花酒爺の平成記念日漫遊狂歌


 

 

平成二十四年時点で制定済みの祝日、記念日、暦日などを主題とした狂歌集です。類題の形はとっていますが、「記念日」のカテゴリーのもと、色々なテーマが雑居することになりました。結果、三百六十五日すべて、一日も休まず詠み上げてあります。

 

記念日等はおおむね次の資料から採りました。ここでは記念日の由来等を解説するのが目的ではないので、必要に応じ資料を参照していただきましょう。

 

『記念日・祝日の事典』加藤迪男編、東京道出版(主資料)

 

『記念日の本』生活情報研究会著、ごま書房

 

『記念日ハンドブック・2001年版』日本記念日協会編著、日本経済新聞社  

 

 ネット情報「今日は何の日」カレンダー

 

 

一月

 

一月一日 元日

初春や尾頭付とはおめでたい食うは目の出ぬおらが鯛焼

*目の出ぬ=ぱっとしない様。ほかに、目が飛び出るほど高くはない鯛、の意味も含む。

 

一月二日 姫始めをせがんだら老妻いわく

 平爺そう来るだろうと思うてた姥開帳(おんばびらき)に日はまだ高や

 

一月三日 ひとみの日

キャバクラの夜叉姫そばに(はべ)り来て片目つぶらな挨拶やこわ

 

 一月四日 石の日

石が浮き()の葉が沈む世の中ぞそれ見たことか酒が欲しかろ

*言葉遊びにいう「酒欲し付合」の構成をとる。不条理な内容の上句(五七五)を受け、下句(七七)は定番句になっていて、歌容をストンと一挙に落とす効果がある。

 

 一月五日 いちごの日

若草の土手で野いちご摘む乙女転びなさんなだまされるなよ

*「土手で野いちご摘む」とは、暗に少女の自慰を指す。転ぶ=売春行為などで堕落する、の隠し意味をもつ。「若草」「土手」「乙女」の語はそれぞれ裏意味での縁語関係を結び歌意に面白味を添えている。

 

一月六日 色の日

荷風翁に

達人は左手指でいろは描きめしべ開かせ死なす技あり

*小説家の永井荷風(18791959)は女体に接するとき、左手使いの前戯で名人芸を発揮したという。ただし、ここでいう「色の日」とは、色彩関係の仕事に従事する人たちの記念日。

 

一月七日 七草()

セリ ナズナ ゴギョウ ハコベラ ホトケノザ スズナ スズシロ みんなシチグサ

*この手の作風を「名寄せ」といい、秀句技法により滑稽に締めくくる。

 

 一月八日 「平成」改元の日

平らには成らんぞ亡者はびこりて世も紀も末よ弊政の国

*「改元狂歌」と呼ばれているもので、詠中に元号を織り込む言葉遊び「折込み」の体裁をとる。たとえば幕末の落首に、

      安政を下から読めば異船にて残る一つはアメリカの国

また明治の新聞投稿に、

   上からは明治だなどと言うけれど治まる明と下からは読む

 なお同類の「明治改元の日(九月八日)」「大正改元の日(七月三十日)」も本集に詠

  み収めてある。

 

一月九日 とんちの日

一休さんへ

(かつ)入りのとんちんかんな問答に禅師ならぬ身さて(ひと)(やす)

*この日の語呂「一九」=一休、人名折込み。一休宗純(13941481)は室町中期の臨済宗の僧。「頓智の神様」として知られ、数々の逸話を残している。

 

一月十日 110番の日

モシ大変知らせられたり知らせたりつないでちょうだい110番

*標語スタイルの一首。太平洋戦の国民歌謡「隣組」(岡本一平詞、昭和十五年で、

 ♪とんとんとんからりと隣組/格子を開ければ顔なじみ/回してちょうだい回覧板/知らせられたり知らせたり と、その一部を借辞した捩り詠み。

 

 一月十一日 鏡開き

甘党さん汁粉の餅は持ってゆけ左党は樽の鏡抜こうぜ

*カガミといっても甘党向きの鏡餅、上戸向きの鏡樽の両方があるわけだ。この日、家庭では鏡餅を砕いて汁粉にして食べ、酒好きは鏡樽を抜いて健康を祝す。

 

一月十二日 スキー記念日

その昔スキー天国ありしとかいまやゲレンデ雪が無く泣く

1911年のこの日、新潟県高田の陸軍歩兵連隊が外人スキーヤーに指導を受けたことに由来の記念日。地球温暖化で全国各地のスキー場に雪がないという異変が起き閑古鳥が鳴く事態に。

 

一月十三日 たばこの日

肺がんで死ぬ苦しむはご自由も(けむ)とおならはあたりかまわず

*異質の「似たもの同士」を加えることで面白みが高揚する。

 

一月十四日 警視庁創設記念日

 

オイコラの昔忍ばす桜田門権高警備に民はアイツラ

*桜田門=警視庁の所在地東京都千代田区桜田門をさすが、転じて警視庁の代名詞に。「オイコラ」と「アイツラ」で権力側と被圧者との敵対言葉を象徴させた。 

 

一月十五日 アダルトの日

フリチンじゃみっともないよパンツはき小さくなって銭湯(おゆ)にお入り

*アダルト反対派の教育パパやママを茶化す。

 

 一月十六日 閻魔参り

閻魔さえ舌切る仕事休む日に人世(ひとよ)の舌絶えずおしゃべり

*この日は地獄の釜の蓋が開いて鬼や亡者まで休む「閻魔(さい)(じつ)」。

 

一月十七日 おむすびの日

おにぎりはもとより好きなお役人天下りして甘露もゴチよ

*おにぎり=収賄の暗喩。この記念日、1996年の阪神淡路大震災のときに援助物資の一部におにぎりが届けられたのに由来。

 

一月十八日 振袖火事の日

愛染(あいぞめ)の炎さかりてめらめらと火の見の鐘も消せぬ火ぞ

*伝説上悲恋の女主人は八百屋お七(166683)。この歌を構成する愛染、炎、めらめら、火の見の鐘、消せぬ、魔の火は、すべて縁語関係にある。

 

一月十九日 のど自慢の日

鐘一つ音痴と(あか)されうっぷんを晴らすカラオケいま盛りなり

 

一月二十日 二十日正月

女らはたすき外してほっとするやっとこ正月めでたくもなし

*二十日正月=女正月、骨正月とも。本正月の準備や後始末などで、女や奉公人らはこの日に遅れの正月を祝った。

 

一月二十一日 料理番組の日

シェフ料理レシピ珍味はござらぬかグルメも煮ろやなあコックさん

*グルメ用語のフランス語に戸惑う昔親父のトンチンカンな物言いを描いてみた。

 

一月二十二日 カレーライスの日

おふくろの愛のスパイスよく効いて食い飽きせぬはライスカレーぞ

*筆生幼少の頃の東京下町では、もっぱら「ライスカレー」で通った。十銭食堂や国民食堂の貼り紙もライスカレー。1982年のこの日、学校給食で「全国一斉献立カレーライスの日」に。

 

一月二十三日 ワンツースリーの日

一升で二日酔いだと虚仮(こけ)かすおれが浴びかた三もたせり

*左党の大酒自慢に仮借。ワンツースリーの日=さしたる由来はなく単なる語呂合わせで成る。

 

一月二十四日 法律扶助の日

弁護士め()LAW(ロー)い法の(たす)けかりヘボ裁判で罪を助っ人

1952年に制定。「徒LAWい法」とは、犯罪に甘くタガの緩んだ法曹に対し弄辞法を用いた表現。それを犯罪被害者の視点で詠んでみた。

 

一月二十五日 法然上人忌

天地(あめつち)ゆるがす極楽説法も無の徒には犬の遠吠え

*法然(11331212)は浄土宗の開祖。これにひっかけ「極楽」は極楽浄土の意味。

 

一月二十六日 文化財防火デー

国宝が焼けよが煮えよがわしゃ知らん落とした百円よほど気になる

1949年、奈良法隆寺の金堂炎上にちなんだ記念日。無産階級にとって文化財など官製の絵空事でしかない、との無関心を表明。

 

一月二十七日 国旗制定記念日

日の丸は千代にやたらにかど立てて丸い世の中永久(とわ)治め

*明治三年のこの日、明治政府の太政官布告をもとに「日の丸」が国旗として制定された。以来、絶えることない国旗論争の揚げ足を取ってみた。

 

一月二十八日 宇宙からの警告の日

地球人抹殺シーンも屁のカッパ テレビ見るおれ宇宙人かも

1986年のこの日、米スペースシャトルのチャレンジャー号が打ち上げ直後に大爆発を起こした。これを作家の大江健三郎が著『治療塔』において「宇宙意思からの警告」と他愛のない批評をしたのに始まる。狂歌ではこの主張を茶化しの目でとらえてみた。

