「恋」という字はマタに心す、と書く。助平な恋唄どもにも市民権を与えよう

 

Ch.21  破礼(バレ)18禁〕

 

Ch.21 破礼唄 目録 (五十音順)

 

飴屋のエロ唄 意味深 裏門探し エログロ・ナンセンス 艶歌 艶笑唄 お亀唄 

お万が飴売り 開帳 官能ソング 戯笑唄 陰名 閨怨の唄 下種唄 騒ぎバレ唄 

都々逸 バレ唄 バレ唄 バレ替え歌 バレどど バレ里謡 火遊びの唄 文福茶釜 

まっちゃらこ 淫ら唄 野合の唄 よかちん 猥歌 

 

 

飴屋のエロ唄 あめやのうろうた

飴売り行商が流し歩くとき、客寄せにうたった卑俗な唄。

江戸の風俗文献を渉猟すると、飴売の種類とその商い口上や唄が多いのに驚かされる。たとえば土手飴、お駒飴売り、唐人飴ホロホロ、飴の曲吹き、ヨカヨカ飴、飴売り取替(とつかえ)(べえ)など百出の賑やかさ。なかでも演出の奇抜さで知られた「お万が飴売り」は詞で色事を教えている。

 可愛けりやこそ神田から通ふ。憎うて神田から通はりよか。お万が飴ぢやに一ツてふが四文じや。(『江戸行商百姿』花咲一男著)

この飴売りは女装で、百文以上買う客がいると右の詞を歌って踊ったという。こうした飴屋唄には卑俗な唄が目立ち、飴屋が近づくと母親が子供を遠ざける光景も見られたそうである。なお、明治の文豪饗庭篁(あえばこう)(そん)(一八五五~一九二二)の『張込帖』の中に、江戸時代の飴屋唄がいくつか記されている。これまたエロ唄が目を引く。

 ヨカヨカ飴売り〔近代〕

【例歌】

飴売土平(どへい)

 土平が頭に蠅が三疋止まつた、只もとまれかし、雪踏はいてとまったとヘ〳〵、土

 平といふたらなぜ腹たちやる、土平も若い時色男とへ〳〵。

──俗謡、明和頃に流行『続 飛鳥川』本調子小唄、文久二年

タンボサン

かわいおとことなつふく風は、とことんとこ、あけていれたい、ヤレコノとこのうち、たんぽさん〳〵、あつたら男に女ぼねがへ、女房があつても、あにきの女ぼうで、しよことがせねへ、たんぽさん〳〵 

──俗謡、文政四年成、聞之任(ききのまにまに)

 

意味深 いみしん

「意味深長」の下略語で、男女交際などにかかわる言外に含みを持つ言葉。

あえて遠回しな表現を弄し、言いたい本音を相手にそれとわからせる文彩技法を「婉曲法」といい、その俗語に相当するが意味深である。この修辞用法を使った流行り唄が多いのも特筆すべきことであろう。

【例歌】

♪あだなゑがほ

あだな笑顔につい惚れこんで。つまこう雉子(きじ)のほろゝにも「千尋(ちひろ)の海の(かり)がねに。ことづてかへすつばめのたより「うそならほんにかほどり見ても。羽がへのはだにいだきしめ。そのまゝそこへとまり山。うれしい中ぢや。エヽ〳〵ないかいな。

──三下り端唄、文久二年成『粋の懐』初

*思う願いが叶った女の心情を遠回しに歌っている。「雉子のほろゝ」は、雉の雌が雄を誘うときに羽を震わせる仕草を示したもの。

♪あふた夜は

あふた夜は「(つい)ておくれなあけのかね「たまのごげんじやにナアしんきらし。

──本調子小唄、文久二年成『粋の懐』二

*どこが意味深なのか、知る人ぞ知る。

♪紅屋の娘         野口雨情詞

・紅屋で娘の云ふ事にや サノ云ふ事にや

春のお月様薄曇り トサイ〳〵薄曇り

・お顔に薄紅つけたとさサノつけたとさ 

私も薄紅つけよかな トサイ〳〵つけよか

・今宵もお月様空の上 サノ空の上 一はけさらりと染めたとさ トサイ〳〵染めたとさ

・私も一はけ染めるから サノ染めるから

袂の薄紅下さいな トサイ〳〵下さいな ──日活映画「紅屋の娘」主題歌、昭和四年封切日本ビクターレコード譜』

*大正九年に雨情が発表した「春の月」という詞に、大正十三年中山晋平が曲を付けた。詞中の紅屋、お月様、薄紅などから言外に女主人が月経中であることを言い表している。

 楽譜『紅屋の娘』

港が見える丘替え みなとがみえるおかかえ

♪あなたと二人でねる夜は

 座敷が暗い夜

 色はえた布団ただ一つ

 なやましく敷いてある

 胸のドウキはやる心

 イクヨイクヨと云うとき

 私はあなたのものよ

 春の宵でした

──酒席唄、戦後混乱期に流行

 

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雨の花園(仲宗根美樹)

痛い痛い痛いのよ *応蘭芳

お願い入れて *操 洋子

淡白宣言 *関白宣言替え

ハメハメ *南州太郎

四文字恋歌 *カラオケ(替え歌)

 

裏門探し うらもんさがし

愛戯の一つ、相手への肛門愛撫。

女陰探幽ならぬ男色版である。

【例歌】

おもてご門はさつぱりふさがり、出入りかなはずぐんにやりしながら、裏門さがします (江戸期の俗謡雜載より)

 

エログロ・ナンセンス

【例歌】

キッスOK       二村定一・井上紀久子唄

♪楽屋の風呂で拾ったキスを
 嬉しい今宵の思い出に アーラ
 「アーラ また思い出したのぉ?」
 アラアラ アーラ 思い出に
♪胸の乳房に夜更けてそっと
 キッスした人知っててよ アーラ
 「いけないわよぅ」

 アラアラ アーラ 思い出に
♪抱いて抱かれてキッスで泣いて
 震えているうちゃまだ初心よ
 アーラ 「アァッ。皆さんが見てるわよぅ」
 アラアラ アーラ まだ初心よ
♪キスで落ちるような紅なぞだめよ
 一度許せばそれまでよ アーラ
 「わたし 断然好きよ!」
 アラアラ アーラ それまでよ
♪厭な人でもキッスをされりゃ
 いつか愛しい人になる アーラ
 「あらっうれしいわよぅ」
 アラアラ アーラ 人になる

