0 総記 (図書館、図書、百科辞典、一般論文集、逐次刊行物、団体、ジャーナリズム、叢書)

 

 ヴォルム博物館の内部 西ドイツはライン河沿いにある都市ヴォルムは、今は「ウォルムス」と表記。近世に描かれたこの博物館は、現代だと骨董屋の店内を思わせる。1655年ヴィンゲンドルプ著『ヴォ博物館』の口絵版画、ケンブリッジ大学図書館蔵。

 

00 総記

 

学問 learning         002

前付「学域基本用語の略解」10ページを参照。なお系統上は、あらゆる「──学」を統括、それらの頂点に位置する象徴的な語である。

学術 science         002

 前付「学域基本用語の略解」10ページを参照。

科学 science         002

 真理や法則の発見などの目的のもと、対象を一定の方法により論理的かつ系統的に研究する学域をいう。〈科学〉はさまざまな分野を総括した呼称であって、分野別に自然科学および社会科学、ときには人文科学を加えて大別するのが普通である。

scienceの語は狭義の「自然科学」をさす。したがって、明治末以来モダンな感じの「サイエンス」の表記に置き換えて用いることが少なくない。

人文科学 cultural science   002  

 通常読みでジンブンカガクだが、ジンモンカガクとも発する。

 人間の歴史と文化に関する学域の総称。広義に政治、社会、経済、歴史、地理、文学などで構成されている。狭義には哲学、歴史、言語、文芸に関する学問の呼称としてとらえられている。

「自然科学」と用語上は等格で、また人文地理学や太陽学など下位の派生分野をも生み出している。

人文学 cultural science   002)  

人文科学のうち狭義の人文学、すなわち社会科学を除いた自然現象および文化の追及にかかわる学域をさす。ただし、大学や研究機関により意味の捉え方が異なる。

文化科学 cultural science   002

 独Kulturwissenshaftの明治訳語で、〈歴史科学〉の訳もある。西南ドイツ学派リッケルト(18631936)の『科学分類法』による命名。自然現象を中心に、研究対象の普遍性を明らかにして、法則を見出し記述する科学的方法論をさす。

基礎科学 fundamental science (002) 

 NDCでは記載外の語であるが物理学、化学、生物学、天文学など各科学の分野で基礎的な学域を対象とする学問。主として自然科学分野での基礎的な研究をさす。内容レベルから見て「文化科学」と等格の扱いになる。

近代科学 modern science    (002) 

 時代区分上、近代に発達した科学に限定して対象にする学問。慣用的かつ総括的に使われている用語である。また「近代」の範囲は使用者によってかなり曖昧で、ときには「現代科学」を指す用語としても用いられる。

現代科学 modern science      (002)

 現代に発達を遂げている科学。「近代科学」の後期に位置する用語である。「現代」区分は人にもよるが、広義には20世紀、21世紀を、狭義には第2次世界大戦後の時代区分を指すのが一般的である。 

先端科学 advanced science   (002)

  かなり一般語化しており、現代の先駆けとなる科学分野の総称。普通、「先端技術」とか「ハイテクノロジー」のように、技術面を強調した用語として定着している。この語の適用はあらゆる科学分野に及ぶ。たとえば、生物の生態解明に駆使するバイオロギング、宇宙から気象観測を行う静止気象衛星、化学におけるナノサイズ・エンジニアリングなど、広範囲の技術開発にわたっている。

兵庫県先端科学技術支援センター

巨大科学 big science      (002) 

〈大規模科学〉とも。英語読み「ビッグ・サイエンス」のほうがぴったりの呼称であろう。多勢の研究者集団と巨額な研究開発資金を要する大規模科学技術の総称。宇宙開発事業、原子力発電事業、地球温暖化防止事業などがその例で、国家的かつ国際的なプロジェクトのもとに遂行される例が多い。

巨費科学           002)  

日本の学界の一部において〈巨大科学〉に代わる慣用語である。本来「巨費を投資するに値する科学」というポジティブな意味を含む。最近になり中国がこの分野のプロジェクトを目指し進出が目立つ。

経験科学 empirical science  (002) 

〈実証科学〉とも。実験等を伴う実証的な事象を対象に法則、真理を導き出す科学。自然科学、社会科学を問わず、かなり学術的な含みをもつ語である。古典的には英スコラ学者フランシス・ベーコン(15611626)が提唱した〈経験学〉scientia experimentalisを源流とする。医学は経験科学の最たるものであり、時には超常現象やテレパシーの研究といった広域で区分曖昧な分野にも及ぶ。

 

フランシス・ベーコン

理論科学 theoretical science002

  科学の基礎的な一分野。理論的な方法により科学の諸現象等を究明する学問で、哲学とも深くかかわりあう学域である。

 用語としてなじみが薄く、「理論化学」のほうがより一般的な語なので、混同しないように注意を要する。「純正科学」とならんで「経験科学」に対立する分野である。

純正科学 pure science        (002)

