9 文学

 

 

紫式部(生没年未詳も平安中期の人) 朝廷に仕える女房。『源氏物語』の作者としてあまりにも有名である。

 

 

90  文学

文学 literature                  900

  内外の言葉で書かれた詩文、小説、物語、戯曲、評論、随筆などを対象に、鑑賞や批評を行うための学域をいう。これには自身の創作も含まれる。日本のように歴史の長い国の文学は、文学史も重要な研究分野になってくる。

各作品に対しては、どのカテゴリーに属するのか、判別に留意する必要がある。

滑稽文学 humorous literature   900

 文学のうち、滑稽および諧謔を主題とした小説や詩などをいう。たとえばスペインのミゲル・デ・セルバンテス(15471616)の書いた『ドン・キホーテ』は第一級の〈滑稽文学〉といえよう。

戦争文学 war literature         900

 文学のうち、戦争を主題とした小説や詩などをいう。その多くは近代以降に発表されたもので、戦記や戦史ともかかわりが深い。日本の古典では、いくつもの戦乱を題材に「軍記」「戦記」の呼称で戦いを叙事記述したものが多い。

風刺文学 satire                900

 文学のうち、風刺ならびにカリカチュアを主題とした小説や詩などをいう。ジョナサン・スウィフト(16671745)作『ガリバー旅行記』はその傑作の一つである。

日本の戯作や狂歌もこの範疇に含まれる。

大衆文学 popular literature    900

〈通俗文学〉とも。読者対象を大衆に置いて書かれた通俗的な小説などをいう。「通俗小説」「大衆読物」などはこの部類に入る。日本では大正末期から昭和初期にかけて、雑誌を含め大衆読物が市場に氾濫した。家庭小説からチャンバラ物まで、大衆好みの興味本位なジャンルが広がっている。

農民文学 rural literature      900

〈田園文学〉とも。文学のうち、各国における農民の生きざまを主題とした小説や詩などをいう。多くは農本主義思想を背景に体制批判的な筆致で語られる。

海洋文学 sea literature        900

 文学のうち、海洋や航海を主題とした冒険小説や詩などをいう。舞台は広大な海洋に囲まれた船の内部となる。アメリカの作家ハーマン・メルビルが1851年に発表した『白鯨』は「海洋小説」の傑作として知られている。

 『白鯨』挿画はロックウェル・ケント

翻訳文学 literature in translation 900

 外国語で書かれた小説や戯曲、詩などを自国語に翻訳したものの総称である。日本ではシェークスピア作品が人気の定番になっている。訳者の翻訳力の巧拙が作品の売れ行きに大きく影響する。

宗教文学 religious literature  900

 文学のうち、宗教や信仰を主題とした小説や詩などをいう。読者により好き嫌いが極端に分かれるジャンルである。イタリアの詩人で政治家のダンテ・アリギエーリ(12651321)の書いた長編叙事詩『神曲』は、古典ながら〈宗教文学〉の白眉といえよう。

恋愛文学 romantic literature   900

 文学のうち、恋愛を主題とした小説や詩などをいう。これの多くは「恋愛小説」あるいは「ラブ・ロマンス」であり、大衆文学と重なり合う部分が大きい。

暴露文学 debunking literature( 900)

 他人の悪行、醜行、秘密あるいは社会の不条理などを暴き出す類の小説等をいう。ときには「スキャンダル暴き」「無礼物」などとも評される。

軟文学 light literature      ( 900)

〈軟派文学〉〈好色文学〉とも。文学のうち、恋愛や情事を主題とした小説や詩などをいう。「恋愛文学」が行過ぎるとこの呼称に仲間入りすることになる。

中国艶笑小説『肉団』は東洋の好色文学では代表的な作品で、知名度も高い。『肉蒲団』に登場の面々〔同書の挿絵より〕 左から未央生、香雲、瑞珠、瑞玉、花晨。

動物文学 animal literature   ( 900)

 文学のうち、動物を主人公にした小説や詩などをいう。『ビアンキ動物記』を書いたロシアの童話作家ヴィタリー・ビアンキ(18941959)は〈動物文学〉の名手といえよう。

デカダン文学 decadent literature (900)  

〈退廃主義文学〉〈無頼派文学〉とも。19世紀後半、フランス文学に現れた厭世思想をバックにした文学主潮である。今ではこの種の流れを汲む文学の総称になっている。日本の作家では戦後無頼派の旗手、坂口安吾(19061955)がこの分野の代表である。

前衛文学 avant-garde literature (900)  

 第二次世界大戦後にヨーロッパで起きたヌーボーロマンや不条理演劇など、先進的かつ革新的な文学主潮をいう。フランスの小説家ロベール・アロン(18981975)は前衛作家の祖といわれている。

新興文学 new literature        (900)

  第一次世界大戦後に起きた文学主潮。プロレタリア文学をはじめ未来派、表現派、超現実派などが新しい波として登場した。 

山岳文学 mountain literature (900)

 文学のうち、登山や山岳を主題とした小説や詩などをいう。イタリアの登山家で音楽家レオーネ・シガーリャ(18681944)が書いた『ドロミティ登攀の思い出』は傑作である。

幻想文学 fantastic literature (900)

〈ファンタジー文学〉とも。現実世界から遊離した状況設定で書かれた文学をいう。

キリスト教文学 Christian literature (900)

 キリスト教を主題にした文学の総称、「宗教文学」の一系である。アダムとイヴの原罪を主題にしたイギリスの詩人ジョン・ミルトン(16081674)が書いた『失楽園』は、不朽の名作とされている。

ジョン・ミルトン

傾向文学 tendentious literature (900)

 ある目的、思想、主義等を宣伝するねらいで構成する文学。社会主義傾向の文学に多く見られる。

創作心理学 creative psychology 901

 作家が文学を執筆するさいの心理状態を心理学的に分析、研究する「応用心理学」の一分科である。

女流文学 woman author         (901)

 女性が書いた文学作品に対する区分上の呼称である。

文芸学 science of literature 901.01

〈文芸科学〉とも。文学を体系的かつ科学的に規範化し研究するための主潮。いわば「文学のための学問」という主張である。文芸は本来、文学を総括する批評用語であるが、語自体はLiteraturwissenschaftの名で中世以降ドイツを中心に隆盛した。日本では「文芸批評」の語のほうが通りが良い。