──歌謡曲、昭和初期の作

 とんがり帽子(鐘の鳴る丘)替え とんがりぼうしかえ

♪おヘソの下の黒マンジュウ

 とんがり帽子のクリストル

 金がない鎮甫の毛

 メーメコタメコないてる

 足はそろそろ遊廓へ

 黒いおマンコはおいらのものよ

──バレ替歌、戦後混乱期に流行

ジングル・ベル替え

♪シャツ脱いで パンティ脱いで

 ブラジャーとって またひろげ

 エエテ エエテ モツトエエテ

 イイワ イイワ 死にたいわ

♪チンノケ マンノケ ナゼハエタ

 コヤシモヤラズニ ナゼハエタ

 ソリャシラネェ ソリャシラネェ

 ヒトリデカッテニ ハエタノサ

──バレ替歌、昭和四十年代に広まる 『日本春歌考』

 

艶歌 えんか

いわゆる演歌のうち、下ネタを主題にした艶っぽい歌謡。

「演歌」は東京で、「艶歌」は大阪ではやった歌のこと。演歌と艶歌とを仕分ける線引きも実際には曖昧である。単なる字面の違いというだけのことで、内容は艶歌としての特徴の出ている例歌を見て理解したい。

【例歌】

色道数え唄 いろのみちかぞえうた                

〽一ばんちよんの間 十割とよく□□□□た 百までも変るまい 千ぼりは馬鹿らしい 万じう肌じや うまい〳〵 億を〳〵それそこ〳〵 兆度良い首尾 京せいも良いが地者も良い ()ぶんよりもとぶふん 宗とこゝ来な 穣ぶな□□□か 溝□□□□たのしむが いのち〳〵 潤じんところ見せな 正もん〳〵大せいもん 載さいて来てくんな 極上開とは これじや〳〵

──酒席唄、江戸後期流行、『てごとの巻』

[メモ] 〈伏字歌〉でもある。他愛はないが読者は伏字当てで楽しむ。

へそのあなくどき            八丁堀佐吉作

〽おそれサアエ、(おふく)も。もつたいなくも。(あな)根本(こつぽん)たづねてみれば。天照大神(てんしやうたいじん)こもらせたまへ。富士の人穴大仏まへで。あまのいわ戸のあなよりはじめ。人の五体に数ある穴よ。わけてあはれは。へそのあなくどき。帯の下なる(ふんどし)の蔭で。そこら〳〵となにやらくどく。(ゆふ)も道理や。げにことはりよ。いかな穴にも役目があるに。わしはどふした因果な穴で。役に立ゝぬとおしかたづけて。一生一代無役(むやく)で暮らす。

──流行節、幕末に流行、『新はん へそのあなくどきやんれぶし』(ペラ本)

♪やつこらやのや      添田啞蝉坊詞

・先に木のないヤツコラヤノヤ/三笠の山にネーアナター/登りつめたら恥かしい恥かしい/ヤツコラヤノヤ ヤツコラヤノヤ

・つとめる身はヤツコラヤノヤ/田毎の月よ

ネーアナター/どれがまことの月じややら月じややら/ヤツコラヤノヤ ヤツコラヤノヤ

・お前百迄ヤツコラヤノヤ/わしや二百迄ネーアナター/残る百年浮気する浮気する

ヤツコラヤノヤ ヤツコラヤノヤ

演歌、大正十四年頃流行、『新はやり唄全集』

 

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越前恋人形 *ときめきさくら

エロ小唄

女はそれをがまんできない *大信田礼子

鴨川情話 *なかの美智恵

笹の宿 *ai 博美

セクシー・ナイト *三原じゅん子

泣き笑い *朝比奈 瞳

橋立情話 *白鳥恵子

人待ち酒 *なかの美智恵

口紅(べに)を拭いて *ai 博美

雪の浄閑寺 *ときめきさくら

夜風のワルツ *ときめきさくら

夜の女郎蜘蛛 *結月ゆかり

若狭情話 *野麻みえ子

 

艶笑唄 えんしょううた

男と女の情事、ときには秘部(なさけどころ)を主題にした風狂の歌謡詞を〈艶笑唄〉という。

当然のことながらエロ事を滑稽味で包み隠し、独特のおかしみを発揮した作品が目立つ。あるいは世に隠れたマニアックな作品が多く、そのため出典等も曖昧なものが少なくない。

 色道は楽しみな誘惑も奥行きの深い世界

【例歌】

いなせ節 いなせぶし

湯やでへ〳〵 評ばん御しんぞ おかこか おてんばこむすめが アレぎやうさんな もゝだしかけて それをばんとうがおミなへし

すつてんころりん〳〵と だいの上から ひつくりかへつて こしのほねまで ひつくじいた サヽおいしやさんへかけつけた

あんまへ〳〵 けんびきもミましよう 上下(かみしも)りやうじ足力(そくりき)が 一寸(ちよつと) すいふくべ あんふくしよ としまおなさけ所を さぐりかけ

とつつらまつて ぶつくじかれて けんぎようさんに こうとうさんたのんで わび事ハは相すんだ 是から気をつけな

──酒席唄、安政三年頃流行、『新板いなせぶ

  しかえうたつき』(ビラ本)

[メモ] 「いなせ」とは江戸っ子の粋を表す言葉なのだが、この詞はまたいわゆるワ印(卑猥本)そのものである。

こんりやこりや節

♪蒸気や出て行く、士官も会計もかへる〳〵、けいしちやならねと芸者が袖振る泣き出す花魁止めだすなかいに、残る烟がアタ……癪の種、オーサンコリヤコリヤ。

♪お母が、忍泣きして意見をすれば、忰は横向いて舌を出す、親父がんがん、いがいあきれ、金太の田地を質置てすちやんどん〳〵花魁買いのおべらぼのどら息子向見ずには仕方がねいコンリヤコリヤ。

♪あの花は意気な花だが、ちと木が高い、とても我等が手にや折れぬ、きびす、しびれ、きれる、いたい、金側竜頭の時計さげて筑前博多の帯しめて、すきあん手枕吸付烟草の程のよさ、時の流行で仕方がなへ阿房らしいでおまへんか、オーサンコリヤコリヤ。