 

一月二十九日 人口調査記念日

こちとらは男一匹人別に入れるかどうだ木っ端役人

    *人称をあえて「匹」とし、戸籍入りに引っ掛万事規範で物事処理するお役所仕事

    をからかい。

 

一月三十日 三分間電話の日

お清めが済みもせぬうちリリン鳴り「墓地はいかが」に「くたばりやがれ」

*葬儀から帰宅した直後での実体験である。昭和末期、この手の電話勧誘が非常に

 多く巷のつまはじきにあった。

 

一月三十一日 生命保険の日

売る前は百万遍の説法でいざ支払いは知らぬが仏

*保険金不払い等たび重なる企業犯罪の仕掛け集団、保険屋に対する大方のイメージはこんなところであろう。

 

二月

二月一日 においの日

酔太郎は見知らぬ町の飲み屋街一鼻ぴくりで探り当てなん

*筆者、正式戯称を「酔太郎冠者花酒爺」という。これは一種の特技といえよう。

 

二月二日 夫婦の日

縁結び大社で拍手ぽんと打ち細く長くの早や五十年

 *筆者自身の述懐詠。毒にも薬にもならないNHK風詠み口も、雑詠集ならではの持ち味となる。

 

  二月三日 節分

 鬼は内福は外へと叫んだら福引ラッキー自転車当り

 *くじ運のない男の大当たりを茶化してみた。 

 

二月四日 西の日

南無三よ抹香臭い記念日じゃ逆立ち無用シニたくはなし

 

二月五日 長崎二十六聖人殉教の日

異教徒をナンマンダブとはりつけてお次は聖人あら忙しや

*人物事典などでは「日本二十六聖人」が正式名であるように記述してある。この詠、歴史上有名人物への宗教的史観の矛盾した様変りを皮肉ってみた。

 

二月六日 海苔の日

飯によし寿司にまたよし酒肴(さかな)よしアタシが上は悪のりのノリ

*文彩(修辞)技法にいう頓降法を用いた。下句()で上句(五七五)の流れをせき

 止めストンと貶めて、表現の摩擦落差を表した。

 

二月七日 フナの日

見栄(みえ)(きん)(かた)良さなら銀鮒で釣り味はへら旨さ源五郎(げんごろ)

*連想列挙法という歌体をとっている。

 

二月八日 針供養

小町針に

あなかしこ美顔(はなかんばせ)で人の世のうるさき口をチクと縫わばや

*小野小町穴無し伝説を材に。針供養は伝承の歳時行事。

 

二月九日 河豚の日/福の日

ふぐ提灯毒気抜かれた風体のふくれっ面がまた福々し

*「ふの字」尽くしの縁起詠みである。

 

二月十日 ふとんの日

人生で三万日も世話になるおふっくらさんがゆめのまどろみ 

 

二月十一日 建国記念日

千早(ちはや)ぶる神武即位()(かた)は百万日と数えめでた

*国紀二千六百余年は大雑把に数えて百万日に相当する。「千早ぶる」は神にかかる枕詞(まくらことば)雅歌で詠むと味が出る。なお往時はこの日を「紀元節」と称した。

 

二月十二日 鏡台の日〔私設〕

目鼻立ちずれたお顔の鏡をば割れよと小突く()(かめ)いじらし

*私設記念日。二月十二日は212のシンメトリー、すなわち鏡→鏡台としたこじ

 つけである。

 

二月十三日 「新風営法」施行の日

当局はアナログ思考に尻を向けエロトピアへの道は狭めり

昭和六十年二月十三日に施行の「風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法

 律」という正式名の法律。それまで野放し状態にあった性にかかわる営業に対し

 届出を義務付けるなど、いくつかの規制を課したものである。

 

二月十四日 チョコレートの日

バンカラなオタク親父はこの日によ猪口と洒落たよアカンベエださ

*この日、世間ではバレンタインデーとか義理チョコを贈る習慣がある。狂歌では流行語と俗語を用いて抵抗を盛り上げた。

 

二月十五日 兼好忌

兼好は偉い法師もダサい人俗の楽しみ叩くつれづれ

*兼好法師が書いた随筆『徒然草(つれづれぐさ)』は道師ぶり持論の押し付けが目立つ。

 

二月十六日 西行忌

この坊主西へ西へと往きながら七十三年死んだことなし

*西へ往く=極楽往生する。西行(11181190)は鎌倉時代の遊行僧で歌人。

 

 二月十七日 安吾忌

逆説のアンコを頭に詰めすぎて堕落はらくだと白痴ぶりせり

*坂口安吾(190655)は「インテリ与太者」の異名を持つ戦後派作家。有名な『堕

 落論』『白痴』などの著作がある。「らくだ」は堕落の倒語。

 

二月十八日 嫌煙運動の日

肺がんで死ぬの生きるの勝手だが吸う吸わないはケンエンと知れ

*ケンエン=「嫌煙」と「犬猿」の音通洒落。1968年、嫌煙団体が制定。

 

二月十九日 プロレスの日

金玉が縮みあがろう興奮にファンもタッグで八百長歓迎

 

二月二十日 尿もれ克服の日

がまんした弁天様がつい洩らす「アレ知らぬぞえ、こんな記念日」

*排尿障害を克服した女性らが定めた記念日。弁天様=ご婦人隠しどころの隠語。

 

二月二十一日 東京初の日刊新聞創刊日

瓦版その名を変えて新聞でペーペラ育つ野次馬根性

*明治五年のこの日、『東京日日新聞』が初の日刊紙として創刊なった。当時の新聞雑誌記事の大半は、瓦版を真似た読者の興味本位のもので飾られた。

 

二月二十二日 猫の日

人の恋四季がないとはうらやまし春まっさかりニャンとかしまし

*まっさかり=さかりのついている最中。二の字が三つ重なりニャンニャンニャンなのだそうだ。

 

二月二十三日 富士山の日

われ()の子(ふんどし)を締めあぐらかき()みなん富岳(ふがく)けの神酒(みき) 

 

二月二十四日 南国忌〔直木三十五〕

無念なり書いては破る原稿の屑籠満たすナオキストたち

*作家の直木三十五(さんじゅうご)(18911934)は冠称の文学賞「直木賞」で知られている。ナオキスト=直木ファンで直木賞に挑む文学青年群の異名。

 

二月二十五日 夕刊紙の日

朝・毎・読 新聞離れのしわ寄せぞ質量ともにペラのペーパー

 

二月二十六日 血液銀行開業記念日

「融血」をお願いしますハイ承知人の助けに血迷うなかれ

 

二月二十七日 新撰組の日

「幕末のゴロツキ団」との声聞けや近藤芹沢土方仙造

*近藤芹沢土方仙造=「今度のセリフ承知せんぞ」の音通洒落。

 

二月二十八日 バカヤローの日

バカヤロー曲学阿世の不逞(ふてい)者!戯歌師(ざれし)ごときに(あざけ)らるとは

1953年のこの日、衆議院予算委員会で吉田首相が野党に「バカヤロー」の暴言を吐いたのにちなんで。

 

二月二十九日 閏日

あげましょう四年に一日ボーナスもボク欲しいのよグリコのオマケ

*グリコの実名入り腰折れCM詠に仕立ててみた。

 

三月

日 映画ファン感謝デー

魅了せるキャッチコピーに誘われて観たあとがっくり活動写真

*映画の前身は「活動写真」の呼称。「あの二人の喧嘩はまるで活動写真だ」とい

 うように、安っぽい見物の代名詞として通用した。

 

三月二日 ミニの日

助平の視姦を誘うスカートのセンチずり上げ目の色変える

 

三月三日 雛祭

H総理夫妻に

テレビ(づら)揃えて総理ご夫妻はびな女びなのおめでたいバカ

 

三月四日 円の日

円ならば三月十四日が記念日と思い込んだは早とちりかい

*円周率3.14に引っ掛けてみた。記念日は明治三年三月四日に円を通貨単位としたもの。

 

三月五日 ミスコンの日

女狐の色気に負けて手出しせる審査の主のあだなミス困

*この類の不祥事、いつも週刊誌を賑わせている。

 

三月六日 菊池寛忌

文芸のカンどころよし菊池どの春の文士が秋に社の主

*菊池寛(18881948)は作家・劇作家で大正十二年に文芸春秋社を創設。これらの断片を一首に詠み込んでみた。

 

三月七日 消防記念日

水かける火消しのつとめ打ちやりて恋の炎をあおり燃やさん

1948年のこの日、消防法施行に。

 

三月八日 みつばちの日

夕まぎれたかり虫ども羽伸ばし霞ヶ関を抜けて飛び散る

*霞ヶ関諸官庁の役人らをミツバチの大群に見立ておちょくった擬物化詠み。

 

三月九日 ありがとうの日

われこそはお役人様下に()ろ親方日の丸ありがとうさん

*語呂合わせ転化による命名で、「サンキューの日」とも。

 

