文作(もんさく)袖を翻へせば、又常闇の気も晴れて、灯火(ともしび)光り輝けり、此の大国(おほくに)の君たちに、替らで通ふ人々に、来るまじきはあゝぐるしの災難は、崇りをなすとも今よりは、諸客は成就揚屋は満足、全盛と敬つて申す。

──踊り口説、江戸初期(元禄期?)流行、『落葉集』

 

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河内音頭 *河内家菊水丸

 

おばこ節〔秋田県〕 おばこぶし

正式には〈秋田おばこ〉という。山形の「庄内おばこ」と別するためである。

これの古謡は芝居唄であり、明治に入ると出羽出身の美術学校生等が広めたという。このため替歌・くずし等も包括して〈おばこ節〉という総称を用いるようになった。明治四十二年、この唄が古歌謡「催馬楽」の系統である云々が論議され、時の歌謡界を賑わした。

 ともあれ、おばこ節からは替歌やくずしがいくつも生まれ、さらなる俗謡化の人気の高さを物語っている。 

【例歌】

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秋田おばこ あきたおばこ      酒井千恵子唄

♪おばこナ なんぼになる

この年暮らせば十と七つ

ハ オイサカサッサ オバコダオバコダ

(以下囃子略)

♪十七ナ おばこなど

何しに花コなど咲かねとな

♪咲けばナ 実もなる

咲かねば日かげの色もみじ

♪おばこナ どこさ行く

後ろの小沢コさ ほんなコ折りに

♪すこしナ さわるときゃ

 ころころころんで側による

──民謡、伝承により現行、『日本民謡全集』2

をばこ節くずし おばこぶし/くずし

をばこア居エだがやアとウ、なんがしの、さまこウから(のぞ)いて見イだア、ああヲバコデヲバコデ、をばこア居もせエでエ隣の婆々(ばば)さがア糸ウうウみだア、ああヲバコデヲバコデ、いどはアなアにイいど、かわい男のゆきばアかまア。

をばこなんぼになる、この年暮せば、をばこ十七だ、十七、河原の雪解(ゆきつろ)、水がでて、をばこ止たどさア。

をばこアどこさ行く、後の小沢コに、山菜(ほな)コ採りに、ほなコア、若いとて、こだすおろして、沢形(さはなり)に。

をばこアなぼになる、この年くらせは十と七つ、十七をばこなら、なぜまだ花コでも咲かねとなア、咲くは咲けども、山吹のよでみがならぬ。

をばこなんぼになる、此年送れば花の十七、十七をばこで、なぜに花が咲かねとなア、咲けば実もなる日かげのもみぢコでア、色づかぬ。

 ♪ をばこ、田圃に、草刈に、昼寝をる、秋田の、臘夫(またぎ)どの、くまこ、めけた、やり

  こ、のべた、おまへ何をする。

そのひるま、をばこ、しやうばいだも、くまこ、めけば、(たと)ひ、秋田の、またぎとて、この熊、せめてせでならないぞや。

をばこ、心持ア、池の中の、蓮のはの、溜り水、少し、さわると、ころころころりやと、転んで来ウる。

をばこア、作つた酒ア、濁り酒の甘いので、砂糖しんこ、何ぼ下戸でも、をばこさへ酌に出れば、三杯のむ。

をばこ、此中ア、見えない、ねてでもいたかやと、あんじてたア、ねてもゐもせず、親だちアきびしくて籠の鳥。

をばこ来るかやとたんぼのはづれまで出て見たば、をばこ来もせず、蛍の虫こなど飛んで来る。

をばこア、なンぼになる、此年くらすとて十七よ、十七八になて、花の咲く盛りだが、なして咲かぬ。

 

をばこ心持や池の端の蓮の葉の溜り水、少し解けるで、ころりころり転んで直落(そまお)ぢる、コバエデコバエデ。

 

をばこア、来るかアと田圃の外れまで出てみたば、をばこ来もせで用の無い莨売(たばこうり)なんど()れて来る、コバエデコバエデ

をばこなぜか来ウね、風こでも、引いだがやと案じられる、風も引かねども、(ゆき)(はの)の水が出て、渡り止つた。

──民謡くずし、明治四十年頃流行、『明治流行歌史』

 

音頭 おんど

人々が集まって共にうたい踊る歌謡を広く〈音頭〉といっている。古くは雅楽専用の用語であった。

俗に「音頭をとる」などといっているように、木遣など何人もの人が作業をする場合、音頭とりが一人いて唄の一節(ときには囃子)をうたい、曳き子らがそれに唱和しながら拍子を整え作業を進める。この仕様が歌謡ことに民謡に広まり、通俗的な音頭という言葉に意味が膨らんだ。「伊勢音頭」「東京音頭」など地名を冠したものが多い。

 東京音頭の楽譜〔新興音楽出版社刊、昭和八年〕

【例歌】

からくり的 からくりまと

〽おもしろや、人のゆきゝのけしきにて、世はみな花のさかりとも、まとのちがはぬほしかぶと「先がけしたるむしや一騎ぎやう〳〵敷も出たばかり、そりやうごかぬはひけやとて、かのねんりきにあらはれし、れいのかねまきどうじやうじ「いのらぬものゝふわ〳〵となんぼうおかしい物がたりそれは娘気これはまた、くるわをぬけたほうかぶり、おやまのあとの色をとこ立どまりてはあぶなもの見つけられたらあわ雪の「うき名もきえてもとの水ながれくむ身にあらねども「変るつとめの大鳥毛、だいがさたてがさ、はさみばこみな一様にふり(いだ)す列をみださぬはりひぢの「かたいはげにもつくりつけ、さてそのつぎは鬼の手の、ぬつと出したは見る人のかさつかむかと思はるゝそれをわらひの手びやうしに「きりきやうげんはさがり蜘、うらよし日よしみちしるべよいことばかりえ。

──本調子地歌(音頭物)、『新大成糸のしるべ』(享和元年)

[メモ] 伊勢音頭の同題曲を地歌に直したもので、伊勢古市の花街で繁盛した機関(からくり)屋に材を取る。音頭らしい風は消え去っている。

新みやこ節 しんみやこぶし       武石一羊詞

♪高くそびゆる浅草十二階、下にやハイカラがねあなたちよいと〳〵、したにやハイカラがちよいと〳〵まねく、まねく(ハンド)にねあなた、まねく(ハンド)にやそれ針がある、(しか)もそうじやないかねあなたちよいと〳〵。

薬缶頭(やくわんあたま)惚話(のろけ)を聞けば、ほんにお(へそ)がねあなたちよいと〳〵、ほんにお臍がやれそれ茶をわかす、(しか)もそうじやないかねあなたちよいと〳〵。

──流行節、大正二年頃流行、『はやり唄変遷史』

 

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あやめ音頭

おじゃれ節 *久保幸江

お杉音頭

祇園音頭 *新橋 喜代三

熊谷囃子 

黒船音頭 *伊豆下田の黒船祭

甲州音頭 *甲州芸妓連

サラリーマンの唄 *藤山一郎

南部音頭 

福知山音頭 *堺屋席なべ 

真室川音頭 *三浦正子

歳音頭 東京 市松・横田良一

福島音頭 *藤本二三吉

みなと音頭 *幾松

流行音頭集 *和洋合奏

 

川崎踊り唄 かわさきおどりふた

〈伊勢音頭〉に同じ。伊勢古市の川崎から起きたのでこの名がある。

別に岐阜県郡上(ぐじよう)八幡(はちまん)にも同じ曲名「川崎」の盆踊り唄があるので、混同しないように。

【例歌】

川崎踊の音頭 かわさきおどりのおんど

〽はるばると、きつゝなれにし花笠や、ついの小袖についの帯、姿うつくし旅の空。

(せき)清水(しみず)にかげうつす、水に鏡はつつゐづつ、ふりわけ髪も程すぎて、夜毎(よごと)夜毎の通ひ()に。

(たび)かさなれば現はるゝ、阿漕が浦で引く網は、(うた)にもあらで馬子節に、気も晴れ渡る(くも)出川(でがは)

(かささぎ)ならぬ橋かけて、香良州(からす)の宮を伏し拝み、ぬしの(ねが)ひは星合(ほしあひ)、夜の仰せと祈りつゝ、袖岡山(そでをかやま)のしづくほど、袖にながるゝ涙川、()をつくしては()(わたり)の。

〽あさみち潮のからき世に、あたるは的のからくりに、どつと笑ひを催して、旅の疲れを忘井(わすれゐ)の、うつむく姿ひめ百合。

若紫(わかむらさき)のかきつばた、つゆのやどりは松坂の、夕日まばゆき出女(でをんな)の、ぎやうぎやうしくも袖ひけば、男心のうつる(かど)

〽りんきの角は鬼あざみ、とこの口説(くぜつ)芍薬(しやくやく)と、ぴんとはねればはねかへす、みだれ(すすき)女郎花(をみなへし)、とみるも色かそれなりに、ふけては露ところび寝。

〽互ひにかはすひぢ枕、ぬれて解いたるしたてもの、むすぶ契りもはやあけて、叩く水鶏(くひな)に起されて、やんすあんすの廓詞(さとことば)、又のおいでを待ち兼ねる、見送るかどに賑かな、夜はおもしろのえゝ草枕。

──伊勢音頭の雑載、幕末・明治流行、『明治流行歌史』

 

木遣節 きやりぶし

〈木遣唄〉〈木遣音頭〉とも。〈鎌倉節〉から派生した労作唄が音頭に転化し民謡化を一段と強めた。

いわば音頭とりが全体の力を結束させるための指揮の歌謡である。力仕事向けに曲詞は野卑でざっくばらんなのが特徴。いくつかあるうち、江戸木遣が最もよく知られている。

【例歌】

医者くどき木やり いしゃくどききやり

♪えいややさら〳〵や さら〳〵さつとそびきだいた大病のやまひぢやか 病は三十三色 ねたるは三年三月ぢや 腹が癇気で虫気で腹気で痰気でうつけでたわけで腰が抜けてのほんほゝ なんでも是は能うなるまい 脉を取つて見れば あたまの虫が千疋 腹の虫が千疋 背中の虫が千疋 三千疋の虫どもが 寄合ひ談合評定で 朝食前から夕食前まで 虫をつゝき散らかいて のつつそつつのやまひぢやないかいな 御典薬の道三に竹庵にさかひの卜養渡部玄吾(ゲンゴ)に はぎの春庵道永道竹竹斎なんどが にいらにびりゝにえにかうる 耆婆が万病円に大師の作のあかがり膏薬へいさらば さらにさら〳〵と申すとも なんでも是はくたばるべい こち方は存ぜぬ事 余方をかせいで心静かに療治をめされよ おひかけ中の綱ゑ。

──座敷小唄、延宝四年成、『淋敷座之慰』

[メモ] 出典の頭書に「はやり小うた」とあり、「通盛くどき木やり」「西行くどき木やり」など一連のくどきものが続く。

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江戸木遣〔伝承〕 えどきやり/でんしょう 平成25年神幸祭

その一 君が代

〽君が代は、千代に八千代にさゞれ石の、巌となりて、苔の蒸すまで

   その二 真 鶴

音頭「ヨーイヤリヨー 合唱「ヱーン

   その三 手 古

〽ホイヤー手古セー、エー、イエー、エーホイヤネー、イエー、ホイヤネー

   その四 駅 路

〽アレ花のアイエー御江戸のイヨー日本橋「サア、ハレワイセー「槍を振り出す品川 「イエー品川 「エイエー、振り出す槍をサ、槍を振り出す品川イエー

   その五 那須野甚句

〽ヨイサテ、ハアヨイサテ、サテこれから 「イエー其所でセー「さらばエー「これからイヤーやりかけイエーませうヨ「ヤアきつとセー「ヨイヤナ、ハリヤリヤ、コリヤリヤ、コノヤレサテセ、「国を申さば下野の国、那須与一の誉れの次第(クドキ以下略)

その六 端追掛

〽イーイー、ヤレヨー追掛、中の綱イエー声をかけエーろエ、ヨイ

   その七 東 金

〽東金のナアエ、ナンエーそりや何もせ、ソリヤ茂右衛門が背戸でナアエ、イエー「何でもせ、ソリヤ茂右衛門アー背戸でエノ背戸で鴉が啼くナンエ、エイエーホンエー(何と云ふて啼くナンエーそりや何でもせソリヤ茂右衛門ガア妻のナンエー、イエー「エー何でもせ、ソリヤ茂右衛門が妻の小嫁こひしとナンエー、エイエー、ホンニエー

