3 社会科学  (政治、法律、経済、統計、社会、教育、風俗習慣、国防)

 

          アピアヌスの世界地図 ハート型の枠組みに経

緯度線網を連ねた世界図。視覚上の奇を衒ったも

ので、球形の世界地図と比べ投影上の歪みによる

地域差が大きい。1530年刊の木版画。

 

30 社会科学

社会科学 social science     300

 慣習的に〈社会学〉とも。人間社会で生じる諸現象の要因や通則性などを解明する経験科学の総称。狭義の社会学をはじめ経済学、政治学、歴史学、民族学など広域な諸科学を包括する。社会科学は自然科学および人文科学に対応した区分上の呼称だが、わが国ではマルクス主義寄り社会研究をさすこともある。

統一科学 concentrate science (300)

 科学哲学の一潮流で、社会科学体系を時系列的に経験科学分野へと収斂させる物理主義思想をさす。オーストリアの経済学者で哲学者オットー・ノイラート(18731945)が提唱した。

計量社会学 sociometry   (301.1)

 人間の社会的態度をはじめ社会行動、集団化、地域社会化など、社会全体の構造および変化について統計数量的に実証する社会科学の一分野である。

実証主義的社会科 positive social science            (301.1)

アダム=スミスを学祖とし経済学、政治学、社会学の各分野で、実証主義を支持する社会科学体系上の学域を指す。フリードリッヒ・リスト(17891846)を学祖とする「理想主義社会科学」に対応する概念の言葉である。

 

31 政治

政治学 politics           301.6

  政治による正義の実現、市民自由の保障、福祉の増進など、実践的な政策を研究する学問。ドイツの公法学者ゲオルグ・イエリネック(18511911)が『一般国家学』において最初に用いた言葉である。

国家 science of nation       311

  国家のさまざまな問題に対処し解決を図るための学問。19世紀ドイツで発生、政治学の一分野として発展した。

政治哲学 political philosophy  311.1 

 政治のあり方を国家存続の原理に照応させて大局的に論ずる学問。政治の本質と評価、政治の方法論、政治家理念などにも及ぶ。

政治力学 political dynamics (311.1)

〈政治工学〉とも。たとえば政治権力をめぐる闘争をはじめ派閥争い、支配と被支配の関係、対立紛争や裏面工作など、政治イコール必要悪といえる諸問題にも力点を置いて研究する学問である。「政治理論」とは正反対の、現実的な研究課題である。

有徳の統治者 イタリアの画家アンブロジョ=ロレンツェッティ(1280?1348?)画。彼はこの絵に「善き統治と悪しき統治の寓意」との題名を付けた。シエナのパラッツォ=プリブコ壁画、制作年未詳。

政治社会学 political sociology 311.13  

 政治と社会との関連性ならびに社会、風土が政治に与える影響など実務面に沿った研究を対象とする。「政治学」のなかに包括される部分が多い。

政治経済学 political economy (311.13)

  政治の施策や諸現象を経済事情や社会情勢などと結びつけ、その関連性から金融政策等諸問題の解決を図るための学問である。

政治心理学 political psychology (311.14) 

  個人または団体(政治結社等)の政治行動を心理学的手法に結び付けて研究する学問。すなわち政治理念、情報、価値判断あるいは団結パーソナリティなどの心理的要因から問題を解決し、その結果を評価する。

政策学 policy studies     (311.16)

 国家的見地に立ち政治をはじめ教育、産業、労働、金融、外交、軍事などの諸政策を策定し実践するための学問である。

行政官の彫像 フリードリッヒ2世に似せて彫らせたイタリアはカプア建立門の彫像。13世紀制作、カンバニア州立美術館蔵。

比較政治学 comparative politics (311.16) 

 政治社会の態様を相互比較の観点で科学的かつ客観的に解明する政治学の一分野。20世紀後半アメリカに発祥し国際化した。

計量政治学 political metrics 311.19 

  政治の実態や諸現象を計数的かつ実証的に研究し、それ自体に客観性を付与しつつ実践する学問である。

地政学 geopolitics             312.9

〈地政治学〉〈政治地理学〉とも。政策の策定や諸現象を地理的条件に照応させて研究する学問。ドイツの政治学者フリードリッヒ・ラッツエル(18441904)は、これをGeopolitikと名付け、日本では〈地政学〉と訳された。

政治地理学 political geography 312.9 

 人が政治政策圏の中で生活していくうえで、国土と政治運営との有機的な関連にたち、その理想的な仕組を研究する学問。イギリスの哲学者バートランド・ラッセル(18721970)が確立した。

戦略地政学 geostrategy      (312.9)

 国際関係の視点で、戦略上とくに重要とみなす地域において展開する政治活動について研究する学問。かつて植民地問題の解決法として政策的に発展してきた。

行政 public administration 317.1

 国家はじめ政府、地方官庁の行政に関するさまざまな取組み、諸現象を研究する学問。明治期に作られた用語〈官房学〉から芽生えた言葉。広い意味で政治学、財政学、行政法学、経営学などとも深く関連しあいながら成り立っている。

 有礼(ありのり)(184789) 明治の官僚・政治家。文部大臣時代に、西欧文物礼賛狂の森が芸者と当時流行りはじめたビリヤードに打ち興じるシーンでからかう。『トバエ』明治20 (1887)31日号。

国際政治学 international politics (319) 

 国際政治の動向を理論的に考察し外交戦略的知識を修めるための学問で、第一次大戦後に発達した。  

 

32 法律

法律学 jurisprudence           321

 法に関する学域体系の総称。古典的に法解釈学はじめ法哲学、法制史、法社会学、比較法学などの分野を包括する。

20世紀に入ってからは法人類学、法政策学、法論理学あるいは法コンピュータ学など多様な新領域が生まれている。教義の場合に用いる「法学」も、この〈法律学〉の体系中に組み込まれる。

法学 law                       321

 実定法の内容を体系化し整合性をもたせて説明することから、〈法解釈学〉の別名でも呼ばれている。

法解釈学 study of legal interpretation                321

 実務で法律を適用するさい、個別法文の意味に筋の通った解釈を加えて明確化し、さらに全体を体系化ならびに成文化する学問。時代とともに歴史的進歩を遂げてきた古典派法律学である。

立法学 legislation             321

 立法機関、立法政策、立法過程、政策形成などで法を定立するための技法や影響を研究する学問。実定法という枠内で、その記述成文に向けての主張が重視される。

法哲学 philosophy of law   321.1

〈法律哲学〉〈法理学〉とも。ドイツ語のRechtsphilosophieの和訳語。法律の概念とか理念あるいは法学方法論など、法現象を含め基礎的範疇で哲学的な法解釈を加える学問である。

