エロもじり 百人一首

 

   *本歌はいずれも『小倉百人一首』からの引き。

 

 

 

エロもじり百人一首              荻生待也詠

 

 

 

本創作歌は『小倉百人一首』もじりによるバレのめし版で、本歌はいずれも『小倉百人一首』からの引き。創作歌の内容は本歌の歌脈を重視しており、かならずしも下ネタとは限りません。 

 

 

 

一番 あきれたの 天狗天王

 

あきれたの倶利伽羅紋々声あらげふところ手して妻を盗めり

 

     ↑

 

秋の田のかりはの(いほ)(とま)をあらみわが衣手(ころもて)は露にぬれつつ(天智天皇、歌番一)

 

 

 

二番 春脱ぎて 痔痛天命

 

()けて夏に脱ぐらし下布(しもぬの)女陰(ほと)濡らせてふ尼の嗅ぐ夢

 

     ↑

 

春すぎて夏()にけらし白妙(しらたえ)の衣ほすてふ(あま)の香具山 (持統天皇、歌番二)

 

 

 

三番 客引きは 闇元人非人

 

客引きは山出しの()の下腹の()が泣かせ夜をひそか売りなん

 

     ↑

 

あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む(柿本人麻呂、歌番三)

 

 

 

四番 蛸の口に 槍過赤面

 

蛸の口に吸いつきみれば白泡の()ける(たけ)びに舌なぶられつ

 

     ↑

 

田子の浦にうちいでて見れば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ(山部赤人、歌番四)

 

 

 

五番 奥方に 猿真似太夫

 

奥方にもみ手で乞うも(ぜに)なしの声聞く時ぞ暮は悲しき

 

     ↑

 

奥山にもみぢふみわけなく鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき(猿丸太夫、歌番五) 

 

 

 

六番 おにぎりの 中位焼餅

 

おにぎりの並べる棚に置く(ふだ)の赤きを見れば夜ぞふけにける

 

     ↑

 

かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける(中納言家持、歌番六)

 

 

 

七番 嬶の腹 安倍川黄呂

 

(かか)の腹耳当て聴けばかすかなる身動くやや児出でし月かも

 

     ↑

 

天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも(安倍仲麻呂、歌番七)

 

 

 

八番 わが家は 三味線奉仕

 

わが家は都の馬も鹿も棲む世に姥捨てと人はいうなり

 

     ↑

 

わが(いほ)は都のたつみしかぞすむ世に姥捨てと人はいふなり(喜撰法師、歌番八)

 

 

 

九番 貝の色は 御裾大味

 

貝の色はうつりにけりな味けなく御身よがりのかさねせしまに

 

     ↑

 

花の色はうつりにけりないたずらにわが身よにふる眺めせしまに(小野小町、歌番九)

 

 

 

一〇番 こりゃおぬし 銭○

 

こりゃおぬし抱くも帰るも勝手よな剥ぐもはがぬも勝手なりけり

 

     ↑

 

これやこの行くも帰るもわかれては知るも知らぬもあふさかの関(蝉丸、歌番一〇)

 

 

 

 

一一番 酒の腹 左の字紅麿

 

酒の腹八分ン目にて舟をこぎ酌に小突かれあわて飲み干す

 

     ↑

 

わたの原八十島かけてこぎいでぬと人には告げよあまのつり舟(参議篁、歌番一一)

 

 

 

一二番 尻つ風 小僧へのへの

 

尻つ風臭きかよい路閉じこめよ乙女の姿離れ行くまで

 

     ↑

 

天つ風雲のかよひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ(僧正遍昭、歌番一二)

 

 

 

一三番 筑波嶺は 老成院

 

筑波嶺は尻突ンのめり皆の衆後背(うら)は鬼門ぞ富士とちがうに

 

     ↑

 

筑波嶺の嶺よりおつるみなの川こひぞつもりて淵となりぬる(陽成院、歌番一三)

 

 

 

 

一四番 身の奥の 河原座乞食

 

身の奥のくノ一どころ()が責めん乱れてかなし我を忘れて

 

     ↑

 

みちのくのしのぶもちずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに(河原左大臣、歌番一四)

 

 

 

一五番 君ゆえに 孝行天女

 

君ゆえに春売りそめし寒空にわれ泣きぬれて雪にまろびつ

 

     ↑

 

君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪はふりつつ(光孝天皇、歌番一五)

