人名レファレンス資料

 

人名用漢字

 

親族系統と親等

 

人称代名詞 一覧

 

人名に関する名数

 

人名関係の金言・ことわざ

 

擬人名略解

 

ニックネーム

 

 

人名用漢字

 

〔戸籍法施行規則・別表第二「漢字の表」一および二〕*平成十八年現行のもの。

 

●命名用の漢字は、「常用漢字」ならびに、この人名用漢字と合わせた範囲内で選択する。

●音訓とも読みについてはとくに規定されていない。しかし懲りすぎは誤読を招くもとなので、慣用に沿った読みを用いるようおすすめする。

●人名用漢字は常に変更されている。したがって、最新情報に注意する必要がある。

付記 人名用漢字は平成二十三年一月にまたもや改定が重ねられている。朝令暮改の度が過ぎるので、特殊な文字を使いたいような場合は、自己判断せずに、役所の戸籍課に可否を問い合わせるべきである。

 

(表一)

丑 丞 串 乃 之 乎 也 云 亘 些 亦 亥 亨 仔 伊 伎 伍  伽 佃 佑 伶 侃 侑 俄 俠 俣 俐 侶 倭 俺 倶 倦 倖 偲 僅 傭 儲 允 兎 兜 其 冥 冴 冶 凄 凌 吝 凜 凛 凧 凪 凰 函 刹 劉 劫 勁 勃 勾 匂 勿 匡  卜 卯 卿 厨  叉 叡  叢 叶 只 吾 呑 吻 呂 哉 

 

……

 

(表二)

括弧内の漢字は、常用漢字でつながりのあるものを、参考までに示したものである。

() 惡() 爲() 以下略……

 

 

親族系統と親等(算用数字)

 

 

親等順

一親等▼父母 配偶者の父母(養父母、舅、姑) 子 配偶者の子(連れ子) 養子 養女

二親等▼祖父母 配偶者の祖父母 兄弟姉妹 兄弟姉妹の配偶者 配偶者の兄弟姉妹 義兄弟姉妹 孫 配偶者の孫

三親等▼曾祖父母 配偶者の曾祖父母 おじ・おば おじ・おばの配偶者 配偶者のおじ・おば 曾孫 配偶者の曾孫 甥・姪 甥・姪の配偶者 配偶者の甥・姪

四親等▼高祖父母 大おじ・大おば いとこ 玄孫 姪孫

五親等▼高祖父母の父母 曾祖おじ・曾祖おば いとこちがい 来孫 曾姪孫

六親等▼高祖父母の祖父母 高祖おじ・高祖おば いとこ大おじ・いとこ大おば はとこ 昆孫 玄姪孫 従姪孫 

 

親等の繋がり略解

〔三親等内〕

同胞▼同胞の男(兄弟) 同胞の女(姉妹)

前の世代▼一代前(父母)(おじ・おば) 二代前(祖父・祖母) 三代前(曽祖父・曾祖母)

後の世代▼一代後(息子・娘)(甥・姪) 二代後() 三代後(曾孫)

義理関係▼養子縁組(養父・養母)(養子・養女)(義兄・義弟)(義姉・義妹)(義父・義母=舅・姑)(聟・嫁)

〔三親等外〕

同世代▼いとこ=おじ・おばの子 はとこ=またいとこ=いとこちがい(父母のいとこ)の子

前の世代▼大おじ・大おば=祖父母の兄弟姉妹 いとこちがい=父母のいとこ 四代前(高祖父・高祖母)=曾祖父母の父母 五代前(高祖父母の父母) 六代前(高祖父母の曾祖父母) 曾祖おじ・曾祖おば=曾祖父母の兄弟姉妹 高祖おじ・高祖おば=高祖父母の兄弟姉妹 いとこ大おじ・いとこ大おば=曾祖おじ・曾祖おばの息子・娘=祖父母のいとこ

後の世代▼四代後(玄孫(やしやご))=曾孫の子 五代後(来孫(らいそん))=玄孫の子 六代後(昆孫(こんそん))=来孫の子 七代後(仍孫(じようそん))=昆孫の子 八代後(雲孫(うんそん))=仍孫の子 いとこちがい・いとこめいこ=いとこの子 姪孫(てつそん)=甥・姪の子 曾姪孫=姪孫の子 玄姪孫=曾姪孫の子 来姪孫=玄姪孫の子 昆姪孫=来姪孫の子 仍姪孫=昆姪孫の子 雲姪孫=仍姪孫の子 (じゆう)姪孫(てつそん)=いとこちがいの子 従曾姪孫=従姪孫の子 従玄姪孫=従曾姪孫の子

 

 

人称代名詞 一

*呼称によっては単複双方等に用いるものもある。書簡用語は含まず。

 

一人称・単数

(わたくし) あたし わたし 手前 

・僕 俺 (おのれ) (おれ) 己等(おいら) あっし わっし わて あて こちとら おいどん わちき

(われ) (われ) () () 吾人

・生 小生 愚生 幽愚 賎生 迂生 拙生 曾生 晩生 寒生 野生 懦生 ()() 不肖 不才 愚拙 野拙 小子 拙子 賎子 私下 下拙 不敏 不佞 拙下 奴才 下走 走也 拙也 寡徳 罷駑(ひど) 小的 愚老 老骨 老残 野耄(やぼう) 犬馬 浅学非才

・予 余 我輩 吾輩 予輩 余輩 吾輩 乃公(だいこう) 乃翁(だいおう) 

此方(こつち) 此方等(こつちとら) 俺様 (はな)(さま) 鼻坊 

身共(みども) (それがし) 僕奴(やつがれ) やつかり 拙者

・朕 麻呂 麿 丸 (わらわ) 

・自分 私自身 私個人 手前事 私一個 私風情・私連れ 一私人

・本職 本官 小職 小官 下名

・拙僧 愚僧

・マイセルフ ミー アイアム

一人称・複数

・私等 私共 僕達 僕等 俺達 わっしら 

・当方 一同 手前共 我等(てい) 

・我々 我等 吾人 吾等 己等(おのれら) ()(はい) 

此方(こちら) 此方(こつち) 此方側(こちらがわ) 此方人等(こちとら) 此人(こち)(しゆ) こっち側

・ユーアンドミー

二人称・単数

貴方(あなた) 君 主 お主 御主(おぬし) 

・貴様 (うぬ) (うぬ) (おのれ) 

・汝 (なんじ) 汝人(なびと) 

・お前 お前様 お前さん おまはん (かた)(さま) こちら お宅 

・お手前 卿等(けいら) 貴殿 貴君 君等 貴公 貴下 尊公 君様 足下 尊大人 其所許(そこもと) 其の許 夫子 御身

其方(そのほう) 其方(そち) 其方(そなた) ()文字(もじ) 吾が身 此方(こち)の人 

・あんた おめえ てめえ 其方人等(そちとら) おめえっち てめえっち この野郎 こんにゃろう こいつめ ちくしょうめ

() () () 汝兄(なせ) 吾兄(あせ) (いも) 汝妹(なにも) 

・貴官 

・ユー

二人称・複数

貴方方(あなたがた) 其方(そち)ら 其方方(そなたがた) ()(さま) そちら様 

 其れ様 此方(こなた)(さま) 此方(こな)(さん) そちら側 御内 

・君達 君方 諸君 諸賢 諸公 諸氏 卿等 諸兄 諸兄姉 各々方(おのおのがた) 此方方(こなたが)