三月十日 東京大空襲の日

B公が面白がりて東京を廃墟の町に変えし日忘れず

*昭和二十年のこの日、米空軍B29によるじゅうたん爆撃の結果、東京の大半が灰燼に帰した。ヤンキー連中は鼻歌を歌いながらバッファロー狩りでもする気分で焼夷弾を投下し続けたという。

 

三月十一日 パンダ発見の日

並のヒト野垂れ死んでも知らんふりパンダ崩御で(ぞめ)くマスコミ

 *1923年、中国奥地でフランス人宣教師がパンダを発見した。いくら珍獣だとて、最近のパンダ崇拝ぶりは異常だ。

 

三月十二日 サイフの日

財布など縁無き衆生の赤貧は生きゆく(すべ)スッカラカンノカン

 

三月十三日 サンドイッチデー

コンビニで売れ筋サンドもエブリデーなあかあちゃんよイッチ飽きたぜ

*三に挟まれた十()だからサンドイッチなんだそうな。

 

三月十四日 ホワイトデー

お返しをねだるチョコザイ小娘に真っ白頭ホワイなぜなぜ

 

三月十五日 靴の日

靴の中十円玉を二三枚入れてはくなら水虫によし

*スタイルを変えて実用向きな家庭歌に仕立て。銅貨の十円玉は水虫菌などの殺菌効果がある。昔から伝わる生活の知恵である。記念日は1932年、日本靴連盟が設けた。

 

三月十六日 国立公園指定記念日

(エテ)さわぎ狐狸(コリ)化け(オオカミ)吠えるともやはり野におけ自然公園

 

三月十七日 素数の日〔私設〕

働けど背中押しやる貧乏(びんぼ)神ああ割り切れないやりきれない

*この日の数三一七は素数で、一か自体以外の数では割り切れない。

 

三月十八日 精霊の日

訳ありの御霊(みたま)が宙にワープして善男善女を今日も惑わす

*大昔の柿本人麻呂、和泉式部、小野小町など伝説色濃い人物の忌日がこの日に集中していることから決まった記念日。

 

三月十九日 ミュージック・デー

ミューズらが色目つかいて舞いにけるホールに満ちたため息なまめく

*現在の有楽町マリオンは前身が日劇ビルで、その地下にストリップ兼用のバーレスクショーを見せる「日劇ミュージックホール」があった。

 

三月二十日 上野動物園開園記念日

ZOO住人十種詠

ウサギ(ウシ)ショウジョウラクダにしてくだサイ ワシや獅子(シシ)オオカミにごザルまいゾウ

*か弱いウサギをとりまくこわもての動物たち。古来の(ものの)名歌(なうた)という手法を使ってみた。

 

三月二十一日 弘法大師

万人が読めぬ筆跡(ふであと)ぶはこれ弘法の筆の誤り

 

三月二十二日 NHK放送記念日

    われ不払い視聴者なり

正直者バカ見るふざけた世の中でたった一つの意趣返しよな

 

三月二十三日 世界気象デー

予報屋さん気楽な稼業ときたもんだ当たり外れはお天気しだい

1961年、気象庁が世界気象機関発効十周年を記念して制定。

 

三月二十四日 ホスピタリティ・デー

薄情な舌噛み言葉のつれなさよ「思いやりの日」でよろしかろうに

1994年、日本ホスピタリティ協会が他人に対して思いやる心を表す実践日として設けたそうだ。「ホスピタリティ」の意味をすぐ理解できる日本人は少数派、命名は主張裏切るミスマッチといえよう。

 

三月二十五日 「見に来い」デー〔私設〕

花の春酒も狂歌もよっといでちょっくら猪口と酔っ払い升

*三月二十五日だから語呂って見に来い

 

三月二十六日 鉄幹忌

うたごころひろしついでに鉄幹といかつい号もよさの詩のうち

*与謝野鉄幹(18731935)は本名を(ひろし)といった。名前折込狂歌。

 

三月二十七日 仏壇の日

某誌で戒名代の記事を読み

「院」付けに一千万と吹いたのは冗談だろう、そうだな坊主

 

三月二十八日 ビアガーデンの日

吾妻橋酔いどれお化け名物もスカイツリーの裾で泡吹く

1903年、墨田区吾妻橋際にビール工場が完成。戦後、屋上の泡吹きお化けが名物に。

 

三月二十九日 八百屋お七の日

燃えさかる恋の炎に七たびも身をこがしたるお七哀しや

*八百屋お七は天和三年(1683)のこの日、鈴ケ森刑(現品川区)で火刑に処された。

 

三月三十日 マフィアの日

血なまぐさ世界をにらむ殺し屋は見よや記念の日まで犯せり

1282年にさかのぼるマフィア発祥伝説に由来して20世紀に設けられたという。

 

三月三十一日 教育基本法・学校教育法交付記念日

見たことか株式会社の学園は文部教育あざ笑いけり

 

四月

四月一日 四月馬鹿

閻魔様、道で万札拾うたら交番行きます、この日ばかりは

*「万愚節」とも。この日ばかりはウソをついてもいい日とされている。

 

四月二日 図書館開設記念日

紙さびて書らの群居(むらい)に身をゆだね乱読教の教祖たるらん

*現国会図書館の前身帝国図書館が開設なったのは明治五年のこの日のこと。

 

四月三日 日本橋開通記念日

今様はコンクリ(りん)に見え隠れその石橋(しゃっきょう)やあるこっぱずかしげに

*東京の日本橋は1911年懸け替えまでは威風堂々たる木橋であった。

 

四月四日 オカマの日

お目二つ口は裂けずに角もなしくノ一に化けこわやおそろし

*三月三日の桃の節句、五月五日の端午の節句の中間に当たる日ということで設けられた。くノ一=「女」字の分解表現。

 

四月五日 横丁の日

うす暗く狭く汚くけど(ぬく)い熊八連が生きる(あかし)

 

四月六日 城の日

もののふが精魂込めしその美形()ごときが攻め込めはせ

 

四月七日 メートル法誕生の日

せっかくにメートル上げたこの機嫌ミリリットルで悪酔いをせり

*日本酒の計量単位は、伝統に培われてきた「升」や「合」でこそぴったりである。「メートルを上げる」とは、酒好きが調子に乗って深酔いする近代言葉。

 

四月八日 花祭り

甘茶断ちお(チヤケ)チャラチャラ茶にせんもお釈迦茶化しは世間うるさし

 

四月九日 大仏開眼の日

大仏さんお(けつ)開きはご勘弁お奈良漬では南都へへのへ

*南都=奈良の古称。へへのへ=屁の茶化し詞。752年のこの日、東大寺の大仏像が完成。

  

四月十日 駅弁の日

ポッポ旅峠の茶屋の釜飯も八重洲で買えば水臭弁当

 *東京駅で買える諸国駅弁を皮肉ってみた。「八重洲」は東京駅東口の地名だが、水辺を表す。峠の茶屋の風情も失せてしまおう。

 

四月十一日 メートル法公布記念日

尺貫も差別用語もご法度で百貫デブは宙に浮きけり

*「百貫デブ」は往時、今にいうメタボ族に通用した一般的な悪口であった。

 

四月十二日 パンの記念日

米屋さんそこのけどけよモダン都市ジャッパン人気のパン屋が通る

1983年、大手の製パン会社が制定。

 

四月十三日 水産デー

琵琶湖をばどでかい養殖池にせよ水産国家の夢ぞ(うつつ)

*記念日は1933年、大日本水産会が設けた。

 

四月十四日 フレンドリー・デー

ヤケ酒の相伴(しようばん)つとめそのあげく介抱買うこれもポン友

*414(良い世)の語呂合わせ。自分にとって大切な友達と友情を確認し合う日、なのだそうである。

 

四月十五日 遺言の日

遺言詠

会葬も読経も南無用冷えた身に冥酒一升燗で抱かせよ

*記念日は日本弁護士会連合会が制定。作品は花酒爺が実際に遺すと決めた遺言詠である。

 

四月十六日 チャプリン・デー

歌詠みのチャプリンめざし(つたな)くも茶利茶浮輪(チヤーリーチャプリン)にあいつとめます

*英国の喜劇役者チャールズ・チャプリン(18891977)は来日し公演したこともある往年の人気者であった。

 

四月十七日 公共職業安定発足記念日

日は高し仕事あぶれの吹き溜りハローばかりでワーク聞かれず

*公共職業安定所=現ハローワークの旧称。

 

四月十八日 発明の日

PCくノ一

キー語をばクリックしたら一発でよがりもせずに奥を開けり

*初めてパソコンをいじった時のカルチャーショックぶりを描いてみた。

 