   その八 大木遣

〽梅は匂ひよ「ヤレコラナー「桜は「花よ「ヨーイ、ヨーイヨー「人はエー、エー、みめより「ヤレーサツサノウ、ドツコイヨーイトーただ心、さき綱ヤーエーヤー、ハレサノエー、ハレワサノエー、ハレワサノエー

──木遣節(祝物)、近代まで伝承

『日本民謡大観』関東篇

[メモ]  原曲名は鎌倉節の一で、同地の木遣師の里謡労作唄「鎌倉の御所の御庭の庄屋さんの娘」という長い題をもつ。詩の面白さから江戸木遣で採られるようになった。

 なお〈江戸木遣〉は数多くの類歌や変成唄が伝えられているが、掲出のものは最も信頼性が高いと思われる。

木遣節変り きやりぶしかわ

本町二丁目のナア、ヨイサ、本町二丁目のナア、よいさ、本町二丁目の糸屋の娘、ヤレコリヤ、姉は二十一ナア、ヨイサ、姉は二十一(いもと)は二十、ヤレコリヤ、諸国お大名はナア、よいさ、諸国お大名は弓矢で殺す、ヤレコリヤ、糸屋娘はナア、ヨイサ、糸屋娘は目で殺す、ヤレコリヤ。

本町二丁目のナア、ヨイコノ、本町二丁目の糸屋の娘、ヤレコノ、姉が二十一ナア、ヨイコノ、妹ガ二十ヤレコノ 、妹ほしさにナア、ヨイコノ、妹ほしさに御立願(ごりつぐわん)かけてヤレコノ、御伊勢七度ナアヨイコノ、御伊勢七度、熊野へ三度ヤレコノ、芝の愛宕(あたご)さんへは月参り、ヤレコリヤ。

──流行唄、幕末から近代に流行、『明治流行歌史』

木遣節替え 

浅草公園の()茶屋(ぢやや)の娘の小万は、花紅葉(もみぢ)か花なれば、一枝折りたやえんやらさやういさ〳〵、ゑんやらやれこのさ、はしもせへ、これをもせ、ゑんやらよ。

──流行唄、万円・文久頃流行、『はやり唄変遷史』

木遣くずし 

格子作りに御神灯を下げて、兄貴や家かと姉御に問へば、兄貴や二階で木遣りの稽古、音頭取るのは、ありやうちの人、エンヤラサ、サノヨーイヤサ、エンヤラ、ヤレコノセー、サノセ、アレワセー、エンヤラサ

──流行唄、幕末から近代に流行、『上方演芸辞典』

 

雲助唄 くもすけうた

里謡の一種。

江戸時代、参勤交代の諸侯に随伴する街道雲助らがうたった往来歌である。これが駕篭かき連に伝播し、さらに又聞きした農民らの間に定着し祝儀唄などに分岐した。山々にこだまするような、間延びした節回しが特徴である。 

【例歌】

雲助唄 

あいがなあーとほけりや、おまへとなー、ならぬなー、今はなー、うれしのなー、軒ならびなー。

──往来唄、天保頃流行、『御笑草諸国の歌』

雲助唄〔伝承〕 

♪信州信濃の新蕎麦よりも、わたしやお前さんのそばがよい

♪お前とならば何所までも、さいかちばらのなかまでも

──往来唄、近代に採取、『日本民謡大観』関東篇

 雲助と駕籠 東海道元箱根〔長﨑大学付属図書館蔵〕

 

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箱根馬子唄 *江村貞悟

 

黒田節 くろだぶし

全国的に有名な民謡。

雅楽の「越天(えてん)(らく)」という管弦平調に借曲し、元は「筑前今様」という名の里謡であった。第一節、武士との音通洒落を利かせている。第二節は、今ではうたわれることがめったになくなった。

【例歌】

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黒田節 赤坂小梅 

酒は飲め飲め飲むならば 日の本一のこの槍を 飲みとるほどに飲むならば これぞまことの黒田武士

(すめら)御国(みくに)武士(もののふ)は いかなる事をか勤むべき ただ身に持てる真心を 君と親とに尽くすまで

──酒席唄、伝承により現行、『日本民謡大観』九州・琉球篇

 

巷謡 こうよう

〈巷歌〉にほぼ同じも、土佐の地方歌を指す通称でもある。

【例歌】

まきが島〔扇の手五章〕 まきがしま

まきが島へもいてみたが、ひるは布つく布さらす、よさりはとのごにひまもらう。

わしは酒屋の酒ぼそよ、中をいはれてかどにたつ。

わしは酒屋のさかびしやく、昼はひまないよさござれ。

わしは酒屋の一つをけ、中のよいのは人は知らぬ。

わしは備前屋のさびがたな、おもひなほして研ぎなほせ。

──巷歌、『巷謡篇』(江戸後期)

 

木挽唄 こびきうた

労作唄の一つで、伐採した立木大鋸で挽く作業のときにうたう唄。

単調になりがちな作業に耐えるため考え出された。全国の山林に異種の歌謡があり、歌詞もまちまちだが、比較的短いものである。

【例歌】

木挽唄〔広島県〕 こびきうた 

やあれ何の因果で木挽にや生まれよオ、シツシヽシ、是もちさい時から山家育ちよー、すりんごばつさぬうぼさがつて食ふ程無いわい。(広島市)

娘よい子持ちや千里でも響く、寺の半鐘の釣鐘か。

腹が立つ時や、茶碗で酒を、飲んで暫く眠りやなほる。(御調郡)

──労作唄、近代に採録、&『日本歌謡集成』第十二巻

 

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秩父木挽唄 *小沢千月

日向木挽唄

吉野木挽唄

 

小町踊り唄 こまちおどりうた

七夕頃の宵、少女等が着飾って輪をつくり踊るさい唱和する盆唄を総じて〈小町踊り唄〉という。

京阪では〈おんごく〉がこれに相当する。

【例歌】

江戸の小町踊り唄 えどのこまちおどりうた 

♪ぼん〳〵ぼんはきょうあすばかり、

明日(あした)は嫁のしほれ草〳〵

向うのお山の角力取草を、

ゑんやらやツと引けばお手てが切れる、

おてゝの切れたに御薬やないか、

御若衆さまのお手ぐすり

──盆踊り唄、採録年代未詳、『わすれのこり』上(四壁庵茂蔦筆)

 

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祇園祭小町踊り *八坂神社

 

小室節 こむろぶし

旧里謡の明治になってからの復古版。『守貞謾稿』巻二十三によると、

「文政中、山王祭礼に日本橋通り町より

葛籠馬(つづらうま)を出せしことあり、その時、馬士(まご)

扮する者、島織の手巾をかむり、長き袖な

し羽折着し、これを唄ふと云へり」

とある。これが明治に入り、例歌に見るように再び脚光を浴びるようになった。

【例歌】

小室節 こむろぶし   

♪箱根なア、八里は、やれ〳〵い、馬でも越すがよう、越すに越されぬ、やれ〳〵い、大井川よう。

♪阪は照る〳〵鈴鹿は曇る、あいの土山雨が降る。

♪箱根なア、箱根番所で、やれ〳〵い、帯とけ〳〵とよう、抱いてなア、抱いて寝る気か、やれ〳〵い、関の(とが)よう。

♪五万石でもナア、五万石でも、やれ〳〵い、岡崎の殿はよう、城の下まで、やれ〳〵い、船がつくよう。

──流行唄、明治二十年代流行『明治年間流行唄』

在郷唄 ざいごううた

〈ざいご〉とも。次の二義がある。

⑴ 歌舞伎や寄席で行われる下座音楽。

⑵ 田舎の人物や場面などを材料に作った唄で、〈田舎唄〉のこと。

 いずれも形が異なるため、詞の内容をよく吟味して使い分ける必要がある。次の例歌は二つとも⑵の例。 

 【例歌】

ざいごう景色 ざいごうけしき

梅のさかりはざいごうもにほふ、うしのせにまでうつりがのせて、のせてくる〳〵、うすのかよひの風もあり「やぶをひきだすろかいのおとに、きゞすなきたつ、のきばもちかし、すだれもやうのかほにうつろふ、けしやうどころのあさひかげ、こひしがられて住む日もあるに、こゝは「とがのにてうめのむすめ、あぶらさとろとろつけてくしまでつけてくしのひかりでよをあかす「とろ〳〵つけて、くしのひかりで、よをあかす。

──本調子端歌、『新大成糸のしらべ』(享和元年)

ざいごうた 

豆つんで。小むぎつんで。お手にまめが九ツ。こゝのつの豆をとろとて。嫁の在処はこゝかへ。

宇治は茶どころ。茶はゑんどころ。むすめやりたやむこほしや。

──上方唄、『粋の懐』四篇(文久二年)

 

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ひえつき節

鄙 哥 *本條秀太郎

 

作業唄 さぎょううた

〈労作唄〉とも。初作業のさいうたわれる労働歌。

 この民謡のカテゴリーには農作業、漁労、建設工事から女工などに及ぶ幅広い分野が含まれる。

 

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いかとり唄 *本條秀太郎

木曽節 *高槻郷土民謡まつりにて

 

さんさ時雨 さんさしぐれ

発祥は仙台も宮城・岩手・福島三県にわたり行われている里謡(祝儀唄)

伊達政宗が口ずさんだのを家臣が広めたとか、福島の座頭や瞽女(ごぜ)らが仙台に入り普及させたとか、由来説は分かれている。

「しょうがいな」の賑々しく勇ましい囃子が特徴だが、今も花柳街で広く歌われている。 

【例歌】

さんさ時雨 さんさしぐれしようかいな

さんさ時雨か萱野(かやの)の雨か、音もせで来て濡れかくる。(本唄)

これのざしきから松植ゑてよ、心のみどりは皆こがね、しよふかいな。

のめや大黒うたへやゑびす、中でしやくとるうかの神、しよふかいな。

武蔵(あぶみ)(むらさき)手綱(たづな)、乗せてやりたやどこまでも、しよふかいな。

──流行唄、明治二十八年頃流行、『明治流行歌史』

そさま百まで、わしや九十九まで、共に白髪の生えるまで、シヨウガイナ。

さんさふれ〳〵、五尺の袖を、こよひたらいで何時の世に、シヨウガイナ。

──流行唄、明治二十八年頃流行、『明治年間流行唄』

 

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さんさ時雨(派生唄雑載)

 

獅子舞唄 ししまいうた

獅子に扮した舞につく風流踊り唄。

何頭もの獅子が揃って華々しく舞い踊り、祭囃子混じりで民謡等も繰り出される。

【例歌】

獅子舞〔石川県〕 ししまい

伊勢のたゆーさま、ヨーンヨイ、春出てござれ、ヨーンヨイ、春は日も好し、ヨーンヨイ、サア日も永いー、サーレバヤツトコセーエ、ヨーイヤナー、アリヤリヤン、コレハノセ、ヤツトコセーエ、アリヤリヤン、コレハノセ、サーナンデモシヨー。(河北郡)

──里謡、近代に採録、『俚謡集拾遺』

 

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入曽の獅子舞 うた *金剛院(埼玉県狭山市南入曽)

備前太鼓獅子舞

 

 

常磐炭坑節〔茨城県〕じょうばんたんこうぶし

今では廃坑になっている常磐炭鉱の鉱山唄。一民謡にとどまらず、酒席唄を通して、やがて戦後も全国的に広がる俗謡になった。

【例歌】

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常磐炭坑節 鈴木正夫

ハアー 朝の六時からヨー カンテラさげてない ハ ヤロ ヤッタナイ 

 坑内通いもヨー ドント主のためナイ ハヤロ ヤッタナイ

縦坑三千尺下れば地獄 死ねば廃坑の土となる

発破(はつぱ)ければ切羽(きりは)が残る 残る切羽が(かね)となる

娘よう聞け坑夫の(かか)は 岩がドンと来りゃ若後家よ

だみね山から飛んでくる(からす) 金もないのにカオカオと

坑夫さんにはどこがよくて惚れた 飯場(はんば)通いの程のよさ

おらが炭坑で見せたいものは 男純情とよい女子(おなご)

向う通るは坑夫さんじゃないか (かね)がこぼれる袂から

──民謡、近代成現行、『日本民衆詩集』

[メモ] この有名歌の作詞者は未詳であり、鉱夫の作か。

 

諸国盆踊唱歌 しょこくぼんおどりしょうか

寛文年間に後水尾院が勅撰した盆踊り唄の集成本。文政六年に柳亭種彦が再撰している。例歌はその冒頭部からの抄出である。 

【例歌 

山城(二十五歌)