・其の方等 汝等 其達(そちたち) 己等(おのれら) うぬ等 貴様等 お前達 お前方

・者共 野郎共 皆の者

・皆様 いずれ様 皆様方 皆々様 皆さん 皆の衆 皆共 皆々

・紳士淑女諸君 お立合い ご一同

三人称・近称

この人 この方 (こな)(さま) 此方様(こなさあ) こちら様 こちら側 此方(こなた)

此奴(こいつ) 此奴(こやつ) こいつ等 此奴(こやつ)() 

三人称・遠称

・彼 彼女 ()の人 ()の方 彼方(あちら) 彼方(あなた) 彼方面(あなたおもて) 先 先方 相手 相手方 

彼方(あちら)様 其の方 向こう様

・あっち そっち 彼方(あちら)側 向こう 向こう側 向こう方 

彼奴(きやつ) 彼奴(きやつ)() 彼奴(きやつ)(ばら) 彼奴(あいつ) 彼奴(きやつ)め (やつ) 其奴(そいつ) 代物(しろもの) (やから) ()(はい) あいつ等 奴等 奴共 奴等体(やつらてい) ()の輩 

・手合い 連中 者共 (やから) 

・同人 同君 同氏 同者 

・当人 自分 本人 ご本人 張本人 当事者 当該人物 

・本尊 ご本尊 ご当人 

・両人 両氏 両名 両君 両者 両方 双方 両々 二方 どちらも どっちも 両方とも 双方とも

・あの子 あの野郎 あんちくしょう 

・先生 大将 やっこさん 御大

三人称・不定称

(だれ) (たれ) 誰の人 誰しの人 誰やの人 誰やの者 誰かさん

何人(なにびと) 何人(なんぴと) 何方 どなた どちら どちら様 何様

・何者 何奴 どいつ どやつ 

・いずれ どちらか

誰某(だれそれ) (だれ)(かれ) 誰彼(かれがし) 何某(なにがし) 某氏 某君 其れ彼 何某呉某 それそれ 失名氏 

・ある人 一人 誰あらん

 

 

人名に関する名数(主なも

●取材上、文献・伝承によっては採択の異なるものがある。

 

一▼

万世一系 皇統をさす。

二▼

二客 野々口立圃/松江重頼

二巨峰 夏目漱石/森鴎外

二軍神 (たけ)(みか)(つちの)(かみ)(常陸・鹿島神宮の祭神)経津(ふつ)(ぬしの)(かみ)(常陸・香取神宮の祭神)

二聖〔書道〕 嵯峨天皇/空海

二聖〔歌道〕 柿本人麻呂/山辺赤人

二聖〔俳諧〕 山崎宗鑑/荒木田守武

二祖〔俳諧〕 松永貞徳/松尾芭蕉

二曽 曽我兄弟、すなわち兄・曽我十郎助成/弟・曽我五郎時致

二大絵師 葛飾北斎/安藤広重

中書(ちゆうしよ)(おう) (かね)(あきら)親王/(とも)(ひら)親王

滑稽本作家双璧 十返舎一九/式亭三馬

両上杉 扇谷(おうぎがやつ)上杉/山内(やまうち)上杉

両家 六角家/京極家

両賢 菅原道真/小野道風

両川(りようせん) 吉川(きつかわ)氏/小早川(こばやかわ)

両宗我部 長宗我部氏香宗我部氏

両大師 慈恵大師(比叡山)/慈眼大師(東叡山)

両統 持明院統大覚寺統

両勇 武田信玄/上杉謙信

三▼

三悪 弓削道鏡/足利尊氏/田沼意次

三阿弥 能阿弥/芸阿弥/相阿弥

儒の三偉人 帆足万里/三浦梅園/広瀬淡窓

三雲 宮沢雲山/遠山雲如/武内雲寿、いずれも幕末の漢詩人。

三管領 斯波細川畠山

寛政の三奇人 林子平/高山彦九郎/蒲生君平

三兄弟 佐藤(継信・忠信)/鈴木(正三(しようさん)・重成)/曽我(十郎祐成・五郎時致)、いずれも見事な最期を飾った兄弟。

三巨匠〔俳人〕 西山宗因/松尾芭蕉/宝井其角

三軍神 東郷平八郎/乃木希典/橘周太

三家〔清華〕 閑院/久我(こが)/花山院

家〔武家礼法〕 伊勢今川小笠原

上杉氏三家 山内/大懸/扇谷

赤松氏三家 小寺/別所/宇野

毛利氏三家 宍戸/小早川/吉川

徳川氏三 尾張紀伊水戸

狩野派三家 中橋/木挽町/鍛冶

家康の三傑 本多忠勝/榊原康政/井伊直政

維新三傑 西郷隆盛/大久保利通/木戸孝充

博多商人の三傑 島井宗室/神谷宗湛/大賀九郎左衛門

崎門三傑 佐藤直方/浅見絅斎/三宅尚斎、「崎門」とは山崎闇斎門下。

幕末三傑人 大島圭介/小栗上野介榎本武揚

東山三傑 雪舟等楊/狩野元信/土佐光信

幕末三剣士 桃井春蔵千葉周作斉藤弥九郎

文学三侯 池田定常(冠山)/毛利高標(たかしな)(霞山)/市橋長昭(黄雪)

三年寄 樽藤右衛門/舘市右衛門/喜多村弥兵衛、いずれも世襲制。

三才女〔平安和歌〕 紀貫之女/伊勢大輔/古式部内侍

三才女〔明星〕 山川登美子/与謝野晶子/茅野雅子

県門(あがだいもん)三才女 油谷(ゆや)倭文子(しずこ)鵜殿余(うどのよ)野子(のこ)/進藤(つく)波子(ばこ)、いずれも賀茂真淵門下の歌人。

三斎 林述斎/佐藤一斎/川田(てき)(さい)、「文化五蔵」中の三人。

三斎 佐藤一斎/山崎闇斎/浅見(けい)(さい)、いずれも江戸在住の儒者。

三三右衛門 市野三右衛門(迷庵)/津軽屋三右衛門(狩谷(えき)(さい))/屋根屋三右衛門(北静(きたせい)())、いずれも江戸中期の市井文人。

刀工三作 藤吉郎吉光(粟田口)/五郎正宗(鎌倉)/郷義弘(越中)

鐔工三作 明珍信家/(うめ)(ただ)明寿(みようじゆ)/青木金家 

金工後の三作 後藤一乗/河野春明/田中清寿

源頼義の三子 八幡太郎義家/加茂次郎義綱/新羅(しんら)三郎吉光

大原の三寂 寂念(為業)/寂然(親業)/寂超(為経)、いずれも藤原為忠の子で京都大原に隠棲。

 高橋泥舟山岡鉄舟勝海舟

三宗匠(茶湯) 千利休/古田織部/小堀遠州

祇園三女 梶女/百合女/町女、いずれも祇園の茶屋女で歌詠み。

三女神 ()(ごり)姫/湍津(たぎつ)姫/(いち)()姫、いずれも天照大神女。

 和歌三聖 柿本人麻呂/山部赤人/衣通姫そとおり)

俳諧三聖 山崎宗鑑/荒木田守武/飯尾宗祇

書の 空海菅原道真小野道風

造化三神 (あめの)()(なか)(ぬし)神/(たか)()()()神/

神皇三(かみむす)()