四月十九日 地図の日

やるわいのうただたかぶらずよっく聞けおれ三歳にして蒲団に()けり

*寛政十二年のこの日、伊能忠敬(いのうただたか)(17451818)は蝦夷地の測量に出発した。この詠、ことば遊びにいう氏名折込を用いてある。

 

四月二十日 郵政記念日

一っとび七里じゃ自慢にならん便(びん)電子メールはタッチアンドゴー

*カタカナ語入りの典型例。記念日は1934年に郵政省が制定。 

 

四月二十一日 民放の日

路地裏の熊八どもが井戸端でうそぶき始め元祖ぞと知れ

 

四月二十二日 地球の日

温暖化に寄せて

冬逃げて山はけだるい春と夏ホウ呆けきょうも声は嗄れがれ

 

四月二十三日 ビールの日

動物園ファンの一人として

泡くらうのどごし()けり生麦に酒の字付きて麒麟児ぞわれ

*横浜市鶴見区生麦(地名)にキリンビール生麦工場がある。動物園ファン=キリンビール党。この一首、広告狂歌もしくはPR狂詠といえよう。

 

四月二十四日 日本ダービー記念日

ン千万恨みつらみの貸しがあるターフにぺんぺん草よ生えやれ

 

四月二十五日 歩道橋の日

そこのけやお車様のお通りだエッチラ昇れオッチラ降りろ

1963年のこの日、大阪駅前梅田にわが国初の横断歩道が設置された。

 

四月二十六日 よい風呂の日

いい湯だなプープー匂うかなポワッ屁玉のパンチ世は平和なり

*擬音(オノマトペア)入りの狂歌。

 

四月二十七日 哲学の日

わからないああわからないわからない存在理由(レーゾンデトール)どこにござるや

*上句は同じ言葉を繰り返し用いる畳語法で構成。紀元前399年のこの日、ソクラテスは思索に行き詰まり服毒して死んだとされている。

 

四月二十八日 シニアーズ・デー

「老いぼれの日」と読み替えてはみたものの目出たくもありめでたくもなし

*下句は定型句で締める。結論をぼかした曖昧表現である。

 

四月二十九日 昭和の日

われ健児一ケタ生まれの昭和っ子無骨不器用雑草のガキ

*内容を次第に落としていく文彩(修辞)「漸降法」を用いた。

 

四月三十日 荷風忌

コウモリと脂粉に金歯こき混ぜて三で割ったら墨東の主

*コウモリ=宵闇迫る墨東(現東京都墨田区向島辺)の印象。脂粉=玉の井・鳩の町辺の売春窟。金歯=娼婦またはキザな遊び人の謂。永井荷風はこうした飾り気のない墨東の地を愛した。

 

五月

五月一日 メーデー/扇の日

メーデーだデモだと街でアホるより舞のセンスで(かなめ)束ねよ

 

五月二日 エンピツの日

エンピツを舐め舐め覚えた漢字だぜパソコン偽字フォント騙すな

*電子アプリのフォント用JIS漢字は本漢字もどきの擬書体である。

 

五月三日 憲法記念日

改憲だ平和だ基地だ核廃だ?右傾左党はケンもホロロよ

 

五月四日 源氏物語祭〔私設〕

式部姐(しきぶねえ)五十四帖と張ったりな四畳と半で事足りように

*この日を「源氏物語祭」としたは、源氏物語が五四帖で構成されていることのこじつけ。四畳と半=四畳半は情事を展開するお座敷の代名詞。

 

五月五日 こどもの日

 の苑は、結んで開いて、ヂイバッバ、ヨチヨチおいで、オムツもあるよ

*老体の幼児化(先祖返り)の様子を「こどもの日」にオーバーラップさせ描いてみた。

 

五月六日 語呂合わせの日

スイと出来たぜ徳利ごらんこちトラ、ノーメル(文学賞)に飲みねえと

*酔漢のたわごとを語呂合わせにかこつけ酒言葉尽くしに。

 

五月七日 粉物の日

白粉女(こなもん)は関西風がようおます、けつねもんじゃにタコツボ女郎

 

五月八日 松の日

天女()三保の松原(かむ)さびて羽衣脱がす松茸やある

*記念日は1989年、「日本の松の緑を守る会」が定めた。

 

五月九日 メイクの日

遠望絶佳とは

濡れ役者遠目美形に映れども楽屋のつらはペンキ塗りたて

*「メイクの日」は、五月のMayと九に合わせた語呂合わせ。

 

五月十日 日本気象協会創立記念日

天気屋の予報当たれる近頃は異常気象と世間かしまし

*賭け事と「天気予報は外れて当たり前」という俗信が崩れつつある。

 

五月十一日 長良川鵜飼い開きの日

師匠(ししよ)さん鵜呑みの鮎は横取りかいせめて一ながらちょうだい

*鵜を飲兵衛に仮託した擬人化技法を用いた。

 

五月十二日 看護の日

看護婦は無いチンゲールの国言葉介護の国じゃ師と呼んどるでえ

*ナイチンゲール=イギリスの高名な看護婦の名で、転じて看護婦の代名詞に用いられてきた。性別無視のいわゆる平等語をからかってみた。

 

五月十三日 メイストーム・デー

カカアどの皐月祭りの夜嵐で五度も死んだはだれだっけなあ

 *メイストームは北日本に発生する低気圧による季節はずれの嵐。転じて、世諺「八十八夜の別れ霜」に由来し、別れ話を切り出すのに最適な日とされている。「皐月祭りの夜嵐」とは、派手な交合の意味。この狂歌では、女房から別れ話を告げられた宿六亭主の強がりを表現してみた。

 

五月十四日 種痘記念日

宿敵の天然痘を化けさせて人工痘で人助けなり

 *1796年、英国人医師エドワード・ジェンナー(17491823)が初の種痘接種に成功したのにちなんで。

 

五月十五日~六月十五日 情報通信月間

ウイルスを病原体と思いおる電算無知がコンピュレックス

 

五月十六日 旅の日

新幹線富士の鼻面張り飛ばし旅酒軽く遊子かなしむ

*「遊子悲しむ」は島崎藤村の名詩「小諸なる古城のほとり」冒頭部より借辞。

 

五月十七日 せいめい・きずなの日

大病で生命(いのち)(あがな)う治療費の追い来る先は死出の苦しみ

 *日本ドナー家族クラブが制定した。

 

五月十八日 ことばの日

     親父、出来の悪い息子に寄せて

それ見たか国語の試験すべったな「さじを投げた」の意味がわかるか

     息子、骨董親父に寄せて

よく言うぜ横文字弱いダメ親父「チンポジウム」って何のことじゃん

*この形式の短文芸を「掛け合いもの」という。

 

五月十九日 大嫌い言葉の日〔私設〕

大嫌い語に寄せて

「識者」とは小利口者かゴマスリか学者お馬鹿かわからん仁か

*文彩(修辞)にいう列挙強調法を用いてある。

 

五月二十日 ローマ字の日

ローマ字で打ちては哀れ平安のみやび言葉もつづりほころぶ

*パソコン等で文書ことに古文を打ち込む場合、ローマ字よりもひらがな入力のほうがはるかに正確で能率が良い。

 

五月二十一日 小学校開校の日

サシタ サシタ オサケ ヲ サシタ ノメウタヘ 小学喜寿ノ ヂヂハ ウソブク

*上句は国定国語教科書小学一年生用の巻頭「サイタ サイタ サクラ ガ サイタ」のパロディ仕立てになっている。

 

五月二十二日 ガールスカウト・デー

エロい世のアプレ育ちのニキビ坊はスカートまくり公認日と覚ゆ

*ガールスカウトの意味が理解されてない昔中学の時代、この日に女生徒のスカートまくりやもんぺ脱がしといった事件が実際に起きている。

 

五月二十三日 恋文の日

「あなた様、かしこ」のうちが花でして、しおれて枯れりゃ「あんた、あかんべ」

 

五月二十四日 神戸ゴルフ倶楽部開場記念日

耳掻きのお化けを振って言うてんねナイスチョットやボールどこじゃい

 

五月二十五日 食堂車登場の日

ガッタンでカレー一さじゴットンで渋茶すすってサテ一服や

*擬音装飾法による。

 

五月二十六日 ラッキーゾーンの日

ラッシュ時に爆臭っ屁をかがされてメタボ尻から派手にお返し

*「ラッキーゾーン」は野球用語から風俗用語までまたがり用いられている。この一首、発想を転換、逆説的なアンラッキーゾーンとして描いてみた。

 

五月二十七日 日本海海戦の日

日本海勝った勝ったの雄叫(おたけ)びもオロシア熊には犬の遠吠え

*明治三十八(1905)年のこの日、日露戦争で日本海軍はロシア海軍を日本海で破り勝利を収めた。

 

五月二十八日 ゴルフ記念日

顔見れば握りましょうのゴルファーは寿司職人かはた官僚か

*握る=賭けゴルフをする。

 