〈純粋科学〉ともいい、理論科学寄りの古い言葉。広域な自然科学分野で、実用的内容あるいは応用面等を含まず、理論形式だけを通じて研究する科学。「経験科学」に対応する概念の言葉である。しかし現在は、似て非なる「純正化学」寄りの用語へと変化が見られる。

知識学 knowledge science   (002) 

  ドイツの観念論哲学者ヨハン・フィヒテ(17621814)が唱えた「知の学」を意味するDie Wissenschaftslehreの訳語。知識全般について、哲学的な立場から理論づけた学域体系である。

 ヨハン・フィヒテ

なおこの語については、NDCにも研究社の新和英にも掲出がないが、かなり一般性があることから、例外として採用した。

ギリシア科学 Greece  science002.395

 

6世紀以来、古代ギリシアにおいてギリシア人による発展を見た科学的学問体系の総称である。古代アラビア(ペルシア)ではギリシア科学の著作が翻訳されるなど、周辺諸国も多大の影響を受けている。

似科学 pseudo  sciences002.7

科学であると僭称しながら実は科学の学域に受け入れられてない非知的な類の学問。たとえば、数値演算装置を持たない仮想的な演算装置が算出する演算機能は「擬似プロセッサー」と称している。

また西洋史において、1934年にイギリスの哲学者カール・ホバー(19021994)の反証主義は〈擬似科学〉の引き合いによくたとえられてきたが、このような論争について時代によって擬似かどうかの判定領域を異にする。

計算機科学 information  science007

 同義語「コンピュータ・サイエンス」とも。情報の生成にはじまり伝達、変換、認識、利用などに関する技術をコンピュータと連動させ生物系、機械系、人間社会など多方面に展開して研究する学問。最近では理論計算に裏付けられた心理学的手法を取り入れるなどして形式言語理論、コンピュータグラフィックスなど適用しうる下位学域が急速に広がっている。

情報数学 information mathematics 007     

〈情報数理学〉ともいい、情報科学の一分科。情報伝達の科学的表現、たとえばPCのバイト単位、2進数、補数、理論積などに関する学問である。統計情報を幾何学的にグラフ化した手法などもこれに入る。最近めざましく発展している学域といえる。

記号学 semiotics       (007.1)

 一般には「記号論」「意味論」の呼称で通っている、情報科学系の一分科。ある対象を示すため、それに関連する符号あるいは記号に関する理論記述の研究である。統語論、語用論、意味論などで構成されている。フランスの評論家ロラン・バルト(1915-1980)著『文学の記号学講座』がよく知られている。

 

スウィフト『ガリバー旅行記』第三篇の挿画 この高名な旅行記の第三篇の一部、『バルニバービ渡航記』より。表の単語の組み合わせしだいで無智な者にも哲学、法律、数学、神学などがたちどころに書けるようになる画期的な装置としている。

情報科学 cybernetics        007.11

〈統合科学〉などとも訳されている。生物とコンピュータやオートマティック機器など機械ならびに相互間の伝達、制御に関する理論および技術を統合した科学。総合科学としての性格が濃く、情報理論、自動制御、神経病理など他分野の学域にまたがる。1947年にサイバネティックスを唱導したアメリカの数学者ノーバート・ウィナー(18941964)が命名した。

システム工学 systems engineering 007.61

「システム・エンジニアリング」ともいい、SEと略表記することもある。広義には、人間と機械システムとのかかわりを計画段階から設計、評価に至るまで統合的に実施するための基礎工学をいう。

狭義には、システムを構成する機器の作業や効率を分析し、異なる機能の集合化により理想的な最適システム化の実現をめざす工学分野をさす。

 

01 図書館. 図書館学

 

図書館学 library science       010

〈図書館科学〉ともいう。図書館員が業務を遂行するために必要な知識および技術の総体。さらには情報科学面、レファレンス・サービスといったマン・ツー・マン活動におけるライブラリアンシップが求められる。

なお茨城県つくば市に、世界初(1974年設立)の図書館専門大学として「図書館情報大学」(国立大学)が存在する。

ライデン大学図書館の内部 17世紀オランダや西欧各国における大学図書館の典型的な風景。1610年、ヴァウダヌス著『ライデン大学図書館』口絵にスヴァーネンブルグが描く。ライデン大学図書館蔵。

図書館情報学 library information 010

〈情報図書館学〉とも。図書館学の一文科となっている。

情報学 (informatics)および情報科学に包括される、図書館運営上に必要な情報収集、レファレンス・サービス提供活動をさす。

なお旧称であった日本図書館学会は、平成10年に「日本図書館情報学会」へと改称されているように、図書館と情報科学との結びつきはますます強まっている。というよりは、図書館そのものが情報学域の集合体化へと脱皮しつつある。