和歌三神 柿本人麻呂/山部赤人/衣通

三甚内 庄司甚内/宮沢甚内/幸坂甚内、いずれも江戸初期の盗賊。

三介 千葉介(下総)/上総介(上総)/三浦介(相模)、いずれも戦国期の関東豪族。

寛政の三助 柴野彦助(栗山)/尾藤良佐(二州)/古賀弥助(精里)、いずれも昌平坂学問所の三儒。

三姓 大中臣(おおなかとみ)卜部(うらべ)斎部(いんべ)(忌部)、いずれも皇臣で神事をつかさどった。

三石 野呂介石/僧の愛石/長町竹石、いずれも江戸時代の文人画家。

日本三蹟 小野道風/藤原佐理/藤原行

三千家 表千家/裏千家/武者小路千家

茶道三祖 村田珠光/武野紹鴎/千利休

源氏三代 源頼朝/源頼家/源実朝

三大家〔狂歌 朱楽菅江/大田南畝/唐衣橘州

三大家〔儒者〕 祇園南海/新井白石/梁田(やなだ)(ぜい)(がん)

三大家〔西洋医方〕 戸塚静海/伊東玄朴/坪井信道

三大家〔幕末文章〕 三浦梅園/帆足万里/広瀬淡窓

三大家〔美人画〕 上村松園/鏑木清方/伊東深水

三大家〔蘭学〕 青木昆陽/前野良沢/杉田玄白

三大作者 堀越二三治/金井三笑/桜田治助

三大臣 吉備真備/菅原道真/藤原在衡、いずれも儒家出身で右大臣に出世。

三大陶工 野々村仁清/青木木米/尾形乾山

三大農学者 大蔵永常/佐藤信淵/宮崎安貞

三大名優〔明治〕 九代・市川団十郎/六代・尾上菊五郎/初代・市川左団次

三大老人 加茂季鷹/(がん)()/福井榕亭、いずれも京都の風流文人。

三太郎〔文政〕 亀井(いく)太郎(たろう)(照陽)/頼久太郎(山陽)/古賀小太郎(侗庵)、いずれも儒者。

三忠臣 平重盛/藤原藤房/楠正成

寛政の三忠臣 松平定信/本田忠寿/加納久周

仏師名匠 松本良山高橋鳳雲高橋宝山

三人吉三 和尚吉三/お嬢吉三/お坊吉三、いずれも河竹黙阿弥作「三人吉三(くるわの)初買(はつかい)」での主役。

茶道三人衆 細川忠興/蒲生氏郷/柴山監物、いずれも利休七哲のうち。

西方三人衆 氏家常陸之介入道卜全/因幡伊予守良通/安東(伊賀)範 俊、いずれも美濃領主、斉藤道三の臣。

三好三人衆 三好日向守長逸/三好下野守(釣竿斎宗渭)/岩成主税助友通、いずれも三好義継を補佐した忠臣。

寛永三馬術 曲垣平九郎/筑紫市兵衛/向井藏人

三筆〔平安期〕 嵯峨天皇/空海/橘逸勢(はやなり)

三筆寛永 近衛信尹本阿弥光悦松花堂昭乗

三美婦 光明皇后/外通(そとおり)(ひめ)/右大将道綱の母

三姫 時姫(鎌倉三代記)/雪姫(祇園祭礼信仰記)/八重垣姫(本朝二十四孝)、いずれも浄瑠璃に登場の姫。

江戸(明和)三美人 笠森お仙/柳屋お藤/蔦屋およし

三文士 巌谷小波/大町桂月/江見水蔭

三平 時平/仲平/忠平、いずれも藤原基経の子。

三平〔備前の刀工〕 高平/助平/(かね)(ひら)

三法師 織田信忠/織田信秀/織田(ひで)(かつ)、いずれも幼名時の通称。

前の三房 大江匡房/藤原伊房(これふさ)/藤原為

後の三房 吉田定房/万里小路宣房/北畠親房

三名君 津軽信明/松平定信/上杉治憲(鷹山)

