8 言語

 

 

ラテン語文法の塔   絵では読み書きを教わろうとする子どもらが入り口へ向かう。やがて「語源学」や「正書法」あるいは「頭語法」へとたどり着く学徒に成長した姿が見られる。1548年チューリヒ刊行本の木版画

 

 

80 言語

語学 languages                   800

 自国あるいは他国の言語を研究する学問。音韻、文法、語義、語彙、語源など、言語のあらゆる性質や用法を研究する。「言語学」と重複する面が広い。

言語学 linguistics              801

 旧称〈博言学〉といった。人類の言語について、その発祥、構造、変遷、系統、種類、分布など、さらに言語間の相互関係などを研究する学問である。〈語学〉よりも包含するカテゴリーは広い。

 ヒッタイト象形文字 ヒッタイトは前2000年頃、小アジアに移動してきたインド=ヨーロッパ語族の王族一派。その楔形(くさびがた)文字の読み書きは左から右へ、次行は逆に右から左へと移行する連なり表記になっている

構造言語学 structural linguistics  801             

 言語の構造を明らかにし系統化することで、言語全般に共通の法則性を持たせることを研究する学問である。スイスの言語学者ソシュールがこの分野での先鞭をつけた。

解釈学 hermeneutics             801

 文学や文献等の解釈の方法あるいは理論を扱う「文献学」の一分野。来歴は古代ギリシアに発し、ここから聖書の象徴を解釈する学問として発達した。たとえば「対話的解釈」に見られるように多分に哲学的背景を負っている。今や古典の現代語への翻訳、独立した芸術テクストの解釈などが対象になっている。

言語哲学 linguistic philosophy    801.01         

 哲学的概念を思索するさい、言語がどのような役割を果たすのか、「言語学」の理論、方法、観察などが哲学においてどう位置づけられるのか、などを研究する言語学というよりもむしろ哲学の一分野である。

言語美学 linguistic aesthetics 801.01            

 文学作品等により、言語の鑑賞に値するような美しさを究明する「言語学」の一分野である。 俗に「名文」といわれるものの研究で、多分に主観的かつ文芸批評的である。

計量言語学 mathematical linguistics 801.019          

〈数理言語学〉〈言語計量学〉とも。代数や集合論の理論を応用する言語学研究の総称である。「計量言語学」「計算言語学」とは隣接関係にある。

言語統計学 linguistic statistics 801.019

 一言語の内容を数理的に分析し、その結果を統計学的に処理して言語構造全体を評価し解明する学問である。

歴史言語学 historical linguistics 801.019

〈通時言語学〉〈史的言語学〉とも。一言語の変遷を歴史的に究明する学問。分類は日本語であれば「日本語史」、英語なら「英語史」という呼称になる。

社会言語学 social linguistics 801.03

  言語を社会の一現象として把握し、情報伝達の様相を通して社会条件や男女間差異、階級差などから言語行動の相違などを研究する「言語学」の一分野である。言語教育や言語政策などに反映されるところが大きい。

言語人類学 linguistic anthropology (801.03) 

 言語をその生活環境との相関関係で分析し、民族独自の成り立ちや文化との背景から解明する「言語社会学」の一分野である。

認知言語学 cognitive linguistics (801.03)

 幼児期からの言語の認知能力を研究する「認知心理学」の一分野。スイスの心理学者ジャン=ピアジェカ(18961980)がモデルを発表している。

言語心理学 linguistic psychology 801.04

 言語現象を生理的、心理的プロセスを経て、あるいは社会的行動を経て考究する「心理学」の一分野である。

発達言語学 developmental psycholinguistics (801.04)

〈発達心理言語学〉〈幼児言語学〉とも。人格発達期の幼児言語を対象に研究する「言語心理学」の一分科である。 

文章心理学 sentence psychology 801.04

 書かれた文章をモデルにその心理学的考察を行う「心理学」の一分野である。日本語の場合は国語学者の波多野完治(19052001)の名著『文章心理学入門』が知られている。文筆家を目指す人は必読の書である。

波多野完治著『文章心理学入門』

比較言語学 comparative linguistics 801.09

 複数の言語を比較検討することで、相互の関連性を把握し、その流れを系統的に研究する学問である。

言理学 glossematics       (801.09)

〈言語記号学〉とも。別称「コペンハーゲン学派」という。言語に内在する構造を対象とする新しい言語学の構築をめざし、すべての言語に共通する構造原理を解明する試みである。デンマークの言語学者でコペンハーゲン大学の比較言語学教授であるイェルムスレウ(18991965)が提唱した。

対照言語学 constructive linguistics  (801.09)

 基本とする言語を定め、目標とする言語を対照に比較し、目標言語の特性を把握する「比較言語学」の一分野である。

コーパス言語学 corpus linguistics (801.09)       

 言語研究のために集積した資料を基に、個別言語や作家テクストなどの比較研究を行う「言語学」の一分科である。「コーパス」とは、特定主題に関する集成資料をさす語である。