 

 

 

一六番 大江山 中納言芋平

 

大江山わが山の神(つの)折れてなだめ聞かさば今戻り来む

 

     ↑

 

立ちわかれいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かばいま帰り来む(中納言行平、歌番一六)

 

 

 

一七番 つれなしや 有金無平阿呆

 

つれなしや(かみ)へ行けども酒匂(さかわ)(がわ)わく左に水を差すとは

 

     ↑

 

ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは(在原業平朝臣、歌番一七)

 

 

 

一八番 やわ肌の 空腹行倒尼

 

やわ肌のにこ毛まさぐり寄する指よ(なさけ)かよひ路とくとよく見や

 

     ↑

 

すみの江の岸に寄る波よるさへや夢のかよひ路人めよくらむ(藤原敏行朝臣、歌番一八)

 

 

 

一九番 嬶どのの いく世

 

(かか)どのの短き脚のふくらはぎあきもせで揉み今際(いまわ)

 

     ↑

 

難波潟みじかき芦のふしのまもあはでこの世をすぐしてよとや(伊勢、歌番一九)

 

 

 

二〇番 詫びもせず 元鬼大王

 

詫びもせず三たび(つま)替え罪つくり贅尽くしてあかんべえとは

 

     ↑

 

わびぬればいまはたおなじ難波なるみをつくしてもあはむとぞ思ふ(元良親王、歌番二〇)

 

 

 

二一番 いま死ぬと 悪性法師

 

いま死ぬと叫びつづけて七たびの喜悦の波へなお吠えいずるかな

 

     ↑

 

いま来むといひしばかりに長月の有明の月を待ちいでつるかな(素性法師、歌番二一)

 

 

 

二二番 書くからに 蚊家刺成

 

書くからに筆の逢瀬を知らいでかむべ恋の字はまたにこころす

 

*本来なら旧漢字「戀」を使うべきだが、ここは略式とした。

 

     ↑

 

吹くからに秋の草木のしおるればむべ山風を嵐といふらむ(文屋康秀、歌番二二)

 

 

 

二三番 月のもの 芋十三里

 

月のもの見ずの月こそかなしけれわが身ふたつになるぞ物憂し

 

     ↑

 

月みればちぢに物こそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど(大江千里、歌番二三)

 

 

 

二四番 いざ床へ 姦家

 

入床や抜き身参上失礼さんモミジの谷とは神知らぬだに

 

     ↑

 

このたびはぬさもどりあへず手向山もみぢのにしき神のまにまに(菅家、歌番二四)

 

 

 

二五番 名の知れる 三升左大臣

 

名の知れる大阪新地のさね狩りに顔知られても阿呆また来よる

 

     ↑

 

名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られて来るよしもがな(三条右大臣、歌番二五)

 

 

 

二六番 小町山 鹿鳴公

 

小町山もみじ散り果て九十九(つくも)(がみ)いまひとたびの情け待たなむ

 

     ↑

 

小倉山峰のもみぢは心あらばいまひとたびの御幸待たなむ(貞信公、歌番二六)

 

 

 

二七番 樽が腹 打原狸介

 

樽が腹抜きて流るる酒の滝乙味(おつみ)とくとく嬉しかるらん

 

     ↑

 

みかの腹わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ(藤原兼輔、歌番二十七)

 

 

 

二八番 山姥は 源行方不明

 

山姥(やまんば)は夏にぞ(やる)()涸れにける指と谷地めが春たわけすぎ

 

     ↑

 

山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば(源宗于朝臣、歌番二八)

 

 

 

二九番 すきあらば 河内大白痴

 

すきあらば折らば折りなん初穂花今宵かぎりの花びら残して

 

     ↑

 

心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花(凡河内躬恒、歌番二九)

 

 

 

三〇番 明け暮れに 身分只乗

 

明け暮れにもつれ泣く声耳ざわり四畳と半の結界(かべ)ぞうらめし

 

     ↑

 

ありあけのつれなく見えし別れよりあかつきばかりうきものはなし(壬生忠岑、歌番三〇)

 

 

 

三一番 朝ぼらけ 上坂転麿

 

朝ぼらけあかつきの顔見るまでは吉原遊廓(さと)に舞える白雪

 

     ↑

 

朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪(坂上是則、歌番三一)

 

 

 

三二番 おすめすの 色道列強

 