〽めでた〳〵のわかまつさまよ、えだもさかえてはもしげる。

ことし御しやうらくうへさまはんじやう、はなのみやこはなほはんじよ。

ござるその夜はいとひはせねど、くるがつればうきなたつ。

大和(二十六歌)

としたちかへる春なれや、木のめもめだつ花もさく。

梅と桜と吉野へいたら、梅はすいとてもどされた。

わかいせなごのぐわんかけるのは、神やほとけもをかしかろ。

河内(二十五歌)

山家なれども我ふるさとは、しばのいほりもなつかしや。

おもしろいぞやいまさくはなは、のちのちりばはしらねども。

あきもあかれもせぬ中なれど、いとまやりますおやゆゑに。

摂津(二十二歌)

ことし世がよふてほにほがさいて、とのも百姓もうれしかろ。

心たんきでわしや国をでて、今はならはぬしよくをする。

山をとをればいばらがとめる、いばらはなしやれ日がくれる。

──盆踊古歌の雑載、寛文年間に採録、、『諸国盆踊唱歌』

 

甚句 じんく

〈甚九〉とも表記。その昔、越後に甚九という男がおり、大坂に出て一財産つくった。あげくに売れっ子の遊女おりんを身請けして毎日遊興に明け暮れ、二人して戯れ唄(例歌)を唱和しあい、招待客に披露した。そんな言伝えから出た名付けである。

したがって〈甚句〉の本場は越後とするのが通説で、数の上でも越後甚句・米山甚句・柏崎甚句など新潟産が全国甚句総数の半数以上を占めている。ほかに東北発祥説もあるが、真偽のほどはわからない。あるいは他県里謡の甚句、たとえば相馬甚句や名古屋甚句などよく知られており、また相撲甚句・本調子甚句など流行唄甚句も散見できる。

【例歌】

甚九夫婦の掛合唄 じんくふうふのかけあいうた

〽四十だ四十だと今朝まで思ふた、三十九ぢやものソーレ花じやもの。(甚九)

〽甚九甚句は越後の甚句、越後甚九はソーレ世界の花ぢや。(りん)

──俗謡、年代未詳、『明治流行歌史』

[メモ] じつはオラが国サ自慢が本音で、話が出来すぎのようである。

じんく〔新潟〕  じんく

よふたよふた五勺の酒に、一合のんだらサマなほよふた、さつさをせをせ船頭もかこも、をせば新潟がサマちかくなる。

舟はせんどのをしよでござる、サアサをせをせサアどこまでも。

──里謡明治五年頃流行『明治流行歌史』

名古屋甚句 なごやじんく  

〽名古屋名物みやしげ大根(だいこ)、きんのしやちほこ雨ざらし。

〽宮のあつたの明神様へ、とほざかれとは祈りやせぬ。 

〽宮をはなれてかさ寺越えて、なるみ八丁で袖しぼる。

名古屋甚句くずし なごやじんく/くずし

♪娘十七八は嫁入り盛りネエ、箪笥長持はさみ箱、これ程持たせてやるからは、必ず戻ろと思ふなよ、もうし(かか)さんそりや無理ぢや、西が曇れば雨となり、東が曇れば風となる、千石積んでる船でさへ、追手(おひて)がかはればネエ、出てもどる。

♪田舎育ちの藪鶯がねえ、初めて、吾妻(あづま)へくだるとき、一夜のやどりをとりわすれ、西を向いても宿はなし、梅の木小枝を宿として、花の莟を枕とし、落つる木の葉を夜具として、月星拝んでねえ、法華経を読むエヽ。

♪私の近所へ芋屋が出来た、お芋の看板十三里、川越本場の赤芋で、栗より(うま)いと云ふことだ、いゑ〳〵私の食べたのは、十里のお芋でありました、そりやまた何うした事であろ、芋が(なま)(やけ)でようほゝエヽ、ごり〳〵エヽ。

──里謡、明治六年頃流行、『明治流行歌史』

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村上甚句〔新潟県〕 むらかみじんく  

浜の松葉を手にかきよせて、お主が来るかとさつけナから焚いてまつ。

この(ちやう)このまち長い(まち)、あしだで通つた、金のあしだも、たまりやせぬ。

権内地獄極楽三千世界飲んだ、のどにはばけないで、よく飲んだ。

──里謡、明治六年頃流行、『明治流行歌史』

越後甚句 えちごじんく  

♪でんがらでんの、(でつか)いかゝ持てば、二百十日のそりや風よけだア。

♪今年や満作ぢや、穂に穂がさがる、かかア

 しよ喜べ、揃ふてお年が取られるぞ。

♪佐渡で餅ついて越後へ投げた、佐渡と越後がそりや一粘り。

♪奈良の大仏さんは木だんべえか、あれは金からかんの仏さま。

──甚句、明治中期流行、『明治流行歌史』

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塩釜甚句〔宮城県〕  しおがまじんく  

♪塩釜かいとり白菊植ゑて、なにをきく〳〵アリヤ便りきく。

♪千賀のうら風身にしみ〴〵と、かたりあふ夜のアリヤ友千鳥。

──里謡、明治二十八年頃流行、『明治年間流行唄』

サアサヤツコラサと乗出す船は、いのち帆をかけアリヤ浪枕。

塩釜出るときや大手振りよ、奏社(そうしや)の宮からアリヤ(むな)勘定(かんぢやう)

船は稲荷丸船頭衆は狐、中のお客はアリヤ皆(たぬき)

(たこ)が嫁とる烏賊(いか)のなかうどと、(かに)のお酌でアリヤはさまれた。

わしが国さで見せたいものは、むかし谷風今伊達もやう、ゆかしなつかし宮城野しのぶ、浮れまいぞや松島ほとり。

──里謡、明治二十八年頃流行、『明治流行歌史』

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潮来甚句 いたこじんく 

♪揃ふた揃ふたよ足拍子に手拍子、秋の出穂よりヤンレよく揃ふたヨイヨイ、ヨイヤサ、後ばやし(潮来通ひの船なれば津の宮前から帆を下げて、潮来の河岸へと乗込め乗込め)

♪潮来出島のざんざら真菰、誰れが刈るやら薄くなる 後ばやし(鹿島香取に神あるならば、あはせ給へよ今一度)

♪私しや潮来のあやめの花よ、咲いて気をもむヤレ主の胸 後ばやし(恋にこがれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦す)

──地方唄、近代に採取、『日本民謡大観』関東 

[メモ] 菖蒲踊唄その二。

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相馬甚句〔福島県〕  そうまじんく  

♪相馬相馬とコラ木萱も(なび)くナーエ、靡く木萱にオヤほんまに花が咲くとナーエ。

♪相馬中村のオヤ新改楼が焼けたナーエ、寝てて金取るオヤほんまにその(ばち)だとナーエ。

──里謡、明治中期流行、『明治年間流行唄』

 

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名古屋甚句-ストトコ節 *登代子

 

新民謡 しんみんよう

古来の里謡・民謡に対して大正後半から昭和一ケタ代まで新作された民謡の通称。

曲詞がモダンで垢抜けていたことから「新」が冠された。ただし、本格派民謡とは一線を画して扱われている。

【例歌】

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ちゃっきり節 ちやつきりぶし       

              北原白秋詞

唄はちゃっきり節 男は次郎長

花はたちばな 夏はたちばな 茶のかおり

ちゃっきり ちゃっきり ちゃっきりよきゃあるが鳴くんで 雨ずらよ

茶山 茶どころ 茶は縁どころ

ねえね行かずか やあれ行かずか お茶つみに

   ちゃっきり ちゃっきり ちゃっきりよ

  きゃあるが鳴くんで 雨ずらよ

さあさ行こ行こ 茶山の原に

日本平の 山の平の お茶つみに

お山見れ見れ あの笠雲を

 ねえね着て出や 今朝は着て出や 菅の笠

──民謡昭和三年発表『新版 日本流行歌史』上

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波浮の港 はぶのみなと         野口雨情詞

     一

磯の鵜の鳥りや 日暮れにやかへる

波浮の港にや 夕やけ小やけ

あすの日和は

ヤレホンニサ なぎるやら

    二

船もせかれりや 出船の仕度

島の娘達や 御神火ぐらし

なぢよな心で

ヤレホンニサ ゐるのやら

    三

島で暮らすにや とぼしうてならぬ

伊豆の伊東とは 郵便だより

下田港とは

ヤレホンニサ 風だより

    四

風は潮風 御神火おろし

島の娘たちあ 出船の時にや

船の纜

ヤレホンニサ 泣いてとく

    五

磯の鵜の鳥りや 沖から磯へ

泣いて送らりや 出船もにぶる

あすも日和で 

ヤレホンニサ なぎるやら

──民謡、昭和三年発表、山野楽器店楽譜

三階節 さんがいぶし  

ハーヤラシヤレ〳〵

猫ぢや猫ぢやと仰有(おつしや)いますが

猫が、下駄履き、杖つき、しぼりの浴衣(ゆかた)で来るものか ハー来るものか

猫が、下駄履き、杖つき、しぼりの浴衣で来るものか

ハーヤラシヤレ〳〵

高い山から谷見れば

オマン、オマンが可愛や、染め分け(たすき)で布さらす ハー布さらす

オマン、オマンが可愛や、染め分け襷で布さらす 

──新民謡、昭和五年発表、ポリドール・レコード譜

 三階節の舞踊風景 年代未詳

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新津甚句 にいつじんく  

サア 新津山から吹き下す風は

      ハーイツチヨ

   新津繁盛とサ吹き下す

      吹き下す 吹き下す

      ハーイツチヨ

   新津繁盛とサ吹き下す

      チヨロリ チヨロリ

サア 三夜(さんや)の三日月様は

      ハーイツチヨ

    宵にちらりとサ出たばかり

      出たばかり 出たばかり

    宵にちらりとサ出たばかり

      チヨロリ チヨロリ

サア 新町(しんまち)から(いち)(ちよう)かけて

      ハーイツチヨ

    お主さがすにサ夜が明けた

      夜が明けた 夜が明けた

      ハーイツチヨ

    お主さがすにサ夜が明けた

      チヨロリ チヨロリ

──新民謡、昭和五年発表、ポリドール・レコード譜

会津磐梯山 あいずばんだいさん  

イヤー 会津磐梯山は宝の山よ 

 笹に黄金(こがね)が エーマタなり下る

スッチョイ スッチョイ スッチョイナ

──民謡、昭和十年録音、『日本民謡大観』東北篇

 

[メモ] 小唄勝太郎がこの唄をレコードに吹き込むまでは里謡名「玄如節」であった。以来、全国的に名をとどろかせるに至る。また、盆踊唄として「かんしょ踊」の古名も付けられている。

 

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足尾小唄 *〆蝶

三階節(類歌) *浅草 美ち奴

十九の春 *田端義夫

大漁唄い込み *鈴木正夫

中国地方の子守唄 *岡山・広島地方の伝承歌に昭和3年新規作曲

ヨカレン節 *霧島 昇・近江敏郎

 

相馬節 そうまぶし

福島・宮城両県にまたがる羽黒山神事にかかわる古里謡。

近代以降すっかり俗化され、縁結びの利益があるとする新民謡に様変わりしている。

【例歌】

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相馬節〔福島県〕 そうまぶし 

♪夜遊び帰りに東を見れば、ほんに凄いこツちや鶏の声。

♪竹に雀は仙台さんの御紋、相馬六万石九曜の星。

♪なんだ太郎七豆腐の豆よ、天保二枚で百六十。(以上、相馬郡)

♪出羽の省内、最上で髪の山、こゝ派会津の東山。

♪現時を見たさに朝水くめば、姿かくしのきりがふる。(以上、若松市)

──里謡、近代に採録、『日本歌謡集成』巻十二

相馬節

♪ハアなんだ太郎七豆腐は豆だ ナンダネ

 あやめ団子は コラ米の粉 ナンダネ

♪お前の姿と雷さまめは

なりもよければ 振りもよい

♪歌のうたいそめ暦の見そめ 

 もろた手拭い かぶりそめ

──民謡、近代に採録、『日本民謡全集』2

相馬節〔採録地未詳〕

♪相馬〳〵と木萱もなびく、ナンダコラヨウ、なびく木萱にジツ花が咲く、ナンダコラヨウ。

♪相馬中村の新街道が焼ける、ノウイ、寝てゝ金取るジツそのばちだノウイ。

──里謡、伝承現行、『明治年間流行唄』

[メモ] 新潟県長岡市にも同様の詞「相間(そうま)節」があり、こちらは囃子に「ノウイ」を使っている。

 

