本編に収載した「──学」の対象

 

本来「学」とは、「学問」の略称である以前に、ある分野での原理によって構成された特定知識の体系をいう。たとえば、「物理学」「理論経済学」「家政学」などという一系の概念をまとめた呼称である。

現在、「──学」という呼称をもつものの数は、きわめて多い。本書掲出のような正統派に属するものでさえ、延べで約2800項目を数える。専門分野の辞典などで丹念に洗い出したら、その数5000をはるかに超えよう。

  さらに卑近な例で、「雑学」とか「骨董学」といった私設呼称から「オタク学」「渋滞学」などの俗称に近いものまで含めると、優に1万は超えると管見する。たとえば最近になって、往時の軍需工場、壕、飛行場などを対象に研究する「戦跡考古学」という真新しい学が紹介されている (朝日新聞、0781)

要するに、「──学」が付いているからといって無秩序に採用したら、際限がないのである。したがって、「──学」自体の学域を一冊の本にまとめるには、一定のルールのもと、これらを絞り込む必要がある。

その拠り所となる基準を何に求めるか、が問題になってくる。どの方法を採用するにしても一長一短があり、単一の方法では偏りが生じてしまう。各学会用語から拾い出してみたところで、この方面はきわめて専門的になってしまい、一般性の欠如が見られる。選択肢を特定すること自体が事前の重要な課題となるのである。

そこで本集では、これを公正さの観点から、『日本十進分類法(略称NDC。以下これを代称とする)に所収の「──学」を第1の対象とした。

NDCは、わが国公共図書館における書籍資料等の検索用分類法である。これの選択は、汎用性かつ客観性の点でどなたも異論がなかろう。現在のところ、日本語の「──学」を決める物指として、この所収本に勝るものは見当たらないはずである。

加えてNDCを編纂の核とすることで、書誌学的に見た「──学」体系を踏襲できるという利点がある。例を挙げると、「統計数学」の内容をより詳しく把握したい場合、右肩に付いたNDC分類記号を見れば、機械検索を必要としないで該当資料の書架へとたどり着く。この方法は重宝なものである。

ただし、NDCは書誌分類整理の目的で編纂された書冊のため、これとて「──学」分野を十分にカバーしているわけではない。呼称の偏りも目につく。たとえば「基礎科学」といった重要語が漏れているのだ。

そこで第2対象に研究社刊『新和英大辞典』第5版から「──学」の付く言葉を洗い出してみた(NDCとの重複語は避けてある)。この辞書は、国際的に通用する最新の用語も含め、収載範囲が広く、しかも汎用性のバランスがよい。NDCとは互いに補完関係の点でもピッタリで、結果的にあつらえ向きの併用が実現できた。

さらに第3対象に『世界大百科事典(平凡社、2005年版より第30巻・索引)を用いた。これは第1、第2の対象を補完するのに最適な資料であること、論をまたない。

以上3出典から洗い出すのはかなり大変な作業だったが、それなりの成果はあったと自負している。ちなみに博識な人でも、本書に目を通すことで2030は未知の「──学」を発見するはずである。

本コンテンツは固い内容なのでややもすると読み飽きする難点がある。その回避の目的もあって、目の保養に画像を多く挿入することにした。

さらに次に述べる関連資料を加えることで、学域記述のさらなる充実を図っている。

 

関連資料「日本の学会名称」について

本編で採用した「日本の学会名称」の記載範囲をより広く弾力的に補完する目的で、次の資料を付加した。

日本の学会名称

学会名鑑200709年版、ビュープロ刊/日本学会名鑑……財団法人日本学術協財団編より再編集

 

見出し語リンクについて 

各見出し語にはWikipediaを中心とした情報源にリンクが張ってある(アンダーラ

イン付き色変わりフォント)。これをクリックすれば直ちに検索情報にたどり着

く。この機能活かすため、コンテンツ本文では最低限の記述にとどめてある。ま

た、リンクなしの地の見出し語は研削に該当しないことを示す。

よろしくご活用ください。

 

 

学問分類とNDCランキング

 

分類とは

「分類」とは、分類法所定の基準に従って、様々な物事を似たグループにまとめ分けることをいう。すなわち区分作業という段階をへて、物事を同類に仕分け、秩序ある種別化系列の形に全体を編成することである。