──お座敷演歌、大正後期に流行、『美音の

  栞』第四七七八九号

*演歌師が芸者に化け、バイオリンが三味線に変わった大正後期の酒席唄。残るはわずかに演歌特有の自由奔放な演奏ぶりだけだ。

 

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お江戸チョイチョイ節 *カラオケ(カバー)

エロ感時代の歌 *羽衣歌子

 

お亀唄 おかめうた

ここでいう「お亀」は、愛知県三河地方で伝承の宮のお亀こと巫女風酌婦をいう。一般に「お多福」ともいっているおかめのことではない。

お亀については、岡崎の古町(ふるちよう)遊廓界隈でしたたかな遊女(参宮者相手の私娼)をさす別称ともいう。すなわち、私称なのか汎称なのかもわからない。いずれにしても諸伝があり、謎めいた存在の婦人である。小寺玉晁は著『小唄の(ちまた)』で「天保元、庚寅年春、御蔭参りといふ事六十一年目の由にて、諸国の人頻に伊勢へ参り、其節左の唄大に流行」と書いているので、例歌に挙げてみた。

【例歌】

でんぐりぶし

〽宮のおかめさんにしま縮緬の衣裳着せて、ながむれば、いかなお客さんでもお腰がたよ〳〵なされますか、こいつもばいしてでんぐりまなこのばい。

〽おかめ〴〵とナア云ふておくれるな、わたしや新長屋の福の神よトコセ。

──地方唄、文政年間流行、『小唄の衢』ほか

 

お万が飴売り おまんがあめうり

江戸の風俗文献を渉猟すると、飴売りとその商い口上が多いのに驚かされる。たとえば土手飴、お駒飴売り、唐人飴ホロホロ、飴の曲吹き、ヨカヨカ飴、飴売り取替(とつかえ)(べえ)など百出の賑やかさ。なかでも演出の奇抜さで知られた「お万が飴売り」も詞で色事を教えている。

【例歌】

 可愛けりやこそ神田から通ふ。憎うて神田から通はりよか。お万が飴ぢやに一ツてふが四文じや。

 ──俗謡、『江戸行商百姿』花咲一男著

 この飴売りは女装で、百文以上買う客がいると右の詞を歌って踊ったという。

昔の子供らがマセてしまうのもうなずける。井戸端ではかみさん連が艶話(つやばなし)。門付けや物売りがいかがわしい詞や歌を放吟する。夜は夜で(チヤン)とお(カア)の川の字崩しが始まる。いやでも大人の世界がおっかぶさってきた。

 お万が飴売り

 

開帳 かいちょう

寺院において、特別の日に厨子の(とばり)を開いて中の秘仏を公開するのが本来の開帳。この帳を裳裾になぞらえ、女の素股をチラリと見せるという発想から、その女陰をさして御開帳と称するようになった。

開帳の狙いは三つに大別できよう。一つ、淫乱症の女が自分の秘部を他人に見せたがる病癖。二つ、見世物興行の演じ物。三つは、それら以外の意図での開帳。うち三つ目は主

化し唄も含まれる。

開帳という行為は、まさに男の意欲の鼓舞のための手段である。たとえば房事一交二交で萎えた男の気を奮い立たせ三つ目をせがむ好色女が、男の目の前で愛液の滴り落ちる局部へ指を差し入れて見せるなどなど。

 中世のフランスや近代アフリカで実際に記録された史実だが、戦場へ赴く兵士達の戦意を鼓舞すべく、市井の女たちが集まってスカートの裾をたくし上げ、女陰を見せて送り出

した。ある者は前門だけでなく、肛門まで開いて見せたという。江戸川柳に、

  開帳を裏から湯番拝んでる

  船玉をお開帳して下女昼寝

  人寄せの工夫は別な開帳師

お竹開帳

如来(によらい)女の名でお竹さん、開帳するのでとつぴきぴのぴ、祖師(そし)は深川浄真寺(じやうしんじ)、てんてん天を飛ぶとりのまち、開帳あたつて三所(みところ)けん、なんのこつた、じやぶじやぶ、お腰を撫で撫でくるりとまはつて参詣しよ。(伝承拳唄)

*拳唄とは、宴席などでじゃんけん遊びをするため、その遊興用に作られた俗謡。時代や土地によってさまざまな詞があるが、狐拳・藤八拳などが一般的である

 

官能ソング かんのうそんぐ

芸妓の客あしらいの一つで、官能的で思わせぶりな言動をとり相手の気を引くこと。

たとえば、客に次回は共寝するようなことを匂わせ、気もたせの雰囲気を作りながら、その場で散財させてしまう。

【例歌】

♪いろは節

・入れておくれよ自然(じら)しちや厭だ、ホイトサ、主のさしたる傘のなか、ロトハトニトホトヘト、サツサ〳〵〳〵、

・娼妓が放屁(おなら)を九つたれりや、ホイトサ、九屁のきつねと云ふだろふ、ロトハトニトホトヘト、サツサ〳〵〳〵、

──バレ唄、明治十(治八年頃流行『日本近代歌謡史』上

 

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新婦に捧げる歌 *どぶろっく

ないないづくし 

小指の思い出 *伊東ゆかり

 

戯笑唄 ぎしょううた

ばかばかしいが笑いを誘われる唄。下がかった内容のものが目立つ。

好事家好みで高座向け歌謡である。

【例歌】

市の豆蒔 いちのまめまき

♪おゝいおゝい大屋さん、その豆はやく蒔いておくれ、大屋の豚六まじめ顔、きさまのゆだんがさきなれば、あとにつづいて蒔くわいな、亭主の馬鹿蔵あきれてはらをたち、いやいやそこなふぎものさきへふて、ゆだんののぼりはあとがよい、聞いて二人は顔を赤め、豆をひろふは

──大津絵唄、明治七年頃流行『大津絵節、市豆蒔』

[メモ] 豆は女陰の隠語でもあるから、きわどい戯笑唄ということになる。

屁を垂れ節 へをたれぶし

♪浅間山から鬼や尻出して、御大しやう()れるような屁を垂れた

♪浅間山から鬼や尻出して、鎌でかつ切るやうな屁を垂れた

──追分替り、明治十八、九年頃流行、『明治流行歌史』

よかちよろ節 よかちよろぶし

♪芸者だませば七代たたる、パツパヨカチヨロ、祟る筈だよ猫ぢやもの、ヨカチヨロ、スイカズワノホホテ、わしが知つちよる、知つちよる、いはでも知れちよる、パツパ。

──流行、明治二十年頃流行、『明治年間流行唄』

 