自然法学 natural law       321.1

 人間の自然な意思本性を基盤に成立する永久不変な法体系を研究する学問。いわゆる「人為の法」に対応して用いる法概念である。

法理学 jurisprudence       321.1

  明治14年、中央大学創設者の穂積陳重(のぶしげ)教授(18551926)が東京大学で初めて用いた語。実証法の一般理論や法学論など、分析法学としての立場に限定した場合に使う用語である。

「法哲学」と重複する面がきわめて大きい。

穂積陳重

分析法学 analytical law    321.1

 イギリスの法思想家ジョン・オースティン(17901859)らの学派によって提唱された法学。法は主権者の命令によるとの実証主義に即し、法と道徳とを峻別し権利および義務の明確化などを試みている。

一般法学 general jurisprudence (321.1)

 法全体に共通する概念を基に、帰納法的手段を用いて結論を引き出す法理論体系を指す。19世紀後半から20世紀初頭のドイツに出現した。

概念法学 jurisprudence of concepts (321.1)

 ドイツの法学者ルドルフ・イエーリング(18121892)が提唱した法理論。彼は「目的こそ法の創造者である」との主張のもと、利益法論という新概念を導入した。

法政策学 Rechtspolitik〔独〕 (321.1)

  所期の法目的を実現するために、最も効果的かつ能率的な法技術の総括的な体系化を科学的に究明する学問である。

人文主義法学 legal humanism (321.1)

 16世紀イタリアやフランス等で盛んになったスコラ哲学派の理論中心の法学を批判する、〈人文主義法学〉による改革論をさす。

純粋法学 reine Rechtslehre〔独〕 (321.16)

  法を社会的事象から切り離し、政治的、倫理的に評価し純粋な立場で研究する法理論。オーストリアの法学者ハンス・ケルゼン(18811973)が提唱した。

目的法学 Zweckjurisprudenz〔独〕 (321.16)

 法解釈の場で目的とする概念を主導的理念に掲げることで法をより現実の生活に近づけようとする法学思潮。19世紀後半、ドイツの法学者イェーリングが提唱した。

利益法学 Interssenjurisprudenz〔独〕           (321.16)

 解釈法上、法制に利益の概念を主導することで判決をより法的実務に近づけようとする法学上の一学派。20世紀初頭にドイツの法学者マックス・リューメリン(18611931)らが提唱した。

リアリズム法学 realism jurisprudence (321.16)

 20世紀初期にアメリカに現れた法社会学の一思潮。法整備上の問題点や欠陥を解決すべく、裁判などで現実に適用する法の確立という立場をとる。

解釈学 Jurisprudenz〔独〕 (321.16)

〈解釈法学〉〈実定法学〉とも。実定法の意味系統を論証的に解釈することで、裁判など法実践に役立たせる実用向き法学である。

社会学的法学 sociological jurisprudence (321.16)

 実社会において法がいかに機能しているかを重視する立場の法学を指す。 

狭義には、19世紀末にアメリカで発祥したプラグマティズム哲学運動を背景とする法学一派を指す。

医事法学 medical jurisprudence (321.16)

 法学を主体とするが、医療過誤など医療上の係争に備え、これにかかわる医学的諸事象を大幅に取り入れて研究対象とする法学の一分野。医学に基盤をおく「法医学」とは系を異にする。

近代自然法学 modern natural jurisprudence (321.2)

 1718世紀ヨーロッパで成立した自然法学体系。すで定着した自然法の影響のもと、市民の社会秩序と近代私法の諸原理の正当性を論拠とした。

カノン法学 canon jurisprudence (321.2)

〈教会法学〉とも。中世にキリスト教教会が自らの組織や構成員の資格要件および権利義務などを定めた法体系をいう。うち12世紀中期になったローマ法典に並ぶ中世カノン法学を「中世カノン法」と称している。

法社会学 sociological  jurisprudence         (321.3)

 現実社会に生じるさまざまな法現象問題を社会的な、もしくは経験科学的な方法を適用して究明して解決を図る学問。「概念法学」に対応する自由法論の立場から近代に成り立った。

構成法学Konstruktionsjurisprudenz〔独〕 (321.3)

  法体系の構成を妥当な結論から出発して目的に沿った解釈にたどる法解釈学の一分野。19世紀ドイツの法学者イェーリングが提唱した。 

法心理学 legal psychology    321.4

 心理学の伝統的概念である「態度」をもとに、法意識の構造と機能のあるべき形態を実証的に検証する学問である。

比較法学 comparative law    321.9

 2以上の国家または社会の法制・法現象などを比較研究する法学の一分野。国際的な法制度についての知識が必要である。

法史学 history of law        322

〈法制史学〉とも。過去の法現象、法制度、法的慣行、法概念など法制の歴史を研究する学問である。

 イブン=ハルドゥーン(13321406) 中世イスラムの歴史家、社会哲学者、法学者。若くして向学の士として英才を発揮『歴史序説』は斯界を騒がせた名著。

憲法学 constitution         323.01

〈国法学〉とも。独Staatsrechtslehreの和訳である。一国の憲法ならびに憲法施行上の諸現象を対象に、他国憲法との比較を交えて研究する学問。政治学とのかかわりの濃い、法学の一分野である。

ドイツ国法学 German law   323.01

 ドイツで成った国法即ち憲法を類型的に指す語である。

民法学 civil law           324.01

 市民社会における市民相互の関係を規範する私法すなわち「民法」に関する学問である。

私法学 private law        324.01

 私法に関する学域の総称である。ここでいう「私法」とは、個人の私益や市民生活紛争に関し規定した民法や商法などをさす総称である。

刑法学 criminal jurisprudence 326.01

 刑法の原理ならびにその適用法を研究する学問。いわゆる「刑法総則規定」の適用、運用、解釈が核となる。

犯罪学 criminology           326.3 

〈犯罪科学〉〈刑事学〉とも。犯罪の原因、犯行の通則性、犯罪発生の抑止策などに関する学問。これの縁辺を構成する学域に精神医学、犯罪心理学、犯罪社会学、刑罰学などがある。

犯罪科学 criminality’s    (326.3)

 犯罪発生の原因や遂行プロセスなどについて科学的法則性を発見し、犯罪抑止の施策等を研究する学問。〈刑事学〉と共通する面が少なくない。

ピラネージ『監獄』 1760年にフランスの1画家が描いたこの銅版画は、巨大な牢獄を立体的にとらえ、見る人々に静的な恐怖をつのらせる。

被害者学 victim logy       (326.3)