ソーラン節 そーらんぶし

北海道西北部沿岸で歌われるニシン水揚げの作業歌。

いくつか作業工程ごとに歌が小別れしているが、いわゆる代表的なソーラン節は「沖揚げ音頭」といわれるもの。本調子の宴席用三味線歌として全国に普及している 。

【例歌】

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ソーラン節〔沖揚げ音頭〕 

ヤーレン ソーラン ソーラン ソーラン ソーラン ソーラン ハイハイ

沖の鴎に潮時問えば わたしゃ立つ鳥波に聞けチョイ ヤサエーエンヤーアンサーノドッコイショ

──民謡、伝承現行、『日本民謡全集』2

 

太鼓踊り唄 たいこおどりうた

太鼓の拍子に合わせた踊りにつく歌謡。

太鼓だけ伴奏の素踊り唄に供される。戦陣歌謡など古里謡に往時の残影がうかがえる。 

【例歌】

太鼓踊歌 たいこおどりうた

(あつ)(もり)殿は御装束村重(むらしげ)(とう)の弓でんじ、真羽(まは)の矢そろへ十二筋、しよ(ねん)年は十六歳、(いくさ)は今朝が初めなり。

〽今度富士野の(まき)(がり)は、諸国大名の馬揃へ。曾我の十五はある兄弟、親の(かたき)(こころざ)す。

〽淀の川瀬の水車誰を待つやらくる〳〵と。

──本調子端歌、『新大成糸のしらべ』(享和元年)

 

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花笠太鼓踊り *滋賀県甲賀市土山町黒滝

 

田植唄 たうえうた

単に〈田唄〉とも。

八十八夜頃、田植のさいにうたう作業唄。

いわゆる早乙女らが唱和したもので、全国各地に見られる。 

【例歌】

朝の歌 一番 あさのうた/いちばん

歌ひそめには、先づ三ばいをまゐらせう。

苗の植初、稲つる姫にまゐらせう。

三ばいはヤーレ何ちからおじやるやら、宮の方から。

宮の方からヤーレ芦毛の駒に手綱よりかけ。

手綱よりかけ、今三ばいのおじやれば、

芦毛駒には、三ばいのせて勇ませう。

よしのの中のむらの中の森が(たわ)うだ。

げに森がたわうだ、よつゆに森がたわうだ。

露が深うて吉のの森がたわうだ。

風や吹けかし、吉野の森がのらうぞ。

ゑんくつ(飯櫃)八つや、桶かひは九つでな。それ盛に舞ひやれ、千代がへすへすな。

千代がへらけて、かひ九でもられた。

ひる間のはんがぐ(椀家具)はなん水で流した。

谷水で流いては、綾でふいて納めた。

あやでふいては御前の棚に納めた。

──田植唄、室町後期成、『田植草紙』

[メモ] 広島県の山地(芸北地方)で歌われた豊作祈願の田植古歌謡(神田歌謡系の田歌(たうた))。全体は晩歌四番まであり、掲出は早乙女らが歌ったという朝作業の一番唄である。

田植唄〔兵庫県〕 たうえうた

早乙女(さをとめ)衆は簔笠持ちやれ、篠原でトヨノー(返し)、篠原の野笹の露が雨となるトヨノー。

♪鶴の子の巣立ちはどうぢや八幡山トヨノー(返し)、八幡山薬師の森の若松の枝トヨノー。

(つとめ)(しゆ)には昼間を待ちやる、何時をソンノオ。(摂津地方)

──里謡、近代に採録、『日本歌謡集成』巻十二

 

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郡上「田植え唄」 *土取利行(唄・演奏)

 

だんべえ節 だんべえぶし

別に古謡・里謡の用語で〈東調子〉とも。

田舎者へのからかいを込めて、歌詞の中に「だんべえ」等の方言を挿入した唄。

なお「だんべえ」は、上方から見た関東者、江戸者から見た周辺在郷の人たちをさす。くだいていうなら「関東べい」の唄、といったところ。

【例歌】

さうだんべい そうだんべえ

〽そなた待つ夜のあふらいを、細く長かれとろ〳〵と、さうだんべい、しごくと聞きわけた。

さうだんべい替え

そなた待つ夜の(あぶら)()を、細く長かれとろ〳〵と、さうだんべい、至極(しごく)と聞きわけた。

内裏(だいり)女郎(じよろ)(しゆ)は水の月、手にも取られず見たばかり、さうだんべい、至極と聞きわけた。

──二上り上方端歌、江戸中期作、『落葉集』第七巻

いいぜ節 いいぜぶし 

♪今年や世がようて、穂に穂が咲いたとさ、こいつア又目出度〳〵こんだんべい、イヽゼ。

腹の立つ時や、此子を抱きやれ、こいつア又にこ〳〵ほんだんべい、イヽゼ。

──流行節、明治二十七・八年流行、『明治年間流行唄』

[メモ] 都会人が田舎者を見下したような場合にわざと「だんべい言葉」を用いた例である。

 

地方唄 ちほううた

近代に三都(東京・大阪・京都)以外の地ではやった歌謡の通称。

土着の里謡でなく、江戸または上方から地方入りし遅れて流行したものをも含めていう。「里謡」や「民謡」とはカテゴリーの異なる呼称である。

【例歌】

鹿児しま かごしま

ここに流行(はや)らぬ、鹿児島にはやるに、なさ、三十振袖、四十島田、な、ほいさ〳〵。

〽志賀の(さざなみ)、立つともまゝよ、なさ、霞がくれの、(ふね)ゆかし、な、ほいさほいさ。

さいこの節 さいこのぶし

佐渡とな、越後は、さいこのさ、いよ筋向ひ、それはへ、橋をな、橋をかきよやれ、さいこのさ、〳〵、いよ舟橋を、それはへ。

春はな、吉野に、さいこのさ、いよ咲いたとさ、それはへ、たとさ、咲いたとさ、さいこのさ、〳〵、いよ初花桜、それはへ。

──地方唄、『松の葉』(元禄十六年)

仙台唄 せんだいうた

仙台のお花畠の芥子(けし)の花、びんごえ。

八重(やへ)一重(ひとへ)九重(ここのへ)の、びんごえ。

これのお(かた)湯手(ゆて)(かむ)り様から帯のしやうまで、しよべら〳〵と、びんごえ。

──地方唄、『若緑』(宝永三年)

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通りゃんせ とおりやんせ 

〽通りゃんせ 通りゃんせ

   ここはどこの細道じゃ

 天神様の細道じゃ

   ちょっと通してくだしゃんせ

 ご用のないものァ通しゃせぬ

   この子の七つのお祝いに

   お札を納めに参ります

 行きはよいよい 帰りはこわい

こわいながらも 通りゃんせ

とおりゃんせ

──わらべ唄、弘化三年頃流行、『日本童謡事典』

立山節 たてや まぶし

お前ゆゑなら、あの(わたし)や何処までもヘ、たとひ野の末、エヽ虎伏す野辺も、賎が伏家で(まま)も炊いたり、縫針手業(てわざ)

憎い男と恨んで居れど、一人寝る夜の寒さ凌ぎ、茶碗酒から、つい逢ひとなる女子の未練。

越中立山お岩の不動のなわがいけ、エヽ富山船橋渡しの無いのがよござんす〳〵。

浮世捨ての奥山住居、恋も悋気も忘れて居れど、鹿の鳴く()を聞けば昔が恋しいわいナ、キタあの山越えてくび屋葺。

今日と云ふ今日あの一言で、愛想もこそも尽きた男に、(わたし)も女だ何の未練が、残るものかと、キタ云うてる下から目に涙。

──地方唄、明治初期流行『明治年間流行唄』

丹後節替え たんごぶし/かえ

主を帰してあと見送れば、エヽ邪見な曲り角、丹後の宮津でピントダシタ。

市松人形ぢやわしやないけれど、目では泣ねど腹で泣く、丹後の宮津でピントダシタ。

わしとお前は七子のいーとーよ、一こ切れたらむことなーる、丹後の宮津でピントダシタ、丹後の縮緬加賀の絹、仙台平には南部縞、陸奥の米沢江戸小倉名所〳〵。

京の金閣寺を拝見ましたが、御らうじましたか、楠天井の一枚板ではないかいな、萩の違ひ棚南天床柱名所〳〵、丹後の縮緬加賀の絹、仙台平には南部縞、陸奥の米沢江戸小倉名所〳〵。(宮津節)

──地方唄、明治初期流行『明治年間流行唄』

[メモ] 本唄からの復古唄である。

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宮津節 みやづぶし  

♪二度と行くまい丹後の宮津、縞の財布がダンゼン空となる、丹後の宮津でピンと出した。

♪逢ふて嬉しや別れのつらさ、逢ふて別れがなけりやよい、丹後の宮津でぴんと出した。

♪惚れてつまらぬ他国の人に、末は(からす)の啼きわかれ、丹後の宮津でピンと出した。

♪大津の鍛冶屋と、草津のかぢやと、ドンドンカチカチ、たたいてのばした(からかね)ぎぼし、水にうつるはぜぜの城。

──地方唄、明治十五・六年頃流行、『明治流行歌史』

松前節 まつまえぶし  

蝦夷ヤーアー松前ヱーヱーやらずのーヲー雨がーアー、七日(なぬか)七夜(ななよ)―モーヲー降れーばーよーいー。

来いとーウー、イフタトーオーてエーエ、行かれうかアーアー佐渡へヱーヱーヱヨー、佐渡はアーア、四十五里―イ波のーウーウヘエー。

今宵一夜は緞子(どんす)の枕、明日は出船の浪枕。

順風(あらせ)吹けとは親方前よ、(いかり)巻く間に風かはせ

裸で寒かろ着て行かしやんせ、わしが着換へのこの小袖。

──地方唄、明治二十年頃流行、『明治流行歌史』

若狭節 わかさぶし  

桜にや惚れても梅には惚れぬ、あほらしいぢやないかいな、梅に鶯、コレサ、来てとまる。

義理あるお前と親への気兼、あほらしいぢやないかいな、惚れた弱みにや、コレサ、遠慮がち。

──地方唄、明治二十八年流行、『明治年間流行唄』

宮島節 みやじまぶし  

♪秋の宮島廻らば七里ヨウ、浦は七浦七ゑびす、ヨイヨイヨイ、エツサエツサ、エツサツサエツサツサ

♪田舎なれども安芸さんはヨウ、仲のとなかに厳島(いつくしま)、ヨイヨイヨイ、エツサエツサ、エツサツサエツサツサ

♪宮島名所で見せたいものはヨウ、長の廊下に百八(どう)(ろう)、ヨイヨイヨイ、エツサエツサ、エツサツサエツサツサ

♪海の華表(とりゐ)に七浦恵比寿(えびす)ヨウ、外にないのが紅葉(もみぢ)(だに)、ヨイヨイヨイ、エツサエツサ、エツサツサエツサツサ

──地方唄、明治二十八年流行、『明治流行歌史』

新潟節 にいがたぶし  

新潟へ〳〵、新潟出る時や涙で出たが、今ぢや越後の風もいや。

見世ヘ〳〵、見世へ出る時や涙で出たが、今じや(くるわ)の風次第。(替え唄)

──地方唄、明治中期流行『明治年間流行唄』

えせん節 えせんぶし 

雨は降る、ヤエヽ、船場に笠を忘れて来た、アヽトエヽ、笠も笠、お江戸ではやるだて笠、アヽトエヽハヽヨオイトコーラ、サアヽイトナ、ヘヤアンヘヤン。

──地方唄、明治二十八年頃流行、『明治年間流行唄』

琉球へおぢやるなら りゆうきゆうへおじやるなら 

琉球へおじやるなら草鞋(わらじ)をはいておじやれ、琉球は石原こいし原、したりやよめ〳〵、しんによた〳〵してがんがんせつせ。

琉球と鹿児島が地つゞきならば、通ふて酒宴(さかもり)してみたい、したりやよめ〳〵、しんによた〳〵してがんがんせつせ。

──流行節、明治三十年流行、『はやり唄変遷史』

[メモ] 詞からわかるように、琉球でなく鹿児島の酒盛唄である。

小桜〔神奈川県鎌倉市〕 こざくら  

あのや小桜をナアヨあのや小桜をナア(ソウジヤエ)折ろうとしたなら背中なる、ねんねこさんが邪魔になる

邪魔になる邪魔ナアヨ邪魔になるならナア(ソウジヤエ)前に廻してお乳でも飲ましたら黙るだろ(ハ、オチヤヤレオチヤヤレ)