気もたせ歌 きもたせうた

わざと曖昧な表現を用い、相手が描く概念を土壇場でひっくり返してしまうような操作をした唄をいう。

一種の歌詞言葉遊びだが、多くの例が下ネタを用いている。

 「気もたせ唄」で能面ヅラを笑わせることができるか

【例歌】

じくじく節 じくじくぶし

♪饅頭屋の〳〵、あんのしめ木が生木(なまき)にて、しめる(たび)(ごと)にじく〳〵と。

山寺の〳〵、鐘のしゆもくが生木にて、つく度ごとにぼくぼくと。

豆腐やの〳〵、うすの挽木が生木にて、ひく度ごとにじく〳〵と。

いろは節 いろはぶし

♪入れておくれよ自然(じら)しちや厭だ、ホイトサ、主のさしたる傘のなか、ロトハトニトホトヘト、サツサ〳〵〳〵、

♪娼妓が放屁(おなら)を九つたれりや、ホイトサ、九屁のきつねと云ふだろふ、ロトハトニトホトヘト、サツサ〳〵〳〵、

──バレ唄、明治十八年頃流行、『日本近代歌謡史』上

 

陰名唄 くぼのなうた

【例歌】

催馬楽「陰名(くぼのな)

   陰名

〽陰の名をば (なに)とか言ふ 

陰の名をば 何とか言ふ

つらたり けふくなう たもろ

つらたり けふくなう たもろ

──古俗謡『催馬楽』

*作者は未詳。

[メモ] 催馬楽について

●催馬楽は平安時代の雅楽系楽曲の一つに組み込まれたが、時とともに民衆に広く

愛唱される。つまり奈良時代に現れた〈風俗(ふぞく)歌〉を、平安時代に入ってから俗謡集と

して手を加えられ成ったのが〈催馬楽〉である。九世紀から十世紀前半にかけて隆

盛になった●しかし元をただせば雅楽の系統を汲み、語源に馬子(前張(さいばり))の意味があ

る反面、土臭さが残っているという多様性をもつ。鎌倉時代に現れる組歌の母体でも

ある。ハレの日などに人々が集い、笛・(しよう)和琴(わごん)などの楽器を伴奏に鳴ら

しながら唱和する●掲出の主題は「陰名」すなわち女の隠し処である。陰はくぼん

でいるところ、女陰をさす。当時の三つの異名(俗称)をあげつらね歌謡詞に仕立て

た●一見露骨ではあるが、じつは素朴な呪術歌なのだ。「陰名」は酒宴のほか神事

や労働のおりにも歌われた。男たちに混じり女も口ずさんだろうと想像できる。集

団で睦み合う前の前戯的役割も果たしたのではなかろうか。

 姿かたちが女陰に似ているというだけで、こんな自然の造形も歌詞の材に使われた

 

閨怨の唄 けいえんのうた

性の喜びを知る婦人が独り寝の寂しさにもだえること。

ポルノや詩歌で格好の情景描写に使われている主題である。

【例歌】

♪投節

・思ひ出して。寝られぬこよひ。枕なりと。も伽。となれ。

・恋のふちせに。身はなげぶしの。思ひ沈む。は我れ。独り。

・こひはせまじな。姿はやつれ。人の見る目。も恥づ。かしや。

・恋で死んだら。焼かずに棄てよ。しんはこがれ。てゆく。ものを。

・いつもなれども。こよひの夜程。君の恋し。き夜さ。もなや。

──三味線歌、元禄期に流行『当世なげ節』雑載

 *遊里やお座敷で歌われたのが投節。本唄は女の独り寝をかこつ心の葛藤を見事に描いている。

 

下種唄 げすうた

品性を欠く低劣な歌謡。

ほとんどが下半身事を扱い、興味本位の詞がむき出しになっている。

【例歌】

わたしや蛸の性で わたしやたこのしようで

わたしや蛸の性で吸ひつくけれど、お前海老(えび)の性で()ねなんす、ノンノコサイ〳〵

──俗謡、天明八年大坂で流行、『摂陽奇観』巻三十九

諸国行脚の西行 しよこくあんぎやのさいぎよう

〽諸国行脚の西行法師が、岩に腰掛け海眺め、蟹にちんぼこはさまれて、あいたゝつ、はなしやがれ。

──俗謡、文政末年に流行、『はやり唄変遷史』

サツクリ節「洋妾」 さっくりぶし/らしゃめん

湯屋(ゆや)のサア、湯屋の湯銭が、十六で、オヤ、サツクリ、二十四文のよたかそば、アア、焼酎かんせずとも、けんちんから汁ごつたまぜ、どぶろく二杯が百するか、オヤサツクリ、サツクリ。

♪さしみサア けさも料理は、横浜で、オヤ、 サックリ、豚のうしほに小鍋だて、アア、

大将どんたくすりや南きんおけしがやつて来る、ラシャメンおいどに毛が無いか、オヤ、 サックリ、サックリ。

──俗謡、明治四年頃流行『明治流行歌史』

[メモ] 「ラシャメン」は近代、西洋人の妾になった日本婦人をさす蔑称で、語源は書くのをはばかる類のものである●ラシャメンの初成りは、万延元年七月にオランダ領事某の思われ者となった、横浜本町の文吉の娘ちょうとされている。下田の「唐人お吉」は先輩洋妾だったが、彼女の頃はラシャメンの呼び名がまだなかった●明治になり開港場の横浜に外国人が居留するようになると、ラシャメンの数も自然に増えていく●掲出二節目の「サックリ節」の詞は、番外者を徹底的にいびろうとする下種(げす)根性がむき出しだ。往時、日本人の排他思想は、外国人を温かく見る目を持たなかった。洋妾も美人であるほど反感が強く、市井から目の敵にされた。

 唐犬 ラシャメン、二代広重画「横浜売物図会之内」

浪花さつくり節 なにわさつくりぶし  

長門(ながと)サア、お供揃ひが、見事さよ、オヤ、サツクリ、さても中国(たひら)げて、アア、京都上洛すみやほどなく(あづま)へ御がいじん、大江戸に黄金の花咲くか、オヤ、サツクリサツクリ。