五月二十九日 白桜(与謝野晶子)

白桜やよさのあきこぬなまめきにもだえし女体(にょたい)(うた)はさわがし

 

五月三十日 消費者の日

法外な高利むさぼり良心のかけらティッシュでかますヤミ金

1968年のこの日、消費者保護基本法が公布なった。

 

五月三十一日 世界禁煙デー

肺ガン死亡者(もうじや)オーラを発してよ日本たばこに化けて出よかし

*今様落首の体裁を装ってみた。

 

六月

 

六月一日 衣替えの日

衣替えクールビズとかに変わり果て袖する心も薄ら寒ざむ

*家庭歌といわれるもので、昔の日暦などに載せられた類である。

 

六月二日 うらぎりの日

光秀を裏切り者と責めるなよおぬし夜中に五度も寝返り

*天正十二年の今日、京都本能寺において明智光秀が織田信長に謀反を起こした史実を踏まえ、誰ぞが面白半分に記念日とした。

 

六月三日 測量の日

そのサイズうなだれどきに測るなよオトコの価値は立ちてなんぼじゃ

 

六月四日 虫の日

リンリンが足りんと鳴ける鈴虫もリンリンやまばいのちちりりん

*三十一音節の中でりんをいかに多く用いて歌体を整えるか、「りん付け」という典型的な畳語歌である。

 

六月五日 落語の日

寄席へ高級車で乗り付けるのを見て

噺家が貧乏神を質入れし非廓(くるま)通いじゃオチ拾えず

*テレビの人気番組「笑点」を見てわかるのは、リッチな落語家揃いでハシタ芸でさえつまらなくなってきている、ということ。

 

六月六日 プロポーズの日

うま酒の次にあなたが好きですと酒屋の娘口説き落とせり

*花酒爺の荊妻は都内売り酒屋の娘、述懐詠である。

 

六月七日 母親大会記念日

おふくろはだまされ上手だナア親父天国にやりその振りと知る

 

六月八日 成層圏発見の日

成層を月見団子の皮にして地球丸ごと十五夜に食わん

*「極大妄想」という古典手法で作ってみた。

 

六月九日 ロックの日

○○○○○本日休詠やむをえず×××××××それ見たことか

*昔ながらの「虫食い」という表現手段。詠自体が伏字の当て物になっていて、○○や××に予想しうる文句をはめ込んで一興とする。この「ロックの日」はロックバンドにちなんだ記念日らしいが、騒々しい音楽は大嫌いな爺、錠前のロックに意味をすり替えて遊んでみた。

 

六月十日 キャラメルの日

デート初め三本立の映画見て手を握りつつおせんにキャラメル

*「おせんにキャラメル」は昔の映画館内での飲食物売りの口上であった。

 

六月十一日 傘の日

梅雨(つゆ)ビニール傘ならず蛇の目昔むせび泣くよな 

 

六月十二日 恋人の日

むかし文字いとしいとしという心いまや味なくまたに心す

 漢字の冠旁偏脚を分解し意味の通る言葉に置き換える(たく)()という手法を用いてある。この歌では「戀」と「恋」が詠材に。

 

六月十三日 「小さな親切運動」スタートの日

女房にかくれて(なさけ)かけまわるイケ好かねぇチャチな親切

*情をかける=男女が情を通ずる、の遠回し表現。

 

六月十四日 フラッグデー

記念日は「旗日」の重みおごそかに軽くはためくフラッグなどなし

*国旗日の丸制定の基となった星条旗渡来を記念する記念日である。

 

六月十五日 信用金庫の日

その金庫財布の紐とつながりて横丁へそくり行ったり来たり

1951年、信用金庫法が制定されたことによる。

 

六月十六日 和菓子の日

飲ン兵衛は洋菓子(ケーキ)辞退も和菓子なら渋茶身の内ちょいと一杯

 

六月十七日 おまわりさんの日

「オイ、コラ」が「もしもし、あなた」に大化けし薄気味悪く近寄りがたし

*おまわりさんは怖い、という印象のほうが治安効果が高いと思えるが。

 

六月十八日 おにぎりの日

     亡き母へ

ン万のディナーは犬にくれてやるお袋握りの塩むすび欲し

 

六月十九日 朗読の日

音読でグーと鳴るのは腹ばかり活字世代は活眼黙読

*日本朗読文化協会なるものがあるという。が、七十代以上の活字飢餓体験世代、ましてや図書館好きははた迷惑極まる音読法に多分に抵抗を感じる。

 

六月第三日曜日 父の日

ドラ息子「太くて細いもの」の謎解いて見せたり親父のスネと

 

六月二十一日 スナックの日

はちきれんメタボゆすってひとつまみスナックママがまたも共食い

 

六月二十二日 ボウリングの日

業平がストライ球の嬌声に小町むくれてわらわガタガーター

*業平とは今風に言うイケメンの意味。女達を引き連れてのボウリング光景をスケッチしてみた。

 

六月二十三日 男女共同参画週間の初日

人に表裏あり

性差別なくせとうわべ格好よく心で阿魔めやれ抜作め

 

六月二十四日 UFOの日

宙吊りでとらえどこないそのうわさ一文字替えりゃUSOになるだろ

 

六月二十五日 住宅デー

中国風誇張をこめて述懐

百邸を飲み潰したが自慢なり酌家住いも酔えば玉楼

 

六月二十六日 雷記念日

ソラくやし痴漢容疑でつかまった三寸下など狙やせんのに

*雷公のへそ狙いを茶化して。

 

六月二十七日 演説の日

演説は半分ほどに聴くがよしのたまうほどの人柄になく

*垂訓法、金言法ともいうテクニック。1874年、慶応義塾内三田演説館創設を記念して。

 

六月二十八日 貿易記念日

円高下右往左往も(われ)不関知(しらぬ)ズボンのずり落ちよほど気になる

 

六月二十九日 佃煮の日

酎によしどぶろくにもよし佃煮は深川育ちの浅蜊に尽きけり  

 

六月三十日 集団疎開の日

小国民銃後にありてやせ細りシラミ引き連れカイセンの日々

1944年のこの日、集団疎開が閣議決定された。爺も学童集団疎開体験者。

 

 

七月

七月一日 銀行の日

金利の贅インギン利子でボロ儲けあくどさ増して高利貸並み

1893年、銀行条例施行を記念して。

 

七月二日 うどんの日

きつねっ()讃岐(さぬき)の注文聞き違えたぬきうどんで化かしたとさあ

*駄洒落だけで中身がなく他愛ないこういう作をナンセンス詠みという。

 

七月三日 波の日

追い風に世渡り上手なサーファーは浮世の荒波乗りてセーリング

 

七月四日 アメリカ独立記念日

ヤンキーをくさしけなそう思うたがCIAに()られるがいや

下句返し

生命(タマ)取るほどの大物でなし

*この「下句(七七)返し」を付け加えることで承前詠ががぜん面白味を増す。

 

七月五日 ビキニスタイルの日

牝の核ボインピカリと弾かせて牡の視姦がバンと爆発

1946年、アメリカの原爆実験が行われたビキニ環礁にちなんでのゆかり詠

 

七月六日 公認会計士の日

数字なぞ歌

一二三る 四に五六がる七 八九珠 八四きて一十四 十露盤よゆめ

  ひとにみるよにころがるなやくもたまはじきていとしそろばんよゆめ

八雲(やくも)(たま)=雲州そろばん。出雲地方は日本一のそろばん名産地。「数字語呂合わせ詠」である

 

七月七日 七夕/ゆかたの日

年一度会うのだ織姫よろしかろゆかたの帯をはよ解きなされ

*二つの記念日を掛け持ちで詠みこなしてみた。

 

七月八日 ナンパの日

大国(おおくに)が魔羅おったてて四股(しこ)踏めば稲田(いやだ)()(すそ)たなびく

*ナンパは月日の語呂合わせに過ぎず、命名主不明の幽霊記念日である。

 

七月九日 鷗外忌

文豪を外と打ち叱られり恥かきまみれのパソコン文字よ

*パソコンの漢字はJIS用に開発されたもので正規の漢字ではない。

 

七月十日 納豆の日

 としきの納豆食べてなめあって甘納豆にしたっけなあカカ

 

七月十一日 世界人口デー

統計は人情知らずな数字よなゲイツ一人で一国分捕り

*ビル・ゲイツはアメリカのビッグ3に入る富豪。

 

七月十二日 人間ドックの日

生身より数字信じる迷医どのはよう失せませ藪はすぐそこ

 

七月十三日 生命尊重の日

中東で出張殺人請負いつ捕鯨ダメよと目くじら立てり

 

七月十四日 検疫記念日

テレビ屋の愚民化症の予防には見ざる言わざるそして聞かざる

*世諺「身ざる、言わざる、聴かざる」の借辞詠。主題から離れた「モノ離れ詠」でもある。

 