仏師三名匠 松本良山/高橋鳳雲/高橋宝山

三盛 実盛/通盛/盛久、いずれも能楽武将者で盛の字のつく曲。

三弥太郎 朝比奈弥太郎/鬼小島弥太郎/河原弥太郎、いずれも武勇をならした戦国武士。

三老〔鎌倉〕 北条時忠/和田義盛/畠山重

三老〔茶道〕 村田珠光/鳥居引拙/武野紹鴎

三老女 関町小町/桧垣/姥捨、いずれも能楽で老女物の曲。

四▼

四家〔藤原氏〕 南家北家式家/京家

四家〔歌学書編纂者〕 藤原浜成/喜撰(ひこ)(ひめ)/石見女

四家〔茶道〕 表千家/裏千家/武者小路千家/薮内

四家〔藤原氏〕 南家北家式家/京家

四職 山名/赤松/一色/京極の名家

四歌人 斉藤茂吉/前田夕暮/土岐善麿/吉植庄亮

四広 (広瀬)淡窓旭窓林外/青邨

江戸四詩家 市河寛斎/柏木如亭/菊池五山/大窪詩仏

四親王家 伏見/有栖川/桂/閑院

四姓 藤/橘

四撰者 紀貫之/壬生忠岑/紀友則/凡河内躬恒

本朝四大家/和文四名家 紀貫之/伊勢/清少納言/紫式部

国学四大人 荷田春満(かだのあずままろ)/賀茂真淵/本居宣長/平田篤胤

四大仏師 康慶/運慶/快慶/定覚

平安四竹 宮崎筠圃(いんぽ)/山科李蹊/御園仲渠/浅井図南、ともに竹を描いて妙なる江戸中期・京都の文人画家。

囲碁四哲 井上幻庵本因坊元丈本因坊秀和安井仙知

源頼光の四天王 渡辺綱/坂田金時/碓井重光/卜部季武

武将の四天王 平維平/源頼信/平致頼(むねより)/藤原保昌

源義経の四天王 鎌田藤太郎盛政/同藤次光政/佐藤三郎兵衛継信/同四郎兵衛忠信

武田家の四天王 板垣信方/()()虎昌/小山田昌長/甘利信益

織田信長の四天王 柴田勝家/滝川一益/丹羽長秀/明智光秀

豊臣秀吉の四天王 木村重成/真田幸村/長宗我部盛親/後藤基次

豊臣秀頼の四天王 木村重成/真田幸村/長宗我部盛親/後藤基次

徳川家康の四天王 酒井忠次/井伊直政/本多忠政/榊原康政

真陰流(上泉伊勢守信綱)の四天皇 神後伊豆宗治/疋田景兼/柳生宗巌/丸目蔵人佐長恵

中世歌壇の四天王 頓阿/兼好/浄弁/慶運

真淵門下の四天王 加藤千蔭/楫取魚彦/村田春海/加藤美樹

狂歌の四天王 石川雅望/鹿都部真顔/銭屋金埒/頼光

紅葉門下四天王 徳田秋声/泉鏡花/小栗風葉/柳川春葉

四納言 藤原行成/同公任/同斎信/源俊賢、いずれも文芸の達者。

四伯 上杉顕定/尼子晴久/大内義興/大伴宗麟、いずれも地方実権を握った武将。

五▼

五井 中井竹山/渋井太室/細井平州/井上大湫/井上四明、いずれも井の字が付く儒者。

五歌仙 赤染衛門/和泉式部/紫式部/馬内侍/伊勢大輔、いずれも上東門院の侍女で和歌詠みの才女。

武将五君 源頼朝/足利尊氏/織田信長/豊臣秀吉/徳川家康

五将 平清盛/源頼朝/足利尊氏/織田信長/豊臣秀吉

五摂家 近衛/九条/二条/一条/鷹司、いずれも摂政・関白になれる家柄。

五先生 新井白石/室鳩巣/雨森芳洲/祇園南海/榊原篁洲、いずれも木下順庵門下の儒家。

五大記者 中江兆民/田中卯吉/三宅雪嶺/長谷川如是閑/緒方竹虎

五大老 徳川家康/前田利家/毛利輝元/宇喜多秀家/上杉景勝、いずれも豊臣家。

五雄 毛利元就/北条氏康/上杉輝虎/武田信玄/織田信長、いずれも天下統一の志をいだいた。

白波五人男 日本駄右衛門/忠信利平/南郷力丸/赤星重三/弁天小象、いずれも河竹黙阿弥作「白波五人男」の主人公。

五人小僧 業平小僧/祐天小僧/赤星小僧/大蛇小僧/風窓小僧、いずれも歌舞伎「五人小僧噂白波」の主人公。

五人女 お夏/おせん/おさん/お七/おまん、井原西鶴作「好色五人女」の各章主人公。

六歌仙 僧正遍正/在原業平/文屋康秀/喜撰法師/小野小町/大伴黒主

六先哲 山崎宗鑑/荒木田武守/松永貞徳/安原貞室/北村季吟/松尾芭蕉

六宗匠 村田珠光(奈良流茶道)/鳥居引拙(珠光の高弟)/武野紹鴎(堺流茶道)/千利休(利休流茶道)/古田織部(織部流茶道)/小堀遠州(遠州流茶道)

六大師 弘法大師・空海/伝教大師・最澄/慈覚大師・円仁/知証大師・円珍/慈慧大師・良源/円光大師・源空

新六歌仙 藤原俊成/西行/慈円/九条良経/藤原家隆/藤原定家

中古六歌仙 源俊頼/藤原基俊/待賢門院堀川/藤原清輔/俊恵/登蓮

七▼

七高僧 竜樹/天親/曇鸞/道綽/善導/源信/源空

七清華 久我(こが)(源氏)/転法輪三条/西園寺/特大寺/花山院/大炊(おおい)御門(みかど)/今出川、清家は公家の家格で摂家の次に位する。

賎ケ岳七本槍 福島正則/加藤清正/加藤嘉明/平野長泰/脇坂安治/糟屋武則/片桐且元、有名な羽柴勢の面々。

真田七本槍 中山勘六/太田善太夫/朝倉藤十郎/小野大膳亮/辻小兵衛尉/戸田半平/斉藤久右衛門尉

戦国七雄 織田信長/今川義元/武田信玄/毛利元就/上杉謙信/北条氏康/豊臣秀吉、いずれも天下取りを企てた。

西国七人衆 三好長慶/大内義隆/尼子晴久/島津義久/毛利元就/大友宗麟/長宗我部元親、いずれも坂西で覇をきそった。

八▼

八家/関東八将 千葉(下総)/小山(下野)/里見(安房)/佐竹(常陸)/小田(常陸)/結城(下総)/宇都宮(下野)/那須(下野)

九▼

九華族/九清華 三条/西園寺/徳大寺/菊亭/花山院/大炊御門/久我/醍醐/広幡、の各家。

鎌倉九将軍 源頼朝/源頼家/源実朝/藤原頼経/藤原頼嗣/宗尊親王/惟康親王/久明親王/守邦親王頼朝以下の歴代将軍。

幕末九名侯 島津斉彬/黒田長搏/鍋島閑叟/松平春嶽/山内容堂/徳川斉昭/徳川慶勝/一橋慶喜/伊達宗城

十▼

焦門十哲 其角/嵐雪/許六/去来/支考/丈草/北枝/曽良/野坡/越人

女帝十代 推古天皇/皇極天皇/斉明天皇/持統天皇/元明天皇/元正天皇/孝謙天皇/称徳天皇/明正天皇/後桜町天皇

尼子十勇士 山中鹿之介/秋宅庵介/横道兵庫介/今川鮎介/尤道理介/寺本生死介/上田早苗介/深田泥介/薮田荊介/小倉鼠介

真田十勇士 穴山小介/海野六郎/筧十蔵/霧隠才蔵/猿飛佐助/根津甚八/三好青海入道/三好伊三入道/望月六郎/由利鎌之助

十三▼

十三名家 日野/広橋/烏丸/柳原/竹屋/裏松/甘露寺/葉室/勧修寺/万里小路/清閑寺/中御門/坊城

三十六▼

三十六歌仙〔藤原公任撰〕 柿本人麻呂/大伴家持/在原業平/猿丸太夫/紀貫之/壬生忠岑/素性法師/坂上是則/藤原興風/源重之/大中臣頼基/原公忠/藤原朝忠/源順/平兼盛/小大君/中務/藤原元真/山部赤人/僧正遍昭/小野小町/紀友則/凡河内躬恒/伊勢/藤原敏行/藤原兼輔/源宗于/斎宮女御/藤原敦忠/藤原高光/源信明/清原元輔/大中臣能宣/藤原仲文/藤原清正/壬生忠

四十七▼

赤穂四十七士 大石内蔵助良雄/大石主税良金/片岡源五右衛門高房/原惣右衛門元辰/堀部弥兵衛金丸/堀部安兵衛武庸/近松勘六行重/吉田忠左衛門兼輔/吉田沢右衛門兼貞/間瀬九太夫正明/間瀬孫九郎正辰/潮田又之丞高教/富森助右衛門正因/赤植源蔵重賢/不破数右衛門正種/岡野金右衛門包秀/小野寺十内秀和/小野寺幸右衛門秀富/奥田孫太夫重盛/奥田貞右衛門行高/大石瀬左衛門信清/木村岡右衛門貞行/矢田五郎右衛門助武/早水藤左衛門満堯/磯貝十郎左衛門正久/間喜兵衛光延/間十次郎光興/中村勘助正辰/菅谷半之丞政利/千馬三郎兵衛光忠/村松喜兵衛秀直/村松三太夫高直/岡島八十右衛門常樹/大高源吾忠雄/倉橋伝助武幸/矢頭右衛門七教兼/勝田新左衛門武堯/前原伊助宗房/貝塚弥左衛門友信/武林唯七隆重/杉野十平次房富/神崎与五郎則休/茅野和助常成/横川勘平宗利/三村次郎左衛門包常/(寺坂吉右衛門信行)

百▼

小倉百人一首詠者 天智天皇/持統天皇/柿本人麻呂/山部赤人/猿丸太夫/中納言家持/安倍仲麿/喜撰法師/小野小町/蝉丸/参議篁/僧正遍昭/陽成院/河原左大臣/光孝天皇/中納言行平/在原業平朝臣/藤原敏行朝臣/伊勢/元良親王/素性法師/文屋康秀/大江千里/菅家/三条右大臣/貞信公/中納言兼輔/源宗于朝臣/凡河内躬恒/壬生忠岑/坂上是則/春道列樹/紀友則/藤原興風/紀貫之/清原深養父/文屋朝康/右近/参議等/平兼盛/壬生忠見/清原元輔/権中納言敦忠/中納言朝忠/謙徳公/曽祢好忠/恵慶法師/源重之/大中臣能宣/藤原義孝/藤原実方朝臣/藤原道信朝臣/右大将道綱母/儀同三司母/大納言公任/和泉式部/紫式部/大弐三位/赤染衛門/小式部内侍/伊勢大輔/清少納言/左京太夫道雅/権中納言定頼/相模/前大僧正行尊/周防内侍/三条院/能因法師/良暹法師/大納言経信/祐子内親王家紀伊/前中納言匡房/源俊頼朝臣/藤原基俊/法性寺入道前関白太政大臣/崇徳院/源兼昌/左京太夫顕輔/待賢門院堀川/後徳大寺左大臣/道因法師/皇太后宮大夫俊成/藤原清輔朝臣/俊恵法師/西行法師/寂蓮法師/皇嘉門院別当/式子内親王/殷富門院大輔/後京極摂政前太政大臣/二条院讃岐/鎌倉右大臣/参議雅経/前大僧正慈円/入道前太政大臣/権中納言定家/従二位家隆/後鳥羽院/順徳院(以上) 