♪茶摘サア、宇治の茶つみが、見事さよ、オヤ、サツクリ、それで道者(どうじや)(しゆ)が浮かされる、アア、道中かんなんするとても、お金で一番はつてくりやう、財布が空になるとても、オヤ、サツクリ、サツクリ。

♪湯屋のサア、湯屋の湯銭が、十六で、オヤ、サツクリ、二十四文のよたかそば、アア、焼酎かんせずとも、けんちんから汁ごつたまぜ、どぶろく二杯が百するか、オヤサツクリ、サツクリ。

♪さしみサア、けさも料理は、横浜で、オヤ、サツクリ、豚のうしほに小鍋だて、アア、大将どんたくすりや南きんおけしがやつて来る、洋妾(ラシヤメン)おいどに毛が無いか、オヤ、サツクリ、サツクリ。

──俗謡、維新期流行、『明治流行歌史』

 明治開化期に「唐人お吉」の名で知られた斎藤吉はラシャメンのハシリであった

恋々節 こいこいぶし

♪いろのへ こい〳〵 五丁町へハ 四ツ手かごしてこい〳〵

♪あがれば 女ら衆はあだとしま それ げいしやも こい〳〵 やりても こい〳〵

♪いやなお客を とらねば おへ屋で しかられる それこい〳〵

♪ためになるのハ ぢん助よ ソレやまねこ やんちやん おつこちや こい〳〵

──俗謡、明治三十五年頃流行、『はやり唄 春げしき 手くだでこい〳〵ぶし』上(ペラ本)

証城寺の狸囃子替え しょうじょうじのたぬきばやしがえ

♪ショ ショ 処女でない

 処女でない証拠には

 ツ ツ 月のものが

 三月も出ない

 おまけにおなかが

 ぽんぽこぽんのぽん

──替歌、戦後混乱期に広まる

 

騒ぎバレ唄 さわぎばれうた

元禄年中遊里を中心に、酒席で三味線や名のものに載せて歌う騒ぎ唄が爆発的に流行した。いらい今日まで、お座敷のどんちゃん騒ぎで口ずさむ戯れ歌をも含め、数知れぬほどこの種の歌が歌われてきた。酒宴の雰囲気からいっても当然、お色気満艦飾の詞がもてて、高吟三昧の無礼講を普及させている。

酒席を賑わす歌謡の大半は俗謡か民謡だ。雰囲気にピッタリの音曲であるし、詞のほうもいささか与太り気味で、高吟放歌向き。飲むほどに歌うほどに、座は渾然と同化し、対人関係の垣根が取り払われていく。近代まで、お座敷唄と云うと、小唄・都都逸あるいは破礼(バレ)に人気が集中していた。ときには芸妓の三味線爪弾きに乗ったり乗せられたりで、一見渋いノドを披露する旦那芸がはやった。今なら、スナックバーで一杯やりながら、マイク片手にカラオケといったところだろう。

【例歌】

〽鼠のさわぎ

嬉し〳〵、側いこ〳〵、しんぞ〳〵〳〵、けんぼ〳〵〳〵、さすは盃君様へ、恋け恋慕きやしやふる花、よい〳〵、側にそつと、寝よか〳〵、替らぬ思はゞいざまゐろかの、うきにうきたつ、ひよんきり瓢箪、恋風がぱつとふいて来て、あなたへはからころり、こなたへはからころり、からころ〳〵からころり、つときそいのうかれ姿のおもしろや。年の始に春駒を祝ふた。お厄落しに厄払、節分豆蒔年男、やんさこんさ、てんかおてんか、屏風の桟敷大分込んだと南無奇妙長久、治めて置て頼朝のお前でひよつと望出いた、法楽々々の舞じや程に、いざ舞ふよ。拍子を揃へて、獅子乱曲を舞うよ。おどるまいと思へどきよひよん、おどるまいと思へどきよひよん、伊達な姿を三河の沢のお沢の騒ぎに、三界をはしり〳〵〳〵〳〵の八橋に、八つ拍子を揃へて、きよひよん、もすそ小づま揃へて、まつぴら〳〵〳〵ひらり〳〵ひらりしやらりと、うきようかれめ。

──享和三年『後は昔物語』手柄岡持

お富さん替え おとみさんかえ

♪生きな黒まら 美しなお素々

 アラマステキナ穴がある

 しめるはずだよバナナ切り

 入れて持ち上げりゃ オシャカサマデモ

 知らぬ仏じゃすまされメエー

 エーサ オッチゝを吸う

──替歌、昭和二十九年ごろ流行

 

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よさほい節

 

都々逸 バレ唄 どどいつ/ばれうた

吟社言葉で〈バレどど〉、つまり〈バレ都々逸〉のこと。

ふつう都々逸の詞は色気を売りものとした短文芸ではあるが、人が軽く見るほど短小ではない。小粋な作品は、奥行きがあってきりっと締まっているものである。

しかしバレドドは遊び半分に作るせいか、安易に吟じるとだらけた作品になりがちだ。課題に「生バレ不可」などと条件が付けられる由縁である。

【例歌】

江戸後期の作 えどこうきのさく

宮の伝馬町に新長屋が出来て生きたお亀が袖を引く

枕草子じや立つせはないと(なま)を見たがる馬鹿な人

開化都々逸「検黴」より かいかどどいつ/けんばいより

チョイトお待ちよ着物をおくれ屏風の唐子が見るわいな

高い山から谷底までもずつと見たがる検査

明治バレどど めいじばれどど

板になりたや風呂やの板におそゝ舐めたり眺めたり

したきやさせます千百晩も魔羅の背骨が折れるまで

近代の作 きんだいのさく

客と白鷺や立つのが見事飲んで立つのがなお見事(山口県で収録)

船の新造と女のよいはたれも見たがる乗りたがる(千葉県で収録)

悪い可愛いもなれないうちよなれりや奥歯で含みたい(東京で収録)

──以上『日本歌謡集成』巻十二に所収

 

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Sexy DDIT (セクシー都々逸) 総集編 *みうらじゅんと安斎肇

 

バレ唄 ばれうた

俗謡中でもことさら卑猥なもの、俗にいうエロ唄を包括した呼称である。「破礼」と漢字を当てる。

当然のことだが、この類の大半が作者未詳の匿名唄である。

【例歌】

〽よいよい節(江戸伝承) 