七月十五日 盂蘭盆

婆さんや代行参りが来よったぞお灸を据えに化けて出るかや

*最近、墓参代行業者が増えているという。ご先祖の言葉を借りた仮託詠み。

 

七月十六日 駅弁記念日

旅行けば昔のホームいまいずこ窓際弁当売るは駅中

 

七月十七日 東京の日

土地高で江戸っ子逃げたこの街はおらが国さの神田だんべえ

*神田の呼称は地方でのゴウダ、つまりシンデンに音通する。

 

七月十八日 土用の日

どじょうの日ぬらりくらりと免れて命拾いにヒゲなでおろす

 

七月十九日 女性大臣の日

政治バカ野郎専科と思いきや紅舌達者がわれもわれもと

 

七月二十日 Tシャツの日

ネクタイは持たず締りのない首にTよくフィットシャツキッとしたぞ

*夏の装いであるTシャツのTがアルファベットの二十番目に当たることから。

 

七月二十一日 自然公園の日

その山に禿まで移すな心せよ「あとは野となれ山となれ」よし

 

七月二十二日 下駄の日/消暑の日

雪の朝昔坊やは針金の鼻緒の下駄で二の字描けり

*二つの記念日を掛け持つ「二主題兼詠」である。

 

七月二十三日 犬の日

遊歩道人並み大のドッグフンを踏んづケンしたこれはかなワン

 

七月二十四日 河童忌

洩れ放し芥川製雨合羽三文文士はもうずぶ濡れじゃあ

*河童忌=芥川竜之介の忌日で、作品『河童』にちなむ。掛詞と縁語で織り成した構成。

 

七月二十五日 かき氷の日

ふきん当て貫目氷をかき削りこれ本物の夏季の冷ゃっこさ

*同音異義の「カキ」がこの詠のキーワード。

 

七月二十六日 ポツダム宣言の日

日本にホールドアップの米英中もうあきらめた勝ちは見えずりー

*昭和二十年の小の日、ドイツのポツダムで連合国軍が日本に発した終戦勧告のための共同宣言。日本は八月十四日に米艦船ミズリー号上でこれを受諾、調印した。

 

七月二十七日 スイカの日

年頃がおちょぼ口してなめるようすいか甘いかなめて相伴

*すいか=「酸いか」は甘いの対語、「粋か」は野暮天にかかる反語。

 

七月二十八日 なにわの日

もうあかん言うてあんじょう口かせぎ浪花生まれのド根性(こんじよ)見い

 

七月二十九日 アマチュア無線の日

ロースです、君はサラダか、僕サンド。ハムさんげんなり「チャッとツーぜず」

*専門用語を織り交ぜた駄洒落詠。

 

七月三十日 「大正」改元の日

大正の未来は波乱の一世紀トンチキな世よ、飲もう、大将

*大正元年=1912年。今でこそは半死語になっているが、大正頃に職人仲間では

 「大将」の呼びかけは不自然ではなかった。トンチキ=「阿呆らしい」を表す近代

  職人言葉。

 

七月三十一日 パラグライダーの日

見るでない松原越しの(ひる)情事今様久米仙早よ落ちなされ(しごと)

 

八月

八月一日 水の日

「水くれ」に「ウォーターとか」念押しで心冷やされ「熱燗にする」

 

八月二日 パンツの日

(ふんどし)猿股(さるまた)パンツの乱れさぞ湯浴(ゆあ)み場は三代チン列

*祖父・父・ボクの銭湯における脱衣場風景を描いてみた。

 

八月三日 ハサミの日

薄くともハサミ使えりゃ御の字よ刷毛(はけ)でも欲しや禿(はげ)の父さん

*伝承の戯れ歌に「世の中は澄むと濁るで大違い刷毛に毛があり禿に毛はなし」と。

 

八月四日 ビアホールの日

覗くなよ素通りせよと命じたに千鳥の足めまた泡どまり

1899年のこの日、サッポロライオンが他店に先んじて東京銀座に一号店を出したのを記念し制定。

 

八月五日 はんこの日

そのはんを押してたもれに業平は押しまくったり三千余体

*井原西鶴の好色もの『好色一代男』によると、業平は生涯に男女合わせて四千人を越える相手をしたという。

 

八月六日 広島原爆記念日

ピカドンは禁止、許さず、絶やせよと百万念仏唱え飽きせず

*この場合の「禁止、許さず、絶やせ」は同義反復という文彩技法。

 

八月七日 バナナの日

八百屋後家お顔ほんのり上気して湯気たつバナナ急ぎ並べり

*バレ句。見てきたような情景描写を「活写法」という。

 

八月八日 親孝行の日

親孝行したいときに親はなく位牌抱えてほほずりをせん

*上句五七五は借辞。「下句付け」でもある。絵になる付け句であることが条件になる。

 

八月九日 狂歌の日〔私設〕

八雲立つ出雲の里でスサノオは世を震わする歌を吠えたり

*スサノオ命は狂歌道の遠祖である。八月九日をヤクモと語呂合わせし私設記念日とした。挿絵の四方赤良は天明狂歌師の第一人者。

 

八月十日 道の日

人の道右も左もあるものか、とは表向きおれは左党よ

*文彩技にいう「前言打消し」というテクニックを用いた。

 

八月十一日 インスタント・コーヒー発売記念日

長すぎてお名前だけで垂れ流し歌にも句にものめやせんぞえ

1960年、森永製菓が新発売したのを記念して設けた。

 

八月十二日 「君が代」制定記念日

さざれ石(いわお)と成るはこの地球火球となりし世も末のあと

1893年、時の文部省公示日による。

 

八月十三日 函館夜景の日

漁り火も夜景のうちよ観光客(おきやく)さんするめいかがで一杯いこう

*ご当地観光詠とでも名づけよう。

 

八月十四日 専売特許の日

恐面(こわもて)が専売特許の()(スケ)に手を出したなと肩をゆすれり

*やくざ者の強面と内縁情婦とを専売特許の一語に掛け持ちさせてみた。

 

八月十五日 終戦記念日

一億が泣きけるその日われ一人千ずり覚え善がり転げり

 

八月十六日 女子大生誕生の日

才媛に魔風(まかぜ)恋風(こいかぜ)吹きなでて海老茶(えびちや)式部(しきぶ)の裾をあおれり

*『魔風恋風』は小杉天外作の新聞小説で、明治三十六年に連載を始め一世を風靡した。「海老茶式部」は同時代の流行語で、女学生が海老茶色の袴を着用に及んだことから、女学生を指す象徴的な言葉にになった。

 

八月十七日 プロ野球ナイター記念日

白熱の野球ブームに相撲党待ったをかけて地団駄踏めり

 

八月十八日 太閤忌

世が世なら狸なんどに化かされぬ織田のウツケも猿太閤も

 *「狸」は徳川家康の、「うつけ」は織田信長の、「猿」は豊臣秀吉のよく知られた渾名である。家康は両雄を巧みに利用し地位を築き上げた。

 

八月十九日 俳句の日

西東遠く近くと眺むれど茶室が賛は句よ手前やれ

*狂歌に比べ詩趣の違いを主題にした。

 

八月二十日 定家忌

歌詠みの(かがみ)かしらねど定家(ていか)()れ歌詠み雲の座

*藤原定家(11621241)は歌聖と呼ばれている鎌倉前期の歌人。

 

八月二十一日 献血記念日

己が血を叩き売ったる苦老生献血と聞きケツと逃げ行く

1950年代、売血を求める買血業者が現れ、そのあくどい手口が社会問題になる。爺の苦い体験を詠んでみた。

 

八月二十二日 藤村忌

言葉狩り横行時代に

藤村師狩られましたよ『破戒』もね文化破壊の人権狂に

*島崎藤村の名作『破戒』もまた差別用語が目立つとの理由で悪書扱い、心無い者の手で図書館などから追放されている。

 

八月二十三日 白虎隊自刃の日

クイズ番組を見て

芸人さん飯盛山(めしもりやま)はないだろういくら会津が米どころとて

1868年のこの日、戊辰戦争で会津藩白虎隊は立て籠った飯盛山(いいもりやま)においてこぞって自刃し果てた。

 

八月二十四日 五右衛門忌

今様は嘘とペテンを使い分け世に五右衛門の末裔(すえ)は尽きまじ

*文禄三(1594)年のこの日、石川五右衛門は釜ゆでの刑に処せられた。辞世の一首は「石川や浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」

 

八月二十五日 インスタントラーメンの日

商法はインスタントじゃ伸びやせん細く長くで儲けちょります

 

八月二十六日 レインボーブリッジ開通記念日

汗かいて行ってご覧よ自転車でまかりならぬが通るお車

*東京のレインボーブリッジは自動車専用橋とかで、自転車での無公害渡橋を楽しみたい近辺住民のひんしゅくを買っている。明らかに都税の不公平使用である。

 