詩学 poetics                   901.1

 詩の意義、形式、音韻、作法などについて考究する学問。古代ギリシアのアリストテレスは詩学論展開でも知られている。

韻律学 prosody                901.1

「韻律法」とも。韻律形式(リズム)について、その技法や効果などを研究する詩学の一分野である。

詩形学 prosody             (901.1)

 詩の形式について研究する学問。当然、国語によりその内容は千差万別である。

規範詩学 normative poetics  (901.1)          

 近世ヨーロッパで、共通の詩形式を確立するために、詩の内容、修辞、形式、ジャンル関係などを規範で律するべき、とする理論。ドイツの「バロック文学」の始祖である桂冠詩人マルチン・オーピッツ(15791639)が開いた。

構造詩学 structural poetics (901.1)           

 資源語の構造上の研究をさす言葉であるが、定義は明確でない。今世紀初頭にその象徴であるロシア=フォルマリズムが出現した。

反戦文学 anti-war literature (901.1)           

 戦争遂行に反対の立場をとる文学。アメリカの小説家アーネスト・ヘミングウェー(18991961)の『武器よさらば』はその代表的作品である。

アーネスト・ヘミングウェイ

軽文学 light works         (901.4)

 読者が手軽に読める軽妙な文学。小品、コラム、随筆、川柳などが該当する。

民俗文学 folk literature   (901.8)

 民間に伝承され民間の習俗と結びついた小説や詩歌などをいう。

口承文学 oral literature   (901.8)

〈伝承文学〉〈口碑文学〉とも。「記載文学」が発生する以前に、口承により語り継がれ歌い継がれてきた文学である。「民俗学」に深く関係し、今でも神話、伝説、民謡などに足跡が示されている。

比較文学 comparative literature 901.9

 複数の異なる国における異なった言語で書かれた文学を比較し、相互の関連性や影響あるいは特徴などを実証的に研究する文学の一分野。19世紀末にフランスの文学界に興った。

 それぞれの比較対象は、主として時代ごとに比べられ、かつ内在した歴史的方法論や審美性(芸術的価値)で検証される。

ヨーロッパ文学 European literature 902

 ヨーロッパに発生した古今の文学の総称である。

プロレタリア文学 proletarian literature  (902)

 20世紀初頭のロシアに発祥した文学潮流。プロレタリアート(無産階級)の階級的自覚のもと、ブルジョア的文学に対抗するため確立した文学主潮を指す。その多くが組織的活動を通しての実践を手段とし主張を訴えた。

同伴者文 poputchiki literature (902)            

 ソビエト文学の批評用語の一。1920年代の「十月革命」に参加した作家等の文学を指す。

仏教文学                (902)

 本来は仏典中の文学的記述に関する呼称である。それらが説話や物語等に転じこの称となった。

古代文学 ancient literature (902.03)

 古代に発生した文学の総称。口承あるいは記載の別は問わず、また「古代」の区分もその国々で異なる。

『死者の書』絵物語 古代エジプト人の冥界観を表す。上段絵は「オシリス最期の審判」の題名のもと、葦舟上で死者の心臓を魔法の天秤に載せるオシリス。それをよだれを長く垂らした亡者食いのアントムが見守る。前1310年ごろの彩色写本。

市民文学 citizens literature 902.05

 文学のうち、都市生活を主題にした小市民的な小説や詩などをいう。

啓蒙文学 enlightenment literature 902.05

 18世紀ヨーロッパ思想を支えた啓蒙運動による影響を受けた革新的文学主潮の総称である。イギリスノダヴィッド・ヒューム(17111776)、フランスのモンテスキュー(1689 1755)らの作品中にうかがい知れる。

抵抗文学 resistance literature 902.05

〈レジスタンス文学〉とも。第二次世界大戦中にフランス、ドイツ、東欧諸国などで、外国軍の侵略やファッシズム攻略に対抗する運動をもとに生まれた文学主潮をいう。

古典学 classics           (902.06)

〈古文書学〉とも。 古文書に関する体系的研究の方法およびそれらの評価をさす。

古典主義文学 classical literature (909)

  いわゆる「クラシック」の用語で代表される古代ギリシアやローマの秀作を規範として扱う文学主潮や、それら作品群をさす。「ロマン主義文学」に対応する概念の言葉である。

この双方対立概念からわかるように、〈古典主義文学〉は主としてフランスで発達した。モリエール、ラシーヌといった古典主義作家が生まれている。         

自然主義文学 naturalistic literature (902.6)

 人間の生き様や生活などを考察し、ありのままの姿を描写する文学主潮。19世紀フランスに発祥したちまち全世界に広がった。

手稿学 manuscriptology       761.15

古文書等で手書きの原稿を対象に文学的評価などの研究を行う学問。当然ながら、印刷機が発明される以前の稿本類は、版による刷物や写本を除き、すべてこの中に含まれる。たとえばタイプライターやワープロ打ちの原稿等は、手書き原稿とはいえないので、〈手稿学〉の対象にはならない。

児童文学 children’s literature 909              

〈少年文学〉とも。児童が読むために大人が創作した文学作品の総称である。富裕層がわが子の教育用に 広めたのが始まりとされている。 世界で最も広く読まれているダニエル・デフォー著『ロビンソン・クルーソー』(1719)が児童文学の代表作であるように、教訓的内容のものよりも冒険物のほうが人気は高い。

童心文学           (909)

 日本の児童文学のうち童心主義を重視する系統の作品を指す。    

 

90  日本文学

日本文学 Japanese literature  910              

〈国文学〉〈和学〉とも。日本において風土や歴史的事象、あるいは国民性に根ざして生まれた文学の総称である。ただし、世界文学に列する一国の文学として位置付ける意味では、古典志向の強い「国文学」の呼称はふさわしくないので、〈日本文学〉と呼ぶべきである。

古代文学(日本) ancient literature 910.23

 歴史時代区分で古代に成立した「日本文学」の総称。一般に大和時代から桓武天皇の平安遷都(794)までに成ったものはとくに「上代文学」と呼んで区別している。『古事記』『日本書紀』『風土記』などはこれに入る。