 被害者の権利や侵害された利益をめぐり、犯罪原因論との結びつきで被害者救済を図るための学問である。

犯罪人類学 criminal anthropology 326.33

  犯罪者について人類学的考察を下しながらモデリングを研究する学問。犯罪者は人類の格別な一変異とする性善学説から生じた。

犯罪生物学 criminal biology  326.33

 犯罪者の人格的欠陥および人格的特性を生物学的パターンに結び付けて研究する学問である。

犯罪心理学 criminal psycholog 326.34

 犯罪自体ならびに犯罪者について、犯行の心理、犯罪者の特性、犯罪捜査と矯正策など、心理要因を核に究明する心理学の一分野。

司法心理学 forensic psychology (326.34)

 犯罪者に対する私法上の見地から、犯罪者特有の心理学的理論をモデル構築し、その対応を研究する学問である。

行刑学 penology             (326.4)

 古くは〈刑罰学〉とも。行刑制度、受刑者の地位と処遇、仮釈放など行刑全般の問題を対象とした学問である。

矯正医学 orthopsychiatry    326.54

 犯罪予防の医学技法を用い、さらに精神医学、心理学、ソーシャルワーク、行動科学などをシンクロナイズさせた精神医学をいう。

裁判医学 forensic psychology 327.014

 法廷での法的プロセスに関する心理学的側面を扱う、応用心理学の一分野。「犯罪心理学」と重なり合う部分が大きい。

供述心理学 confess psychology 327.014

 20世紀初頭、ドイツの実験心理学の手法で採用された「証明の科学化」を実証するための研究。証人の供述過程をつぶさに観察・記録した心理的プロセスが重視される。

法廷心理学 legal psychology 327.125

裁判心理学〉とも。裁判とその関連手続きにおいて、心理学的問題を取り扱う応用心理学の一分野。供述証拠の証明化に関する供述心理学、あるいは裁判での心証形成過程が活用される。

ケンブル「法の及ばぬ者」 法的保護を受けられない下層民を危険なレールに横たわらせ、ブルジョアは高みの見物を決め込んでいる寓意の諧謔。フックス編『ヨーロッパ諸民族のカリカチュア』所収画847

 

33 経済

経済学 economics               331

  かつては〈理財学〉と称した。流通経済社会で生じる諸経済現象について総括的に研究する学域で、社会科学の一部門を占める。「理論経済学」ならびに「応用経済学」に二大別して扱う。

なお、紛らわしい用語について一言。江戸時代の「経済学」は家や民を治める経国の意味で用いられた語だが、ここでは現代の経済学に限定する。

国民経済学 national economics 331

 一国民について富の再分配を中心に論じる経済学。経済政策や社会制度のもとに運営される共有の貨幣、財政、金融の各制度について研究する経済学の一分野をいう。

経済社会学 economic sociology 331

 経済現象と社会現象との関連性を主題に研究する学問である。

ここにいう「経済社会」とは、人間同士が経済活動を営むことにより相互に利害得失の関係が生じ、その結果として構築される社会を指す。

公共経済学 public economics  (331)

 市場原理の機能面だけでは解決できない経済現象について、政府や地方自治体等が介入し解決を図る分野の経済学をいう。

巨視的経済学 macroeconomics    331

〈マクロ経済学〉とも。経済全体を、国民所得あるいは投資や消費など巨視的スケールで運行法則を分析する経済学の一分野。イギリスの経済学者ジョン・ケインズ(18831946)が提唱した「雇用理論」がこの分野発展の口火を切った。「微視的経済学」に対応する概念の言葉である。

ジョン・ケインズ

微視的経済学 microeconomics    331

〈ミクロ経済学〉とも。家系や企業個々の経済活動の分析に始まり、その結果を広範な市場経済スケールに敷衍させる経済学の一手法。「巨視的経済学」に対応する。

経済哲学 economic philosophy 331.1

 経済学の根底をなす現象の見方、思想あるいは方法論などを総括した学域である。現代では功利主義をはじめ自由主義経済の是非、あるいは唯物史観や理論実証主義などの分野にまたがる。

実証経済学 positive economics (331.1)

 実際的な経済現象や実務的な経済事象に依拠し、本態や対応を解明するための経済学の一分派。徹底した実証主義により理論的側面は排除される。

規範経済学 normative economics (331.1)

 現実の経済学が本質的にいかにあるべきか規律をもって示し、理想形態を目標とする経済学の一分派である。

理論経済学 theoretical economics (331.16)

〈純粋経済学〉とも。一般的な経済法則や経済理論を研究する経済学の系統で、「数理経済学」と重なり合う部分が大きい。さらに「応用経済学」に対応する概念の言葉でもある。

静学 static economics     (331.16)

〈経済静学〉とも。経済所領が時系列変化を伴わない分析方法を適用する分野の経済学。「動学」に対応する。

 

動学 dynamics             (331.16)

〈経済動学〉〈動態経済学〉あるいは〈フィードバック経済学〉とも。経済現象の変動プロセスを扱うことを「動学モデル」といい、これを専門的に扱う経済学分野を〈動学〉といっている。すなわち経済現象の過程を観察し、動学モデルとして分析を加える研究を行う。「静学」に対応する概念の言葉である。

動学的最適化に基づく新しい有効需要分析 大阪大学フェロー小野善康発表 阪大社研HPより      

進化経済学 evolutionary economics (331.16)

 社会経済システムの進化、たとえば先端技術と経済発展の相関関係などを対象として研究するシステマティックな経済学の一分派である。オーストリア出身でアメリカの経済学者ジョセフ・シュンペンター(18831950)らが理論づけた。

新厚生経済学 new welfare economics (331.16)

 経済諸活動のうち、社会が受け入れやすい性質のものと、経済厚生効果が大きくなる仕組を考察する経済学の一分派である。

教育の経済学 educational economics (331.16)

 教育分野に内在する経済的側面を経営手法によって考究し、より付加価値効果を高めることを目的とする応用経済学の一分野。たとえば教育訓練の向上を通して雇用の質を高め生産性向上を図る、といったケースが顕著である。

数理経済学 mathematical economics 331.19

 経済現象を微積分はじめ線形代数、位相幾何学など数学的方法で処理する経済学の一分野。価格、生産量、所得など経済量同士の関係を計測し、経済変動の予測などに役立たせる。

経済性工学 engineering  economy (331.19)

 略称「EE」。科学技術分野での計画意思決定時に、経済的に最も有利な方法を比較することで、将来性をも含め理想的な経済状況を作り出すための理論を打ち立てる学問。19世紀末アメリカで発祥した。