さらに言葉を変えると、物事同士の共通した形質により、それらのグルーピングをすることによって、各区分肢は結果的に「互に排他的であること」という大原則が貫かれていなければならない。

NDCをベースとした「──学」の分類も、この区分原則に立脚していること、いうまでもない。

 

学問の古典的分類法

 学問については、有史以来著名な学者等によって、いくつか注目すべき分類法が試みられている。そのうち顕著なものを大雑把に列挙しておこう。

アリストテレスの分類法

 学問体系作りのための分類法は、古代ギリシアの哲学者、アリストテレス(BC384322) を嚆矢とする。彼はレボス島での自然観察により、生物の共通性とその差異をもとに生物の分類を試みた。

自由7科の分類 

 中世の学問分類は、ヨーロッパの大学における人文教育課程、いわゆる「リベラル・アーツ」がよく知られている。その内容は、文法はじめ修辞学、論理学、算術、幾何、天文学、音楽の「自由7科」にわたる。

べーコンの分類法

 イギリスの政治家F.ベーコン(15611626)も学問体系の分類に手を染めている。彼の場合、有名な自然史に基づく「三分法」を発表したことで知られ、さらにその分類中に技術史観を組み込んだことで注目された。

リンネの分類法

 リンネ(170778)はスェーデンの博物学者である。彼は、それまでの属と種とを組み合わせたいわゆる「二名法」に基づき、種→属→科→目などの階層分類体系を完成させた。

図書学の分類法

 1876年、アメリカの図書館学者デューイ(18511931)は「図書十進法」を完成させ、世界の図書分類法の先駆けとなった。

NDCの制定

日本十進分類法は1929年に発表され、同時に『日本十進分類法』(NDC)の初版が刊行された。その後NDCは順調な普及を示しながら、20113月現在で9版を重ねている。

わが国の公立図書館ではNDCの採用が圧倒的に多いことを見ても、この方式の使い勝手の良さを裏付けている。

 

〈──学〉体系レベルについて

 本コンテンツでは、NDC掲載対象に限定し、各「──学」見出し語の右肩に当該NDC分類番号を付してある。分類番号が( )内で示されているものは、『新和英大辞典』ならびに『世界大百科事典』による用語である。

ただし( )内のNDC分類番号は、筆者が任意に見当を付けて設定したもので、必ずしも実際の分類番号に一致するとは限らない。

また同義の別称については〈 〉で示し、これを巻末索引に含めて表示、検索の便に供した。たとえば〈地衣類学〉と同義の語である〈地表植物学〉の例が相当する。

 NDCにおける分類ランクは「第1次区分()」にはじまり「第6次区分(毛目)」に至るが、「──学」の呼称がかかわるのは、多くの場合「第4次区分(分目)」までである。しかし、なかには「無線短波光学」(574.515)のように、「第6次区分(毛目)」へとジャンプしているものもある。これは結果として、記号法が分類体系に優先せざるを得ないという、図書館分類書記法独自の事情によるものである。

 これらNDC図書分類表はまた、本来あるべき学問体系とは別立てで、便宜上区分のものも少なくないことを付記しておく。たとえば、〈人種心理学、469.6〉は本来「14 心理学」の体系に属するが、NDCでは「46 生物科学、一般生物学」として組み入れてある。

詳しくは公共図書館に所蔵の『日本十進分類法』第9版を参照していただきたい。

 

 

本編の本文項目の見方

 

(見本)

44 天文学. 宇宙科学

天文学 astronomy        440

古くは〈天体学〉〈星学〉とも。

 宇宙と天体に関する多様な学域の総称。天体やそれらの集合体(銀河・星団・星雲)について運動、形態、生成、進化など、ならびに宇宙空間の構造等も研究する。

自然科学のなかでは最も古くに発達を見た学問である。現代でも未知な分野がきわめて多く、究めつくせない魅力がある。

 

NDC綱目表(2次区分表)による体系分類記号・項目名を示す。

小見出し 該当する「──学」の和称を示す。すべて「学」を接辞したものである。キーワードクリックによりレファレンス情報にリンクする。

欧文名 小見出しの英語を中心に、場合によっては独語、仏語等の呼称を示す。後者の場合〔独〕〔仏〕のように略号で断りを入れてある。和漢の呼称で欧文名の定着を見ないものについては省略してある。

