7 芸術 (美術、音楽、演劇、体育、諸芸、娯楽)

 

素描の授業 男性モデルをモチーフとした授業風景で、風紀上の理由から女学生は敬遠気味。1749年、シャルル=ナトワールのデッサン、ロンドンのコールド美術研究所蔵。

 

 

70 芸術.  美術

芸術学 science of arts           701

 音楽学、演劇学、文芸学などここの芸術を研究する学問の総称である。19世紀まで「美学」の名のもとにこれを含めた広義な総称であったが、美学と芸術理論とは別々に分けて考えるべき、とする説の高まりに応じ、美学とは別分野の扱いになった。

一般芸術学 general arts       (701)

 広義にいう諸芸術に共通する骨子の理論的研究を行う学術。すなわち〈一般芸術学〉は美術や音楽あるいは文化といったジャンルとは別な系統の学域である。

特殊芸術学 special arts       (701)

 美術や音楽など個々の芸術ジャンルにおいて、その分野の特殊性を対象に研究する学術である。

美学 esthetics                 701.1

 昔は〈審美学〉ともいった。自然や芸術作品など、美しさの本質を明らかにする学問の総称。美的な現象や人間の創作物をとらえ、その内部に秘めたるもの、あるいは外部に発露したものを芸術的に解明することを規範としている。

この学域のうち、美学思想の歴史的足跡を「美術史」と称し、美学体系の学問に組み込んでいる。

芸術哲学 artistic theory      701.1

 芸術の本質、機能、技法などについて研究する思想体系をいう。ドイツの観念芸術論が母体になっている。

ドイツの哲学者フリードリッヒ・シェリング(17751854)は、「芸術思潮の基礎は哲学にあり」と喝破したことで知られる。「芸術学」と重複する面が少なくない。

図像学 iconology              701.1

  仏語でiconographieという。和語で〈図像解釈学〉とも。美術品、なかでもキリスト教美術作品がもつ意味と内容に関し研究する学問である。他方、仏教美術の研究においてもこの語を用いることがある。

形式美学 formal aesthetics   (701.1)

 自然の事物や芸術作品にそなわる美の形式的側面を追求する学問。より広義に、感性美といった主観的な作用形式の美、あるいは調和、リズム、均衡などの現象にも審美眼を向けることがある。

比較美学 comparative aesthetics (701.1) 

 諸芸術を比較し、その共通点もしくは差異を論証付ける学問である。「美学」が芸術から分岐した現代では、正しくは「比較芸術」と呼ぶべきではなかろうか。

実験美学 experimental aesthetics (701.1) 

 俗に〈下からの美学〉とも。実験的手法を駆使し機能的かつ記述的な方法論を展開する美学である。

ドイツの哲学者、心理学者、人類学者フェヒナーは、『実験美学』という名の著作でこれの本質論を主張している。

実験心理学的美学 experimentally psychological aesthetics    (701.1)

〈感情移入美学〉とも。美学そのものを心理学の応用領域とみなし、心理臨床面で評価する立場の思潮をいう。

ドイツ観念美学 German ideological aesthetics            (701.1)

 美の根本を個々の美的現象に置き、かつ演繹的な方法で解釈する哲学寄りの「美学」の主張を指す。ドイツの観念論哲学者ヘーゲルが主導した。

アール・ヌーボーをかたどったモード 19世紀末に欧米で野火のように広がった新芸術様式がArt Nouveauである。英国モード界ではモダンスタイルと呼ばれ、くねくねしたS線の造詣にご婦人たちは酔いしれた。

芸術社会学 sociology of arts  701.3

 芸術を社会に定着した一現象として扱う学問である。

狭義には社会の規範と芸術の規範との間に関連する法則性を見出す研究をいう。

芸術民族学 ethnology of arts  701.3

 民族特有の芸術を研究する学問。「比較美学」と隣接関係にある。

芸術経済学 economic of arts  701.3

 狭義に、芸術や美術作品の価値(市場価値)を評価、鑑定する学問である。広義には、芸術作品市場の動向を研究する分野に及ぶ。 

芸術心理学 psychology of arts  701.4   

 芸術を研究する立場で見た心理学。芸術や創作にかかわる心理学と鑑賞のための心理学とがある。分野別には美術、文芸、音楽、演劇など個別の心理学に分かれる。

美術心理学 art psychology    701.4

 美術作品を制作する立場での心理学。たとえばドローイングなどは、作者の造形思考につながる心理学表現の原点といえよう。〈美術心理学〉は「芸術心理学」と重複する部分が大きい。

芸術解剖学 art anatomy        701.5

美術解剖学〉〈芸羊解剖学〉とも。人体を芸術や美術の対象とみなし、その構造を客観的に再現することで芸術性を付与するという思想に基づく思潮である。いわば人体の解剖学的写実であり、この分野では古典から現代作品まで数多く生み出されている。