経済数学 economic mathematics 331.19

 経済学ことに計量経済学で、ゲームの理論などに用いる例のように、数学そのもののの研究や開発を行う学問。

最近ではコンピュータ用に計量経済ソフトが開発され、複雑な計算プロセスや処理手法の確立に貢献している。

計量経済学 econometrics    331.19

 数理経済学および統計学をベースに、経済的諸問題の解決へ向け理論的にアクセスし統合化する学問。

この「エコノメトリックス」とは、ノルウェーの経済学者ラグナル・フリッシュ(18951973)の命名による。

動学的最適化に基づく新しい有効需要分析 大阪大学フェロー小野善康発表 阪大社研HPより      

 アダム=スミス(172390) イギリスの経済学者で、その卓越した業績により世界的に有名である。

マルクス経済学 Marxian economics (331.6)

〈マルクス主義経済学〉〈社会主義経済学〉とも。ドイツの経済学者マルクスならびにエンゲルスによって確立された政治経済学体系の呼称。史的唯物論の立場から資本主義経済の内部構造を追求して不条理を明らかにし、資本主義社会から社会主義社会へ移行する理論的根拠を樹立した。

マルクス主義的国家経済学 Marxian international economics   (331.6)

 近代経済学の構造理論上の一区分。ヨーロッパで本来的かつ中枢的な資本蓄積過程の同時進行と、世界市場の不均衡性とを検証、追求するべく発達した。

近代経済学 modern economics (331.7)

 19世紀後半、ヨーロッパやアメリカで発達してきた理論的かつ非マルクス主義的な経済学の呼称。巨視的経済学ならびに微視的経済学から成る。

ワルター・クレイン「資本と労働」 社会主義を謳歌したところのあるカリカチュア。『ジャスティス』より。フックス編『ヨーロッパ諸民族のカリカチュア』所収画1058

新古典派経済学 neoclassical economics (331.74)

 19世紀末から20世紀前半に成立した経済学の主流派をいう。古典派経済学者の自由主義的な価値観を、さらに個人の合理的行動がもたらす市場均衡理論へと結び付けて展開したものである。

ケインズ経済学 Keynesian economics (331.74)

 イギリスの経済学者J・Mケインズ(18831946)が提唱した経済理論を核とし形成した経済学一派の呼称。有効需要の原理に基づき生産物等産出量の変動を扱う「マクロ分析」に拠りどころをおく。

応用経済学 applied economics (331.8)

 マクロ理論を前提として経済諸現象を分析する経済学。財政学、金融論、国際貿易論などが関連する。「理論経済学」に対応する概念の言葉である。

環境経済学 environmental economics (331.8)

 持続可能な社会体制に求められる基礎的な経済的要因を分析し、正しい方法を解明する経済学。最近では環境破壊の激化やエコロジー問題への対応策として、この分野の研究に目が向けられている。

厚生経済学 welfare economics (331.8)

 社会における資源分配の効率化、所得分配の公平性に関して、経済組織体の成果を評価し、政策的適合性を認識するための経済理論をさす。

価値工学 value engineering (331.84)

 一般に「バリュー・エンジニアリング」(略してVE)と呼ばれている。ここでいう「価値」とは、顧客ニーズを満たす商品や製品を提供するのに必要な最低コストをさす。〈価値工学〉はそれを実現する目的で、組織的にコストを引き下げるための技術や方法をいう。

経済史学 economical history (332.01)

 各種多彩な歴史的過程から経済事象にかかわる事項を史実としてまとめる研究である。

経済地理学 economic geography 332.9

 経済諸現象および地理的な自然現象との関連性を究明する学問。たとえば応用地形学と都市計画、経済地理学と地域開発といった学域の交流も見られる。応用地理学の一分科であるが、ときには〈応用地理学〉そのものの呼称を狭義に用いることもある。

産業地理学 industrial geography 332.9

〈経済地理学〉と内容はほぼ同じ。経済現象の法則の追求およびモデルの構築を目指す経済学と、地域特性の探求や地域記述を目標とする地理学とが合体して成立した学域であるといえる。

国際経済学 international economics (333.6)

 国家間に生じるあらゆる経済行為を対象にする学問。主として貿易による商品やサービスの交換、あるいは生産要素の国際移動などである。

人口学 demography            334.1

〈人口統計学〉とも。人口の分布と構造、あるいはそれらの変動などを統計学の手法で解明する学問である。

「人口静態統計学および「人口動態統計学」の双学に支えられている。

人口社会学 demographical sociology 334.1           

 人口に関するあらゆる社会的現象を対象に、包括的に統計、記述して傾向を見極める学問。1798年、イギリスの社会学者T=マルサス(17661834)が著した『人口論』(匿名)は、近代人口社会学の基礎を固めるのに多大な貢献をした。

この学域は「人口学」に重なり合う部分がかなり大きい。

T.マルサス

人口地理学 geographic demography 334.2            

〈地域人口学〉とも。人口社会学に対し地理的考察に基づく地域特性の概念を反映させ、両社を一体化した学問である。

他の社会学分野と交錯重複する部分が少なくない。

歴史人口学 historical demography (334.2)

 人口の変動現象歴史の時系列に沿ってさかのぼり流れの系列として把握研究する学問である。

経営学 business administration 335.1          

〈経営経済学〉とも。資本主義社会のもと、企業経営を対象に、企業の諸活動を実践する具体的な方法を研究する学問。「社会科学」の一分野である。

経営経済学 business economics 335.1           

 独Betriebswirtschaftslehreの邦訳。ドイツで発祥、経営体における価値体系の流れ、あるいはその過程そのものを究明するために発達した学問。現代では「経営学」の古典的な語義として解釈されている。

社会主義経営学 socialist economics 335.1          

 事業全体の生産と消費を計画的にコントロールし、各人の労働成果に応じて所得分配することを目的とした経済学。社会主義体制下で形成される経営理念である。

ドイツ経営学 Bettiebswirtschaftstsehre〔独〕 (335.1)

  ドイツで発達した経営学を指す。伝統的な個人経営の管理手法をもとに発展し、後に国民経済学的視野にたちカルテル形成色の濃い学問へと変容した。

経済学 Privatwirtschaftslehre〔独〕           (335.1)

 20世紀初頭のドイツで展開された、私的営利企業にかかわる経済学手法を指す。高収益私企業の経営分析に主眼をおいた。

アメリカ経営学 American management business (335.1)