鎌倉の、鎌倉のナアオーサエ御所のお庭に十三小女郎がナアエ酌を取る、酒よりもヨナアヨ(ヨイヨイ)酒よりもヨナアオーサエ肴よりも、十三女郎がナアエ目に付いた、目につかばヨナアヨー目につかばヨナアオーサエ連れておじやれよ、女子はいづくのナアエ縁で(そろ)(ア、オサヤレオサヤレ)

──地方唄、近代まで伝承『日本民謡大観』関東篇

五反田〔東京市〕 ごたんだ  

これさまの、旦那様、三国一の御手かきで、京硯鹿の巻筆、空とぶ鳥を書留る

これさまの表御門に、小判や小粒が降り積り、高砂のエお(ぢぢ)(ばば)が、箒か熊手で掻き寄る

──東京都府中市の伝承俗謡、『日本民謡大観』関東篇

 

中古里謡 ちゅうこりよう

近世以前に発生しうたわれた里謡をさす総称。詞はなべて短いのが特徴である。

ちなみに本書での里謡形の呼称を、ここで時系列順に整理してみると、古里謡→中古里謡→民謡・地方唄→新民謡という過程をたどることになる。

【例歌】

三野の国 田植唄 みののく/にたうえうた

やあらおめでたや 太郎次どの 笠の端にこがね花さく

こがね花咲ばの そのうら〳〵に銭がなりそろ

鳴る瀬はならで 淵がなる やあらおそろしや

太郎次腹たつなよ ありがたや 行たや我れが小宿に

近江の国 杵唄 おうみのくに/きねうた

〽ねんね太郎八 箭倉(やぐら)の小八 小八子でなくはそだつまい

〽むすめ可愛さによい茶をやろに むすめもどさば茶も戻せ

〽もみじちれ〳〵夕日にそふて とかくわかいは若い()

とんと戸叩き(うつつ)にあけて 蚊幮(かや)に旭のうつるまで

南部の金堀唄 なんぶのかねほりうた 

ちらり〳〵と花めづらしや 雪のふり初めちら〳〵と

(つばくら)は 舟の(とも)()さ巣をかけて 波はうてども子は育つ

冴えた月夜を夜明とおもひ 君を戻して今くやし

夢に見たいや あひたい見たい 夢にうき名は(たち)はせまい

──いずれも古里謡、『鄙廼一節』(江戸後期)

チャッキラコ「はついせ」〔神奈川県三崎町〕

初いせ〳〵はよけれども

今日の「初いせ」初いせ

春の御祈祷さ 春の御祈祷 

春の「はじめに」はじめに

酒や肴はよけれども

今日の「初いせ」初いせ

これでおめでたや

いざや「友達」友達

吉野山見物に

さても見事や「見事や」

八重桃に八重桜

あの花一枝「一枝」

国のお土産に(後略)

[メモ] 近代まで毎年一月十五日に三崎町に伝わる童女等による集団歌舞。「初いせ」とは初瀬との説が有力。とすると拠り所は鎌倉の長谷寺を指すのであろう。

──古里謡、成立年代未詳日本古謡集

 

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十五夜綱引き唄 *屋久島の一湊に伝わる民謡をアレンジ

俚謠 薩摩節 *山田八重

 

手踊り唄 ておどりうた

大勢の踊り手が揃い同じ手の仕草で踊るのが手踊り。これに合わせた音曲を〈手踊り唄〉という。

なかでも盆踊りなど、新民謡に多く見られる。

【例歌】

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秋田音頭〔秋田県〕 あきたおんど 

ヤアトセエヽ、ドコドツコエナ、コラ、昨夜(ゆふべ)もがた〳〵、今夜も〳〵、鍋から棚落ぢた、ドコドツコエナ。

秋田の名物、八森(はちもり)雷魚(はたはた)男鹿(をか)鰤子(ぶりこ)、能代春慶、檜山納豆(なつと)大館(おほだて)(まが)(わつぱ)

烏帽子直垂(ひたたれ)立派に見せかけ天神様のやうだ、ソレ〳〵(かかあ)寐るときや矢張あゝして、立派でおじやしべか。

前達(めやたつ)聞いてげせ、いふにも恥かし、己家(おらえ)の人はまた、ソレ〳〵、酒こもぱくつも、さつぱり出来ねで、さうして今朝戻つた。

日暮(ひぐれ)になると用向こしらへ毎晩かけ出し、ソレ〳〵しめない事だと、あと付け見たらば、宿こにこづばつた。

あんまり御性(ごし)(やけ)て裏から廻つて(すき)()をして見たば、ソレソレ、貝鍋(かやき)こ煮てゝ後家こと同意で痴話まけ、まくらてだ。

──里謡、近代まで伝承、『俚謡集拾遺』

 [メモ] 古い秋田音頭は地口を配した面白い言い回しが特徴で、近代伝承のものにもその片鱗がうかがえる。

 

名古屋節 なごやぶし

神戸(ごうど)節〉の古名をもつ。尾張ではやった本調子小歌。

長短二系に分かれるが、近世では七七七五の都々逸風短詞(三下り都々逸)が目立つ。

【例歌】

名古屋節

〽みやを立ちいで笠寺こゑて、鳴海(なるみ)繩手で袖しぼる。

〽ここは中嶋七里ゆきや桑名、命あづけたぬしもある。

〽みやのあつたの明神さまよ、遠ざかれとは祈りやせぬ。

〽おまへ百までわしや九十九まで、ともに白髪のはへるまで。

〽松と云ふ地は木へんに公よ、きみはのひてもきはのかぬ。 

──本調子端歌、江戸中期作、『守貞謾稿』巻二十三

 

 

農兵節 のうへいぶし

俗に〈ノーエ節〉ともいうものの、おびただしい数の類歌ごとに詞の表記自体がまちまちである。

静岡県三島市の民謡というのが定説になっているが、各地に同系の詞が濫立し、多くが本家発祥を名乗っている。

【例歌】

のうへ節 のーえぶし

野毛の山からノウヘ、異人館を見れば、鉄砲かついでイならび足オツピキシヤラリコノウヘ、ちいちがたかつてノウヘ、オツピキシヤラリコノウヘ。

──流行唄、安政頃流行、『明治年間流行唄』

[メモ] 安政六年、開港場に指定された横浜で異人館警護の外国兵をうたったもの。

さいさい節〔のうへ節替え〕 さいさいぶし

天満橋からのうるい〳〵、天満さい〳〵橋から東を見れば、鉄砲かたねてのうるい〳〵、さいさいかたねて小隊進め。

──替歌明治初年流行、はやり唄変遷史

ノーエ節〔相馬節替え〕  のーえぶし

竹になりたやアヤ、オヤつんつるべのウ竹にノーエ、かわいおかたアに、オヤつらしてくまして、湯にして茶にしてエ飲ませたアいとノーエ。

酒になりたアヤ、オヤ金銀正宗のウ酒にノーエ、かわいおかたアに、オヤ、すゝめて飲ませて、酔はせて聞きたいイことがあアるとノーエ。

相馬中村のお神楽堂からノーエ、ゑびすが鯛つるオヤほんまにおつぴきひやらりこノーエ。

相馬中村のおつぺらぼうのノーエ、(チーチがたかつてノーエ)チーチーサイサイトートーチーチーおつぺらぼうのノーエ。

──替歌、明治二十八年流行、『明治流行歌史』

ノーエ節再々 のーえぶし/さいさい

汽車も汽船も、今では古いと、飛行機発明、試験は再三、やつてもまだ〴〵結果がよくないとノーエ、是れが出来れば千里や万里は何んでも無いこと、至極便利ぢやノーエ。

近頃、アチコチ、電気鉄道が開らけたおかげで、名所旧蹟、高下駄ポツポで、拝見出来るとノーエ、おかげで宮さん、寺さん、お賽銭ドツサリ、何れもニコ〳〵ノーエ。

♪大阪商売、本町太物、久宝寺町小間物、道修町薬種屋、靭は塩魚天満は市場でお客は沢山ノーエ、橋すじ、いろ〳〵商売盛んで中々賑はうノーエ。

──替歌、大正初期流行、『きのきいた唄』(春江堂版)

ノーエ節くずし のーえぶしくずし

♪天満橋からノーエ、天満橋からノーエ、天満橋サイ〳〵橋から城の馬場を見れば、鉄砲かついでノーエ、鉄砲サイ〳〵かついで小隊すゝめ、オツペコヒヤラリコノーエ、オツペコヒヤラリコノーエ、チーチガタイ〳〵、トヽチヽ、オツペコヒヤラリコノーエ。

♪野毛の山からノーエ、野毛の山からノーエ、野毛のサイ〳〵、山から異人館を見れば、鉄砲か次いでノーエ、鉄砲か次いでノーエ、鉄砲サイ〳〵かついで小隊すゝめ、オツペコヒヤラリコノーエ、オツペコヒヤラリコノーエ、チーチガタイ〳〵、トヽチヽ、オツペコヒヤラリコノーエ。

──替歌、大正七年流行、『粋な芸者』

[メモ] 以上のほかにも類歌が氾濫、それらだけで一冊の歌詞集ができるくらいある。

新ノーエ節 しんのーえぶし      添田啞蝉坊詞

上野の山から ノーエ

上野の山から ノーエ

上野のサイ〳〵山から東京市を見れば

十二階が見える ノーエ

国技館が見える ノーエ

工場のサイ〳〵煙で大空は真ツ黒け

♪小さな泥棒は ノーエ

すぐにつかまる ノーエ

つかまりやサイ〳〵牢獄へぶつこまれてしまふ

満期で出ても ノーエ

すぐに又這入る ノーエ

這入るのかサイ〳〵出るのか出るのか這入るのか

♪たとへ貧乏でも ノーエ

日本人はエライ ノーエ

腹がサイ〳〵減つても泣きツ面しない

俺も男だと ノーエ

我慢してゐたら ノーエ

眼サイ〳〵くらんで足元ヒヨーロヒヨロ

──替歌、大正十年流行、『このごろはやる新流行唄』(矢野博信書房)

 

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三島大社 農兵節 

 

鄙唄 ひなうた

〈田舎唄〉〈在郷唄〉に同じ。 

近世以前、地方で比較的はやった唄をいう。盆踊り唄・田植唄・舟歌の類。著名な集に「山家鳥虫歌」がある。

土着の「里謡」とは意味が違う。

【例歌】

おんらが在処 おんらがざいしよ

おんらが在処は。風雅なものよ。むくつけかたろうならば。桃や柿にぶらさがる。九十九十(ぴき)のはなかけ猿に。おんだてられてもわらわれても。()ごんぞほれたが。性根(しやうね)かへ。

──二上り上方唄、『粋の懐』五篇(文久二年)

三河の国麦舂唄 みかわのくにむぎつきうた

恋の玉房鼠にひかれ、鼠よう捕る猫ほしや。

雨の降るほど名を立てられて、笹の露ほど添ひもせで。

人が悪いと思ふな様よ、破れ車でわが悪い。

一つ枕に髪うちかけて、寐たと思ふたりや夢じやもの。

五月(さつき)雨ほど恋慕はれて、今は秋田の落し水。

お前実るとて田面(たんぼ)へ落ちた、又も落ちませよ谷底へ。

()れと行かぬかお蔵の背戸へ、忍び桜の枝折りに。

待ちてござれよ千年までも、柳真葉(しんば)の腐るまで。

人に勝つなよ心に勝てよ、とかく心は敵で(そろ)

わしとお前は二葉の松よ、なんぼ落ちても離れまひ。

稲は穂に出る鈴花かける、秋の田面(たんぼ)のおもしろや。

──地方唄、江戸中期に採録

鄙廼(ひなの)一曲(ひとふし)

[メモ] 正しい曲名は「三河の国麦舂唄、はた、臼ひき唄にも諷ふ」という。

びつくりしやつくり節 びつくりしやつくりぶし

奥州二ほん松中むらたいらにたなぐらよ 聞いてもおそろし 大いくさ びつくりしやつくりと 〳〵

せんぢんハ ミとさまよ かさまにつちうら 戸田様よ 日光口より むしやぞろい びつくりしやつくりこ

おどうぐは ながいさま わかごけさまをとりゐさま やくにはたゝないゑちぜんけ びつくりしやつくりこ

──地方唄、明治元年頃流行、『新ぱん びつくりしやつくり ぶし』

[メモ] 〈人物戯評の唄〉としても通用する。 

鄙唄〔雑載〕 

〽早乙女の練り出の額は花かとよ、冬春咲くは梅の花で、さうよの。

(つづみ)打ち(われ)だに知らぬ琴の音は、調べて聞けば松虫の声。

〽細いかたびら織りたりとや、さうよの、礼こそ申さね織りたりとやの。

〽とび草の花又手に摘み入れてなう、宮へ参らう、手に摘み入れてな、御祝ひでさう程に〳〵。

──鄙唄、年代未詳、『はやり唄変遷史』

 