NDC分類記号 NDCに明記のアイテムはそのまま示す。NDC記載外のアイテムについては、筆者の判断で該当すると思われる分類記号を( )で括り示した。

説明文 全容把握を主眼に、記述は簡明につとめた。同義語または同義語とみなしうる類語がある場合は、頭部で〈 〉に括って示した。「学」以外の同義語等については「 」で示した。

 

目 次

 

ご注意

以下の各項は目次(コンテンツ)内容です。クリックしても直接当該項目へジャンプしません。フォルダー一覧の該当セクション名をクリックしアクセスしてください。

目次の数字は本書ブラウザー上のものなので無視してください。

 

学域基本用語の略解……………………………… 10 

本編

 0 総  記……………………………………… 16

 1 哲  学……………………………………… 27

 2 歴  史……………………………………… 72

 3 社会科学……………………………………… 84

 4 自然科学………………………………………114

  49 医学.薬学……………………………………178

 5 技  術………………………………………207

 6 産  業………………………………………233

 7 芸  術………………………………………246

 8 言  語………………………………………255

 9 文  学………………………………………262

 

資料 日本の学界名称……………………………286

 

 ………………………………………………317

 

お断り

本書で内容のまとめなど参考にした文献は、主として東京都品川区立品川図書館の各分野カテゴリーにわたり、全体でおびただしい冊数になる。それら文献のすべては、とうてい収載しきれないので、割愛させていただく。

 

学域基本用語の略解

 

本編の記述に先立ち、学域に馴染み深い基本用語をいくつか取り上げて、それぞれの語義を明確にしておくことにする。

学問 learning

「学問」という言葉は、解釈する視点の変化に応じて、語義が多様に膨らむ。たとえば、本義の「学ぶ」ことの範囲には、和歌や俗謡などを習得、鑑賞する学芸まで含めるのか。江戸期の「学問所」での学問も入れてよいのか。あるいは、陶芸等の師匠から伝授された技能も学問に入るのか。こうした解釈上の疑念が裾野に及ぶにしたがって、語義の曖昧さも増していくのである。

ここで、「学問とは」の規範が求められる次第となる。本書でいう学問とは、狭義な、すなわち純粋な意味での学問、としておきたい。この条件下での〈学問〉を定義すると、下記のようになる。

学問とは、所定の原理に基づき、体系的に組み立てた知識・学習方法を総称するものである。

学問は「学」と略称することも多く、また、接辞し熟語化して〈自然科学〉〈数学〉〈文学〉などの語も創成している。

顧みると、20世紀前後の社会学揺籃期に活躍したドイツの社会学者で経済学者マックス・ウエーバー(18641920)は、「職業としての学問」という問題意識を提唱したことで知られる。今日、大学の株式会社化が進み、そこで教える教授たちは、まさに「職業としての学問」を教えるビジネスマンに化けた、という見方もできるのである。さて、歴史を飾った学問のアカデミズムは、至高なる学府の権威は、いったいどこへ行ってしまったのか。

余談はともあれ、学域体系は想像以上に広大なること、疑いない。

知識の塔 旧約聖書に出てくる神話「バベルの塔」に擬して描かれたこの塔は、知の集成と高さとを象徴した寓意である。18世紀ヘブライ語による『聖書学辞典』中の版画。

 

学術 scholarshipscience

学問とその技芸面での応用技法を含んだ総称を、〈学術〉といっている。したがって学術の語義範囲は、〈学問〉に比べより広範で曖昧である。言い換えると、学術のほうが学問よりも高踏的かつ専門的、という側面が潜在する。また学問にはすでに完成した知識を習得する意味が含まれているが、学術は学理を究めるという、ing の探求姿勢も含まれる。いわゆるスコラ―シップである。

英名では同じscienceであっても、日本語にいう〈学術〉と〈科学〉とでは、扱う視野が異なるのでやっかいである。

学芸 arts and science

科学をはじめ文学・芸術などを包括した言葉で、「リベラル・アーツ」とも。学芸大学、学芸員、学芸復興(ルネッサンスの当て字の一)など、学域的用語の意味合いが強い。ただし、膠着生は弱い。つまり曖昧に解釈できうる語なので、専門分野での用法には注意を要する。