大和文学           910.23

 上代文学のうち大和時代に成った文学をいう。口承の神話、伝説、祝詞、宣命などがこれに相当する。

平安朝文学          910.23

〈平安文学〉〈中古の文学〉とも。桓武天皇の平安遷都(794)から源頼朝が鎌倉幕府を開設(1192)するまでに成立した文学をいう。この時代は王朝貴族が文学のもっぱらの担い手で、和歌や漢詩文が栄えた。

物語および日記を中心とする「女流文学」が盛んになったのも特色である。

王朝文学(日本)        910.23

 奈良時代ならびに平安時代を通して、朝廷貴族らの間に栄えた文学の総称。西欧の「王朝文学」と混同しないよう注意が必要である。

奈良朝文学          910.23

 奈良時代に成立した文学の総称である。

宮廷文学(日本)       (910.23)

 かつて宮廷で書かれた創作活動の総称で、王国の歴史を持つ国々の文学史により区分や呼称等が異なる。

日本では和歌の勅撰集などがその代表的存在である。

中世文学(日本)        910.24

 わが国の時代区分で鎌倉、南北朝、室町時代のいわゆる中世に成った文学の総称。在来の文学分野のほかに、新たに軍記、連歌、謡曲、狂言などの文芸も加わっている。

鎌倉文学           910.24

鎌倉時代(11851333)に成った文学の総称。公家社会中心の平安文学から脱皮し、武家と僧侶の文学が台頭する。随筆や軍記物語、説話集などが脚光を浴びている。

五山文学           910.24

南北朝から室町末期にかけ、京都の五山など禅宗学僧らによって発展した漢詩文をさす。

 中国でいう五山とは別にして、とくに「京都五山」「鎌倉五山」のように地名を冠して呼ぶこともある。

室町文学           910.24

  室町時代(13921573)に成立した文学の総称。前期(鎌倉時代)軍記から引き継いだ後期軍記(南北朝・室町時代)、謡曲、狂言、草子類、連歌などがこの時代を彩っている。

現代文学(日本)       910.246

  現代日本文学の総称である。現代の特定は人によって異なるが、一般に昭和20年太平洋戦争終結以降をさす(それ以前は「近代」に繰り入れ)のが妥当ではなかろうか。

近世文学(日本)        910.25

〈江戸時代文学〉とも。江戸時代(16031867)に成立した文学つまり江戸時代の文学をいう。

洒落本、滑稽本、人情本を中心に狂歌や前句付(川柳の前身)など武家・町人文化を背景に華やかな文学時代が展開した。

元禄文学           910.25

 江戸時代のうち元禄年間(16881704)前後に栄えた町人文学の呼称。初め上方で俳諧、小説、浄瑠璃などが人気となり、江戸にも少なからず影響を与えた。

上方文学           910.25

 江戸時代文学の一系統で、京都・大阪を舞台にした文学。時期は〈元禄文学〉にほぼ同じと見てよい。浅い了意、井原西鶴、近松門左衛門らを輩出している。

近代文学(日本)        910.26

 明治(1868)以降昭和20(1945)までの時代に成った日本文学の総称。この時期、わが国の文学および文芸のほとんどのジャンルが出現している。

 『漱石先生之図』岡本一平画

純文学 pure literature    910.26

 作者の純粋に芸術志向の基に書かれた小説等をいう。私小説などに見るように心境描写や感興が土台である。〈純文学〉は視点の狭い難点があるため、横光利一のように、純文学にして通俗小説という「純粋小説論」を展開する作者も現れた。「通俗文学」に対応する文芸批評用語である。

転向文学              (910.26)

 「転向」とは、昭和初期に治安維持法に基づく官憲の弾圧を受け、多くの共産主義者や社会主義者らが信条、思想を放棄した現象を指す。この転向を主題にした思想文学やプロレタリア小説を〈転向文学〉と称している。

明治文学           910.261

 明治時代(18681912)に成った文学の総称で、「近代文学」の前半期を占める。江戸戯作伝承の開化期文学や擬古主義文学が世に迎えられ、やがて言文一致運動の波に乗って新体詩等西欧主義欧歌が、あるいは「自然主義文学」が台頭したのも特色である。

『文芸界』第1号表紙 明治35(1902)年創刊、全58冊・金港堂書籍刊。

大正文学           910.262

 大正時代(191226)に成った文学の総称。時代が短期であったわりに多彩な文学主潮が生まれている。白樺派による理想主義、心境活写に開眼した私小説、あるいはプロレタリア文学の隆盛なども見逃せない。

昭和文学           910.263

 昭和時代(19261989)に成った文学の総称。太平洋戦争終結までの20年間は、文学的潮流から見て近代と現代との混交期にあったと見てよい。ことに戦後は戦後派作家による個性的な作品が続出している。

原爆文学             (910.264)

  日本唯一の文学ジャンルで、昭和2086日の広島、同9日の長崎への原爆投下を主題とした作品群の総称である。

戦後文学          (910.261)

 日本文学の批評用語で、太平洋戦争終戦以降の昭和20815日から同30年あたりまでおよそ10年間に生まれた作品群を指す総称である。

地方文学(日本)        910.29

〈郷土文学〉とも。日本文学の近・現代作品のうち地方生活を主題にしたり、地方在住作家による「郷土文学」をいう。日本の近代化とともに急速に発展した。

琉球文学           910.29

 沖縄が琉球といわれていた時代に成った文学の総称。19世紀半ばまで琉球方言で表現された文学や歌謡が対象である。現今の作品は〈沖縄文学〉という。

 

和歌文学            911.1

 長歌、短歌、旋頭歌など和歌や和歌に関する文学の総称である。

 

歌学             911.101

  和歌に関する知識や作法論を研究する学問。和歌の意義、起源、文彩法ときには注釈なども含めた総称である。

 

呪祷文学           (911.101)

 日本古来の言霊(ことだま)信仰などにより呪を唱えたりったりするを指す。より文学的といえるのが神を敬う祝詞(のりと)である。

 