 企業経営が現実に直面する諸問題を実践的に解決することに重きを置いた経営手法を指す。総合的な行動科学と結びついて資本主義経済発展に成果を挙げている。

批判経営学 critical management theory  (335.12)

 マルクス経済学の一環として、個別資本の運用法則を解明する目的のもと、現実の企業活動の是非を批判する試みの経営学説を指す。日本では1930年あたりから唱えられた。

経営管理学 business management 336.1           

 企業体が利潤を最大限に引き上げられるよう各種業務の遂行を管理、統制する学問。広義には会社以外にも病院、学校、公益事業等の経営を運営する経済活動をも含める。

秘書学 secretarial science  (336.5)         

 要職にある人の身の回りで、機密の文書や事務などを扱うための技法の総称。いわゆるセクレタリーであり、養成のための専門学校がある。

会計学 accounting            336.9

 企業会計上の理論、法則、技法などを研究する学問。簿記論をはじめ財務諸表論や経営分析論など各論にわたり構成される。

会計数学 accounting mathematics 336.901

  会計上必要な数学を研究する学問。「経済数学」あるいは「経営数学」などと重なり合う部分が大きい。

保険学 insurance science     (339)

 保険という社会的な事業を対象に研究する経済学の一分野。法学、社会経済学、社会学、統計学、医学などと縁辺関係にあるまさに「実学」である。

保険数学 insurance mathematics 339.1

〈保険数理学〉とも。保険業の運営に欠かすことのできない高度な数理計算をはじめ、保険料等の算出に必要な確率計算や統計理論などを含めた数学である。

保険医学 insurance medicine 339.43

 生命保険等の被保険者について、その健康状態や保健生活などを考察ならびに診断し、加入審査に役立てる医学である。

 

34 財政

財政学 public finance         341

 国家財政あるいは地方財政の原理や政策等を研究する経済学の一分野である。これの運用にはマクロ経済学での視野が要求される。

財政社会学 financial sociology 341

 財政学ならびに社会学双方の学問を折衷し、新しい学域体系として自立させた学問。いわゆる「境界線科学」と称される特殊な分野に位置づけられる社会学である。

官房学 cameralism         (341.2)

 国家収入を獲得するための学術的方法論を指し、1618世紀ドイツやオーストリアに発生した学派理論。今日の国家財政学あるいは国民経済原理の根源をなす学問である。

古典派財政学 classical public finance  (342)

 18世紀、イギリスの経済学者スミスを始祖とする、自由主義哲学寄りのイギリス古典派財形学の一派を指す。

ドイツ財政学 German public finance (342)        

 ドイツで発達した財政学を指す。官房学の伝統を引き継ぎ、1720世紀に正統派財政学として世界に垂範を示した。

正統派財政学 orthodox public finance  (342)

〈社会政策的財政学〉とも。1920世紀にドイツで発展した財政学の一潮流で、往時の日本の財政学確立に多大な影響を及ぼした。 

マルクス財政学 Marxian public finance   (342)

 カール・マルクスとフリードリッヒ・エンゲルスによって創成された政治経済体系のうち、国家財政に関与する学域の総称である。

フリードリッヒ・エンゲルス 

 

5 統計

統計 statistics           350.1

 集めたデータや情報をもとにそれらの数量を比較し、応用数学の手法を駆使して多くの事象を統計的に処理する学問である。そのデータの多くは確率論という特殊な物差しで処理される。

応用統計学 applied statistics (350.1)       

 統計手法をある分野固有の論理に結びつけ、その分野に応用して展開を図る統計学の分野。「計量○○学」のような用語フォーマットをとることも少なくない。

記述統計学 descriptive statistics 350.1

 実験はじめ調査や観測などによって得た数値の集合の平均値、標準偏差、モード、相関係数などを計算し記述する分野である。 

静態統計学 static statistics 350.1

 特定日時における人口や生産高などのように、一定時点での数量を調査する統計学の一分野である。

人口統計学 vital statistics 358.01

〈人口動態統計学〉とも。人口増減現象における静態もしくは動態を研究する学問。社会統計学の一分科に組み込まれている。

1回国勢 大正9(1920)9月実施。国民への通知用絵はがき、臨時国勢調査局発行。

 

6 社会

社会学 sociology             361

 人間の社会的生活の構造や機能を幅広く研究する学問。フランスの哲学者オーギュスト・コント(17981857)の造語を明治期の教育家外山正一(18481900)が訳した語である

19世紀中頃のパリ市街図 今なお残る有名施設や寺院が見え、当て物の楽しみは、ちょっとした考現学となっている。

認知社会学 cognitive sociology 361

 人間集団である社会において、認知活動を総括して解明し、さらにコンピュータによるその応用と実用化をめざす「社会科学」の一分野。「認知科学」と同義に解釈してよいほど相似性がある。           

客観的社会学 objective sociology (361.1) 

 社会の諸現象を第三者的立場で観察し、その傾向を客観に徹した冷徹な目で分析する、「社会科学」の一手法である。         

批判社会学 critic sociology (361.1) 

 マルクス主義的で唯物論的、かつラディカルな変動を是認する立場をとる「社会学むの一派。1930年、ドイツのフランクフルト学派マックス・ホルクハイマー(18951973)らによって興こされた。            

解釈的社会学 interpretative sociology  (361.1)

 反実証主義の立場すなわち見解をつねに主観主義で貫く「社会学むの一派。オーストリア生まれアメリカ亡命の社会哲学者アルフレッド・シュッツ(18991959)を先駆とする。

機能主義社会学 functional sociology  (361.1)

 客観主義的規制に依拠し機能優先の構造主義パラダイムを重視する「社会学むの一派。アメリカの社会学者タルコット・パーソンズ(19021979)の提唱による。 構造主義的社会学 structural sociology  (361.1)

 社会現象の全体構造を相互に関連する諸要素をもって客観的に把握すべきとする「社会学」の一派。フランスの政治哲学者ルイ・アルチュセール(19181990)らが唱えた。           

社会静学 social static      (361.1)

 社会構造を解剖学的、生理学的手法の応用により解明する、社会有機体説の立場をとる社会学。フランスの社会革命家C・サン=シモン(17601825)はこれを〈社会生理学〉という呼称で唱えた。

サン=シモン           

深さの社会学 sociology of structural functionalism  (361.1)

 社会の構造パフォーマンスについて、社会の深層構造に眼を向け究明する立場をとる「社会学」の一派。フランスの社会学者ギュルビッチによって定形化された。

社会経済学 socio-economics (361.16)