・晩に忍ぶがどつから忍ぶぞ、裏から忍べ、(おもて)くぐり戸はからからびつしやり音がする、ヨイヨイヨイ

・音のせぬように大工さんを頼む、押せば開くような開き戸に、ヨイヨイヨイ

・山で色すりや嬉しいもんべい、()の根を枕に、落ちる()の葉がさはさはどっさり夜着になる、ヨイヨイヨイ

*比較的遠回しな表現ではあるが、実は夜這いや野合をうたったバレ唄である。

♪ちよんこ節

・人目なければ帯紐解いて、ヨイシヨコラ、窓に入りたい夏の月、チヨンコ。

・浅い川ぢやと袖褄からげ、深くなるほど帯を解く、チヨンコ。

・好いたお方に盃さゝれ、飲まぬさきから桜色、チヨンコ。

・話したうても話は出来ず、硝子障子の内と外、チヨンコ。

・夢になりとも持ちたいものは、金の生る木とよい女房、チヨンコ。

・ちよんこ唄えば巡査が叱る、叱る巡査の子が唄う、チヨンコ。

・親がちよんこしてわしこしらへて、わしがちよんこすりや意見する、チヨンコ。

──俗謡、明治十七・八年頃流行『明治年間流行唄』

♪ちよんこ節替え

・女郎買うならもも引お買い、えむもほうでんもみな入る、チヨンコ

・しめておくれよいま行きそうだ、猫が戸棚の魚ねらう、チヨンコ

・魚が高いと卵を割って、食べさす女房の下ごころ、チヨンコ

・いやというのに無理から入れて、入れてなかせる籠の鳥、チヨンコ

・娘十七八卵でござる、ふれりや転がる来りや割れる、チヨンコ 

──俗謡、明治十七・八年頃流行『チヨンコぶし』(替歌、明治十八年頃流行)

 バレでは片づけられない春宮秘蔵絵巻〔紀州徳川家秘蔵、学研の通販商品〕

 

バレ替え歌

【例歌】

さのさ節バレ替え

♪最初はさ程好きとは思わねど

 逢う度毎の親切が 

 身にしみじみとしみわたり

 今じゃこちらから命がけ さのさ

♪イヤデスワそんなところに 

 おててを入れて

 アナタのおててがパパになる

 入れさす私がネエしたくなる

 ほんに貴方はつみな方 さのさ

♪国なまり東京OMANKO

    大阪OMEKOヨイトサッサ

 京はOSOSOで名古屋はBOBO

    四国高松ネエOMENCHO

 加賀の金沢OCHOMAと申します

  サネキュー マラピー さのさ

──酒席唄、明治末期に発表 (ビラ本)

東京音頭替え とうきょうおんどかえ

♪ハアー 春はたのしや チョイト

 桜の下で ヨイヨイ

 花をかきわけ 花をかきわけ

 まんなかへ ソレ

 ぐっとなあ ソレヨイヨイヨイ

 ぐっとなあ ソレヨイヨイヨイ

 おとうちゃんもおかあちゃんも

 元気だして元気だして

♪ハアー 夏はたのしや チョイト

 海水浴へ ヨイヨイ

 波をかきわけ 波をかきわけ

 まんなかへ ソレ (同上の囃子)

♪ハアー 秋はたのしや チョイト

 松茸狩りへ ヨイヨイ

 草をかきわけ 草をかきわけ

 まんなかへ ソレ (同上の囃子)

♪ハアー 冬はたのしや チョイト

 炬燵のなかへ ヨイヨイ

 足をかきわけ 足をかきわけ

 まんなかへ ソレ (同上の囃子)

──酒席唄、昭和前期に流行

めんこい仔馬バレ替え

♪ゆうべとうちゃんと寝た時に

 へんなところに芋がある

 とうちゃんこの芋なんの芋 オーラ

 坊やよくきけこの芋は

 坊やを作った種芋だ

♪ゆうべかあちゃんと寝た時に

 へんなところに孔がある

 かあちゃんこの孔なんの孔 オーラ

 坊やよくきけこの孔は

 坊やがくぐったトンネルだ

 ♪ゆうべ兄ちゃんと寝た時に

 足にさわった竿がある

 兄ちゃんこの竿なんの竿 オーラ

 坊やよくきけこの竿は

 へんな水だす水鉄砲

♪ゆうべねえちゃんと寝た時に

 へんなところに土手がある

 ねえちゃんこの土手なんの土手 オーラ

 坊やよくきけこの土手は

 坊やがまもなくあがる土手

──バレ替唄、戦時中に花柳界中心に巷へと広まる 

異国の丘替え いこくのおかかえ

♪昨日も今日も 私はメンス

 貴方したかろ やりたかろ

 がまんよ 二三日キッスですましゃ

 やれる夜も来る 朝も来る

♪今日もぬれゆく ベッドの上で

 はりきる一物 からむ手

 入れてまわして もち上げてしめりゃ

 ああゆく 今ゆく 気も遠い

──バレ替唄、戦後混乱期に広まる 

 

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青い山脈 替え歌 *青い山脈替え

替歌ポルノ民謡集

白い●●ンコ *白いブランコ替え

●ックスを知らない子供たち *戦争を知らない子供たち替え

ち○ぽっていいな *みひろのエロ替歌

よがる海峡つゆ景色 *津軽海峡冬景色替え

よさほい節 *代表的な春歌 カラオケ

 

バレどど 

吟社言葉で、バレ都々逸のこと。

ふつう都々逸の詞は色気を売りものとした短文芸ではあるが、人が軽く見るほど短小ではない。小粋な作品は、奥行きがあってきりっと締まっているものである。しかしバレどどは遊び半分に作るせいか、安易に吟じるとだらけた作品になりがちだ。課題に「生バレ不可」などと条件が付けられる由縁である。

 バレどどの一つも作りなくなる羽織芸者(黒い衣装)〔雪月花美通の色取()、鳥居清長画、1784年〕

【例歌】

〽江戸後期の作より

・宮の伝馬町に新長屋が出来て生きたお亀が袖を引く

・枕草子じや立つせはないと(なま)を見たがる馬鹿な人

♪開化都々逸「検黴」より

・チョイトお待ちよ着物をおくれ屏風の唐子が見るわいな

・高い山から谷底までもずつと見たがる検査

♪明治のバレどど

・板になりたや風呂やの板におそゝ舐めたり眺めたり

・したきやさせます千百晩も魔羅の背骨が折れるまで

♪近・現代の作より

・客と白鷺や立つのが見事飲んで立つのがなお見事(山口県で収録)