舟唄 ふなうた

船の操船などにかかわる唄。

 「えい」「よう」といった掛声が挿入されているのが特徴であるが、この形式を借りた俗謡も目立つ。

なお〈御船歌〉が格式ばった歌謡であるのに対し、こちらは着流しのままうたえるような気安い小唄寄りである。また、『松の葉』所収の「舟うた」は内容が遊里唄である。☟御船歌、棹唄 

【例歌】

おもい物くどき船歌 おもいものくどきふなうた

〽ゑい重いものに取りては 主の御恩に父母(ぶぼ)の恩 湿り茶臼にお乳の人の乗物 朝鮮人が長刀(なぎなた) 下手の謡に上手の医師(くすし)ゑい雪の笠 まだ御ざるよ不精者の立居 兎角浮世は軽いがましよ おもいはころせん沈むゑい おもいは沈むやんさ 軽いがましぢやいのんゑい。

──座敷唄、『淋敷座之慰』(延宝四年)

船唄 ふなうた 

船頭かあいや(おん)()瀬戸(せと)で、一丈五尺のよう櫓がしわる、よう、ごつとん〳〵。

〽もしも船中で雨など降れば、わしが涙とよう思ひなれ、よう、ごつとん〳〵。

〽船の新造と娘のよいは、人が見たがるよう乗りたがる、よう、ごつとん〳〵。

──座敷唄、年代未詳はやり唄変遷史

船頭唄〔千葉県〕 せんどううた

♪泣いてくれるな出船のさきで、さをも櫓かいも手につかぬ。

♪こゝは幸崎森の下、舵を頼むよ船頭さん、舵は船頭の役ぢやもの。

──舟唄、近代に採録、『里謡集拾遺』

船歌かもめ節〔商船学校歌〕 ふなうたかもめぶし

明日はお立ちか世お名残惜しや

雨の十日もよ降ればよい、そうかよ。

逢ひはせなんだかよ館山沖で

二本マストのよ大成丸、そうかよ。

沖の鴎とよ、青年士官よ

何処のいづこでよ果てるやら、そうかよ。

泣いて呉れるなよ船出の時は

沖でろかいがよ手につかぬ、そうかよ。

君と別れてよ松原行けば

松の露やらよ、涙やらそうかよ。

潮の早さはよ、留めよで留まる

留めて留まらぬよ恋の道、そうかよ。

朧月夜によ誰かは知らぬ

琴に合せて口笛を吹く、そうかよ。

──舟唄、大正十二年流行、『青年流行歌譜』

 

方言唄 ほうげんうた  

〈国訛り唄〉とも。地方の国許で歌い継がれてきた俚謡・民謡は、広域普及を意図してか、標準語に近い詞のものが多い。しかしなかには、お国訛りそのままの〈方言唄〉も散見できる。

ふるさとのお袋の歌というか、方言の土臭さが我ら農耕民族の心をゆさぶるとしても不思議はない。詞の意味がよくわからないまま他郷者が聞いても、それなりに味わいが出るのも当然なことである。

 【例歌】

名古屋名物の唄 なごやめいぶつのうた 

名古屋名物、置いて頂戴もンに、スカタランに、オキアセ、さうきやもきやも何だいも、イキヤスカ、オキヤスカ、どうしやアすとうろくさあい

──方言唄、明治三十五年頃流行、『明治流行歌史』

[メモ] 方言唄の総括的代表歌。

〔以下、近代の採録、『日本歌謡集成』第十二巻

東京市

♪中の〳〵地蔵坊、なぜ背が低いだんべいな、荒野の飯を、三杯食つて、それで背が低いだんべいな、てめいたちあ何を持つて通る、粟一升もつて通る、くんないか〳〵、いやだ〳〵、しわん坊〳〵、鼠の死んだのおつけるぞ、こはくも無いよ、人間の死んだのおつけるぞ、こはいよ〳〵。

千葉県

♪わらつ火で秋刀魚焼へはへゑだらえへらずいながらゆうらでもくらうよ。

宮城県

♪奥州の仙台名物、おらやんだ、そうずしや、そでがす、そでかいんか、ホウカイ、ちよつと、がいまつまたでよがんべちや、いけすかねア、あねーやろ、ばけーやろ。

岩手県

♪おんでアるらンでアると、つー〳〵おンでやない、じや〳〵も居ないはと、おへれんせ、ちよツこま。

新潟県

♪聞いて下んせ、佐渡なまり、かん〳〵、とん〳〵、ぴい、さまさん、ばいたに、あぐちに、ねまらんせ、かつたに、ねつから、だつちやかん。(佐渡郡)

♪蜂々ごめんだ、おらまらぼゞだ、簿ゞだ。(中蒲原郡)

愛知県

♪名古屋名物おいてちやうでーも、すかたらんに、おきやーせ、ちよツともらちあかん、つねるぞーい、そーきやーも〳〵なんだいも。

岐阜県

〽飛騨のなまりはオバソンアバヨ、ムテンクテンにオリヤオツカナイ。(飛騨)

三重県

♪かくれんかくはち、さやはちぼん、桜の花はまだ咲き揃はんか、どじよう車にきち六まろ六まんきんたん、ちやいあん〳〵ぼん。

京都府

 ♪今日の(なまり)、お()でやす()やす、一服お吸ひやす、お掛けやす。(京都市)

♪ぼんの十六日二十日鼠おさへて元服さして(かみ)結ふて牡丹餅売りにやつたれば、牡丹餅売らんと昼寝して、猫にとられてゑんやゑんやのお馬のてこじやい。

和歌山県

♪よんべもろた吉ちやんは、はま下駄はいて傘さいて、天神橋をわたろとて、蟹に横つ腹はさまれて、あ痛やこ痛や権兵衛さん、わしを助けておくれたら、もとの屋敷い蔵立てゝ、蔵のぐるりい松植ゑて、松の先つちよに鈴つけて、鈴が鳴つたら起きやんせ。鈴が鳴らんなら寝てやんせ。

大阪府

♪お月さんいくつ、十三七つ、今度京へのぼつて、守のぜぜでおまんを()うて、其のおまんどうした。油買ひにすかひに、油屋の門で、油一升こぼして、其の油どうした、白との犬と黒との犬と、ゐざりよつて候、其の犬どうした、皮とつて太鼓に張り候、その太鼓どうした、あんまりたたいたら破れたよつて、向ふの山へぽいとほつてしもた。

兵庫県

♪ゐんのころ、あしたのようさもちつこん、餅搗かんえゝソ、鬼うめ蛇()め、角の()えた子()め、子産まないやいとしよう、のころ。

山口県

♪山口言葉で、あのそにこのそ、おのしやどかちめかおりしこん、ねーまにーま、ごーま、せんぎんごーんごう、お堪へ難い、あねーしやんすな、いけんちや、いらだち、おかゝに、言うちやげる、やまくも、ほろけた、国訛長州坊州。(吉敷郡)

徳島県

♪うらが国、ぎように咲いたる梅の花を、やれけうとは、ゑずな山風。(徳島市)

高知県

♪けえ〳〵とちふは、吾子等か、ゑずらしや、ぜじやう、しようちや、よんべきたらちゝ。(高知市)

大分県

♪昨日見て今日見んシヤガケヤーシカイツチゴミズハ死なふナシンジ。

佐賀県

♪佐賀名物ア、にやあごとつきやあ、こんつくしようが、あらいやばんたア、どうしゆうかい、ぞうたんしんさんな。

長崎県

♪長崎の山の端に入る月はよか、コンゲン月はエツトナカバン。(長崎)

♪おりげんとつちやんな、こらりんぢやつたんかん、ちんこらりんとん。(西彼杵郡)

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そびき唄

熊本県

♪おてもやんあんた此の頃嫁入したゆたしたばツてん、五ンジヤどんぐぢやぺれやるけん、また盃きやせんだつた。村役、鳶役、肝煎どん、あんふとたちのおらすけん、後は向うなつときや成らうたい。あかちやかべツちや。(熊本)

鹿児島県

♪おはんな、そげんぎあんすどん、そらそぢやごあはん、ふとのないよきて、ぎアやめすな。

〔以下、近代の採録、『わらべうた民謡大全』〕

山梨県

♪これは甲州言葉の名寄、はんで、そぜる、わにるのと、出る戸で絹の言葉違いや、どこからどこまで、もうしやんしよ、そうでごいしよう、そのいちら、がとをに、よまわれ、のぶいやつ、おだんな聴いておくんなツちよ、このぼこずてこでごツちやよで、こまりやんす。(甲府)

青森県

♪とだはえこのてであ雨降る中に、笠もかぶらなへで、けらこもきなへで、とゝはてこなになるがいたはだふりになる、道理とめらしはあツぼとなる。海道

♪びるしやもも、かものもかげを、もうろして、露の中に、ちツぷみえけり。(札幌)

琉球

♪けふの福らしや、竹もが、なたちよる、つぶて居る花、露ぎやあたくと(那覇)

♪ちごのもんにたつたれば、ばびうの様ななつの虫がどたまのぢよけんをちよいとはね、ホンダエ〳〵。(琉球妓謡) 

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新宮古節 *上江州美弥

 

豊国節 ほうこくぶし

〈豊公節〉とも。伝承の流行唄であるが、由来は二つに分かれる。

⑴京都の豊国神社新築記念祭のために作曲された。

⑵大阪の豊国神社正遷宮に作られた(明治三十年)

約一年後には東京に伝えられたが、どえらいチョウチン持ちとも合わせ、徳川家のお膝元での人気は今ひとつであった。

【例歌】

豊国節 

♪頃は天文五年の春、元日生まれの人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

♪末は天下を握れるはじめ、草履握んだ人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

♪謀略駿速十日のうちに、御主の仇うつ人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

♪四国九州小田原かけて、攻めて靡けし人はたれ、豊国さんどえらい御威徳る

♪男大活発万事にかけて、小事を嫌ふた人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

(かみ)を敬い(しも)憐みて、金銀散らした人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

♪朝鮮八道攻め立てられて、唐が(こは)がる人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

♪国を治めて異国を攻めて、向ふに敵なき人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

♪元はいやしき民家に生れ、神と祭らる人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

♪詣れ人人阿弥陀ケ峰に、(しづ)まりまします人はたれ、豊国さんどえらい御威徳。

──『明治流行歌史』

 

北海追分 ほっかいおいわけ

北海道で生まれ育った追分節の総称。

渡島(おしま)追分、江差追分や松前追分など、元は信濃追分から分岐した道産子里謡である。これら北海追分は、やがて東京に移入され、他の有名追分とともにもてはやされるようになった。

【例歌】

蝦夷地追分 えぞちおいわけ

忍路(をしよろ)高島(たかしま)及びもないが、せめて唄棄(うたすつ)磯谷(いそや)まで。(元唄)

♪帯も十勝にそのまま根室、落つる涙の幌泉(ほろいづみ)

──道中唄、近代の作、&『明治流行歌史』

北海追分 ほつかいおいわけ

大島小島のあひ通る舟は、餌差通ひかなつかしや。

色の道にも追分あらば、こんな迷いはせまいもの。

蝦夷や松前やらずの雨が、七日(なぬか)七夜(ななよ)も降ればよい。

大島小島は兄妹島よ、なぜに奥尻(おくじり)はなれ島

──道中唄、明治初期『明治流行歌史』

 

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江差追分

 

盆踊り唄 ぼんおどりうた

盆の宵、全国各地で地元の衆が寄り合い、踊りながらうたう歌。古来伝統的な精霊祭りの歌舞である。

過去にも〈盆踊り唄〉の集は何冊も出ているが、ここでは近代諸国の里謡からいくつか集めてみた。

【例歌】

諸国近代盆踊り唄〔各地〕 しよこくきんだいぼんおどりうた 

神奈川県

♪盆々とても、今日明日ばかり、あしたは、嫁のしをれ草。しをれた花をやぐらにつめて、上から見れば牡丹の花よ、下から見ればぼけの花。ぼーけたぼけた、どこまでぼけた、一の丸越えて、二の丸越えて、三の丸さきは、みなぼけた。

埼玉県

♪おらがよー、おらがおつかさんは、しわいこたーしわい。盆が来たのに、茄子の皮のおぢや、盆が過ぎたらなにをくふだんべいー。スツコラ、スツコラ。(入間郡) 

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南八丁目盆踊り歌 **川口市南鳩ヶ谷八丁目の盆踊り歌

長野県

♪ぼん〳〵ぼとけ、庭の真中どこへ、蹴転ばして、蹴転ばして見たれば、鎌で刈つ切るやうな毛が生へた。(埴科郡)