劇文学(日本)           912

〈演劇文学〉とも。演劇用台本を文学として扱った場合の呼称である。

 

シナリオ文学           (912.7)

 映画や放送ドラマなどの台本をもとに、その批評などを含めた文学である。

 

書簡文学(日本)          (913)

  手紙を小説等の叙述手段として用い、その一部を虚構の書簡で構成する文学をいう。広義には書簡集あるいは手記などをいう場合もある。

 

物語文学(日本)         913.3

 神話、説話、伝説、擬古、御伽、軍記など多方面にわたる口承伝統の語りを文字に表した文学。「物語文学」とは日本での物語を軸とした特有の用語である。

井原西鶴(164293) 浮世草子作者で俳人。いわゆる「西鶴の好色もの」で有名、市井人物活写の名人である。

説話文学(日本)        913.37

 時代、主人公、状況設定等を特定し、筋に変化をつけた人間現象の物語をいう。古典『日本霊異記』ならびに『今昔物語』はその白眉である。

仮名文学            (913.51)

 平安時代を中心に女文字である仮名で書きつづった作品をいう。

随筆文学(日本)         (914)

 体験、感想、見聞などを筆者が気の向くままにつづった文学である。

軍記文学(日本)       (914.43)

 過去の合戦などを記録、または史実にそって創作した文学作品の総称。いわゆる「軍記物語」の類である。

日記文学(日本)         (915)

 日記を文学的衝動により書き綴った作品をいう。

紀行文学(日本)         (915)

 「旅行記」で通っている。旅行の見聞を記述、記録した類の文学。経験的内容のものとフィクションものに大別できる。

日本漢文学            919

 日本で発達した漢文学作品をいう。5世紀ごろ仏教にかかわる漢籍が渡来し、以降一般の教養文化として知識層にもてはやされた。

記録文学(日本)          919

〈報告文学〉〈ドキュメンタリー文学〉とも。事実を記録する目的で書かれた文学をいう。

 

90  中国文学.  東洋文学

中国文学 Chinese literature  920

 中国で成立した古今の文学作品の総称。これの時代区分は通常、先秦時代、漢王朝時代、唐代~清朝そして現代の4区分に分けられる。なかでも古典作品は奥が深く、わが国に渡来してから大和文化に及ぼした影響は大きいものがある。作品についても『詩経』『楚辞』『漢賦』などの漢籍をはじめ『三国志』『水滸伝』『西遊記』『金瓶梅』など大河小説も目を引く。

漢文学 Old Chinese literature  920

 中国古来の文学の総称。わが国に渡来し彼

地文学を位置づけて用いる呼称である。漢文文化を構成するほど間口が広く奥も深い。

シナ学 Sinology              920

 中国の言語、文化、歴史について研究する学問の旧称で一般には「支那学」と表記する。19世紀から20世紀前半にかけヨーロッパに定着した。

展転社刊の『シナ学』

敦煌(とんこう)文学            (920)

 1900年中国の敦煌は莫高窟(いわゆる千仏洞)で発見された古文書や遺物を研究する学問である。

白話文学            (920)

〈俗語文学〉とも。1917年アメリカ留学中の中国人作家、胡適(18911962)表した論文が端緒となった口語文学運動を指す。

人民文学            (920)

 〈今日の文学〉とも。1910年代末、中国の文学革命に始まった俗語、俗事使用による「人民のための文学」を指す。魯迅(18811936)ある。

建安文学           (920.24)

 中国後漢、献帝時代(196220)に発生した文学時期の総称で、中国文学史上の一黄金期に数えられている。

明文学           (920.24)

  古代中国の六朝時代、斉の武帝統治下の永明年間(483493)に生まれた文学の総称。宮廷を中心とした詩文が栄えた。

詞学              (921.5)

 中国の元・明代に発達した、「宋詞」といわれる「韻文文学」の総称である。

国防文学            (921.5)

 日中戦争が始まる直前、中国共産党の抗日民族統一戦線結成に呼応し、上海在住の党員文学者らが実行したスローガン中心の「プロパガンダ文学」を指す。

紅学              (923.6)

 中国清代の長編小説『紅楼夢』を専門的に研究する清末期に生じた言葉である。

朝鮮文学 Korean literature  929.1

 朝鮮で発達した文学の研究対象としての呼称。ことに訓民正音(ハングルが)成り立つ15世紀以降をもって本来の朝鮮文学と称してよかろう(それまでは移入漢文体)。朝鮮古来の装丁を施した、いわゆる「朝鮮本」などで日本にもなじみが深い。

アイヌ文学 Ainu literature  929.2

 アイヌ民族が生んだ文学。といってもアイヌ民族は文字を持たないことから口承文芸のみで、「ユーカラ」に代表される叙事歌謡が大半を占める。〈アイヌ文学〉は、近時に同和化が進み研究者も少なくなっている。

マレー文学 Malay literature  (929.24) 

 マレーにおいて、アラビア系のジャウィ語で書かれた文学と狭義に規定している。ただしマレーは複合民族国家であるため、独自のマレーシア文学は持たない。作品があってもイスラム色が濃いため、〈マレー文学〉として扱われる可能性は低い。

チベット文学 Tibetan literature 929.32

 チベットで発達した研究対象とての文学。仏教関連の古典が核になりチベット文学を構成している。なかでも11世紀に敦煌洞窟に閉存された年代記、編年史、祈祷文、詩歌等が著名な存在である。

チベット文学研究会のロゴマーク

ビルマ文学 Burmese literature  929.35

 ビルマ(現ミャンマー)で発達した研究対象としての文学。古典は仏教思想を反映させた作品一辺倒の感があり、傾向偏在が顕著である。近代化に目覚めた戦後は〈ミャンマー文学〉と呼称を変え、なかでも反戦文学に見るべき作品が少なくない。

タイ文学 Thai literature    929.36

  タイで発達した文学の総称。タイ語が多様な音節や韻をもつことから、さまざまな韻文の詩文がこの国の古典の主流を占めている。タイ文字は13世紀に作られ、158世紀に栄えたアユタヤ文化のおり、移入したサンスクリット文化の影響で韻律を駆使した碑文や韻文詩が書かれてきた。