・船の新造と女のよいはたれも見たがる乗りたがる(千葉県で収録)

・悪い可愛いもなれないうちよなれりや奥歯で含みたい(東京で収録)

──以上いずれも『日本歌謡集成』巻十二

 

バレ里謡 ばれりよう

近代までの俚謡のうち、下半身事を主題としたものを「バレり謡」またはお色気俚謡と呼ぶ。たいていの詞が小唄調で短く、婉曲表現になっている。(ひな)びた風流が堪能できよう。

【例歌】

〽「催馬楽」より

かすがひも戸ざしもあらばこそ その殿戸 われさゝめ 押し開いて来ませ われや人妻 

〽江戸初期「山家鳥虫歌」より

・おそその中には 紅屋が御座る 月に七日の 紅しぼり

早乙女(さをとめ)の股ぐらを 鳩がにらんだとな にらんだも道理かや 股に豆を 挟んだとなよな

〽明治維新前後江戸流行の唄

沖のかもめーが大きな蛤をつッ突くそうだ、おらも自家(うち)へ帰ッてかゝのべっちョつっ突くべ、トヽチンボ ヘノクリ マラ〳〵 サト チンボホイ〳〵 

──俗謡、『昆石雑録』うち「こゝろの俤」

♪明治期各地の俚謡より

 巡査様でもさせれば馴染 「警察の(まい)淫売(ごけ)ふんじがめてジバラトやつたきや」 警察の署長さん、にくらと笑つた。(どだればち、弘前市)

・さんさ下り藤ア、ヤーハエ、おされーて開く さんさエー。(さんさ踊りの唄、盛岡市)

・お前達(めやたつ)聞いてけせ、いふにも恥かし、己家(おらえ)の人はまたソレ〳〵、酒こもばくつも、さつぱり出来ねで、さうして今朝戻つた。(秋田県)

・をばーこ居たかよと、ながしの小窓からちよと見たら、をバーこ居もせで、隣のぢーさんばーさん、チヨイト、お茶ごとだ。コチャヤレ〳〵(福島県大沼郡)

 *お茶ごと=隠語で「枕交し」の意味ももつ。

・秋野の尾花が袖引く、萩に花妻浮かれて引かれ、遂ひころび寝にしツぽり濡るゝが女郎花に藤袴。(手鞠唄、高崎市)

・月は重なる身は重くなる心細さの秋の月。(茨城県)

・ヨイ〳〵、ヨンヤマカセー、チヨイトセー、サーエ、それ出したは、出したは。出せといふのに、下手な物出すな。アヽヤツトセ。(神奈川県)

・踊り来て踊らぬ奴は、子でも孕んだかおやとでも出来たか。(新潟県長岡市)

・どうでころぶなら普大寺の前で、ころびやすきさんおこし来る。(静岡県)

・わーしのかゝ様、きつことおしやる。ぼーんの三日にださぬとおしやる。ぢごくの釜の蓋さへあくに、だーいておくれよ、かゝさまや、〳〵。(盆踊唄、愛知県)

・寝たやねぶたや寝た夜はよかろ、摘んで寝た夜は猶よかろ(京都府山城地方)

・あそこ来るのはお娼婦(やま)芸子(げこ)か赤い湯巻をちら〳〵と。(京都市)

・田舎の(ねえ)さん、おねまでしつぽり、お楽しみ、げんこつ、あいたゝ、しんぼせ、あほらしいやおまへんか、出たり消えたり、消えたり出たりの辻占(つぢうら)。(大阪市)

・十七がつはり病すりや、殿のお膝を枕に、それ程につはり病して、お姫さんだら恥よ。(盆踊り唄、姫路地方)

・極楽の門のとは、又鍵では開かぬ、後生す願の恋で開く。(盆踊唄、広島県)

・通ひ路や、人目を忍ぶ袖頭巾、夜な〳〵ごとにかはセシ枕、思ひのつきせぬねまの中、月夜烏にだまされて、路の駒下駄ふみたがひ。(花にほふ、福岡県鞍手郡)

・しだれ小柳なびくなよそに、わしが上がりて下るまで。(ザンザ節、佐賀県)

・むこどのよ、一つこしめせ、そらせき酒の壺そこ、つぼそこは、いつものみそよ、姫君くされ抱いて寝よ。(盆踊り唄、長崎県西彼杵郡)

・世がてらの解く世が寺で、ソレハヨーデナサ、まえへ〳〵〳〵、のたけよやよゝえへ〳〵〳〵のよをしやくや。(棒踊歌、熊本県八代郡)

──以上いずれも『日本歌謡集成』巻十二

炭坑節派生唄の一節

♪酒は酒屋で飲んできた

 歌は道々歌うてきた

 カカよ帯解け 床のべろ

 お前の玄関口こっち向けろ

 サノヨイヨイ

──筑豊炭鉱にて採録、『炭坑節物語』深町純亮著より

 里唄という名の新民謡

 

火遊びの唄

 ここでいう「火遊び」とは、男女の行き着くところまで行く危険な遊び、つまりいかがわしい秘かな関係。こうしたプレイを背景に作られた歌を指す。

【例歌】

こうつこつ

小野小町は穴がない、こりや、弁慶はいつしやう女房(かか)がない、こりや、おまへと私のその中に、こりや、お金がないのでこうつこうつ。

──俗謡、文久頃流行『はやり唄変遷史』

丘を越えて替え

♪土手を越えて行こうよ

 おへその下は 滑らかにぬれて

 楽しい心地 わくはいろの泉よ

 抱えよ わが腰を

 いざ行け 早くもち上げて頂戴よ

♪土手を越えて行くよ

 おへその下は ほがらかにぬれて

 うれしい処 湧くはいろの泉よ

 抱えよ わが尻を

 いま行くよ 早く持ち上げて絞めておくれ

──バレ替唄、昭和初期に流行

 

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誰にも言えぬ恋 *erica

火遊び *前川清

火遊びのブルース *応蘭芳

破 戒 ADULT興業

 

文福茶釜 ふんぶくちゃがま

江戸語で、年増の多毛な女陰。

語の由来は、狸が化けた代物、という発想による。

 通販で売られている付け陰毛 「陰毛かつら」とか「マーキン」という別名もある

【例歌】

ここりき節

♪文福茶釜はよござんしよ、年増の茶釜は文福ぢや、こんここりき、ここまかりき、りきしよの、よござんしょ (江戸俗謡)