学際 interdiscriplinary

異なる学問体系が相関し発展しあう分野の抽象語で、一般にはなじみが薄い。「この論文は明らかに学際志向だ」などと表現する。

学域 learning area

〈学域〉という言葉は国語辞書に載ってらず、めったにつかわれることもない。あえて定義付けると、学域とは、あらゆる学問が集積・関連しあい、高踏的世界を構築する学際領域をいう。くだいていうなら、異種学問の寄り合いである。異種の学問すらこの中に収斂されてしまう、語義範囲のきわめて広い、表現上きわめて便利な言葉である。

この〈学域〉という語は、必要に応じ本書ではしばしばお目見得するので、どのような場合に使うべきか、ご注目いただきたい。

学修 learning 

英語をよりどころとした明治期訳語で、倒語「修学」の意味にも使う。語義は学問を学び修めること。「仏道帰依を目指して学修(修学)した」のように用いる。

研修 study

 同一目的のもと、専門分野での知識や技能を集団で修得すること。意味するところは〈学修〉に比べ、より狭義で専門的である。「新入社員は一堂に会し、研修を受けた」のように用いる。

学識 knowledgescholarship

使い慣れた感覚で用いている〈学識〉の語にも広狭二義がある。

  学問によって身に付けることのできる見識(knowledge)。社会にとって有用なものであることが要件になる。極端な例で、ポルノ研究者などの場合、いくら造詣が深くとも「見識がある」のようにはいわない。

②特定の分野において発揮しうる深い見識(scholarship)

 ここにいう「見識」とは、物事の本質を見抜く洞察力のことをいう。

学業 studies

 学習の内容に結びつく学問および研究の成果。学生を対象として使う場合が多く、学域研究ではあまり用いない。「4年間、緑のキャンパスで学業にいそしんできた」

学殖 knowledge

〈学識〉の深いこと。学問に豊富な素養があること。〈学識〉が静的なニュアンスをもつのに比べ、〈学殖〉のほうは進行中といった動的なニュアンスを含む。「あの分野では学殖の目立つ人」のように用いる。

教養 culture

 明治時代にできた英訳語。

〈学問〉および〈知識〉がバランスよく身についているさま。単に知的な識見だけでなく、創造性や洞察力といった内面的理念をも重視した言葉である。「教養人」「教養学部」「教養主義者」など、派生語も多い。

良識 good sense

 物事を健全かつ冷静に判断しうる能力で、深い知識と洞察力に裏付けられた〈学識〉をさす。英common senseの明治訳語で、「常識」とともに成立。しかし〈良識〉のほうが知的要素・判断力の高さを備えている場合に用い、good senseが適語として用いられるようになった。「独裁者は自身が良識のないことを証明する、そのものである」

知見 seeing

物事を実際に見聞し身に蓄積した知識。経験論的な視点で成り立っている言葉である。机上学問に対し、実証性のある生きた学問が得られる。「その会議には知見の徒が集まった」

見識 judgmentview

 judgmentは、客観的に正しい判断力や見解に優れていること。Viewは、個人的な考え方・見方のことをいう。

「この偉業は彼の卓越した見識の賜物である」のように、学域用語ではふつうjudgmentの意味で用いる。

有識 intelligence

 間口と奥行きとの知識(特定分野であることが多い)の豊富なこと。さらに、物事への〈見識〉が高いことも要件になる。

「有識者」の語も普及しているが、最近では定義線引きの曖昧さから、逆差別用語との批判も出ている。

人間知識七つの源泉 17世紀前半に複製された図で魔術師、占術師等の商売道具。中央のサルが予言力、洞察力、記憶力、占星力など七ツを身につけることでHOMO(人間)になりうる、という寓意である。

学識 knowledge

〈博識〉ともいう。〈学問〉全般に広く通じていること。その生かし方が問題にされる、きわめて通俗的ニュアンスの言葉である。「先生は学識豊かなことで有名であります」のように、中身の具体性を欠く。