 

 

親等人名関係の金言・ことわざ(五十音順)

 

家は一代名は末代

命より名を惜しむ

器と名とは以て人に仮すべからず

虚名久しく立たず

功成り名遂げて身退くは天の道なり

豎子(じゆし)(青二才)の名を成す

するは一時名は末代

善も積まざれば以て名を成すに足りず

鷹は羽を惜しみ、士は名を惜しむ

忠臣は国を去るも其の名を潔くせず

得を取るより名を取れ

虎は死して皮を留め、人は死して名を残す

名有りて実無し

無い名は呼ばれず

名高の骨高

名正しからざれば則ち言順ならず

名に付いたる疵

名の勝つは恥なり

名の木も鼻につく

名の草枯る

名の行に浮るを恥づ

名の無い星は宵から出る

名の(もと)虚しからず

名は実の(まろど)

名は臣、実は師

名は体を表す

人は名を惜しみ虎は毛を惜しむ

名よき島に木寄る

名よりも実

名を争う者は朝に於てす

名を替え品を替え

名を聞かんより見んには如かじ

名を棄てて実を取る

名を竹帛(たけはく)に垂る

名を正す

名を釣る

名を取るよりも徳を取れ

名を盗むは貨を盗むに如かず

人は一代名は末代

骨を埋めるとも名を埋めず

本に従うて名を立つ

竜門原上の土に骨は埋むとも名を埋めず

烈子は名に(したが)

 

 

擬人名略解

 

この擬人名が付けられた対象は、人物であると物事であるとを限らない。歴史伝承を基に、呼称形態上で擬人化されているものを集めてある

これら掲出の大半は、『宮武外骨著作集』第四巻(河出書房新社・復刻)に所収の「日本擬人命辞書」を参照にした。由来など、より詳しい内容が書かれてある。

 