(おす)(めす)の情けかけたる四十八手(しがらみ)は白髪生えても消せぬ(さが)なり

 

     ↑

 

山川に風のかけたるしがらみはながれもあへぬもみぢなりけり(春道列樹、歌番三二)

 

 

 

三三番 ひねもすの 君幽々

 

ひねもすの光のどけき春の日に居眠り姫のくちびるや()

 

     ↑

 

ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ(紀友則、歌番三三)

 

 

 

三四番 誰をかも 桃園撫風

 

誰をかも知らずの夜叉(やしゃ)も高砂でいまや家内と呼ぶ人となり

 

     ↑

 

誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに(藤原興風、歌番三四)

 

 

 

三五番 飲む人の 和気面持

 

飲む人の心も知らずふる酒は汲みつくしてや香りだになし

 

     ↑

 

人はいさ心もしらずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける(紀貫之、歌番三五)

 

 

 

三六番 夏すだれ 太腹藪医者

 

夏すだれまだ昼ながら南無閉じて内のいずこぞ成仏の経

 

     ↑

 

夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ(清原深養父、歌番三六)

 

 

 

三七番 白肌に 筆矢友成

 

白肌に柔毛(にこげ)逆立ちいたましやつらぬきとおし玉ぞ散りける

 

     ↑

 

白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける(紀貫之、歌番三七)

 

 

 

三八番 忘れまじ 右折近道

 

忘れまじ(えにし)に結びし誓いだに三下り半の無念なるかな

 

     ↑

 

忘らるる身をば思はずちかひてし人のいのちの惜しくもあるかな(右近、歌番三八)

 

 

 

三九番 浅知恵の 参議院賊

 

浅知恵のたけたる猿のさまに似てあまりてなぜか(ひと)の憎らし

 

     ↑

 

浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき(参議等、歌番三九)

 

 

 

四〇番 おさえれど 不平酒盛

 

おさえれど色にじむなりわが筆はあわれに思うと人ぞ知るまで

 

     ↑

 

しのぶれど色にいでにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで(平兼盛、歌番四〇)

 

 

 

四一番 世にありて 寄席只見

 

世にありてわが名はいまだ知らざれりたわけ阿呆の真似できもせず

 

     ↑

 

恋すてふわが名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひそめしか(壬生忠見、歌番三八)

 

 

四二番 美姫めがけ 薄笑助ひら

 

美姫めがけしゃにむに魔羅をしごきはておどろ波あびはかなしの夢

 

     ↑

 

ちぎりなきかたみに袖をしぼりつつ末の松山波こさじとは(清原元輔、歌番四二)

 

 

 

四三番 それ見ての 愚図厚顔

 

逸物(それ)見ての(のち)の心にくらぶれば昔は男思わざりけり

 

     ↑

 

逢ひ見ての後の心にくらぶれば昔は物を思はざりけり(藤原敦忠、歌番四十三)

 

 

 

四四番 あいまみえ 酎酔朝帰

 

あいまみえかの事たえてつれなくに主など死ねと恨みきわめり

 

     ↑

 

あふことのたえてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし(中納言朝忠、歌番四四)

 

 

 

四五番 あわれとも 半健康

 

あわれともいうべきほどに三指(ゆび)くりて身をいたずらに慰めるかな

 

     ↑

 

あはれともいふべき人は思はえで身のいたづらになりぬべきかな(謙徳公、歌番四五)

 

 

 

四六番 くノ一の 其好也

 

くノ一の()をあけひろげしてかじをとりいま七人目恋は移れり

 

*本来なら旧漢字「戀」を使うべきだが、ここは略式とした。

 

     ↑

 

由良の門をわたる舟人かぢをたえゆくへも知らぬ恋の道かな (曽根好忠、歌番四六)

 

 

 

四七番 七重八重 江戸弁奉仕

 

七重八重しげれるそそ毛にぎやかに人に見られてあな隠れけり

 

     ↑

 

八重むぐらしげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり(恵慶法師、歌番四七)

 

 

 

四八番 声あえぎ 水元清澄

 

声あえぎ腹うつ波のおのが身を責めるはものをいわぬ殿形

 

     ↑

 

風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな(源重之、歌番四八)

 

 

 

四九番 三日月夜 大腹尻乗

 

三日月夜火つけ男に身は燃えて昼なお残すうわの空なり

 