安南文学 Annamese literature 929.37 

 現ベトナムの呼称「安南」で生まれた文学。19世紀に至るまで安南王国ではベトナム語で書かれた独自の「歌謡文学」が発達した。古来中国やフランスなどの支配を受けた関係で、中国語やフランス語で書かれた作品が目立つ。

ベトナム文学 Vietnamese literature 929.37 

ベトナム語あるいはフランス語で書かれベトナムで発達した文学の総称。このなかには文字を持たなかったベトナム人が語り継いできた口承文学も含まれる。また、多くのベトナム人知識層に愛読されてきた漢文学の存在も見逃せない。さらに特有の「字喃(チユウノム)」というベトナム国字が開発され、これを用いた国民愛読書も生まれている。

インドネシア文学 Indonesian literature 929.37

 インドネシアが植民地から脱し独立して、国語として憲法に定めるインドネシア語による文学をいう。公用のジャワ語をはじめ数百もの方言をもつだけに、地方語文学(ヌサンタラ文学)の観がある。かつては「ジャワ文学」「スンダ文学」と呼ばれていた。現代では1民族としてインドネシア文学統一へ向け表現方法等の研究が進んでいる。 

フィリピン文 Philippine literature 929.44

 民族言語ピリピーノ(タガログ語中心)を中心にスペイン語や英語で書かれフィリピンで生まれた文学の総称。混血化とキリスト教化が顕著な都市部では、スペイン植民地下でのパションなど宗教詩や、コリドなど散文詩が多様化文化を象徴している。

社会制度の不条理を告発する暴露小説も盛んである。

蒙古文学 Mongol literature 929.55

〈モンゴル文学〉とも。モンゴル文字で書かれ、蒙古で発達した文学の総称。1921年のモンゴル人民革命を軸に、その前期と後期に分けて論じられる。仏教文化を背景とした農牧生活等を描いた「口承文学」がある。

トルコ文学 Turkish literature 929.57 

  トルコで発達した文学で、チュルク語、ペルシア語で書かれたものが主体。1299年に成ったオスマン朝以降が時代の対象になる。イスラム期からの歴程がこの国の文学をより複雑なものにし、チャガタイ語文学、アゼルバイジャン語文学、オスマン語文学などの相互混交も見られる。現代ではヨーロッパ化への変化が著しい。

イディッシュ文学 Yiddish literature (929.7)

 ユダヤ人によりイディッシュ語(ドイツ語)で書かれた文学。ユダヤ人にとって正規のヘブライ語から外れたいわば大衆文学に属し、ヘブライ語を得手としない婦人層を対象に発達した。ユダヤ民族にとってイデッシュ文学は「へブラライ語文学」とほぼ同義である。

ヘブライ文学 Hebrew literature 929.73

 古代イスラエル以来、ヘブライ文字で書かれた文学の総称。代表的なものに前10世紀 にを発する口承のヘブライ神話がある。

アラビア文学 Arabian literature 929.76

〈アラブ文学〉とも。アラビア半島でアラビア語で書かれた文学の総称である。アラビア文芸復興をはさんで、古典アラビア文学と現代アラビア文学に大別できる。これにはイスラム地域に住む日アラブ人がアラビア語で書き残したものも含まれる。『アラビアン・ナイト』は〈アラビア文学〉のうち最も有名な作品として知られている。

邦訳本『アラビアン・ナイト』は隠れたベストセラーである。

エチオピア文学 Ethiopian literature  929.78

古典は〈アビシニア文学〉とも呼ばれる。エチオピアで生まれアムハラ語、ガラ語などエチオピア諸語で書かれた文学の総称。古代は絵文字または口承によって伝えられたものがほとんどである。

インド文学 Indian literature 929.8 

 インドで成立し発達した文学の総称。言語と宗教が複雑多岐で、インド=ヨーロッパ語族系文学とドラビダ語族系に分けられる。ことに前者は4000年の歴史を誇り、〈インド文学〉の主流といってよい。文学思潮も古代ベーダ系統や中世サンスクリット系統など宗教思想を背景としたバラモン文学、ヒンドゥー文学が目立つ。インドは1947年政治的にパキスタンを分離独立させているが、文化面で両者を分立し得ないことから「インド・パキスタン文学」として扱うこともある。

カビール(13981448?) インドのヒンディー語詩人・宗教家。出自の差別制度を厳しく糾弾し続けた。

古典サンスクリット文学 Old Sanskrit literature (929.8)

412世紀の間、インドで発達した「ベーダ文学」のうちサンスクリット語で書かれたものの総称。修辞や美辞技を中心に華麗な美文でつづられた作品が目立つ。

シャンガム文学 Sangam literature (929.8)            

〈サンガム文学〉とも表記。南インドはタミル地最古の宮廷文学の総称。13世紀にかけ、500人ほどの詩人による叙情詩集が完成した。

ヒンディー文学 Hindi literature 929.83

 インド共和国の公用語でありインド語派系のヒンディー語で書かれた文学の総称。「インド文学」の主流である。

ウルドゥー文学 Urdu literature 929.85 

 インド文学の一系、ウルドゥー語によって書かれた文学の総称。「ヒンディー文学」に次ぐ主流派である。

梵文学 Brahman literature  929.88

〈梵語文学〉ともいい、〈サンスクリット文学〉と変わりない。

ーリ文学 Pali literature  929.89

 中期インドにおいてパーリ語で書かれた仏教文学の総称。小乗仏教経典を広めた言語として幾多の文献を賑わす。 

ペルシア文学 Persian literature  929.93

 イランにおいて近世ペルシア語で書かれた文学の総称。古来イスラム世界においては宗教文学と非宗教文学とに二大別できるほど全体に宗教色が濃く、作品の多くは神話ときには終末論である。

イラン文学 Iranian literature 929.93

 近時にイランにおいてペルシア語で書かれた文学の総称。〈ペルシア文学〉とは古今での同系をなす。

 