音声学 phonetics             801.1

〈音声科学〉とも。 人の音声を対象に、発生と聴取の双方から生理学的に考察し、解明を行う「言語学」の一分野である。

発声学 phonology             801.1

〈音声学〉とも。音声を対象に、発声器官や調音器官の運動や発せられる音響、聴取状態等を研究する経験科学の一分野。コンピュータの自動音声化、犯罪捜査、外国語習得などに活用されている。

 

音韻学 phonology             801.1

「音韻論」とも。日本語において、漢字の音を構成する音韻表現についての研究をする学問である。

 

文字学 phonogramology        801.1

ある文字全般にかかわる事柄を研究する学問。文字はアルファベットなどの「表音文字」と漢字などの「表意文字」とに大別され、研究の方法論も大きく異なる。

 

アラビア語の装飾文字 音節複合の非実用文字で、表音と表意の双方機能をもっている。

調音音声 articulator phonetics (801.1) 

 話し手が発する音声を生理学的に分析し定性化する学問。19世紀に始まった「実験科学」の一分野である。

古音学                 (801.1)

 中国は明代、清代の言語音を扱う学問の一で、中国語古韻の体系化や図表化についての研究である。

辞学 lexicology            (801.4)

 語彙素を研究対象にする「言語学」の一分科である。

共時言語学 synchronic linguistics (801.5)       

 ある一時期の言語構造と体系とを分析、記述し、その通則性を解明する「言語学」の一分科である。スイスの言語学者ソシュールが提唱した。

修辞学 rhetoric              801.6

〈美辞学〉とも。言語表現をあれこれ操作することで、読者にさまざまな文章の変成を感じさせる技法をいう。アリストテレスの『修辞学』に端を発する。わが国には明治時代に移入され、当時の生硬な術語が今なお用語として残影をとどめている。

言語地理学 linguistic geography  801.8

 言語現象すなわち音声、語彙、構文の地理的分布状況を調べ、その結果を地図に記入して差異を見分ける「言語学」の一分野。フランスの言語学者ジリエロン(18541926)が提唱した。

方言学 dialectology          801.8

 方言を研究する「言語学」の一分野。記述方言学、史的方言学、比較方言学、対照方言学、社会方言学などから成る。

言語形態学 morphology 801.8(日本語)       

  比較言語学の手法により言語の形態や系統を扱う「歴史言語学」の一分科である。日本語は言語形態的に見てアルタイ諸語系に属するとされているが、確証には至っていない。

文化記号学 cultural semilogy (801.9)      

 社会生活ことに文化面において用いられる記号を対象に研究する学問。非言語的なシンボルであっても社会的な意義があればこれに含まれる。

アメリカ構造言語学 American structural linguistics    (802.5)      

 20世紀前半にアメリカで発達した記述言語学者の一派を指す。この分野では行動主義言語学者レオナード・ブルームフィールド(18871949)が知られている。

言語教育学 linguistic education  (807)

  言語文化、言語生活全般にわたる教育体系を指す。ときには外国語教育を含む場合もある。

暗号学 cryptanalysis       (809.7)

 秘匿手段の符号としての暗号を創作技術および解読中心に体系化した学問。

日本では『日本書紀』神武紀に倒語(さかしまごと)すなわち暗号を用いたと見え、来歴の古さを物語っている。

グロテスクなアルファベット「T 15世紀、作者未詳の作品群より。これは「T」の飾り文字で、怪奇趣向を満喫させるもの。

 

81 日本語

国語学 Japanese linguistics 810.1            

〈和語学〉とも。日本語を研究対象とする言語学の一分野。日本語の音韻、語彙、意味、文法、修辞学などについて、歴史的かつ地理的に研究する。

日本語学              (810.1)       

〈国語学〉に同じも、左記に用いられた言葉。明治期に一時現れたが、あまり使われないまま死語となった。最近、私称として使われているが、術語として復活したわけではない。

意義学 semantics       812(日本語)       

 言語の意味の本質をはじめ、その起源や発達を研究する言語学の一分野。「意味論」という用語が定着している。

辞書学 lexicography     813(日本語)       

 内外の言語を中心に、言葉を一定順に並べて、その読み方、意味、語源、適用例などを解釈する書についての研究。字典、辞典、事典それぞれがこのなかに含まれる。

文法学 grammar         815 (日本語)       

 文法の体系をまとめ言語学の中に組み入れたときの術語。明治語であり、すでに死語化している。今では「文法」のみで十分に通用する。

大槻文彦(18471928) 国語学者で、近代国語の大書『大言海』や漢字字体の範典『五体字類』などの著者。日本語文法にも精通し業績を評価されている。

文字(もんじ)学               (821.2)       

 古代中国は周代に、難解な表意文字である漢字をさまざまな角度から研究するために生まれた学問である。

「斉子仲姜鏄」の金文 金属器の製造工程中に型に鋳込んで刻まれたもの。図は春秋時代(770~前403)の銘文。

梵学 Sanskrit               829.88       

 梵語に関する学問。言語学呼称で「サンスクリット」、インド=ヨーロッパ語族に属するアーリア語系の「言語学」である。