(あお)(きゆう)兵衛(べえ) 盗人仲間の隠語で、イナダをさす。

青筋張之(あおすじはりの)(すけ) 気が短く、怒りっぽい人。

(あお)(たん)坊主(ぼうず) そりたての青い坊主頭。

赤井(あかい)錆光(さびみつ) 赤く錆びついた刀の呼称。

赤目河豚之(あかめふぐの)(すけ) 二日酔で目が赤く太った人。

あけ(すけ) ざっくばらんな言い方をする人。

浅間(あさま)()衛門(えもん) 浅間山信仰から転じ、信濃者。

(あだ)()衛門(えもん) 遊廓・岡場所で暴利をむさぼる店。

安達(あだち)太郎(たろう) 峰がかりした夏雲。

あははの三太郎(さんたろう) 大口をあけて笑う愚か者。

(あま)太郎(たろう) 坊ちゃん育ちのやわな男。

()()けの三八(さんぱち) 中途半端で放り投げてしまうこと。

委細承知之(いさいしようちの)(すけ) よく承知した、の意味を伝える言葉。

石部(いしべ)(きん)(きち) 融通の利かない律義者。

石部(いしべ)(きん)(きち)(かね)(かぶと) 「石部金吉」よりも堅い人。

(いし)部屋(へや)(きん)()衛門(えもん) 「石部金吉」に同じ。

和泉(いずみ)小二郎(こじろう) 和泉国地方に出る峰がかりの雲。

伊勢屋(いせや)新平(しつぺい) 旨酒、またはそれを飲ませる酒屋。

伊勢屋与惣(いせやよそう)() けちな人。または、けちな商店。

(いた)()衛門(えもん) 浄瑠璃語りの太夫。

市子(いちこ) 口寄せなどと称し、人を欺く巫女。

市兵衛(いちべえ) 吉原通いの遊野郎。

市松(いちまつ) 男根。

田舎(いなか)兵衛(つぺえ) 田舎者。

(いも)(すけ) 体が小さくてむさい男。

石見(いわみ)太郎(たろう) 石見地方に出る入道雲。

右衛門五郎(うえもんごろう) 味噌汁の一。

宇治(うじ)(まる) 京都で、ウナギの異称。

嘘吐弥次郎(うそつきやじろう) うそつき男。

梅川(うめかわ)(ちゆう)兵衛(べえ) 心中を遂げた男女。

(うらやま)太郎(たろ)兵衛(べえ) 羨ましがりや。

雲岳女史(うんがくじよし) 肥え太った大女。

うんつく太郎(たろう)()衛門(えもん) 「ウンつく」「うんつく太」「うんつく太郎右衛門」「うんつく孫左衛門」などとも。知恵の足りない者。

栄術(えいじゆつ)太郎(たろう) 教徒の愛宕山に住んでいたと伝えられている日本第一の天狗。

得手(えて)(きち) ⑴得手自慢の者。⑵男根の異称。

江戸(えど)(すけ) 宴席で、献杯の礼に外れた我飲みをする者。

江戸(えど)兵衛(べえ) 上方で、江戸者の「べえべえ言葉」をあざわらった呼称。

海老茶(えびちや)式部(しきぶ) 明治時代、袴着姿の女学生の異名。

遠州(えんしゆう)春慶(しゆんけい) 遠州国産の塗物の通称。単に「春慶塗」とも。

(えん)(すけ) 近代、金一円の通称。

(えん)助芸者(すけげいしや) 近代、一円で床入りする枕芸者。

(えん)太郎(たろう) 明治の乗合馬車「円太郎馬車」、または東京市営バス「円太郎自動車」の略。

近江(おうみ)小太郎(こたろう) 陰暦六月頃、近江地方に出る入道雲。

狼之(おおかみの)(すけ) 破戒僧・堕落僧の別称。

大熊(おおくま)(たけ)(らん) 植物、月桃(げつとう)の別称。

大馬鹿(おおばか)三太郎(さんたろう) 大いなる愚か者。

(おか)太夫(だゆう) 蕨餅の異称。

(おき)太郎(たろう) アホウドリの異称。

晩三吉(おくさんきち) 新潟産の梨の一種。

(せん)(ころ)がし 千葉県勝浦市南西にある景勝地で、お仙という孝行娘が転落死した伝説にちなむ。 

染師(そめし) 土蔵破りの異名。

御互(おたがい)長左(ちちようざ)衛門(えもん) お互い様、という挨拶語。

おッと(よし)兵衛(べえ) おっとよし、と返事に用いた江戸語。

八重(やえ) 梅毒で崩れた女の顔。

女之(おんなの)(すけ) 女のような男。あるいは、男装の女。

(かかあ)()衛門(えもん) 「嬶右衛門」とも。嬶天下のこと。また、亭主を尻に敷く女房。

(かく)兵衛(べえ) (かく)兵衛(べえ)獅子の略称。⑵武蔵で、ネギの一種。⑶物を原価の倍掛けで売ること。その商人。

景勝(かげかつ)団子(だんご) 「とび団子」「カンカチ団子」とも。葛粉と糯粉を混ぜて作った団子。江戸市中で流し売りされた。

(かげ)(きよ) 通人を装い女を騙すなど悪事を働く者。

葛西(かさい)太郎(たろう) 江戸向島にあった川魚料理屋「中田屋」の別称。

(かたきの)()次郎(じろう) 正月に家々の門口で賀詞を述べ物乞いするお貰い。

石部(いしべ)(きん)(きち) 「堅蔵」とも。融通の利かない堅物。

交野(かたの)少将(しようしよう) 伊達者、見栄っ張りの異名。

()太郎(たろう) カッパの異名から、河をさらう屑拾いをさす。

()(へい)() 「嘉平次(ひら)」の略、銘仙織の袴地。

(からす)(かん)()衛門(えもん) 烏をさす異称。

川瀬喜内(かわせきない) 為替(かわせ)来ない」のもじりで、借金を繰り延べ払いする申し込みのときの洒落言葉。

(かん)三郎(ざぶろう) 関西で、寒の入り三日前から節季の行事を行う風習。

寒四郎(かんしろう) 同右、四日目の行事。

()()衛門(えもん) ⑴空腹なこと。⑵朝鮮、李朝前期の作になる井戸茶碗。大坂商人の竹田喜左衛門が愛蔵した。

喜三郎(きさぶろう) ⑴江戸時代、大坂の薬種商の名。⑵江戸の侠客、野出喜三郎の略称。

北見伊(きたみい)()衛門(もん) 「来た身癒えむ」に由来、病気快癒の呪い文句。

義太夫(ぎだゆう) 近世、東都で義太夫節の略。

吉兵衛(きちべえ) 江戸語で、二朱判。道化役者の二朱判吉兵絵衛にちなむ。

気味(きび)(すけ) 江戸語で、ざまあみろ、を意味する。「気味がいい」こと。

久三(きゆうぞう) 「久七」「久助」とも下男の通称。

妓夫(ぎゆう)太郎(たろう) 「妓夫」「牛太郎」とも。遊女屋で客を引き込む役の男。

金太郎(きんたろう) ⑴酒で赤らんだ顔。⑵吉原で、無銭遊興の客。⑶金太郎腹掛け。⑷金太郎人形。 ⑸馬鹿者。

(きん)(ちや)(きん)十郎(じゆうろう) ⑴遊里で大尽遊びする客。 ⑵阿呆。

ぐうたら兵衛(ぺえ) 「ぐう太郎」「ぐう太郎兵衛」知。ぐうたら者。

愚図郎(ぐずろ)兵衛(べえ) 「愚図郎左衛門」とも。のろまで遅鈍な者。

宮内(くない)(さま) 「苦無い様」つまり、のんき者。

垢四郎(くしろう) 垢じみた顔の男。

雲助(くもすけ) 古くは、浮浪人。近世に、宿駅の駕篭かきに。

(くも)見山(みやま) 仰向けで雲を見る、との悪口から いつも出ると負けの弱い相撲取り。

(ぐん)()衛門(えもん) 「郡太兵衛」とも。江戸っ子が田舎者を馬鹿にしていった語。

慶庵(けいあん) ⑴口入業者。⑵追従をいう者。

削助六(けずりすけろく) 銭に心棒を付けただけの独楽(こま)

下卑(げび)(すけ) 「下卑蔵」とも。意地が汚く、下卑た性格の男。

源九郎(げんくろう)(ぎつね) 大和地方の伝説で、人をよく騙す狐。

源五郎(げんごろう) ⑴水生昆虫の一。⑵カブトムシの一。 ⑶琵琶湖特産の鮒。

(げん)(さま) 吉原で、坊主の登楼客。源四郎(げんしろう)