帝国図書館の新築竣工 昭和2(1927)年、上野公園内に近代的な図書館として開館。移転する以前の現国会図書館(千代田区永田町)の前身である。

目録学            (014.3

 中国において、書籍を分類し解題目録を作成するための学問。古典の史料価値を再認識するのに効果的な手法が集約されている。前漢末に始まり、清朝期以来急激に発展をみた。

欧米式の目録学は日本では学問としてまだ確立してなく、書誌学、記述科学と分類学との混交領域のままである。

記述科学 descriptive science014.3

 ここでいう「記述」とは、事物の外形、特質を言語により客観的かつ学問的に記述して表すことをいう。〈記述科学〉そのものは図書等につきその方法論を研究する学問である。

また狭義には、個々の図書、資料の内容や目録を正確に記述し表現することを目的とした学問である。

主題学 thematologie〔独〕    014.4

 研究論文、文学、芸術作品など、知的生産物の主題について、その方法論や評価法などを研究する広域学問である。現今では俗に「タイトル学」と称されているものもこれに相当する。

 「ラスキンの書斎」 ラスキン(18191900)はイギリスの作家で美術評論家。この題名の絵は『ラスキン作品集』ⅩⅩⅢ巻(1906年版)所収の版画である。近代英国富裕層の典型的な書斎といえよう。

 

02 図書. 書誌学

 

図書学 bibliography           020

  呼称や学術的定義が曖昧な点があるが、狭義には〈書誌学〉〈文献学〉に同じと解釈してよい。図書にかかわるいっさいの学域研究に対する総称に用いられる。区分上位の〈図書館学〉と重複する部分がきわめて大きい支脈の学である。

書誌学 bibliography           020

 図書や資料に関し、その形態、材料、用途、内容、書誌などを科学的かつ実証的に研究する学問。分析書誌学、批判書誌学、列挙的書誌学あるいは体系的書誌学などの支脈分野に分かれる。

図書館における図書資料の分類作業を体系付ける重要な学問である。

 手書き『聖書』の第1ページ 8世紀、修道士らによる聖書の手書き編纂本で、装字に神経を払っている。大きな文字で「In principio」とあるのは「はじめに」の意味。

文献学 bibliography           020

文献に関するあらゆる研究を総括した用語。古文書により考古学的考察を行うなど、特殊な分野の研究も含まれる。この語には検索、情報収集活動、調査などでは書誌学に隣接した学域をも含める。

書物 Buchwessen〔独〕      020

  ドイツにおける〈書誌学〉の原呼称で、英国風のbibliographyとは内包するニュアンスが異なる。日本には明治期に移入され、「図書学」に先んずる用語として古典中心に応用されてきた。

日本書誌学 Japanese bibliography 020

日本における書誌学であることを示す区分上の用語である。『日本書誌学大系』(棚橋正博著、青裳堂書店)が斯学の名書とされている。

東洋書誌学 Oriental bibliography 020.22 

東洋における「書誌学」であることを示す区分上の用語である。東洋とはいうものの、実務上ほとんどが日本の書物ならびに漢籍で占められている。

西洋書誌学 European bibliography 020.23

西洋における「書誌学」であることを示す区分上の用語である。

 写本の校合(きようごう) グーテンベルグが印刷術を発明するまで写字、写本の校合は写字職人にとってたいへんな作業だった。14世紀の写本画、大英博物館蔵。

パピルス古文書学 papyrology (020.23)

〈パピルス学〉と総称的にも用いる。

ギリシア語もしくはラテン語によりパピルスに書かれた古文書についての考証や研究を行う学問。復元など考古学的な考証にも関与する。

なお「パピルス」とは、アフリカ原産のカヤツリグサ科多年草から製した古代の紙。古代エジプトから9世紀にかけ、これを用いた諸文献が残されている。

 魚網(あみ)を曳く人々」 作者のアイスキュロスは古代ギリシアにおける三大詩人の一人。パピルス断片に作品の面影をとどめている。

出版学 publication          023

 社会におけるマスメディアを中心に、文化事業の一環としての出版について総合的に研究する現代的学問。一連の書誌学、書物学、図書館学、読書学などと深いかかわりをもつ概念の言葉である。

この分野を統括する「日本出版学会」という学術団体があり、学会賞を設けるなどして出版会の発展に寄与している。

 『白書出版産業』は日本出版学会編。同会HPより。

『百科全書』扉絵 デイドロほか編集、全28巻、18世紀フランスで成った百科辞典。一堂の者全員が薄暗い地上から光明を求め上を向いている光景は、自然科学の知見の書にふさわしい絵柄である。

 

07 ジャーナリズム. 新聞

 

新聞学 newspaper learning    070.1      

  新聞やジャーナリズムについて社会的、技術的な面で研究する学問。ことにマスコミ媒体としての使命上、正しい報道姿勢といった

倫理面に至るまで、かなり広大な社会科学の

領域にわたる。いわゆるマスコミは、テレビやラジオなども含めた総称なので、「マスコミ学」と言い換えてもよいであろう

 知識の樹 近代初期における知識体系を図式化したもの。一大アカデミー圏が一覧できる。1515年、ルルス『学問の樹』の目録ページ、ケンブリッジ大学図書館蔵。

 1834227日の『ル・シャリヴァリ』の表紙 同紙の編集長(ルイ・フィリップ) 

に対する洋梨の形で組まれた裁判所の裁定文。図形詩的レイアウトで、せせら笑い

とも渋面ともつかぬ顔を白抜きに細工。フックス編『ヨーロッパ諸民族のカリカチュア』所収画384