福井県

♪ぼんの十六日や、闇ならよかろ、お手を引きよて豆畑。

奈良県

♪ぼんの十五日に踊らぬものは、ヨイトシヨ、猫かねづみか、空飛ぶ鳥か。ヤートセー、ヨイトコセ。

大阪府

半黒節

♪どりや踊り子のはやし「あー何じやいなー」又私が貰―たーはやし「やれこせーのどつこいせー」貰た私がーそら声がないえや、ヘエーへえーやつとせえーのよいやせえ。

兵庫県

♪たこに骨なく、なまこに眼なし、紅屋旦那さんに首がない。

山口県

♪お寺の門口に蜂が巣をかけて、ぼんさ出れやさす、はいれやさす。(都濃郡)

高知県

〽たもれ寄しよやれ寄しよたもれ、たもれよしよやれ身が宿へ。

鳥取県

♪盆にや御座れよ盆中にや御座れ死んだ仏も盆にや来る。

福岡県

♪盆来れやうれし、正月来やうれし。うれしの花はどこに咲く、どこに咲く。山にも咲かぬ、川にも咲かぬ。石山寺の門に咲く。

長崎県

♪むこどのよ、一つこしめせ、そらせき酒のつぼそこ、つぼそこは、いつものみそよ、姫君くされ抱いて寝よ。(西彼杵郡)

東京都

♪盆の牡丹餅(ぼたもち)や、三日置きや腐る、お婆これ見や、毛が生へた。 

YOU TUBE

丸の内音頭 *日比谷公園丸の内音頭大盆踊り大会

 京都府 

♪さあのやの糸桜、盆には何もいそがしや、(あづま)のお茶屋の門口に、赤前垂に繻子(しゆす)の帯、チヨトよらんせはいらんせ、巾着に金のないのはおほしんきこうしんき。(京都)

♪与作丹波の馬追ひなれど、今はお江戸の刀差(かたなさし)。(丹波) 

奈良県

♪まるこなれ〳〵、まんまるこなれヨイ〳〵、十五夜の月のヤーレ、まんまるくなれ、ヤツサノセエ、ヨヤサノセエ。

三重県

♪盆ぢや〳〵と盆待兼てコラシヨ盆の浴衣も出来やしよまいアヽ、ヨーオイサツサ、円くなれコラセ、十五夜の月の様に円くなれヤツトコマカセノドツコイシヨ。

愛知県                                        ♪盆ならさんよ〳〵、盆が近いに帯かつてお

 呉れ、赤いがよいか白いがよいか、当世流

 行の縫の帯〳〵、縫の帯は()がして見せた、

 おまん小女郎がして見せた。

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愛知盆踊り歌

静岡県

♪しだり柳の葉の露落ちて、池になるまで御身(おみ)とそはゞや、御身(おんみ)思へば関東坂を、かちや跣足(はだし)で一夜で忍ぶ、月の若さよ場をひろめ場をひろめ〳〵。

千葉県

♪沖ぢや秋刀魚(さんま)が一文八分、私しやお前に只八分。 

♪ほれたほの字を分析すれば、まようたまの字にへんがつく。

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成田の盆踊り歌

群馬県

♪四角四面の(やぐら)の上で、音頭(おんど)取るとは(はばか)りながらテレンコテン〳〵男通れば後ろ向いて御座る、女通れば莞爾(にこにこ)笑ふ、是はほんとの石地蔵様よ、男心は秋の空といへば、見捨てられたと女の心、神に願かけ石地蔵様も、可愛相だと心を汲んで、おれが必ず助けて遣ると、目尻を下げて笑ひを含み、口を開いて女に云ふにや、沢山供物(くもつ)をして呉れと云ふて、其れなら何も云はない事よ、テレンコテン〳〵女はほんとに有りがたいと思ひ、供物沢山上げては帰へり、日々来るのも嫌といはぬ、女心はアレ狭いものよ、テレンコテンテン。

宮城県

(とし)に御盆が二度あるならば、親の異見が絶やせぬ。

♪踊(こは)しの悪戯(いたづら)野郎は、死んでも仏になられない。

福島県

♪会津若松広いやうで狭い、人の恋路の邪魔をする。

山形県

♪□□は売物買はない人は金の工面(くめん)もヲワラ出来はせぬ。

♪踊り踊らば板の間で踊れ板の響きでヲワラ三味(さみ)も太鼓もいらぬ。

青森県

♪あまり(こひ)()しや()ね半分譲れ、(うか)に譲るだけ声でもあしな。(青森市)

石川県

♪いつは来いでも盆には御座れお墓まゐりにかこつけて。(金沢)

蒸汽(じようき)や出て行く、(けぶり)がのこる、のこる(けむり)が、ヤンサイコノー、(しやく)(たね)ナア、ヤレ癪の種、残る烟がヤンサイコノー、癪の種ナア、アイヤサカイヤカサ。(鳳至郡穴水村)

富山県

♪今夜夜はよし、踊るまいか皆の衆、ハイヤーサカサと(はや)いてだのだ、ハイヤーサカサ〳〵(後略、砺波郡西山家)

新潟県

♪盆だでがんに茄子(なす)の皮の雑炊(ざふすゐ)だ、余り盛りつけられて、鼻のてツこを焼いたとさ。(新潟)

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三階節 *市丸

北海道

♪おやじなんまくだら、かゝぬすまれる、わいわい〳〵のキ。(石狩)

♪どんな男に、どんすの羽織、着せて眺めりやなほ(どん)な。(十勝)

島根県

♪関の地蔵に振袖着せて、奈良の大仏婿に()る。(石見)

♪いなしよ〳〵と思ふたうちに、太郎が生まれて()なされぬ。(陰岐)

兵庫県

♪いつか(こう)(いけ)(こめ)()みしまひ、播磨灘をば唄で遣ろ。

明石(あかし)とのさん大きな(こと)(ねが)た、岩屋が瀬戸へはア、橋かきよと。(淡路)

岡山県

♪今年や豊年穂に穂が咲いて、道の小草(をぐさ)に金が生る。(美作)

♪備前岡山新太郎様の、江戸へ御座れば雨が降る、雨ぢやござらぬ十七八の、恋の涙が雨となる。(岡山)

 広島県

♪みやと広島に海が無かよかろ、いとし殿御を通はせはすまい、(わし)がちよこ〳〵通ひましよ。

香川県

♪みすじふろが(たに)朝寒む御座る、炬燵(こたつ)やりましよ炭添へて。

愛媛県

♪盆ぢやぼんぢやとたのしむけれどエイソレ、盆もはやすむ夜も明るヤアレおかしかヱ。(今治)

福岡県

♪連れて行かんせ何方(いづく)へなりと、仮令(たとひ)塩屋の火を焚くとても、お前(ゆゑ)なら苦しない。

大分県

♪くんくるべいと待つ夜は無くて、待たぬ夜は来てチヨンキリチヨンカイナ。

長崎県

♪平戸小瀬戸(をせど)から船が三艘見ゆる、丸にヤの字の帆が見ゆる、サヨイヤナア。

♪しまふた〳〵団七どんの、さらに小麦六把(ばかり)しまふた、裏のおかめ(おな)と、ざれあふて。(壱岐)

熊本県

♪だんだら提灯(ちやうちん)灯した、狐の嫁入(いたち)仲立(なかだち)、サツサラホウ〳〵

宮崎県

♪月はいみじき闇こそよけれ、忍ぶ姿の顔見えず。

鹿児島県

幾夜(いくよ)明日(あした)の浦こぐ船も、浮かれ()がれて磯へ寄る。

──いずれも盆踊り唄、近代に採録、『日本歌謡集成』巻十二、『わらべうた民謡大全』

 

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越後盆踊り *小樽市総合博物館運河­

おわら風の盆 *富山県八尾町の伝統行­

相馬盆唄 

 

馬子唄 まごうた

〈馬方節〉ともいい、〈馬士唄〉とも書く。往時、馬子や近在百姓が街道筋や峠で馬を曳きながらうたった歌。

 全国各地に点在する。関東では信濃や越後地方が中心である。 

【例歌】

馬方唄〔長野県〕 うまかたうた 

(わし)更級(さらしな)主水内(もんどうち)、中を流るゝ犀川(さいかは)よ、乗つ越せ山越せ、あかねこみゝ越せ、長野の土堤(どて)越せ、千曲川をよいと越せ。

──里謡、近代に採取、『里謡集拾遺』

馬士唄〔雑載〕 まごうた

いそげ馬方はや漕げ船頭、お伊勢まゐりは長の旅。(信濃)

傘を忘れたよ敦賀(つるが)の宿へ、雨の降るたび思ひ出す。(加賀)

一里二里なら徒歩(かつ)でも通ふ、五里と隔てりや(かぜ)便(だよ)る。(越中)

よくも染めたや馬追(うまおひ)浴衣(ゆかた)、肩にかけ駒裾栗毛。(陸前)

朝の出がけに山山見れば、黄金まじりの霧が降る。(陸中)

──民謡、近代に採取、『明治流行歌史』

 

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小諸馬子唄

シャンシャン馬道中唄

 

民俗歌謡 みんぞくかよう

土地の伝統的な生活文化に根ざした唄。里謡系の伝統唄が中心である。

【例歌】

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おしゃらく〔東京都江戸川区葛西〕

♪ヤレソーダヨ まずはこの家の お悪魔祓いに 播州は高砂 高砂文句も 十人よればな 十色とやらでな 私の高砂 浮世の始まり 高砂おじさんと 高砂おばさんがめかごをしょいそろ 熊手をかついで 尾上の松にと 掃除と出掛ける 松の枯葉や 尾花のよれ葉を 熊手でかきよせ 籠にとつめてな 我が家の方にと もどろとすればな お年の上なら 松の古木に 腰うちおろして 思わず知らずに 下なる小池を ながめいみればな 女亀と男亀が 高砂文句も まだ先長いが ここらで切りましょ おめでたや   

──里謡、葛西伝承、『日本民族芸能事典』

[メモ] 「そうだい節・高砂」の別称も。弘法大師の小念仏と飴売り芸が結びついて成ったという。昭和四十八年、東京都無形文化財。

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出羽里謡おばこ節 でわりようおばこぶし 

をばこ、田圃に、きさがりに、昼寐をる、秋田の、またぎどの、くまこ、めけた、やりこ、のべた、おまへ何をする。

てんのひるま、(わたし)、しやうばいだも、くまこ、めけた、例ひ、秋田の、またぎだとて、この熊、せめてせでならないぞや。

をばこ、心持ち、池この、(はし)のはの、溜り水、しこし、さわると、ころ〳〵ころりやと、転んで来る。

おばこ、ねな、はらこ、おがた、まづだけ、しよくあだり、ねなが、こだい、はら、おがた。(秋田県最上郡)

──里謡、近代まで伝承、『俚謡集拾遺』

 

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淡路だんじり唄 *玉藻前旭の袂三段目 道春館の段

道 唄 *棒踊り奉納

 

民謡 みんよう

ここでは新民謡など、地方色を帯びた新作歌謡をいう。そのため近代(明治・大正期)以前のものは〈里謡〉の名で別している。

【例歌】

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貝殻節〔鳥取県〕 かいがらぶし 

何の因果で 貝殻漕ぎなろた

かわいやの かわいやの

色は黒うなる身はやせる

ヤサホーエイヤ ホーエヤエ

ヨイヤサノ サツサ

ヤンサーノ エー

ヨイヤサノサツサ(以下囃子略)

戻る船路にゃ 魯櫂が勇む

かわいやの かわいやの

いとし妻子が待つほどに

忘られよか 情もあつい 

かわいやの かわいやの

あの娘あ浜村 お湯そだち

──民謡、現行、『日本民謡全集』4

[メモ] 〈浜村節〉ともいう鳥取県の民謡。鳥取の浜村近海で定期的に大量発生した帆立貝を漁するとき歌われた。力の要る底引き漁の労作唄から哀調を帯びた現在の詞が生まれた。

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八木節(正調(ママ)) 

はなの大江戸のそのかたわらに、さてもめづらし、しんじうばなし、所四ツ谷のしんじく町の、こんのゝれんにきゝやうのもんは、おとにきこえしはしもとやとて、あまた女郎衆のあるその中に、おしよく女郎のしらいとこそは、年は十九でとうせいそだち(第一節)