90  英米文学

英米文学 British and American literature  930

 英国および米国において英語で書かれた文学の総称。「英国文学」と「米国文学」。

イギリス文学 English literature 930             

〈英文学〉とも。イギリスにおいて英語で書かれた文学。発祥が古く奥が深い。アングロサクソン時代の文学、中世英語文学、英国ルネサンス期文学、王政回復時代の文学、ロマン主義時代文学、ヴィクトリア朝文学、モダニズム時代文学および現代イギリス文学など時代区分ごとに研究が行われる。歴史が辿った流れのなかで、イギリスの精神風土に影響した中世に見るべき作品が多い。

『哲学書簡』初版本の表紙 内容は18世紀に至る25の書簡を集成。イギリスでの哲学、宗教、政治、科学、文芸に及ぶ。1734年刊。

英語文学 English literature (930)             

英国や英国人に限らず、英語圏諸国において英語で書かれた文学の総称である。

アングロサクソン文学 Anglo-Saxson literature 930.29            

 現代イギリス人のルーツとなる民族、アングロサクソン人が生んだ文学。異郷時代の〈アングロサクソン文学〉は金石文用のルーン文字を用いた口承詩にたどり着く。

アメリカ文学 American literature 930.29

〈米国文学〉とも。 アメリカ合衆国で生まれた文学の総称。17世紀のイギリス殖民に始まり4世紀足らずの事跡をたどる。20世紀、大戦後のリアリズム時代から脱却し、ハードボイルドなど独自の価値ある作品が続出している。資本主義の高度の発達も、プラグマティズムの世界を皮肉るフォークナーのような作家を生み出した。

赤死病の仮面」挿絵 エドガー=アラン=ポー(180949)の傑作恐怖小説にハリー=クラークが挿画。1842年発表。

黒人文学 Black literature 930.29

 広義には、黒人作家が創作した文学の総称で、語の適用範囲は特定できないほど広域諸国にわたる。狭義には、アメリカ合衆国内で黒人作家が手がけた文学作品をいう。なお「黒人文学」の語は差別用語との理由で、しだいに使われなくなっている。

アフロ=アメリカ文学 Afro-American  literature (930.29)

 アメリカ大陸においてアメリカ黒人により米国語で書かれた文学の総称。いわゆる「黒人文学」の語で代表される。近時、差別からの解放意識に芽生えた作品が目立つ。

カナダ文学 Canadian literature 930.299

 元英領北アメリカ諸州が1868年に独立した新興国カナダで成った文学の総称。カナダにはフランス系移民も多数居住していた。そのため公用語は英語とフランス語であるが、少数民族の「口承文学」なども組み込まれる傾向にある。広大な手付かずの自然を背景に大地小説や自然礼賛詩が柱になっている。

ニュージーランド文学 New Zealand literature  930.299

 ニュージーランドにおいて、マオリ語あるいは英語で書かれた文学の総称。古典ではマオリ民族の創世神話をはじめとする口承文学が伝統となっている。母国であるイギリスへの対抗意識が強く、文学でもあくの強い作風が目立つ。

オーストラリア文学 Australian literature  930.299

〈豪州文学〉とも。オーストラリアにおいて英語で書かれた文学の総称である。この国は「入植大陸」の異名が示すように、先住民の一部に伝わる口承伝統を含めて、実態は英国人による新世界ロマン派の文学が主流を占めている。リベラルな思潮のうちにもエスニックな作風での文学作品に人気が集中している。

モンウェルス文学 commonwealth

Literature        (930.299)

 アメリカを除く旧イギリス領植民地において英語で書かれた文学の総称。アフリカ諸国、カナダ、オーストラリアから西インド諸島まで広範な地域にわたる。

 

90  ドイツ文学

ドイツ文学 German literature 940

  ドイツにおいてドイツ語で書かれた文学、つまり教義カテゴリーの総称。中世の古典ではゲルマン伝説の口承文学「ニーベルゲンの歌」を始め叙事詩の推移が目立つ。近世に入ると「バロック文学」や自然への回帰主義へと系統。19世紀に至り、小説の隆盛を軸に政治性を加味した散文文学が展開を見せるなど、ヨーロッパでもれ傑出した多様化を示す。戦後に東西分割化されたドイツでの文学活動は、政治よりのイデオロギー一色に染まった感があった。ドイツ文化そのものが、明治開化期の日本で異常なほど啓蒙の役割を発揮したことも見逃せない。。

ゲーテ(17491832) ドイツの作家。世界で最も高名な古典主義作家。肖像画は1790年代のものと思われる。

スイス文学 Swiss literature  940

 スイスにおいてドイツ語またはフランス語で書かれた文学の総称。その意味で、スイスは自国本来の「国民文学」は発展し得なかった、という宿命を負っている。

それぞれ書かれた言語により「ドイツ文学」あるいは「フランス文学」に組み込まれることもありうるわけで、これも複合言語国家の定めであろう。歴史小説や紀行、ことに山岳小説にこの国の風土的背景をうかがい知ることができる。

ゲルマン文学 Germanic literature  949

 西洋史におけるゲルマン人によるゲルマン語(インド=ヨーロッパ語系)で書かれた文学の総称。古典では前1世紀にカサエルが著した『ガリア戦記』が、古代ゲルマン人の社会生活を描いた代表的作品となっている。

チュートン文学 Teutonic literature 949

 古代ゲルマン人の一系テウトネス族をチュートン人といい、彼等が書いた文学を〈チュートン文学〉という。前200年にローマ軍の侵攻にあい滅亡している。

オランダ文学 Dutch literature 949.3

 オランダにおいてオランダ語で書かれた文学の総称。12世紀後半、ネーデルラント地方に発生しディーツ語で書かれたた「民族文芸」が発祥である。

中世には聖書物語のような宗教文学が風靡した。日本とは江戸時代の通称でなじみが深い国だが、医学書などとは別に、文学作品での交流は希薄であった。

スカンジナビア文学 Scandinavian literature 949.4

北欧文学〉とも。スカンジナビア半島にデンマークを加えた地域を「スカンジナビア」と呼び、ここで発達した文学を〈スカンジナビア文学〉と称している。北部ゲルマン人が移住し独特の国家社会を成立させて、文学においても北欧山地での長い越冬生活を活写した「農民文学」を生んでいる。