(げん)(すけ) 失敗したこと。失望したこと。

(げん)()牛一(ぎゆういち) 畜生め、といった他人へのののしり。畜生の二字を四字に分けてつづった語。

(げん)(ぴん)僧都(そうず) 案山子(かかし)の異称。

見物(けんぶつ)()衛門(えもん) 田舎から都にやって来た見物人。能狂言から出た言葉。

紺屋(こうやの)太郎(たろう) 露草の異称。

五右衛門(ごえもん) 大鍋の異称。

虚仮(こけ)(まる) 愚か者。

小次郎(こじろう) 「小二郎」とも。平形皿の別称。

()(すけ) ⑴明治語で、車夫。 ⑵柿。

小蔵(こぞう) 丁稚小僧をさした、さらに昔の言葉。

五郎(ごろ)(すけ) 「ゴロー」と聞える鳴声から、(ふくろう)の異称。

五郎(ごろう)() 小石の異称。

こん(きち) ⑴狐の異称。⑵客を(たぶら)かす遊女。

(ごん)()衛門(えもん) 武州産の、桃の異称。

権八(ごんはち) 居候。

在郷(ざいごう)兵衛(べえ) 「在郷太郎」とも。田舎者へのあざけり言葉。

在所(ざいしよ)住居(すまい)()三次(さんじ) 在郷にすむ気安さ。

才蔵(さいぞう) 調子に乗り相槌を打つ人。

作蔵(さくぞう) 男根の異称。

鮭之(さけの)大助(おおすけ) 北日本で、川を溯上する鮭の群の大将。

細蟹姫(ささがにひめ) 七夕の織姫をさす異名。

簓三(ささらさん)(すけ) 「簓三八」とも。疫病・放送を防ぐ呪い。鮑の殻の内側などに書いて門口などに貼り付ける文句。

佐太郎(さたろう) 冷や飯。

さっぱり源助(げんすけすけ) まったく不明なこと。物事がだめになること。

薩摩(さつまの)(かみ)忠度(ただのり) 乗り物に無賃で乗ること。

さちいりきんちゃん 砂糖入り金時豆の子供言葉。

()平治(へいじ) 余計な口出しをすること。おせっかい。

(さる)(まつ) ⑴エテ公。猿へのののしり。⑵いたずらっ子。⑶思慮の浅い人。

三九郎(さんくろう) 信州方面で、()()(ちよう)祭り。

三四郎(さんしろう) ⑴三味線。⑵酌婦の異名。

(さん)(すけ) ⑴江戸語で、湯屋男。⑵下男など下働きの奉公人。

(さん)() 丁稚小僧。

三太郎(さんたろう) ⑴愚鈍な者。⑵丁稚小僧。⑶迷子。

三年(さんねん)()太郎(たろう) 寝てばかりいる人。

鹿蔵(しかぞう) 下男。

四国(しこく)二郎(じろう) 「四国次郎」とも。吉野川の異称。

七郎(しちろう)(ねずみ) どぶ鼠。

信濃(しなの)太郎(たろう) 信州方面に出る夏雲の通称。

島野(しまの)路子(じこ) オジロ科の小鳥。

蛇之(じやの)(すけ) 大酒飲み。

十四郎(じゆうしろう) 十四郎なる役者の口癖から、途方もないことをいう、の洒落。

正直(しようじき)正兵衛(しようべえ) 昔の玩具の名。

承知之(しようちの)(すけ) 承知した、と引き受けたときの洒落言葉。

(しよう)兵衛(べえ)(ばば)(さま) 恐れ入った、というときの洒落言葉。

白髪(しらが)太郎(たろう) ヤママユガ科の蛾の異称。

四郎(しろう)(さん) 江戸時代、京都の花街で、蝋燭の異称。

次郎(じろ)太郎(たろう)(ばな) 植物、サギゴケの異称。

次郎坊(じろぼう)太郎坊(たろぼう) 植物、スミレの異称。

吝太郎為持(しわたろうためもち) 「吝虫太郎」とも。極度のケチ。

新五(しんご)()衛門(えもん) 「新左衛門」知。新参の武士へのあざけり。

甚七(じんしち) 次男をさす洒落。惣領を「甚六」ということから。

甚助(じんすけ) 「腎助」「腎兵衛」とも。性欲旺盛な者。

新兵衛(しんべえ) 大阪で、へまばかりやらかす男。

(じん)兵衛(べえ) 「甚平」とも。袖なし羽織。

甚六(じんろく) 「惣領の甚六」とも。お人好しな惣領息子。

助四郎(すけしろう) 悪いこと。醜いこと。

助兵衛(すけべえ) 「助平」とも。甚だ好色な人。

(すじ)()衛門(もん) いい加減なことをいう者。

素手(すで)(まご)()衛門(えもん) 「素手の孫六」とも。一物をも持たない人。

ずぶ(ろく) 正体なく泥酔した人。

駿河(するが)太郎(たろう) 「富士太郎」とも。富士山の俗称。

清三(せいぞう) 「清左」とも。清酒。諸白。

(せん)(まつ) 空腹なこと。

総右(そうえ)衛門(もん) 遊女の異名。

蔵六(ぞうろく) 亀の異称。

()()衛門(もん) 美しい娘。

田吾作(たごさく) 田舎者。

()()衛門(えもん) 木戸銭を払わない見物人。

陀羅尼(だらに)(すけ) 腎虚処方の媚薬。

太朗作(たろさく) 間抜け。阿呆。

太郎(たろ)兵衛(べえ) 愚図で役立たず者。

丹波(たんば)太郎(たろう) 丹波国上空の入道雲。

(ちく)夫人(ふじん) 夏床で用いる竹製の抱きかご。

長吉(ちようきち) 赤絵具。

ちょか(すけ) ひょうきん者。

筑紫(つくし)三郎(さぶろう) 筑後川の異名。坂東太郎(利根川)、四国次郎(吉野川)に次ぐ。

(つる)太夫(だゆう) 万歳の太夫。

(でこ)(すけ) でこぼこ野郎、というののしり。

手子(てこ)(づる) てこずる遊女。はやらない端女郎。──鶴、という源氏名にひっかけて。

鉄砲呆(てつぽうほう)(すけ) 向こう見ずな者。

鉄砲矢八(てつぽうやはち) ほら吹き。

()()(かめ) 強姦殺人犯の池田亀太郎の名から、変態男の通称。

でれ(すけ) 好色で女にだらしない男。

天九郎(てんくろう) ⑴槍の一名。⑵蚊遣火。

(てん)一太郎(いちたろう) 初の癸巳(みずのとみ)の日に天気でその年の豊凶を占う俗信。

(てん)(くん) 心のこと。

天神坊(てんじんぼう) 梅干。

(てん)太郎(たろう) 「天一太郎」に同じ。

藤九郎(とうくろう) アホウドリの異称。

藤四郎(とうしろう) 素人(しろうと)のさかさま変則読み。

藤兵衛(とうべえ) 窃盗犯。

藤六(とうろく) のろま者。

(どく)(あん) 悪徳医者。ヤブ医者。

(とく)(すけ) 「福助」とも。福徳に恵まれた男。

土左衛門(どざえもん) 水死人。

十筋右衛門(とすじえもん) 頭髪がほとんどない人。

(とび)(すけ) 突拍子のない言動を執る者。

土用(どよう)三郎(さぶろう) 土用入りから三日目の称。これにちなんだ俗信占い。

土用(どよう)次郎(じろう) 土用入りから二日目の称。これにちなんだ俗信占い。

土用(どよう)太郎(たろう) 土用入り初日の称。これにちなんだ俗信占い。

とろ(さく) とろい人へのあざけり。

(どん)(すけ) 馬鹿者。阿呆。

(どん)太郎(たろう) 「鈍兵衛」とも。愚か者。鈍い男。

名無権兵衛(ななしのごんべえ) 名前のわからない人への戯れ言葉。

(なべ)蓋山(ぶたやま) 勝負に弱い力士。

奈良(なら)次郎(じろう) 畿内で、夏雲をさす言葉。

()太夫(だゆう) 民家の門口で雑芸を見せ物乞いをする乞食。

(おんな)()衛門(えもん) 女の溺死体。

抜之(ぬかりの)(すけ) うっかり者。

(ぬく)太郎(たろう) 「温助」とも。愚か者。

抜作(ぬけさく) 間抜け者。

(ぬま)太郎(たろう) スッポンの異称。

猫八(ねこはち) 物真似などする物乞い、放下師の異名。

(のび)(すけ) ⑴鼻毛が長く伸びた人。⑵女に甘い男。

飲助(のみすけ) 酒びたりの人。

野呂(のろ)() 愚鈍な男。

(のん)太郎(たろう) ⑴大酒飲み。⑵無銭飲食者。

馬鹿(ばか)太郎(たろう) 極め付きの愚か者。

八王子(はちおうじ)三太郎(さんたろう) 大馬鹿野郎。

八専(はつせん)次郎(じろう) 旧暦の八専から第二日目。「天一太郎」「土用三郎」などの兄弟見立である。

早川(はやかわ) 赤ふんどしの異称。

半四郎(はんしろう) 下駄の異称。

半助(はんすけ) ⑴半人前の男。⑵一円の半分、五十銭。

半土(はんど)() 水死しかかった人。

(ひが)()衛門(えもん) 無粋者。野暮な田舎者。

彼岸(ひがん)太郎(たろう) 彼岸初日の天気。その年の稲の豊凶を占う。

(ひこ)()衛門(えもん) 「彦左武士」とも。田舎武士へのあざけり言葉。

彦七(ひこしち) 大盛そばの異称。

彦太郎(ひこたろう) 九州地方に出る夏雲。

備後(びご)入道(にゆうどう) 盛夏、出雲国に立つ入道雲。

彦八(びこはち) おどけを売る大道芸人の異名。