     ↑

 

みかさもり衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつ物をこそ思へ(大中臣能宣、歌番四九)

 

 

 

五〇番 きみがため 広原雁高

 

きみがため惜しくはなしやこのいのち子ぶくろめがけ生まれ変われば

 

     ↑

 

君がため惜しからざりしいのちさへ長くもがなと思ひけるかな(藤原義孝、歌番五〇)

 

 

 

五一番 書きたらぬ 富士見麿朝臣

 

書きたらぬ思いのさても懸想文しらじらしきや文字の恥ずかし

 

     ↑

 

かくとだにえやはいぶきのさしも草さしもしらじなもゆる思ひを(藤原実方朝臣、歌番五一)

 

 

 

五二番 あけぬれば 吉原近道朝臣

 

あけぬれば裸にさると知りながらなおうらめしき朝帰りかな

 

     ↑

 

あけぬれば暮るるものとは知りながらなほうらめしき朝ぼらけかな(藤原道信朝臣、歌番五二)

 

 

 

五三番 嘆きつつ 左党道迷母

 

嘆きつつひとり息子の居ぬ夜はうわばみ生みし罪なりと知る

 

     ↑

 

嘆きつつひとりぬる夜のあくるまはいかに久しきものとかは知る(右大将道綱母、歌番五三)

 

 

 

五四番 恥ずかしな 混浴三助母

 

恥ずかしな三つ児の魂今宵なお三寸下にかこわれすさぶ

 

     ↑

 

忘れじのゆくすゑまではかたければ今日をかぎりのいのちともがな(儀同三司母、歌番五四)

 

 

 

五五番 共に寝は 大言壮語公

 

共に寝は絶えて久しくなりぬれど質に入れたる妻や流さじ

 

     ↑

 

滝の音はたえて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ(大納言公任、歌番五五)

 

 

 

五六番 あら不思議 和泉酒吹

 

あら不思議この一杯でおつもりと誓う夜ごしの酒のうまさよ

 

     ↑

 

あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびのあふこともがな(和泉式部、歌番五六)

 

 

 

五七番 めぐり会い 紫色盲

 

めぐり会い見ても互いに知らぬふり質屋通いの野暮な月夜な

 

     ↑

 

めぐりあひて見しやそれともわかぬまに雲がくれにし夜半の月かな(紫式部、歌番五七)

 

 

 

五八番 ひなのどか 二之次三位

 

ひなのどか田舎娘の腹吹けば若草肥やす下肥(こやし)あるらし

 

     ↑

 

ありま山ゐなかの笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする(大弐三位、歌番五八)

 

 

 

五九番 ひとり閨 赤染不浄門

 

ひとり(ねや)寝つかれもせずさ夜ふけて月の去りたる始末ぞ狂わし

  

     ↑

 

やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月をみしかは(赤染衛門、歌番五九)

 

 

 

六〇番 連れ茶屋で 小指内緒

 

茶屋にいていくいくの声近ければまだ見えもせで屏風に身を寄す

 

     ↑

 

大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天の橋立(小式部内侍、歌番六〇)

 

 

 

六一番 いも食いて 威勢大好

 

いも食いて尾鳴良(おなら)(がく)の八重(かなで)いま九つめ匂いぬるかな

 

     

 

いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな(伊勢大輔、歌番六一)

 

 

 

六二番 ひねもすに 静笑納言

 

終日(ひねもす)にいとしの文をつづれども夜は逢わせぬの親ぞうらめし

 

     

 

夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ(清少納言、歌番六二)

 

 

 

六三番 いまはただ 左褄裾道守

 

いまはただ息も絶えなんよがりごと人でなしとは聞く耳もたぬ

 

     

 

いまはただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな(左京太夫道雅、歌番六三)

 

 

 

六四番 朝ぼらけ 的中納言勝馬

 

朝ぼらけおやじ垂れたるまなこだにあらわに立てるご子息不孝

 

     

 

朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木(権中納言定頼、歌番六四)

 

 

 

六五番 うまし香の 臭神

 

うまし香の裾の下だにあるものを恋は憎しの臭きひめ居て

 

     

 

うらみわびほさぬ袖だにあるものを恋にくちなむ名こそおしけれ(相模、歌番六五)

 

 

 

六六番 ものいわば 大嘘付行末 

 

ものいわばくちびる寒し二枚舌閻魔のほかに知る人もなし

 