わけておきゃくはどなたときけば、はるははなさく青山へんの、すずきもんどといゆさむらいは、女房もちにてふたりの子ども、五ツ三ツはいたづらざかり、二人子供のあるその中で、今日もあすもと女郎かいばかり、見るに見かねて女房のおやす、あるひ我つまもんどにむかひ、これさわがつま主水さまよ(第三節)

──民謡、『江戸と東京』昭和十二年四月号「新宿と鈴木主水と八木節」に所収

[メモ] 全詞二十節を超える叙事歌である。

 

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串本節

さんさ時雨

 

民話唄 みんわうた

各地の民話を歌謡仕立てにしたもの。

【例歌】

仙北山〔岩手県〕 せんぼくやま

♪せんぼく山の中の沢から、縞の財布を見つけた、〳〵。おつとりあげて中を見たれや、黄金の玉は九つ、一つをばお上へあげて、八つの長者よと呼ばれた、〳〵。呼ぶも呼んだし、よばれたし、旭の長者よとよばれた、〳〵。長者殿は京から下つて、勢田のそり橋掛けやる、〳〵。せたのそり橋ふめやなる、〳〵。大工柄だが、木がらか。てうなとかんなのかけ柄、〳〵。かんなの音はすわ〳〵と、てうなの音はから〳〵。(上閉伊郡)

──里謡、近代に採録、『日本歌謡集成』巻十二

[メモ] この短い詞章の中に、尻取り・冗語・折込・数遊び・掛詞と縁語・連想法・命名法・擬音など、なんと十種類以上の言語遊戯技法や文彩法が用いられている。

 

八木節 やぎぶし

群馬県の民謡。

発祥地が現足利市の八木宿であることからの命名で、またそこの美声の馬方渡辺源太郎がうたい始めたことから〈源太郎節〉の別名もある。さかのぼって越後の瞽女(ごぜ)唄「新保広大寺」が元唄であるとされている。

粗野ではあるが鳴物入りの賑やかな唄で、全国的によく知られている。主題も「国定忠次」や「鈴木主水」などに分かれている。

 【例歌】

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木節〔国定忠次〕 やぎぶし/くにさだちゆうじ 

アアヽアー頃は弘化の三年九月、秋の半に大小屋掛けて、夜も昼間も分ちは無くて、勝負々々出その日を送る、人もうらやむ大貸元よ、月に叢雲花には嵐、兎角浮世は変りがありて

アアヽアー、或る日親分忠次を初め、二人許りの乾分を連れて、鹿沢村へと来かヽる途中、咽喉(のど)が渇くと立寄る茶店、茶飲み話にはからず聞いた、いとも哀れな話が御座る

アアヽアー土地の代官赤塚軍次、世にも稀なる悪役人で、民を虐げ非道をなさる、庄屋才助僅かな事で、罪も無いのに牢屋の住ひ、村の人々寄集りて

アアヽアー、そのや孝行の才助殿を、助け出さんと代官役所、哀訴嘆願致したけれど、お金出さなきや出してはくれず、其所で色々相談致し、そのや妹苦界に沈め

アアヽアー、お金とゝのへ代官様へ、願いあげれど兎や角云ふて、金は只取り才助出さず、村の人々怒つたけれど、先は代官とこちらは百姓、泣きの涙で無念を(こら)

アアヽアー、非道日毎に加はる許り、是を聞いたる親分忠次、髪は逆立ち歯ぎしりなして、天に代つて誅戮せんと、村へ帰つて乾分を集め、同勢すぐつて若者揃ひ(後略)

──瞽女歌→民謡→盆踊り唄、近代に採録、『日本民謡大観』関東篇

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八木節〔鈴木主水〕  やぎぶし/すずきもんど 

はなの大江戸のそのかたわらに、さてもめづらし、しんじうばなし、所四ツ谷のしんじく町の、こんのゝれんにきゝやうのもんは、おとにきこえしはしもとやとて、あまた女郎衆のあるその中に、おしよく女郎のしらいとこそは、年は十九でとうせいそだち(第一節)

わけておきゃくはどなたときけば、はるははなさく青山へんの、すずきもんどといゆさむらいは、女房もちにてふたりの子ども、五ツ三ツはいたづらざかり、二人子供のあるその中で、今日もあすもと女郎かいばかり、見るに見かねて女房のおやす、あるひ我つまもんどにむかひ、これさわがつま主水さまよ(第三節)

 ──瞽女歌→民謡→盆踊り唄、近代に採録、『江戸と東京』昭和十二年四月号「新宿と鈴木主水と八木節」所収

 [メモ] 全詞二十節を超える長叙事唄である。

 

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桐生八木節祭り 

 

安来節 やすぎぶし

出雲を代表する民謡。

島根県の中ノ海に面した港町安来に発祥したが、根本は「出雲節」とされている。これを鍼灸師の大塚順仙が現行歌に近い詞に作りあげた、とも。そして大正十年前後に東京の浅草に進出し、京阪でも大劇場で公演するなど、全国的有名民謡として絶頂期を迎えた。

〈安来節〉に付きものの滑稽踊り「泥鰌(どじよう)すくい」は砂鉄精選用の土壌掬いなる作業唄によるとの説もあるが、これは話が出来すぎだ。

【例歌】

安来節〔抄出雑載〕 

♪安来千軒名の出た所 社日桜に十神山

♪安来十神山鉄ならよかろ 可愛船頭さんに唯積ませう

♪七つ下れば安来馬が戻る 馬の鈴の音足拍子

♪出雲八重垣鏡ケ池に うつす二人の晴れ姿

♪出雲小富士を屏風と見れば 拗ねて寝たような夜見ケ浜/一夜二夜では褄折笠よ 三度笠から深くなる

♪巌の清水は底からわくが 主の心もそこからか

♪いやと思へば姿も声も 朧月夜のかげもいや

♪いやで来ぬのか思はせぶりか 但しやよい花出来たのか

♪いやな客とりや二階が地獄 上る梯子は針の山

♪麦の緑や菜の花かげに つゞく出雲の順礼笠

♪梅ケ枝源太でわしやないけれど 初の御見(ごけん)で惚れた主

♪まいて三すぢの謎糸かけりや 安来名所を唄で解く

♪思ふことさへいはれぬ口で 嘘のつけよう筈がない

♪嵩と羽久羅のあひから月が さすよあの里ぬしの里

♪色が黒けりや達者で可愛い 白けりや弱いよで尚ほ可愛い

♪私が心は赤川鮎よ わつて見せましよ腹の中

♪生木さかれた昔を今に 残る恨みのいぶり炭

♪またしても刃物三昧こはくはないが きれるといふ字がおそろしい

♪晴れて添ふ日を松江の湖水 たまの大橋たのしみに

♪早く出雲の八重垣さまへ 縁の結びを頼みたい

──里謡→出雲節、大正五年採録、『正調安来節』(大阪・榎本書店版)

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安来節訛唄〔抄出雑載〕 やすきぶし/なまりうた  

♪安来千軒名の出たところ 社日桜に()(がみ)山、「十神山から沖見れば、何処(いづこ)の船かは知りらねども滑車(せみ)のもとまで帆を巻いて 鉄積んで(かみ)のぼる(伝承唄い出し)

♪わすは、おんすう、ふらたのおまれ、「づうる、ぬづうる、三づうる、ぬすの果から、ふがすの果迄で、ふくづるふつぱる来たものを、今更らふまとて、ふまとらぬ 「ふろい世界にこな旦さん ぬすふとる(妾や雲州平田の生れ、十里二十里三十里、西の果から東の果まで、引ずり引つ張り来たものを、今更(ひま)とて暇取らぬ、広い世界に主一人)

♪雨のふるひに竹やび越えて 来て見りやかんたは大いぶき 「あだんちや、とげしようか、コナちやつちや、キヤー腹が立ち(標準語訳は省略)

♪おらはえぢものめぢおら、おまれ 「若布(わかめ)や若布和布(めのは)や和布、おばはん、こんちもよい天気たゞものおおきに御世話さん、あげこげ、はつしやりますと、きんろのめがへづる 「掛けた和布はこなおばはん ねづすもんめ(標準語訳は省略)

──訛り唄、大正六年採録、 『新磯節と安来節』

[メモ] 各節とも標準語訳(意訳)は出典に載っている。

 

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安来節」 *中野一郎

 

湯揉み唄 ゆもみうた

温泉場で行われる湯揉み作業唄。

関東では草津温泉のそれが有名である。

【例歌】

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草津節 くさづぶし 

♪草津照る〳〵、軽井沢くもるドツコイシヨ、間の嬬恋コリヤ雨となるヨ、チヨイナ〳〵。(元唄)

草津よいとこ一度はおいで、お湯の中にも花が咲く。

お医者さんでも、草津の湯でも、恋の病は治りやせぬ。

──温泉唄、伝承

 

よさこい節 よさこいぶし

土佐の民謡。各節の終りに「よさこい」の囃子がつくことからの曲名である。

元禄期に地方唄として起源。安政期に五台山竹林寺の坊主と鋳掛屋の娘との色恋沙汰を扱って、一躍その名を広めた。それかあらぬか、当時はバレぶりのひどい詞がいくつも作られている。

今でこそ新民謡として体裁が整っているが、これまでの過程は低俗きわまるものであった。

【例歌】

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よさこい節 よさこいぶし  

♪「土佐の高知のはりまや橋で、坊さん簪買を見た、ヨサヨイ〳〵 「坊さん簪買のはよけれども、按摩さん眼鏡を買に来た、コリヤヨサコイ〳〵

♪「恋の巨燵に情の布団、女郎が持出る多葉粉盆、ヨサコイ〳〵 「女郎は二階の格子の小梅、客は鶯来てとまる、コリヤヨサコイ〳〵

♪「薩摩名物箱入煙草、六部が国分を買ふの見た、ヨサコイ〳〵 「六部が国分買ふのはよけれど、一部で女郎に八部され、コリヤヨサコイ〳〵(後略)

──俗謡→地方唄、安政五年から幕末に流行、『小唄の(ちまた)

 よさこい節〔再〕 よさこいぶし

♪飲めや唄へや大阪の茶屋で、下戸の建て

 たる倉は無い、ヨサコイ〳〵。

♪坊さんかんざし買ふのはよけれども、いざりが駒下駄買ふを見た、ヨサコイ〳〵。

〽丸い頭へ水瓜をのせて、乗るか乗らぬか乗せてみろ、ヨサコイ〳〵。

──俗謡→地方唄、維新期再流行、『明治年間流行唄』

 

米山甚句 よねやまじんく

明治中期よりはやった米山地方の里謡。

全国的にかなり広範囲に広まった。

【例歌】

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米山甚句 

行かうか参らんせうか米山の薬師、一つア身のため、サヽ主の為。

黄楊(つげ)の横櫛伊達にはさゝぬ、玉川とけし島田のもつれ髪、「切りし前髪の、サヽとめにさす。

さあさ出かけませうか隅田の桜、一つア身のため、サヽ気の保養る(替え唄)

実に惚れたか浮気の花か、分からぬお前に、サヽ情立てる。(替え唄)

破れかぶれで濡れたる二人、さした傘からサヽ洩る浮名、ミナヨ〳〵ミナ〳〵ミナヨチヨイミナサツサ。(替え唄)

子まである中引分けられて、(やつ)れ果たるサヽ干ずゐき、ミナヨ〳〵ミナ〳〵ミナヨチヨイミナサツサ。(替え唄)

──里謡、近代に採録、『明治年間流行唄』

 

琉球節 りゅうきゅうぶし

♪琉球へおじやるなら草鞋(わらぢ)をはいておじやれ、琉球は石原こいし原、シタリヤヨメ〳〵、シンニヨタ〳〵シテガン〳〵。

♪琉球と鹿児島が地続きならば、通うて酒宴(さかもり)して見たい、シタリヤヨメ〳〵、シンニヨタ〳〵シテガン〳〵。

♪花は霧島煙草は薩摩、ういて上るが桜島、シタリヤヨメ〳〵、シンニヨタ〳〵シテガン〳〵。

──明治年間流行唄明治三年頃流行

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都道府県別 人気の民謡

北海道

 

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網起こし音頭

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大漁唄い込み

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房州追分

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佐渡金山

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寺泊おけさ

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米山甚句

両津甚句

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五箇山追分

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こきりこ節

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四つ竹節

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白峰かんこ踊り

七尾まだ

能登の舟漕ぎ唄

能登麦や節

野々市じょんから

山中節

福井県

 

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芦原節

越前舟漕ぎ唄

三国節

岐阜県

 

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お婆々(岐阜音頭)

郡上節

げんげんばらばら

高山音頭

飛騨の子守唄

飛騨やんさ

古川ぜんぜのこ

静岡県

 

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下田節