芸術史学 history of arts    702.01

 芸術全般にわたる歴史を研究対象とする学問である。

美術史学 history of fine arts     702.01

 美術全般について歴史を研究対象とする学問である。

美術考古学 archeology       702.02

 古代美術の遺品ならびに発掘品を対象にした学芸上の「考古学」をいう。19世紀末、クレタ・ミュケナイ文化の解明や、ギリシア彫刻品の出土によって興隆する。

ギルガメッシュの銘板 中央が前2000年代メソポタミア『大英雄詩』の主人公ギルガメッシュ。その両脇で半人半牛の姿の従僕2人にアッシュルの有翼神を支えさせている。前9世紀頃制作のシリア、ヒッタイト出土品である。

シュメール学 Sumerology    (702.03)

 古代メソポタミアの南部地方、シュメール人が成立させた文明を研究する学問。なかでも楔形文字の解読はじめ工芸品の考証が焦点になっている。

聖像学 iconology            (702.09)

〈聖画像学〉とも。ギリシア正教会の聖母やキリストとか聖人など崇拝の対象となる画像を研究する学問である。

なお東洋でも同様に仏像類や孔子像などがあるが、この場合は「聖人像」といい、〈聖像学〉には入れない。

 

72 絵画.  書道

画学 study of painting           720

 絵画を描く技法や必要な知識をいう。また、描画研究を含めた総称でもある。

絵画美学 esthetics             720.1

 絵画に限定した美学の概念をいう。18世紀ドイツの哲学者アレクサンドル・バウムガルテン(17141762)が「美学」と名付けた。

馬上のアレクサンドロス王 数あるアレクサンドロス画のなかでもひときわ異彩を放つ、ペルシア美術に描かれたアレクサンドロス王。16世紀インスタンブール・トプカピ図書館蔵。

書字学 graphology               728

 肉筆による筆跡とその鑑定を研究する学問。日本では「書道」鑑定がこれに相当するが、古文字も対象に含める。。

碑学                            (728)

 中国での金石学の発達に伴い、北朝の碑文書風を学ぶことを指す。法帖より学ぶ「帖学」に対応する概念の言葉である。

アティメトゥスの墓碑 銘文に「アティメトウス=アウグストゥス=ウェルヌス、83ヶ月の生涯。エアリヌスおよびポテンスは息子に(この墓を)捧ぐ」とある。3世紀に書かれた出土品で、ローマはサン=セバスティアーノのカタコンベ蔵。

帖学                             (728)

漢字の書道の一派を指す。中国は晋の王義之(307?~365)や王献之(344388)以来の諸法を手本に、「法帖」を臨書することで書法を学ぶ。

古書体学 paleography        (702.09)

 ヨーロッパ等における古記録、古文書の書体に関し批判、評価を加える学問。ときには収載文献そのものの研究に及ぶ。

書体学 old handwritings       728.8

文書などに書き記された印刷もしくは手書き書体を研究する学問。当然のことながら、世界各国語におけるそれぞれ独自の〈書体学〉がある。

古筆学 old writings            728.8

 古筆すなわち古人の筆跡を鑑定し真偽を確かめる技能をいう。古筆各流派の鑑定や評価にも及ぶ。

一休和尚の自賛書 一休宗純(13941481)は才気に満ちた禅宗の僧で、数々の逸話を残す。図は老境に入ってからの自賛の書である。

 

74 写真.  印刷

写真美学 photographic beauty  740.1           

「写真美術」とも。写真作品の美学を探る技法をいう。

写真工学 photo engineering  740.12         

 優れた写真を撮影するための技法を追求する学問である。

カメラ=オブスクラの原理 光学カメラの生みの親ピンホールカメラの原理を図解に。1671年『光と影の大いなる術』第2版、東京都写真美術館蔵。

写真化学 photochemistry     740.13         

 写真撮影にかかわる化学的事象と技術を扱う学問である。

 

75 工芸

工芸学 technology               750         

〈工芸工学〉とも。工作物の技芸を研究する学問。造形美術に深く関与し、装飾的審美に走る作品が目立つ。織物、木工、染物、漆器、陶磁器など分野は広い。

獅子(しし)菱文韋(ひしもんい) 伊豆の一。「韋図」とは竹を加工して平板とし、絵図を描いてなめし皮で装丁した工芸品をいう。

 

76 音楽.  舞踊

音楽学 musicology               761         

 音楽すべてについての学問的なアプローチによる複雑な芸術体系である。音響学、音楽心理学、音楽美学、音楽社会学、音楽史学などから成っている。

音楽哲学 music philosophy     761.1         

 音楽についての思潮とか想念を記述概念として形づくること。音楽を自己存在証明の一環として取り込む観念でもある。

音楽美学 aesthetics of music  761.1                      

 音楽特有の審美的かつ音律的な感性研究の総称。「音楽哲学」に隣接する。美術の審美が四角を通して受け止められるのに対し、〈音楽美学〉は聴覚により感性的に受け止められる。

クレー「音楽または音画」 音楽の成分・情感を抽出し音楽美学を視覚化した試み。この鳥のさえずりを思わせる絵の作者クレー(18791940)はスイスの画家であり、ヴァイオリン奏者でもあった。