八月二十七日 日本に原子の火がともった日

忘れるなドデカイ原子の火がピカり平和利用もドンと割引

1957年、茨城県東海村の日本原子力研究所で火がともされた。

 

八月二十八日 テレビCМの日

増すごみの馬鹿さラッシュにCMは無能放映の秒を切り売り

 

八月二十九日 ケーブルカー開業記念日

天国に最も近い地獄じゃと高みにすくむ身の叫びあり

1918年、奈良県生駒山に日本初のケーブルカーが開業。詠は高所恐怖症の視点からのもの。

 

八月三十日 ヤミ金融ゼロの日

あくどさで裸にされた涙をばティッシュで拭けはヤミ金の情

*裏社会で最も儲かるこの商売、盗人同様絶えることがない。

 

八月三十一日 野菜の日

青果市場(ヤツチヤバ)のメタボ親父が売り言葉わしゃポパイ教南無ホウレン草

 

九月

九月一日 防災の日

人災は仕掛わかれば防げるも下る天災神のみぞ知る

*カレンダーなどでおなじみの教訓歌風に作ってみた。

 

九月二日 宝くじの日

貧乏(びんぼ)(がみ)くじ運にまで取り憑いて回収(みいり)一割やっとこさだぜ

 

九月日 美容週間

目は小町鼻はパトラで口は貴妃上がりめでたや福笑いつら

 

九月四日 くしの日

すく髪がわたくしにないくやしさよ光るおつむを見て物を言え

 

九月五日 石炭の日

われこそはジュラノザウルス生き埋めが二億年たちやっと火葬よ

*ジュラノザウルスとは筆生の作ったらしき架空の恐竜名である。

 

九月六日 黒の日

腹の談合

腹黒い腹積りして腹合わせ腹鼓打つ腹の曲芸

*同字反復法つづりによる。

 

九月七日 泉鏡花忌

狂歌師めキョウカキョウカと騒ぐなよ泉下の鏡花今日も眠れず

*同音異義尽しによる。

 

九月八日 「明治」改元の日

西暦にけ暮れまる今の世に明治たまらず遠ざかりけり

*年号折込歌。改元狂歌にこの類が多い。

 

九月九日 福祉デー

ドン底のバカ正直は見捨てられ福祉無用と叫ぶ気も出ず

*半端な年金額で生活保護も受けられず、カップラーメンで飢えをしのいでいる老夫婦の悲哀。

 

九月十日 屋外広告の日

広告塔立てぬ商売探し当てたどり着いたり南無火葬場

 

九月十一日 公衆電話初設置の日

ケータイを持たず使わぬ頑固者モシ表彰は博物館か

 

九月十二日 宇宙の日

血税を燃料にせし宇宙ごみ絵空事追いまたも打ち上げ

1992年、宇宙開発事業団が一般公募の結果設けた。同事業団、派手な予算侭蕩で悪評が絶えない。

 

九月十三日 世界法の日

法により世界が平和になるなんて夢のまた夢なあアメリカさん

*紛争介入好きな国際警察といわれているアメリカに対する言問い。

 

九月十四日 メンズ・バレンタイン・デー

男衆がピンクの下着贈るとさ 超商魂に姫も股ずれ

*さる下着メーカーによる新商法仕掛けも反響は薄かったと聞く。

 

九月十五日 老人の日

ご隠居が三人寄ればお茶孫子(まごこ)出がらし話も枯木に花よ

*国定の休日中最も評判が悪く、心ある老人世代はこの祝日をせせら笑っている。

 

九月十五~二十一日 老人週間

婆さんやわしの名前は何だっけお棺に聞え「そろそろ()りやれ」

 

九月十七日 牧水忌

牧水や吉井勇の才はなくヤケ酒あおり詠む友とせん

*若山牧水(18851928)は酒豪で鳴らした浪漫派の歌人。吉井勇(18861960)は酒の名歌を数多く残す。

 

九月十八日 かいわれ大根の日

この野菜詠めばエッチな歌になる酢に和えなめて健康増進!

*文彩にいう情景反転法を用いてある。

 

九月十九日 苗字の日

国民を名無し権兵衛とする日がよそこまできてる皆番号制

*たとえば、あなたに与えられた個人ナンバーが「三七三七七四五八八」だとする。覚えるのが大変だ。そこで一寸頭を働かせて、語呂を利用してこう読み替えてみよう。「みなさん名無しの権兵衛(八八=八十八=米=ベイ)」こんなコミカルな事態が起きないとも限らない。

 

九月二十日 空の日

雲低く青空はなく馬がやせ財布は軽し末世の秋

 

九月二十日頃~ 動物愛護週間

飼い主さんいとし可愛に飽きたとてペット捨てるじゃかニャワンわい

 

九月二十二日 日本救世軍創立記念日

仏の(しゆ)チン、よみがえりませドン、エス様にジャン、救われめされお転びなされ

*チン、ドン、ジャンは字余りの弾み言葉。転ぶ=転宗する。ついでながら詠み手は徹底した宗教嫌い。

 

九月二十三日 不動産の日

建売屋「環境絶佳」という土地は酒屋へ五キロ豆腐屋八キロ

*元歌=ほととぎす自由自在にきく里は酒屋へ三里豆腐屋へ二里(つむり光、『万歳狂歌集』巻二)。これの擬似歌今様仕立である。

 

九月二十四日 清掃の日

親殺し多発に

親のスネさんざかじった礼返し粗大ゴミかい舎利となれかい

 

九月二十五日 十円カレーの日

辛味(カレー)待ち長蛇の列にしびれ切れ隣図書館百で食う

*東京日比谷公園内「松本楼」で毎年一回、恒例の謝恩イベント。評判になり長蛇の列が出来、あぶれた時は隣の日比谷図書館地下の食堂で四百円カレーを食うハメになった時事詠。

 

九月二十六日 日本語ワープロ誕生の日

(かしま)しく(えびす)パソ語にレイプされ外字孕みし日本語あわれ

*外字=いわゆるフォント漢字といわれるもので、正しい字画の漢字ではない。商品化されたばかりの時代のワープロは英文本位の作りで、日本語打ち込みの場合使い勝手が非常に悪かった。

 

九月二十七日 琵琶湖大橋開通記念日

知る人ぞ知る助平の橋渡し雄琴への道はや縮まれり

*開通は1964年。湖畔に出現した歓楽郷雄琴への道が一挙に縮まった。

 

九月二十八日 パソコン記念日

多機能の化物機械に振り回され爺の頭はI Tテテェッ!

 

九月二十九日 招き猫の日

あばら家に招福来客縁がなく貧乏神が右往左往す

*9・29は「来る福」と読め、粋筋で生まれた記念日として知られている。

 

九月三十日 クレーンの日

ベンチ酒でっかい不思議も肴にすビル頂殖やせる巨大(どでか)クレーン

*上句と下句とがぎこちなく、うまく繋がっていない。こういう作品を「腰折れ歌」といい禁じ手で、悪い例として掲げた。

 

十月

 

十月一日 日本酒の日

 

鼻は(あけ)()に紅さし胸ふくら(かわず)腹して酒なお美味(うま)

 

毎年十月一日は《日本酒の日》と定められている。記念日流行にのり日本酒造組合中央会が設定した。ただし、他の記念日のように語呂合わせではなく、しっかりとした次の根拠による。①酒という字はサンズイ「氵」にヒヨミノトリ「酉」の合成である。この酉は、十二支のうち十番目に当たる。一年十二か月の十番目は十月である。②旧暦でいう酉の月は九月から十月にかけてで、この頃は酒造米の出来秋である。新酒を醸す時期でもあり、酉の月は「酒の月」でもあった。③酒造法が初めて制定された明治時代、十月から翌年九月までを酒造年度としていた。蔵元にとって十月一日は元旦に相当し、この伝統は現代でも一部で継承されている。

 

十月二日 豆腐の日

汁によし肴にもよし頃合に晩酌知らせるチャルメラもよし

 

十月日 登山の

千鳥足酒に酔うならご機嫌も高所に酔うは平にかんべん

1992年、日本山岳会が制定。爺は昔から極度の高所恐怖症です。

 

十月四日 いわしの日

錦秋の手酌によしの肴ならまぐろにまさる目刺し一本

*あえて表現上の技巧を抑え、和歌寄りの俳諧歌として詠んでみた。この類を素直詠みと名づけておこう。

 

十月日 達磨忌

九年もまあ腐りもせずにがんばった腰から下は不起立珍宝

*達磨はインド生まれの僧も中国に渡り、嵩山の少林寺で九年間坐禅修業を成した。

 

十月六日 国際ボランティア貯金の日

ケチいわず利子はそっくり寄付するとよくぞ言ったり夢の長者で

 