学事 seeing

〈学問〉をさす近代語で、学問教育の含みもある。今では半死語になっている。

「小生、当地に赴任し学事に携わることと相成りました」

学 learning

語義範囲が広い言葉であるが、ここでは〈学問〉の略語としてとらえいおく。すなわち、英science、独Wissenschaftに相当する。

本編の諸学は、それらの体系に属すること、 いうまでもない。「少年よ、学に励め、志は大なれ」

教学 education

 教育と学問。教えることと学ぶこと。明治期、文部省などが採用した古い言葉で、道徳がらみの含みが大きい。ただし教育分野に限定した用語ではないので、使い方に注意を要する。

実学 practical learning 

医学、電子工学、ライフサイエンスなどつねに成果が現れ、空理空論に終わらない実践的な学問。実務や実生活に即応し役立つ学問。「理論」に対応した言葉として用いることが多い。「当講習会は実学中心の教育指導に徹底する」といった表現をする。

 なお朱子学のなかにも東洋思想に属する〈実学〉という言葉が出てくるが、内容が異なるので使い分けに注意する。

実学 anti-practical learning

研究成果などが目に見えにくい、〈実学〉に対応した領域にある学問。たとえば文学、理論天文学、歴史学などの学問。朝日新聞(0898)などに見える言葉である。

先学 predecessor in academic field

手がけている学問分野の先輩をいう。

広義には、学問に実績を残した先人を指す。「この研究論文は先人の踏襲に過ぎない」

菅原道真(845903) 学問の神様として有名。逸話や伝説も尽きず、日本における先学の象徴といえよう。

後学 following scholar(人物)

 考信の学徒をさすが、別に後に自分のためになる学問・知識を指す。「後学のため教えを乞いたい」といったら、先学に対応する言葉となる。

雑学 miscellaneous knowledge

 間だけ手とうだった学問に組み込まれていない知識や学問。実質的に学問とはいえない雑多な知識の総称である。「彼の物知りは雑学の寄せ集めだ」

俗学 worldly learning

 巷間に行われている浅薄で程度の低い私設学問。雑学とみなしても支障がない。「浮気学」「馬券学」の類。

学科 subject

〈学科目〉とも。ある学問の階層にある各種の科目。〈教科〉の旧称に用いるほか、教育および研究の特定分類に使われる単位名目でもある。「理科系では天文学の学科に進みたい」

学課 lesson

学業の課程をいう。これには学究する対象の時系列推移の要素が加わる。「所定の学課を無事修了した」

学説 theory

 特定の〈学問〉にかかわる私的な説。一般にいう論説に比べ、語義ははるかに狭まり、推論の範疇にとどまるのが普通である。「アトランティス学説」「ニュートンの万有引力説」「学界常識を覆す新学説」など。

学理 academic theory

 学問上の理論や原理。〈学問〉の道理を窮める、つまり研究態度の存在価値が裏付けられた言葉である。「彼は学理の刷新に取り組んだ」

主義 principle

 明治の政治評論家、福地源一郎が初めて当てた和訳語。

 学術的思想における自己の立場を明確に示す論法や意見。原語にはismの接尾語を伴うことが多い。たとえば「亭主関白主義」「UFO実在主義」など、意味がより膨らみ多様化している。〈学〉を支える支脈でもある。

論 theory

物事の可否や道理を述べる個人的意見で、〈学問〉を補助する下位に。理論、論証、議論など語義範囲が広く、また多岐の接辞熟語があるが、ここでは狭義に「学論」として特定したい。

理論 theory

〈論理〉と倒置語で使うことも。 議論、思考、推理などを進めていく道筋。思考や論証の方法をいうこともある。「この理論は実用的であり価値がある」「先生の説には論理の飛躍がある」

法 method

 物事の道理。あるいは、物事を達成するための技術的手段。必要に応じて、学域の諸体系に組み込まれ、補助的役割を果たすことも少なくない。「民主主義の世にそんな身勝手が許される法はない」

研究 study

 物事の真理を究めつきつめること。広義には、〈学問〉を身に付ける手段としての態度までをも含み、また狭義には、学問に至らない下位用語としての〈学術〉そのものをさす。

「学者は馬鹿にするが、バレ句にだって研究の価値があるのだ」

『ノヴム=オルガーヌム』出航 著者F.ベーコン(15611626)はイギリスの哲学者。この扉絵は、未知の経験世界へと旅立つ学徒を表す寓意画、1620年刊。