音楽生理学 music physiology  761.12                      

 情動の発露に伴う心拍変化、精神的発汗など、人間心理に与える音楽の影響を実証的に考察する学問である。研究成果は音楽療法などに応用される。

エクフォネティック記憶学 ecphonetic notation  728.8

 聖書典礼文の朗唱に利用された記譜法。テクストの符号を元に記憶する。

音楽的音響学 music acoustics 761.12           

 理工系の音響とは別に、有機体としての人間心理に対し生理学的影響を与える音楽の効果を研究する学問である。

音楽社会学 sociology of music 761.13           

 音楽および音楽的雰囲気を社会の要因の一つとしてとらえて研究する学問である。「音楽美学」「民族音楽学」「社会行動学」などと隣接する。

旧東京音楽学校の徽章 同校は現東京藝術大学音楽部の前身で、明治20年設立。徽章はデザイン文字化されている。

計量歌謡学 canto metrics    (761.13)

〈計量音楽学〉とも。アメリカの民俗音楽かロマックスが唱えた音楽理論。歌謡相互を比較することで音楽特性を生み出した社会構造を関連付けている。

音楽心理学 music  psychology 761.14        

 音楽に関する人間心理の変化および感性など精神活動の変化を考究する「応用心理学」の一分野である。音楽と心理とのかかわりを実証的にとらえることにポイントを置く。

音楽民族学 ethnomusicology  761.15         

〈民族音楽学〉とも。民族音楽を中心に、その民族の風土的かつ情緒的な側面を考究する学問である。

比較音楽学 comparative musicology 761.15          

 諸民族間の音楽上の事象を比較検討することにより、音楽の個別性、風土性を追求する学問。20世紀前半にドイツで提唱された「音楽学」の一分野である。

音律学 rhythmic              (761.3)         

 音階の調律すなわち音律について、音の振動数の比を対数表現で研究する学問である。

和声学 harmonics               761.5         

 和声、和音についての組織的で体系的な研究である。フランスの作曲家ジャン・ラモー(16831764)の『和声論』、リーマンの『大作曲法』などはこの分野の象徴的な理論書である。

作曲学 theory of composition  761.8

「作曲法」とも。楽曲を創作するための実践的な方法論。対立法、和声法、音楽形式論、曲律分析法など西洋音楽で体系化されている。

楽器学 organology               763

楽器を対象に演奏法、器楽の適性等を研究する「音楽学」の一分野。世界のさまざまな楽器を総合的に見極める。

琴学             (768.12)

 明代中国において、琴の演奏はじめ音楽理論、琴譜作曲、演奏思想等を包括した学問で、その音律方式などは儒教の影響を濃く受け継いでいる。

計量舞踊学 chore metrics      (769)

 個々の民族の舞踊同士を比較し、民族社会との関係を把握する学問である。

 

77 演劇.  映画

演劇学 Theaterwissenschaft() 771                       

  ドラマ、戯曲、舞台芸術などの演劇を対象に研究する学芸の一体系。なお日本で〈演劇学〉という用語はまだ一般に定着しておらず、独立した学問としても成立に到っていない。一般には「戯曲研究」の名で通っている。

「魔笛」のプログラム モーツアルト作曲のオペラ「魔笛」の初版プログラム。1791年、ウィーンで初演時のもの。

 

77 スポーツ.  体育

スポーツ科学 sports science  (780)

  スポーツに関する問題や現象、実態を科学的基準に従って研究する体系である。あらゆるスポーツに応用し得る基礎理論で構成される。      

体育学 sport pedagogy        (780.1)

〈体育教育学〉〈スポーツ教育学〉とも。スポーツと教育とを合体させた学問である。心身の健康促進を前提とした実践教育の分野である。

レスリング 古代ギリシアにおける伝統的な格闘技。前6世紀、ベルリンの古代美術館蔵。

体育力学 physical mechanics  780.11

 人体と体育運動との力学関係を論ずる学問である。

体育社会学 sport sociology  780.13

〈スポーツ社会学〉とも。スポーツと人の成長、自己表現手段、価値の創生などを課題に、社会人としてのスポーツの研究を行う。

体育心理 sport psychology 780.14          

〈スポーツ心理学〉とも。心理学の原則をスポーツ競技に応用し、競技者のスポーツ行動等の分析に役立てる学問である。

スポーツ医学 sports medicine 780.19

〈体育医学〉〈体育運動医学〉とも。人体の発達と保健に貢献する目的のもと、スポーツが人体に及ぼす影響や競技者の健康管理などを実践し、研究する医学の一分野である。

運動衛生学 sports hygiene 780.198

 スポーツ競技者の健康維持と向上を目的とする「スポーツ医学」の一分科である。

運動生理学 exercise physiology 780.67

 短期間の運動や身体活動、あるいは長期のトレーニングについて、身体が生理学的にどう適応するかを研究する「生理学」の一分科である。