経済成長過程を単独現象としてでなく、政治的、社会的、文化的な各過程との相互作用としてマクロな視野で考究する「経済学」の一分野である。

科学社会学 sociology of science (361.16)

 科学を人間の知的行為として解釈し、その姿勢を社会的視野から学問上の追究へと移行させる方法論。20世紀後半、アメリカの社会学者ロバート・マートン(1910)が発表し世界に広がった。

発達社会学 developmental sociology (361.16)

 児童期から青年期への発達に伴い形成が変化する家族集団、同輩集団、マスコミ活動などを通じて、その社会文化的な背景を研究する学問である。

深層社会学 depth sociology (361.16)

 微視から巨視まで、社会的現実や現象を個々の深さの程度で評価し体系づける「社会学むの一手法。1920年、フランスに亡命したロシアの社会学者ギュルビッチが提唱した。

学校社会学 school sociology (361.16)

 学校教育を社会機構の一環として位置づけ、高度の教育こそ社会階層における再生産となる、という前提で評価し体系づける学問である。

巨視社会学 macro-sociology (361.16)

 社会構造に知力(知識、技術、価値観)をもつ労働力を供給する教育制度を結びつけ、高踏的かつ開放的な社会成立の基盤作りを目指す学問である。

考現学 modermology         361.16

 現代という時代層のもと、社会現象を組織的に解明し風俗、世相、事件などの実相を把握する学問。昭和2年、民俗学者の今和次郎(18881973)が「考古学」に対応して作った言葉である。

今和次郎

知識社会学 information sociology 361.2  

Wissenssoziologieの和訳。知識や情報を歴史的、社会的な関連性のもとにとらえ、社会規範に対し既定事実として組み込み研究する、特殊な「社会学」の一分野である。 

形式社会学 formal sociology  361.21

 社会学の独自の科学性を重視し、ドイツで発展した社会学説の一派理論。対象を形式と内容との二面範疇に収め、とくに形式論自体を心理相互作用とみなして「社会学」の独自性を強調している。

理解社会学 comprehensive sociology (361.234)

 社会的、歴史的な諸現象を現実に照応させて補完説明する立場の社会学一派。ドイツの思想家マックス・ウェーバー(18641920)20世紀に提唱した。

マックス・ウェーバー     

社会心理学 social psychology 361.4 

〈心理社会学〉とも。個人の態度をはじめ社会的適応性、周囲同調性、対人魅力、帰属意識、コミュニケーション適性など広域社会行動の面について研究する「応用心理学」の一分野である。           

行動科学 behavioral science 361.4

 人間行動の一般的法則を、その縁辺にかかわる心理学、社会学、経済学、人類学、精神医学などへと展開させ、実証的な体系を構築する学問である。

規範学 normaticve science  (361.41)

〈規範科学〉とも。理想的状態にある価値の規範を形態に具体化し適応させる学域の総称である。

すなわち個人の意思や行動を通じて存在の規範となるような倫理的、道徳的、美的な社会行為が研究課題になる。「経験科学」に対比させた概念である。

民族分類学 folk taxonomy  (361.42)

 民族誌学上の一分野で、民族の諸情報を徹底した客観的手法で引き出して特徴づけ、それらを特性としてまとめる分類学研究を指す。

台湾における先住民族分類図 「知ってなるほど」明治・大正・昭和の生活と文化 国立公文書館アジア歴史資料センター HPより

社会力学 group dynamics    361.44 

〈集団力学〉とも。英語の「グループ・ダイナミックス」を用いることもある。集団対個人との相互依存関係を実証的に研究し、その通有法則を発見するための学問である。

群集心理学 mass psychology  361.44 

 人が意識せずにとる暗示行動、衝動的行、動集団ヒステリーなど、人間が集団行動時に示す特殊な心理状態を対象に研究する「心理学」の一分野である。

集団心理学 group psychology 361.44

〈群集心理学〉の別称である。人が集団化すると発揮する精神や社会意識の特異性をとらえ、それらが人間行動に与える影響を研究する「心理学」の一分野である。

社会動学 social dynamics  (361.44)

〈社会物理学〉とも。社会が継続して発展を遂げるよう、社会を連続した運動体とみなしそれらに法則性を見出す研究である。

文化社会学 cultural sociology 361.5 

 人間文化、ことに社会的に充実したソフトな内容の文化を対象に研究する「社会学」の一分野。「形式社会学」に対応する概念の言葉として定着している。

文化解釈学 cultural interpretation (361.5)

 文化の意味を客観的解釈の対象として把握したうえで、その根底の本質を探る立場をとる「社会学むの一派。アメリカの文化人類学者クリフォード・ギアーツ(1923)が提唱した。

比較文化学 comparative culture (361.5)

 特定の文化で得た結論が他の文化でも通用するか、また適用して妥当かどうかなどを対比して調べる。すなわち、比較によって複数文化間の類似と差異を見究める学問である。

組織社会学 organized sociology 361.6 

 組織体、すなわち社会を構成する集団や集合体が結合することで、有機的に機能する実相を研究する社会学の一分野である。

集団社会学 group sociology   361.6

 社会構成員としての人がグルーピングによって集団を構成したときに生じる諸問題を多角的に考察、研究する学問。「組織社会学」と重なり合う部分が大きい。

家族社会学 family sociology 361.63   

 社会学的見地から家族が社会的に進化するための要因とか条件などを研究する学問。テーマの選択は比較的自由で、たとえば核家族化問題、結婚幸福感のスケールといった問題が論じられる。

社会生態学 social morphology 361.7 

 人間と地域社会との共生関係を前提に、人間集団と社会環境との結びつきを生態学的手法を用いて研究する「社会学」の一分野である。

人間生態学 human ecology     361.7

 生物生態学から多くの概念や手法を敷衍し人間にかかわる現象を空間的に分析して、人間社会を類比的に研究する「生態学」の一分野である。

都市生態学 urban ecology   361.6

 都市における動態を観察し理想的な都市計画に結びつけるための研究。ことに都市環境下での人間、動物、植物の適応を考察する。「応用生態学」の新しい展開である。

行動工学 behavioral engineering (361.7)

〈行動変容学〉とも。人間の社会行動を社会的随伴性あるいは環境条件などによって要因分析し、さらに心理学的考察を加味して記述する学問である。

社会生理学 social physiology (361.7)