♪もうそう、もうそう、赤いこと申そう、ソソの真ん中、えいやまんなかに 

──俗謡、桃山時代『赤づくし』

 

まっちゃらこ

女性器四文字言葉をふざけた音調で表現した言葉。「べっちょ」と並んで女陰茶化し言葉の双璧である。

引例のように歌舞伎の台本にもまっちゃらこ入りのきわどい歌詞が用いられ、愉快な囃子に乗り淫猥さの相乗効果をあげている。

【例歌】

♪まっちゃらこ     三世桜田治助作詞……コレハイ「そこらの姉さまの(ほお)〳〵のまわり、お鼻のまわり、おでゝらでんの、「まっちゃらこ、「べっちゃらこ、「まつちゃらこ ヨイホヽヽヽヽ、ヤレ〳〵、まっちゃらこに、まんざら野暮では、どうした才蔵、ありゃせまい、「代代栄えて、御万(ごまん)の長者よ、なお万歳楽までもやら、エヽ御目出度う 

──歌舞伎劇中歌、『乗合船恵方万歳』より

 *初春の隅田川は言問橋辺の渡し場が舞台で、万蔵と才蔵というひょうきん者を中心に乗船客らが浮かれて踊りだす。

 『乗合船恵方万歳』の発想源となった宝船の七福神

 

淫ら唄 みだらうた

淫らな歌詞の歌。

この手の歌詞は容易に作れても、淫らな印象の作曲は難しいとされている。

【例歌】

おつかさん

♪おつかさん買うてもくんさい。(てう)せん(べつ)のはり形を。ヨイ〳〵。地下(じげ)でもたない物は。わつき一人。たん()しようか〳〵。五(ばか)りねらしやれ。人数が多いとサ。すつとこどつこい〳〵。

 ──俗謡、文久二年『粋の懐』五篇

へそのあなくどき     

♪おそれサアエ、(おふく)も。もつたいなくも。(あな)

  根本(こつぽん)たづねてみれば。天照大神(てんしやうたいじん)こもらせ

 たまへ。富士の人穴大仏まへで。あまのい

 わ戸のあなよりはじめ。人の五体に数ある

 穴よ。わけてあはれは。へそのあなくどき。

 帯の下なる(ふんどし)の蔭で。そこら〳〵となに

 やらくどく。(ゆふ)も道理や。げにことはりよ。

 いかな穴にも役目があるに。わしはどふし

 た因果な穴で。役に立ゝぬとおしかたづけ

 て。一生一代無役(むやく)で暮らす。

──猥本歌、幕末板『新はん へそのあなくどきやんれぶし』

 

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文明開花ガール 

 

野合の唄 やごうのうた

「野合」は昔、空家や藪で盛んだった姦犯から意味が膨らみ、今では屋外での男女交合全般をさす通称になっている。

【例歌】

♪明石人丸〔兵庫県〕

・さあさ明石の人丸さまへ、月の出ごろに、岨道こえてきたか妙坊トロリトホイ。

・芦の葉づれにそと気をかけて逢ひにきたかよ忍びの足かトロリトホイ。

・まだ夜は浅い島の淡路も涙の雲か一夜どまりさトロリトホイ。

──里謡、近代まで伝承『日本歌謡集成』巻十二

*播州明石町に鎮座の柿本神社で、祭神の人麻呂をしのんでの野合の誘い。当地では「人丸さん」の名で今も親しまれている。

♪びつくりしやつくりこ 

・夜いくさに いつきうち よことり ちやうすに はらやぐら いつもわぼくハとこのうち びつくりしやつくりこ

・こん介が おさんを だまして はらませた うミ月前にて びつくりしやつくりこ

・ごみのゆやの中 むきみとなまみの 入ちがひ ばんとう びつくりしやつくりこ

・あだ娘 ぢぞうかほ こしハほつそりやなぎごし ぢごくときいて びつくりしやつくりこ

──猥本唄、明治元年頃流行『新ばん びつくりしやつくり節』

 

よかちん 

「よかちん音頭」とも。近代に南日本地方で発祥ばした座敷バレ唄。

 詞はいくつかありどれも単純で、せんずりを主題にしたものとも、張方を使ったオナニーを表したものともいわれている。

【例歌】

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よかちん  

♪一つ、一人で見ても よかちんちん アーよかちん よかちん 

 二つ、二人で見ても (以下、繰り返し)

 三つ、みんなで見ても  〃

 四つ、横から見ても  〃

 五つ、いついつ見ても  〃

 六つ、むいて見ても  〃

 七つ、なめて見ても  〃

 八つ、やすんで見ても  〃

 九つ、転んで見ても  〃

 十、 遠くで見ても  〃

──座敷数え唄、大正期広域に伝承流行

 よかちん音頭座敷芸

 

猥歌 わいか

卑猥な唄。

広義には男女の下半身事をうたった歌曲と歌謡詞を指す。

【例歌】

明治維新前後江戸流行の唄

〽へそのあなくどき   

おそれサアエ、(おふく)も。もつたいなくも。(あな)

根本(こつぽん)たづねてみれば。天照大神(てんしやうたいじん)こもらせたまへ。富士の人穴大仏まへで。あまのいわ戸のあなよりはじめ。人の五体に数ある穴よ。わけてあはれは。へそのあなくどき。帯の下なる(ふんどし)の蔭で。そこら〳〵となにやらくどく。(ゆふ)も道理や。げにことはりよ。いかな穴にも役目があるに。わしはどふした因果な穴で。役に立ゝぬとおしかたづけて。一生一代無役(むやく)で暮らす。

──猥本唄、幕末『新はん へそのあなくどきやんれぶし』

会津磐梯山替え あいづばんだいさんかえ

♪エヤーあそこ娘さんは宝の山よ

 ハ ヨイトヨイト

 尻で黄金をエーマタ掘り出した

 ハ スッチョイスッチョイスッチョイな

 アプレ娘さん なんで身上ふやした

 チョンの魔の火遊びや流し目などで荒稼ぎ

 それで身上ふやした

 ア もっともだ もっともだ

──座敷騒ぎ唄、戦後に流行

 

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セクシー童謡 

軍隊のぞき節