文彩テクニック編

 

 

 

この編は、文彩の各アイテムごとに設けられた文章作りテクニック100項目を選定しまとめたものです。全編はそれぞれ文彩上の特徴に応じて10のカテゴリーに分けてあります。

 

 

01 文章の「基本形」は文彩の原点である。

 

 

♥文彩を加えない基本形の見本♥

 

植木玉厓(うえきぎょくがい、17811839、漢詩人)

 

渾名:阿呆の鏡

 

狂詩号「半可山人」と称す。名前は知られていないが、狂詩を作らせたら右に出るものなし、といわれた。文政23月、忠臣蔵を主題にした狂詩『日本一安房鏡』を発表する。これを読んだ人たちから、その題名を捩った「阿呆の鏡」という渾名を付けられた。同じく漢詩をたしなむ大田蜀山人も鑑賞した1人で、この玉厓作品の全文を筆写し保有するほどの惚れ込みようであった。

 

 ここでいう文章の基本形とは、文彩をできるだけ排除した、自然のままの素直な文章を指すことにします。つまり、数ある文彩技を加える前の基となる文章です。しかし基本形は、書く段になると意外に難しい。というのも、ほとんどの文章は成り行き上文彩を取り入れた仕上がりになってしまうため、かえって裸の文章作りに仕立直しを迫られるからです。その意味では、基本形もまた文彩技の一つとみなすことができます。

 

 文彩に比較的染まっていない文章は、簡易平明を旨とする辞典類によく見かけますが、長文では平板になりがちという欠点を抱えています。

 

 以上のことから、文章の基本形は、文彩を加えることの妙味を教えてくれる原姿といえましょう。ちなみに、掲出はしませんが、『日本国憲法』の前文は、何度も推敲が重ねられ、文章の癖を極力排除した基本形の典型といえます。