 社会は各個人の単なる集団ではなく、全体として生きた統合体であるとの見解にたつ「社会学」の一派の思潮である。

農村社会学 rural sociology  361.76

 〈村落社会学〉とも。農村における社会問題はじめ人間関係などを取りあげて研究する「社会学」の一分科である。

都市社会学 urban sociology  361.76

 都市全体あるいは都市化を研究対象とする「社会学」の一分科である。

都市化過程に伴う地域社会と社会構成員の変化現象やライフスタイルなどが課題となっている。

コンスタンチノーブル市街地 1493年ドイツ木版(Buch der Chroniken)より。石造り一辺倒の市街であることがわかる。

認識社会学 sociology of cognition 361.8

社会人としての性格など、認識作用を軸に各種データなどと照合して適性を見究める学問である。

社会物理学 social physics (361.9)

 統計手法の応用により、人間および社会に関する精査を行う「社会学」の一分野。ベルギーの統計学者ランベルト・ケトレー(17961874)が実践した。

社会統計学 social statistics (361.9)

 社会集団を対象に社会生活における合法則などを全数大量観察をベースに解明する「統計学」の一分科。マイヤーに代表されるドイツ統計学派の提唱から発展した。

社会工学 social engineering 361.98

 社会政策や社会問題を工学のパラダイム手法を借りて解決することを目的とした学問。公共政策を課題とする「政策科学」と軌を一つにする。

漸次的社会工学 piecemeal social engineering  (361.98)

 社会進化を漸次的に、弾力性ある順応性を重視しつつ、試行錯誤によって秩序を確立しようとする「社会学」の一分野である。

社会形態 social morphology (362)

 社会の種類やタイプ、あるいは社会現象など、主として社会の外観的形態について、そのあり方を評価し研究する「社会学」の一分科である。

『逆さま世界』 石が浮かんで木の葉が沈むような17世紀イングランドの政治混乱について記述した古書の表紙。1647年、ジョン=スミス版。

労働科学 labor science       366.9

 労働者と労働力を最適の状態に確保するため、その諸要件について科学的研究を加える総合的な学問である。

産業社会学 industrial sociology 366.9

 企業に働く従業員の意識構造を取りあげ、彼らの行動様式、人間関係、職場への帰属意識、あるいは企業文化との関連などを含めて研究する学問である。

労働経済学 labor economics  (366.9)

 労働にかかわる労働市場の不均衡、賃金と雇用の諸問題などを研究する「経済学」の一分科である。「労働科学」とも密接な関係にある。

F.ブラウン「労働」 額に汗して働く労働者をしたり顔で眺める英雄崇拝主義者カーライル(右端奥の人物)を配したのは皮肉か。1856年制作、マンチェスター市立美術館蔵。

経済心理学 economic psychology 366.94

 経済活動を中心に、人間の生活形態や態度などから心理学的成果を評価する学問。ことに社会的、文化的環境にあって、人の経済生活が精神現象に与える影響を研究し、生活向上に役立てる分野が開拓されている。

産業心理学 industrial psychology 366.94

 企業における従業員あるいは市場における消費者を対象に、その集団力学、モラール、リーダーシップなど心理学的な主題について研究する学問。「組織心理学」と交錯する面が少なくない。

工学心理学 engineering psychology (366.94)

 労働者の能力や所作等を定数とし仕事の遂行度を変数として、それぞれの相関から人と仕事との適合性を数理的に見極める産業心理学の一分野である。

労働心理学 labor psychology 366.94

 産業における労働条件と疲労との関係、労働災害事故発生の心因性、あるいは職場への適応性といった現代労働者の心理学的諸問題を解明する「産業心理学」の一分科である。

産業保健学 industrial hygiene (366.99)

〈産業衛生学〉とも。労働者の能力発揮の機会を増やすために、最適な環境や作業方法および作業量などを設定するための検討を加える学問である。

老人学 gerontology           367.7

〈老年学〉〈高齢者学〉とも。老人および老人問題を総合的に研究する学問で、「発達心理学」の一分科。老人医学、老人看護学、老人社会学など周辺学域を含めた「総合科学」である。

社会老年学 social gerontology (367.7)

 人口全体の加齢化に伴い発生する社会問題とのかかわりを多角的に究明する「社会科学」の一分野である。

社会病理学 social pathology (368)

 身体が病気になるのと同様に社会も病気にかかるという仮説のもと、社会のさまざまな病因を対象に研究する学問。フランスの社会学者リリエンフェルトが最初に用いた言葉。

犯罪社会学 criminal sociology (368.6)

〈刑事社会学〉とも。犯罪を社会に起因する現象の一つとみなし、その観察、分析、傾向などを通して事実や真相を解明していく「社会科学」の一分科である。

 

37 教育

教育学 pedagogy                371

 基底に哲学的思弁を置き、人間性の探求と実現のための教育を頂点に位置づけて、「行動規範の学」として探究する学問である。

18世紀後半、ドイツの哲学者、教育学者であるヨハン・ヘルバルト(17761841)の名言「教育の目的は倫理学により、その方法は心理学によって達成される」を実践したことで、人間の主要な学域課題として発達している。

「大国民教育双六」 明治2310月「教育勅語」発布記念し発行の絵解き双六。「大国民」といううたい文句が時の全体主義を暗示し、国家は「教育の重要性を遊びながら学べる」啓蒙用メディアとして思想教育に活用した。

教育哲学 educational philosophy (368.6)

 教育の基本原理(目的、対象、手法等)に哲学的考察を反映させた教育学の一分野。教育学の一分野ではあるが、「教育心理学」と交錯する面が少なくない。

実験教育学 experimental pedagogy (371.16)

 20世紀初頭、ドイツの心理学者で哲学者ヴントが確立した教育学理論。彼は得手とする実験心理学を駆使しつつ実際的かつ統計的な手法による「教育学」を編み出した。

教育科学 science of education (371.16)

 科学的立場から究明する「教育学」を指す。教育を一つの社会的理念として把握し、教育の科学的な側面を実証的に究明する。

教育社会学 educational sociology 371.3

 教育に関する倫理と実践を社会学的視野でとらえる目的のもと、社会にとって教育のあるべき本姿を究明する学問である。

教育心理学 educational psychology 371.4

 教育の効果を最大限に高める目的のもと、教育上の諸事象や諸問題について心理的知見と心理的技術を付与し究明する学問である。

学習心理学 psychology of learning 371.4

 人間の能力や行動傾向をとらえ、そのスキルの学習効果をあげるため、あるいは悪弊を除去するため、心理学的効果を追究する「心理学」の一分野である。

教育的環境学 educational environment 371.4

 児童の発達を規定する条件として、その教育環境を実証的に考察し、教育技術上の成果をもたらすよう研究する学問。「児童精神医学」と「児童心理学」が大きくかかわる。

手習師匠への入門 学問の手始め、手習いに入門する子息を連れて母親が師匠に挨拶。奥の間に山積みされた天神机が見える。菊池貴一郎画文の『江戸府内絵本風俗往来』より。

習熟性工学 learning engineering (371.4)