アイスランド文学 Icelandic literature 949.5

 アイスランド共和国が生んだ文学の総称。ここに移住したノウェー人がアイスランド語(ラテン文字系)で書いた文学をいう。古典ではエッダ詩とスカルド詩が知られ、散文学では名作『サガ』が残されている。

ノルウエー文学 Norwegian literature 949.6

ノルウエーで成立した文学の総称。古代のアイスランド移民の影響もあり、両国文化の交流が文学にも見られる。ルークロア寄りの北欧神話や伝記、歴史、詩文が多い。童話作家のイプセンとその作品は世界的によく知られている。

デンマーク文学 Danish literature 949.7

 デンマークにおいてデンマーク語で書かれた文学の総称で、いわゆる「北欧文学」の一端をなす。

この国では王朝詩、戯曲をはじめキリスト教人文聖書、芸術詩、説話、農民文学あるいは「ロマン主義文学」など多彩な事績が残されている。童話作家のアンデルセンは世界的に知られているデンマーク文学者である。

スウェーデン文学 Swedish literature 949.8

 スウェーデンにおいてスウェーデン語で書かれた文学の総称。いわゆるバイキング文学、北欧民俗文学、抒情・叙事詩など。近代に入ってからは自由願望の主題を掲げた「プロレタリア文学」が目立つ。

 

90  フランス文学

フランス文学 French literature 950

〈仏文学〉とも。フランスにおいてフランス語で書かれた文学の総称。文学史上では約1000年の歴史があるとしている。ジャンルの多様なこと、文学性の高い作品の多いことで世界に冠たるものがある。たとえば、武勲詩や連唱詩など宗教的色彩の濃い古典に始まり、騎士道物語、叙事詩、ユマニスム文学、ロマン主義文学、レアリスム主義あるいはヌーボーロマンなど、枚挙にいとまがない。

わが国にも大規模大学に揃って仏文科が置かれているように、明治以来文学交流は盛んである。

スタンダール著『赤と黒』(大久保和郎訳、ドットブック)は近代フランスの代表作

ベルギー文学 Belgian literature 950

 ベルギーにおいてフラマン語(オランダ語系)およびワロン語(フランス語系)で書かれた文学の総称。後者が主流で、メーテルリンクの童話劇『青い鳥』もこの言葉で書かれている。

セント=ヘレナ文学 Saint Helena literature 950

 フランスでナポレオン1世を崇め、その栄光を称える伝説文学の一種で、ナポレオンの流刑地セント=ヘレナ島伝説にちなんた文学を指す。

プロヴァンス文学 Provencal literature 959

 フランス南東部の1地方でこの地に発祥した文学をとくに〈プロヴァンス文学〉と呼んでいる。古来の語に基ずき「オックス語文学」ともいわれている。抒情詩など地方色の濃い作品が見られる。

カタロニア文学 Catalonian literature 959.9

 スペイン北東部の地方に生まれ、カタロニア語で書かれた文学をいう。19世紀末、カタロニア文化採鉱運動「カタロニア=ルネサンス」の詩文で知られている。

 

90  スペイン文学

スペイン文学 Spanish literature 960

〈イスパニア文学〉とも。スペインにおいてスペイン語、カタルニャ語、あるいはガリシア語で書かれた文学の総称である。

中世に口承文学の流れをくむシッド=カンペアドールを称えた英雄詩が注目を引く。リアリティに富み野性的、というのが〈スペイン文学〉の特質である。世界的に知られたセルバンテスの『ドン=キホーテ』は異色のピカレスク小説だ。

セルバンテス(15471616) スペインの作家。ユーモアと風刺、喜劇と悲劇とをたくみに書き分け名著『ドン=キホーテ』を書く。

ラテンアメリカ文学 Latin-American literature          960.29

 カナダとアメリカ合衆国を除く南北アメリカ諸地域で生まれた文学の総称。言語がスペイン語、ポルトガル語、ラテン語と多様で、文学作品も混血模様である。

アルゼンチン文学 Argentinean literature 960.29

 アルゼンチンに生まれた文学の総称。革命に関する主題の文学が目立ち、ペロン政権下で暗い愛を描いたサバト作『英雄たちと墓』など、異才を放つものが少なくない。

ブラジル文学 Brazilian literature 960.29

 ブラジルで生まれた文学の総称。1822年にポルトガル植民地から独立、歴史がまだ浅く、世界的レベルでの文学活動は見るべきものがない。

チリ文学 Chilean literature 960.29

 チリにおいてスペイン語で書かれた文学の総称。ノーベル文学賞受賞詩人ガブリエラ=ミストラル(1945)ならびにパブロ=ネルーダ(1971)2名を輩出している。

キューバ文学 Cuban literature 960.29

 キューバにおいてスペイン語で書かれた文学の総称。社会主義国家だが、「ラテンアメリカ文学」系に属する。

ポルトガル文学 Portuguese literature 969

 ポルトガルにおいてポルトガル語で書かれた文学の総称。文学活動は13世紀に始まり、大航海時代の歴史書や紀行など価値ある事績を残している。

 

90  イタリア文学

イタリア文学 Italian literature 979

 イタリアで生まれた文学の総称。ラテン語を母体と刷るラテン文化が発達し、同字に古代ギリシア文学の脈々とした伝統を負う。ダンテの『神曲』ほかボッカチョの物語『デカメロン』、ペトラルカの抒情詩篇など世界的な名作を数多輩出している。しかし高踏的な作品のほか、多くの小話や俗語詩に見るように、気取らず大衆性を重視した流れも〈イタリア文学〉の大きな特色である。

ウゴリーノとルジェリ大司教 ダンテの不朽の名著『神曲 地獄編』32歌にG.ドレが添えた銅版挿絵(1861)。悲惨きわまる飢餓地獄の非情を見事に描ききっている。

ロマンス文学 Romance literature 979

 中世ヨーロッパにおいて、ラテン語から俗語に転化したロマンス語で書かれた文学の総称。叙情詩風のジャンルに端を発し、古代の伝統的な恋愛や冒険を扱う明るい物語に発展した。