     

 

もろともにあはれと思へ山桜花よりほかにしる人もなし(前大僧正行尊、歌番六六)

 

 

 

六七番 幸当ての 素貧内儀

 

幸当ての夢をはこびし富くじはこりなくはずれまたにくり越し

 

     

 

春の夜のゆめばかりなる手枕にかひなくたたむ名こそをしけれ(周防内侍、歌番六七)

 

 

 

六八番 心にも 下三寸淫

 

心にもあらでの世辞にまどわされ共寝の主はまたも変れり

 

     

 

心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな(三条院、歌番六八)

 

 

 

六九番 ぴいひゃらり 巨陰法師

 

ぴいひゃらり二股山のにぎわいは入るや入らずの祭りなるらん

 

     

 

あらしふく御室の山のもみぢばは竜田の川の錦なりけり(能因法師、歌番六九)

 

 

 

七〇番 銭なくて 南無銭法師

 

銭はなし宿もとれずにさまよえばいずこもおなじ秋の野っ原

 

     

 

さびしさに宿をたちいでてながむればいづこもおなじ秋の夕ぐれ(良暹法師、歌番七〇)

 

 

 

七一番 妻去れば 大納屋鶴亀

 

妻去ればかねての後家が押し来たりわがあばら家に春風ぞ吹く

 

     

 

夕されば門田の稲葉おとづれて芦のまろやに秋風ぞ吹く(大納言経信、歌番七一)

 

 

 

七二番 音にきく 格子内姫気障

 

音にきくおいでの里のうば姫のたくした裾の濡れぬさみしさ

 

     

 

音にきくたかしの浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ(祐子内親王家紀伊、歌番七二)

 

 

 

七三番 雁高の 咲花宙双房

 

雁高のへのこの先で押し開くひだの幽かにうごめくぞよし

 

     

 

高砂のをのへの桜さきにけりとやまのかすみたたずもあらなむ(前中納言匡房、歌番七三)

 

 

 

七四番 昇れずと 皆様年寄朝方

 

のぼれずとなげきて迫る山の神はげしの峰はとうに下りたに

 

     

 

憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを(源俊頼朝臣、歌番七四)

 

 

 

七五番 はげみては 膨腹元締

 

はげみてはいのちの宿り()いたるにあわれ今年の秋も実らず

 

     

 

ちぎりおきしさせもが露をいのちにてあはれ今年の秋もいぬめり(藤原基俊、歌番七五)

 

 

 

七六番 かわしもに 呆気寺入道淡白大尽

 

かわしもにこぎ出てみればとめどなく泉にまがう泡の白波

 

     

 

わたの原こぎいでてみればひさかたの雲ゐにまがふ沖つ白波(法性寺入道前関白太政大臣、歌番七六)

 

 

 

七七番 腰はやみ 瘡毒医師

 

腰をやみ次へとせかせる品川の回し女郎が毒づきぞあわれ

 

     

 

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ(崇徳院、歌番七七)

 

 

 

七八番 淡路島 皆呑干兼〼

 

淡路屋へかよう千鳥の足ふるえ寝酒にほしや須磨のあわもり

 

     

 

淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝ざめぬ須磨の関守(源兼昌、歌番七八)

 

 

 

七九番 商いの 打原狐介

 

商いの上手の革の財布より洩れ見る札のかずのさわがし

 

     ↑

 

秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月のかげのさやけさ(藤原顕輔、歌番七十九)

 

 

 

八〇番 憎からぬ 退屈門番掘建立

 

憎からぬ心もしらず仇後家は色気かくして挨拶もせず

 

     

 

長からむ心もしらず黒髪のみだれてけさは物をこそ思へ(待賢門院堀川、歌番八〇)

 

 

 

八一番 法悦の 劫突大寺左巻

 

法悦の洩れくる方をながむれば南無極楽の死に体残れる

 

     

 

ほととぎす鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる(後徳大寺左大臣、歌番八一)

 

 

 

八二番 成り生りては 引導法引

 

生り成りてやがては愉悦になるものを痛きに堪えよ蕾なりせば

 

     

 

思ひわびさてもいのちはあるものを憂きにたへぬは涙なりけり(道因法師、歌番八二)

 

 

 

八三番 久方に 後宮交代年成

 

久方に奥の細道たずねればせせらぎはなく速水(はやみ)あふるる

 