 人間の動作や作業について、習熟するにはどのような教育訓練を課すべきか研究する学問。ここでいう「習熟」とは、反復練習によって意識的作用なしに一つのことを遂行できるようになることを指す。

青年心理学 adolescent psychology (371.47)

 個人が発達段階にある青年期にどのような心理上の特殊性を示すか、生化学的、社会学的観察を加味しながら研究する「発達心理学」の一分科である。

教育統計学 educational statistics 371.8

 教育効果をいっそう高めるため、教育の個別的、構造的な現象を数量的に実証し、さらに統計学的立場からさまざまな現象を解明する学問である。

教育工学 educational technology 375.11

 教育目的の達成のために資材、装置、設備、組織、情報、人間関係などを活用し、必要な手段や技術を開発する学問。換言すると、教育システムの経済的評価を高めるための「行動科学」といってよい。

児童心理学 infant psychology (376.11)

〈幼児心理学〉とも。幼児期の子供を対象に諸心理学的考察を行う学問。児童の精神的発達を考察し諸相を記述するとともに、その発達プロセスの構造を究明する「発達心理学」の一分科である。「幼児期」とは二足歩行できる1歳から就学までの期間をさす。

教授学 teaching methodology 377.15

 一般に「教授法」といっている。教授の手法などについての研究である。ここでいう「教授」とは、子供を対象に教え授ける過程や方法を指す。すなわち狭義の「教育」とみなしてよい。

 

38 風俗習慣. 民俗学

民俗学 folklore              380.1

〈民伝学〉〈民間伝承学〉あるいは「フォークロア」とも。民間伝承を主軸に、風俗および俗信、それらの背景文化など、庶民の生活史を研究する学問。考古学など隣接を含め、衣食住から地理、歴史、芸能まで学域はきわめて広い。

南方熊楠(みなかたくまぐす)(18671941) 博覧強記の民俗学者、というよりは博物学者。13ヶ国語を操り、人文科学分野では日本屈指の権威に。和歌山市立博物館蔵の人物画。

土俗学 ethnography           380.1

〈民俗誌学〉ならびに〈民族学〉の古称であり、今では使われない。諸人種にまつわる風俗習慣を実地調査等によって調べ、その成果を評価する学問。「人類学」の下位に位置する研究分野である。

歴史民俗学 historical ethnology (382)

 20世紀前半に、欧米で盛んになった「民俗学」の一分野。個々の文化的事象は歴史的必然の上に成立するという学派の研究である。

ミイラづくり 死後も冥界で生き続けるというエジプト人の信仰が遺骸のミイラ化を進歩させた。ミイラづくりをつかさどる黒犬のアヌビスが施術している前14世紀の壁画。センネジェム墳墓出土品。

妖怪学 ghost lore           388

 伝承の妖怪とか超常現象あるいはそれらをもたらす超自然的な背景について研究する学問。対象とするのは単なる「お化け学」ではなく、ある程度の科学的実証性もしくは史学、民俗学などの裏付けなど考証性に立脚していなければならない。「民俗学」「民族学」と隣接した領域である。

 ethnology             389

  諸民族の言語、宗教、社会制度、伝統技術、芸術などを通して、その生活態度や文化的特徴を引き出す学問。「文化人類学」と重複する面が少なくない。

文化人類学 cultural anthropology 389

 人類の諸文化を広範な視野での比較によって研究する学問。民族学、民俗学、人類学、考古学など縁辺同士が関連しあって形成する学域である。戦後、アメリカから日本に移入された新しい学問である。

最も写実的に思えるアダムとイヴ 1543年、アンドレアス=ベサリウス著『エピトメ』でのアダムとイヴ。伝フランツ=フォン=カルカル画。

社会人類学 social anthropology 389

 異種間の人間社会同士の比較研究を通して、それらの特殊性や機能性などを研究する「文化人類学」の一分科。先住民族を対象としたフィールドワークから発展した。

ウラル学 Uralology       (389.381)

 ウラル語族の諸言語を使用する民族を対象に、その歴史、言語、民俗、考古などにわたり文化的側面を研究するモデオロジー的学問を指す。ちなみに日本でのウラル学研究者では、ハンガリー語学者の今岡十一郎(18881973)が知られている。

民族舞踊学 dance ethnology (386.8)

 諸民族に伝わる固有の舞踊について伝統文化の一環として多角的に研究する学問である。

政治人類学 political anthropology (389)

 諸民族文化が包含する多彩な政治的現象を比較研究する「文化人類学」の一分野。政治統治の様相から国際摩擦まで、対象となる問題は広域に及ぶ。

心理人類学 psychological anthropology (389)

 文化と民族パーソナリティとが融和し形成する社会を心理学の面から考究する学問。「認知心理学」や「教育心理学」などと縁辺関係にある。

 

39 国防. 軍事 

戦争哲学 philosophy of war    391.1

 戦争は避けられない事態との前提に立ち、戦争と人間との相関事象、あるいは戦争倫理からの考察により、戦争と平和のあり方を思索する学問である。

JAPSに原爆投下 巨大なる殺人兵器の日本投下成功を誇らしげに伝える19458月、米オークリッジの地元紙『ノックスヴィル=ジャーナル』号外、アメリカ科学エネルギー博物館蔵。

兵站(へいたん) logistics           (391.1)

軍隊の戦闘力強化と作戦行動を支援するのに、戦闘部隊の後方で人員、兵器、食糧などを整備したり補給するための技術を研究する。

軍事地理学 military geography (391.9)

 戦争を勝利に結びつける戦略のもと、戦術的視野に納めておかなければならない「戦略地理学」の研究である。

軍事医学 military surgeon      394

 軍隊(陸軍)に所属する軍医が修めるべき医学。戦争という特殊性を背景に、広範な医学知識を必要とする。

軍学                       399

〈兵法〉とも。戦闘において戦術や用兵などを研究する、わが国伝統の学問。楠木、甲州、北条、山鹿など諸流があった。

兵学                       399

〈軍学〉に同じも、主として戦術と操兵に重きを置いた言葉である。

河を渡る誓師(武王)の図 殷の(ちゆう)(おう)を討ちに出陣する周の武王軍が黄河を渡る様子。『尚書図解』より。

甲州流軍学                399.1

  武田家の遺臣、小幡景憲が創始した軍学流儀を指す。彼の配下から北条流軍学や山鹿流軍学などを輩出している。