ルーマニア文学 Romanian literature 979.1

 ルーマニアにおいてルーマニア語(ラテン語系)で書かれた文学の総称。ちなみにルーマニア語で書かれた古文書は1521年のものが初見で、まだ500年にもなっていない。「口承文学」に始まり叙情歌謡詞、宗教物語、リアリズム小説あるいは前衛文学など。

 

90  ロシア文学

ロシア文学 Russian literature 980

 ソビエト連邦時代を含めて〈ロシア=ソビエト文学〉とも。ロシアとソビエト連邦でロシア語(スラブ語)で書かれた文学の総称。古典の場合、歌謡口碑文学「ブイリーナ」ならびにブルガリア経由で移入の「ロシア・キリスト教文化」という二つの源流をもつ。ジャンルも幅広く激変の時局にもまれながら発達してきた来歴がある。ロシア語以外の言語で書かれた作品は「ソビエト文学」と称する。

ドストエフスキー(182181) ロシアの小説家。人間の内面を抉り出す洞察力で傑作『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』などの世界的名書を書く。

アルメニア文学 Allmerica literature (980)

 かつてのアルメリア共和国においてアルメリア語で書かれた文学を指す。

タジク文学 Tajikistan literature (980)

 ソビエト時代にチュルク語で書かれた文学を指す。

スラヴ文学 Slavic literature 989

 スラヴ民族が書いた文学の総称。古典では神話が、近代以降では社会科学系の作品が目立つ。「スラブ派」といわれる文学主潮団体の作品も見逃せない。

白ロシア文学 White Russian literature  (989)

 東スラブ語系文学の一つ、古代ロシアのキエフ周辺でウクライナ文学語で書かれた文学を指す。

エストニア文学 Estonian literature (989)

 エストニアでエストニア語で書かれた文学を指す。

スラブ文献学 Slab literature (989)

  9世紀後半に考案されたスラブ文字で書かれた文書の研究を指す。今では「スラブ学」に組み込まれている。

ブルガリア文学 Bulgarian literature 989.1

 ブルガリアにおいてブルガリア語で書かれた文学の総称。民間の「口碑文学」に端を発し、啓蒙文学、史書、民話詩、民族解放小説などが目立つが、1944年以降は社会主義リアリズムに染まる。「スラヴ文学」とは隣接関係にある。

チェコ文学 Czechoslovakian literature 989.5

チェコスロバキアにおいて西スラブ語系のチェコ語、スロバキア語で書かれた文学の総称。1918年の独立までは、隷属関係にあったオーストラリア文学、ハンガリー文学という呼称で適用されている。伝記、詩劇台本、説教小説、宗教哲学、バロック詩、民衆年代記、反体制小説など、変転めまぐるしい国情に応じ多様である。

 

ポーランド文学 Polish literature 989.8

 ポーランドにおいてポーランド語で書かれた文学の総称。吟遊詩、風刺文学、宗教書、バロック文学、戦争文学、解放文学などジャンルは多様である。

 

99 その他の諸文学

ギリシア文学 Greek literature  991

 東地中海諸地域の共通語としてギリシア語で書かれた文学の総称。ギリシア語は3000年も昔から、文学作品はじめ公式記録や学術用の言語として重要な役割を果たした。アッティカ演劇を始めとする歴史が古いだけに時代区分による文学史観が輻輳ているが、多くは古代文学に焦点が当てられている。古代叙事詩のような文学作品のほかに人類史上貴重な古文献が多いことも周知の通りである。

近代ギリシア文学 present Greek literature 991.9

「ギリシア文学」のうち近代に限定したもの。すなわち1453年コンスタンチノーブル陥落に伴うビザンティン帝国崩壊から20世紀に至る間の文学創作活動をさす。ロマン主義詩人に見る「韻文学」が主流を占めている。

ラテン文学 Latin literature    992

 ラテン語で書かれた古代ローマ文学の総称。ただし中世/近世の文学は、別して「中世/近世ラテン文学」の呼称を用いることになっている。この文学は、前3世紀にギリシア文学の影響を受けて悲喜劇の叙事詩に発祥し、1000年近くで多様な分野に発展し続けた。

ケルト文学 Celtic literature  993.1

 古代、西ヨーロッパに広く分布した1民族、ケルト人がケルト語もしくはゲール語を用いて書いた文学の総称。ストーンヘンジやメンヒルなどに由来の神話や説話文学で知られている。

近時は「アイルランド文芸復興」といわれる民族運動にその脈絡がつながっている。

スコットランド文学 Scotch literature 993.2

 スコットランドはグレート=ブリティン島北部の地方名で、このスコットランドで生まれ英語で書かれた文学の総称である。普通は英文学に組み込まれ、伝統ある王室体制のもとで宗教色の濃い諸文学が開花した。

アイルランド文学 Irish literature 993.2

 アイルランドで生れ英語で書かれた文学の総称。脱イギリス志向が強く神話、伝説、歴史物語、劇作、風俗などの分野に古代ケルト精神を受け継ぎ、民族意識の高揚が続いている。19世紀末に生じた「アイルランド文芸復興運動」に影響を受けた作品も少なくない。

フィンランド文学 Finnish literature 993.61

 フィンランドにおいてフィンランド語、スウェーデン語で書かれた文学の総称。1543年にトゥルクの主教アグリコラが著した『ABC読本』がこの国最初の文献とされている。神話、歴史小説、国民氏、農民小説などが見られる。北ユーラシアの風土色を描いた作品に見るべきものが多い。

ハンガリー文学 Hungarian literature 993.7

 ハンガリーにおいてハンガリー語(マジャル語)で書かれた文学の総称。中世のラテン語による「宗教文学」や年代記など異色な存在が目立つ。しかし「国民文学」としてのハンガリー文学は、オスマン・トルコ等の進攻による国土分裂が落着した16世紀からのこと。解放後に叙事詩、抒情詩、国民文芸、戯曲などで賑わいを見せている。

アフリカ文学 African literature 994

 アフリカ大陸諸国で生まれた文学の総称で、諸民族言語混交の状態にある。アフリカでは文字を持たない民族が少なくない。そのため多くの作品は「口承文学」および「記述(説話) 文学」の二大別から始まる。口承では習俗の語りに、記述では民族独立と啓蒙に特徴が現れている。