     

 

世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる(皇太后宮太夫俊成、歌番八三)

 

 

 

八四番 古きより 股具合平助

 

古きより使いしものは神さびて見る形もなく今はもののけ

 

     

 

ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき(藤原清輔朝臣、歌番八四)

 

 

 

八五番 夜もすがら 一寸間法悦

 

夜もすがら情けやりとり明けやらず(ねや)に居眠るひまさえあらず

 

     

 

夜もすがら物思ふころは明けやらず閨のひまさへつれなかりけり(俊恵法師、歌番八五)

 

 

 

八六番 艶もなく 三業尼法師

 

艶もなく月は消え失せ物憂きはおうば顔なるわが(よわい)かな

 

     

 

なげけとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな(西行法師、歌番八六)

 

 

 

八七番 ひといくさ 百戦錬士

 

ひといくさ三つの巴で交りおえ湯気たちのぼる冬の夕ぐれ

 

     

 

村雨の露もまだひぬまきの葉に露たちのぼる秋の夕ぐれ(寂蓮法師、歌番八七)

 

 

 

八八番 江戸湊 降下陰門窃盗

 

江戸湊つるむ千鳥のひとよゆえ芝の浦にぞこいのすむらし

 

     

 

難波江の芦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋わたるべき(皇嘉門院別当、歌番八八)

 

 

 

八九番 へそのごま 色情舞姫

 

へそのごま堪えなば堪えよくすぶれる三寸下に火の手あがれど

 

     

 

玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする(式子内親王、歌番八九)

 

 

 

九〇番 見よやかし 陰阜門淫大好

 

見よやかし女護の島かげ海女ひらく濡れにぞぬれしその肉ひだを

 

     

 

見せばやな雄島のあまの袖だにもぬれにぞぬれし色はかはらず(殷阜門院大輔、歌番九〇)

 

 

 

九一番 肩させと 京極楽河原大臣

 

肩させと鳴くや霜夜のこおろぎにむしろまといて河原にぞ寝ん

 

     

 

きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む(藤原良経、歌番九一)

 

 

 

九二番 わが裾は 二枚舌狸公

 

わが裾はひとには見せず奥方に開くためにぞかたくなにあり

 

     

 

わが袖は潮ひにみえぬ沖の石の人こそしらねかわくまもなし(二条院讃岐、歌番九二)

 

 

 

九三番 世の中は 鎌倉左党大仏

 

世の中の酒はたるみてなげかわし右大臣なるわが名もつらし

 

     

 

世の中はつねにもがもななぎさこぐあまの小舟のつなでかなしも(源実朝、歌番九三)

 

 

 

九四番 かたりやの 散財不経済

 

詐欺師(かたりや)のおとし話に熱くなりふところ抜かれ心寒ざむ

 

     

 

み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣うつなり(参議雅経、歌番九四)

 

 

 

九五番 煩悩に 相対極磁石

 

老いてなお浮世の色気捨てがたくわれたつ跡に墨染の袖

 

     

 

おほけなくうき世の民におほふかなわがたつ杣に墨染の袖(前大僧正慈円、歌番九五)

 

 

 

九六番 夢さそう 首原金詰

 

夢さそう競いの馬場の花ならで散りゆくものはわが身なりけり

 

     ↑

 

花さそふ嵐の庭の雪ならで降りゆくものはわが身なりけり(藤原公経、歌番九十六)

 

 

 

九七番 涙する 名無家無権兵衛

 

涙する人もなき世のかたすみで(つい)焼く煙に身をこがしつつ

 

     

 

来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ(権中納言定家、歌番九七)

 

 

 

九八番 わたのはら 十三里家柄

 

(わた)のはらおならのあらし鳴りやむは芋がゆの実の食い尽きるとき

 

     

 

風そよぐならの小川の夕ぐれはみそぎぞ夏のしるしなりける(従二位家隆、歌番九八)

 

 

 

九九番 人死して 卒塔婆院

 

人死して明日はわが身とあっけなく捨て去りし世をうらむでもなし

 

     

 

人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は(後鳥羽院、歌番九九)

 

 

 

一〇〇番 六尺を 佐渡殉徳印

 

六尺を干したる庭の柴垣に昔絡めししがらみぞ見る

 

     

 

ももしきや古き軒ばのしのぶにもなほあまりある昔なりけり(順徳院、歌番一〇〇)