(びこ)兵衛(べえ) 江戸の芝居で、掛け合いの台詞を言う芸。

(ひざ)(きち) 人体、膝の異称。

(ひざ)小僧(こぞう) 人体、膝の異称。 

久松(ひさまつ) 物を小買いすること。

(ひやく)()衛門(えもん) 料金百文の芝居席、百桟敷(さじき)の見物人。

百姓(ひやくしよう)太郎(たろう) 百姓を卑しめた言葉。

(ひやく)(すけ) いわゆる羅生門河岸の初見世女郎の異名。江戸吉原通いの道筋にあった。

(ひやく)兵衛(べえ) 寺方言葉で、貧乏檀家、あるいは吝嗇檀家。

表六(ひようろく) そそっかしい男。

(ひら)(たいら)(へい)(べい) 平の字四つを重ねて人名化した言語遊戯。

福助(ふくすけ) ⑴幸せを招くという縁起人形。⑵頭の異常に大きな男。

()()衛門(えもん) 吉原創始時代、遊女が武士客を呼んだ称。

不倒(ふとう)(おう) 玩具、起き上がり小法師。

文七(ぶんしち) 「文六」とも。文銭七()枚を重ねて独楽(こま)にしたもの。

(へい)()衛門(えもん) 江戸深川の遊里語で、遊女を手当たり次第に買いまくる客。

平気(へいき)(へい)()衛門(えもん) 物事に動じないこと。

平三郎(へいざぶろう) 人体、足のかかと。 

へのへのもへじ 人の顔を描く文字遊びの称。

平凡(へぼ)(すけ) 手先の不器用な者。ヘボ将棋などで技の劣る者。

へまむし入道(にゆうどう) 人の顔を描く文字遊びの称。

鳳五郎(ほうごろう) ダチョウの異称。

(ほう)(すけ) 阿呆から転じ、馬鹿者。

亡八(ぼうはち) 遊び人。別に、女郎屋の主人。

骨皮三内(ほねかわみない) 極度にやせた人。

本阿弥(ほんあみ) 刀剣鑑定家の通称。

ぼん太郎(たろう) 間抜け。ぼんやり者。

孫作(まごさく) 小作人が地主から借りた耕地をほかの者が又借りすること。

(まご)次郎(じろう) 器物で、(きぬた)の異称。

孫四郎(まごしろう) 道具で、横槌の異称。

(まご)兵衛(べえ) 鰻の異称。

正宗(まさむね) 代名詞化した、酒の異称。

(まつ)さん スリをいう。

豆蔵(まめぞう) 放下師。

(まん)八郎(ぱろう) 乱暴者。もてあまし者。

三筋(みすじ)()衛門(もん) 「六筋右衛門」とも。髪の毛が極めて薄い人。

(みつ)(つぐ) 小判を洒落ていった称。

無太郎(むたろう) 無風流な人。

夢中作(むちゆうさく)()衛門(えもん) 物事にとっつきやすく、飽きっぽい人。

()()() 女房自慢をしたがる人。

もしもし(ひめ) 電話交換手。

元吉(もときち) 芸妓の異名。

物臭(ものぐさ)太郎(たろう) おっくうがり屋。

自棄(やけ)(すけ) 自暴自棄になった人。

弥三(やさ) 馬方の別称。

弥次(やじ) 「野次」とも書く。やじること。また、野次馬の略。

弥助(やすけ) 寿司の異称。

宿六(やどろく) 一家の主人をからかっていった言葉。

弥之(やの)(すけ) (やつこ)の通称。

山井(やまい)(よう)(みん) ヤブ医者の異名。「(やまい)よう()ん」の洒落。

(やま)(たち)(ひめ) イノシシの異称。

(やま)和郎(わろう) 狒々。

行平(ゆきひら) とも蓋付きの土鍋。

()太夫(だゆう) 湯に入り義太夫などをうなる人。

(ゆめ)(すけ) よく眠るもの。ぼんやり者。

与市 縞の財布。

揚名之(のこれ)(すけ) 有名無実の官職にある人。

()(かん)兵衛(べえ) ⑴膏薬売り。⑵奴凧

(よく)兵衛(べえ) 欲の深い人。

与作(よさく) 軽輩者。

与太(よた) 与太者の略。

与太郎(よたろう) 薄のろ。

万屋(よろずや)(まん)兵衛(べえ) なんにでも手を出したがる人。

(らく)(すけ) 気楽に暮らす人。

利休(りきゆう) 商売上手、と子上手な女郎。

六蔵(ろくぞう) 馬方。

わこ()衛門(えもん) 女房をさす隠語。

 

 

ニックネーム nickname

 

渾名は、当人の特徴などによって、実名以外に他人が付けた呼称である。

たいていの人は、物心つく頃に遊び仲間から渾名を付けられる。付けられた渾名がひどいものでなければ、当人は目くじら立てたりしない。ユーモラスな呼びかけに嬉々と応じる姿さえ見られる。子供社会では社交辞令のようなものになっている。

明治天皇は、身近な女官に片端から渾名を付けられことで知られている。

また民俗学分野にうかがえるように、昔から「実名敬避」といって、親などが付けてくれた名前を敬遠し、別の呼称にすり替えてしまう習俗がある。もとは縁起をかつぐ忌避俗信から由来したもので、別名を付けることによって災禍が避けられると信じていた。

さらに、古代は、「鬼麻呂」とか「糞若」といった卑俗な名を用いる傾向が強かった。常識外の命名により厄神を追い払えるといった信仰に根ざしたものである。そのため今考えるとバカバカしいような名前が、堂堂とまかり通っていた。こうした事実から、日本人は渾名付けや異称付けが巧みで、付けられるほうも比較的寛大であった、といえるのだ。

理屈はさておき、親または名付け親から付けられた実名は、姓と合わせて、本人を他人と識別するための単なる符牒でしかない。そんな存在に不満だからと自分で付ける雅号やペンネームなども、結局は客観性に乏しく、どちらかというと独り歩きしてしまう性質のものである。

ところが渾名・異名の類となると話は別で、他人または複数の第三者がそれなりの理由をもとに付ける。いわば本人の周辺社会が贈ってくれた公認の名前。つまり単なる標識符丁を超えて客観性が付与され、当人の個性が投影される。そこには近親感とか嫌悪感といった第三者感情の移入が見られ、ときには陰のドラマに仕立てられる。とくに有名人の渾名・異名の場合、人間がもつ本来的な野次馬根性や覗き見趣向を満足させてくれることが少なくない。

なお渾名を付ける動機は、親愛感、仲間意識、尊敬、侮蔑、嫉妬、からかい、いじめ、嫌悪、悪態、標識特性、そして大半は面白半分、である。

 

渾名付け10 のタイプ 

一般に渾名は、次の10タイプが考えられる。

  性格……〔例〕つむじ曲がり

  見てくれ……〔例〕鼻低天狗

  語りぐせ・失言……〔例〕奇声居士

  簡略称……〔例〕アラカン(嵐寛寿郎)

  人名もじり……〔例〕バタバタキャンソン(荒畑寒村)

  権力・威勢……〔例〕競艇のドン

  先人踏襲……〔例〕最後の太鼓持

  実績・業績……〔例〕ロボットの父

  居住地・活躍地……〔例〕マレーのハリマオ

  特技の発揮……〔例〕失神作家

 

渾名を斜に構えて見ると

●渾名は人世における見えざる勲章である。

 渾名は親しみを表すバロメーターである。

●渾名は幼児が最初に覚える言葉遊びである。

●渾名は人物像に貼り付けられた落書である。

●渾名は加齢と共に減衰する人間関係である。

●渾名はその人に対する最も公正な人物評である。

●渾名はまだ仲間はずれにされてない証拠物件である。

●渾名は著名人にとって有名税である。

●渾名は政治家の公約以上に信頼できる根拠をもつ。

●渾名は人世において、愛のささやきよりも強くして長し。

 

渾名付けの名人、稲垣足穂

逸話を一つ紹介しておこう。

「渾名付けの名人」と称された作家がいた。稲垣足穂(一九〇〇~一九七七)がその人で、バカ方面の博物学、天文学、それに男色についての造詣が深い異色の人物である。文壇のお瀝瀝をブッタ斬った次の愉快な一文から異才ぶりをのぞいてみよう。

室生犀星は「田舎のハンコ屋」、宇野浩二は「田舎の指物師」、武者小路実篤は「バカが大きくなって手がつけられない」、川端は千代紙細工、永井荷風は三味線弾きのスネ者や。小林秀雄はテキ屋、夜店のアセチレンのにおいがする。新しいところでは吉行淳之介、安岡章太郎なんてのはもたれ合いでマスかいているようなもの。大江健三郎は一種の知的ゲイ。小松左京というのは面白いやっちゃ。ボクのことをタルガキホタルなんて書きよって……

稲垣は一時師事していた佐藤春夫を「類推の名人」と評しているが、本人もまた「渾名付けの名人」との評価を高めた。掲出の出典は失念したが、たしか大宅壮一との座談での発言だったと思う。

 

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