十月七日 ミステリー記念日

詐欺強盗殺人レイプもやらかして賞までくれる浮世めでたし

*米ミステリー作家E・Aポー(1809184)の命日を記念して。

 

十月八日 入れ歯デー

食えないがおはこのハナシ家なぜ入れ歯ハナシ逆さで人を食うため

 

十月日 塾の

塾に明け塾に暮れたる坊や嬢、行ったか学校、ウン居眠りのため

1989年、全国学習塾協会が決めた。この類、間接話法詠である。

 

十月日 銭湯の

旅行けばあー湯(ふね)震わせ虎造をうなったとたん辺り逃げ出す

*虎造=広沢虎造、ラジオ浪曲の人気者であった。「虎造」うんぬんはは代称表現。

 

十月十一日 ウインクの日

その美女は片目つむりてけしかけり財布と貝のご開帳(かいちょ)ごっこを

*上句と下句とは倒置法で繋がっている。この場合終句の「開帳」をカイチョウとしたのでは二字余りとなり「病詠み」とみなされる恐れあり。

 

十月十二日 芭蕉忌

遊里(さと)に病み夢は枕を駆けめぐる」御免なすって下種(げす)のかんぐり

*元句は松尾芭蕉の臨終句「旅に病み夢は枯野を駆けめぐる」で、これの捩り戯作。

 

十月十三日 サツマイモの

夜回りの拍子木高く寒を打ち石焼つられ「へ、屁の用心」

*関東さつまいもの本場、埼玉県川越市の川越いも友の会が設けたのだそうな。同市は日本橋から十三里の地にあり、これを「九里よりうまい十三里」に引っ掛けている。作品は「」入りの直接話法詠。

 

十月十四日 PTA結成の日

じいちゃんよもう顔出すな学校へ「ピーチーエー」だの「父兄会」だの

 

十月十五日 助け合いの日

石が浮き木の葉が沈む世の中じゃ助けられても後が怖かろ

*世をあげつらう「皮肉詠」である。

 

十月十六日 ボスの日

関白を尻に敷いたか山ノ神一日限りで後はかんべん

*立場逆転のギャップを突いてみた。

 

十月十七日 貯蓄の

十キロも一円玉を貯め込んで通帳見たらたった一万

*一円玉一枚は約一グラム。

 

十月十八日 冷凍食品の

肌寒し見よスーパーの棚飾る主婦業手抜き品が手招き

1961年、日本冷凍食品協会設立を記念して創設された。

 

十月十九日 バーゲンの日

ポイントだバーゲンだよの下々の声は届かぬ天下盗人に

*世情批判を旨とする落首風の作。天下盗人=党利党略に明け暮れるどこかの国の政治屋連中。

 

十月二十日 リサイクルの日

人体を原材料で見積もれば総額わずか二千円ほど

*人を物体(カルシュウム、鉄、リンなどの素材を価格換算)に見立てた「擬物化詠」。

 

十月二十一日 あかりの日

電灯の笠に干乾ぶ蛾のミイラこの世の灯りたらふく食うたか

*生活詠とでもいえ、センチメンタリズムをちょっぴり加えるとうまく仕上がる。

 

十月二十二日 パラシュート記念日

敵国語使うなかれで落下傘上の空にて宙吊りのまま

*歌意に締まりのない半端詠の見本に作ってみた。ともあれ、戦中体験世代はパラシュートよりも落下傘の方がピンとイメージが湧く。

 

十月二十三日 津軽弁の日

じょんがらを聴けばそのよさわかるだども三時間ではかったる

 かんべえ

*「三時間」は東京ー青森の大雑把な新幹線乗車時間。「だども」は津軽弁、「かんべえ」は関東のべえべえ言葉。なわち「暗喩法」による方言理解の難しさを表す。この記念日は、青森放送元社員で方言詩人高木恭造の命日にちなみ設けられた。

 

十月二十四日 国連デー

国連は世界平和の名を借りた百鬼夜行の化物屋敷ぞ

 *国連の評判は芳しくない。国際権力を行使し、その舞台裏は無能集団であるばかりでなく、経済的にも組織的にも、また政治的駆け引きの面でも常識外れなスキャンダルが絶えない場となっている。

 

十月二十五日 リクエストの日

死ぬまでにお袋のふくらおっぱいを心ゆくまでしゃぶり飲みた

*絵にならない狂歌の最たるものであろう。感性詠みはこれでよろしい。

 

十月二十六日 柿の

おれなんざ熟した柿の樹丸抱え酔わせて見せようこの一息で

*酔っ払いの吐息は熟柿臭といわれている。

 

十月二十七日 文字・活字文化の日

活字本電子の文字に追いやられ今様焚書の災におびえり

*現実的な話になるが、世の電子化ブームに押し流され、辞典作家(花酒爺のペンネーム荻生待也の本職)という職業は成り立ちがたくなっている。

 

十月二十八日 日本ABCデー

ご自慢の「発行部数」は底上げよゾッキ返品差っぴきはせず

*日本ABCとは、新聞・雑誌の発行部数を監査する機構の団体。いわゆる発行部数など、いくらでも数字操作できるのが実態である。信用してはいけない。

 

十月二十九日 第一回宝くじ発売の日

億万の夢ソロバンにちゃっかりとはじいて胴元今日も肥えゆく

*終戦直後の1945年のこの日、第一回宝くじが発売された。

 

十月三十日 香りの記念日

同じ屁もおれっちのブー臭いけど別嬪(べつぴん)こけば「香り」なんだペッ

1992年、石川県七尾市で「世界の香りフェア・イン・能登」開催を記念して同市が制定。

 

十月三十一日 日本茶の日

茶柱は日本茶ゆえになせる業 紅茶烏龍立つや立たずや

*茶柱が立つと縁起が良い、という俗信を踏まえて。終句で結論を曖昧にする「ぼかし詠」に。

 

十一月

十一月一日 紅茶の日

五百円の紅茶セットは譲るけど()っちゃいやだよ百円の酒

*この記念日は1983年日本紅茶協会が設けた。

 

十一月二日 白秋忌

詩心は酒にたとえて諸か稔れるの旨さ(かも)せり

*「白秋」の名前折込。日本が生んだ抒情詩人の白秋自身、酒豪で鳴らした。生家も福岡県柳川市の造酒屋である。

 

十一月三日 文化の日

賞々目障り

贈る馬鹿貰う阿呆の絶えぬ世にのし付け呈すウンザリで賞

*これは「主題離れ詠」とでも名付けよう。内容は文化の日と直接関係ないが、付かず離れずで恒例の授賞行事をからかっている。

 

十一月四日 消費者センター開設記念日

油断すなペテン師どもが世に跋扈だまされ族は泣きつ駆け込む

*消費者センターは現代の駆け込み寺。警告法という文彩を用いてある。

 

十一月五日 電報の日

     現代風に変換して

アトマーク ドット イコール ストローク コロンにハイフォン ああくたびれた

*昔の電報用符丁は、「アイウエオのア」「上野のウ」「子供のコ」「平和のヘ」「おしまいのン」といった調子で、わかりやすく覚えやすかった。

 

十一月六日 お見合い記念日

その縁談「才媛で、お真面目、ご健康」べた褒めが過ぎブスとばれたり

 

十一月七日 紀州山の日

俗気捨てたずねて深山(みやま)奥ゆけば御神木すら妖し二股

*熊野地方の民俗誌によると、二股の木を御神体と仰ぎ、注連縄で結界を結んで、酒を木の股にかけ天地交合に奉納する奇習がある。記念日は1994年に和歌山県が制定。

 

十一月八日 いい歯の日

おのが歯はだいぶ御座るも義歯入れぬ食えるようでは戯歌師(ざれし)おしまい

 

十一月九日 119番の日

「火事だ、火事」「火事はどこです?」「おれの家」「だから、どこです?」「いま、尻に火が!」

1987年、自治省と消防庁が共同で設けた。パニックになった者の戯笑詠である。

 

十一月十日 トイレの日

いたずらを書こうと下卑た下心水洗トイレに見透かされたり

*トイレが総タイル張になった今、胡散臭いいたずら書きの楽しみそれを見る楽しみはもうない。

 

十一月十一日 チーズの日

あの匂いみそ汁党はなじめずに「ジョセフィーヌよ、今夜ダメじゃ」

*ナポレオン皇帝の有名な夜チーズの逸話から捩ってみた。ご婦人の御下にかかわる話なので、ここでは解説を遠慮しておこう。

 

十一月十二日 洋服記念日

すいませんネクタイ持たず一張羅でここ三十年は風邪も引かずに

 

十一月十三日 うるしの日

見目はよく風情を添えて作れかしうるしかぶれの病みつきキット

*広告詠とでも言うべきか。

 

十一月十四日 ウーマンリブ第一回大会記念日

同権だリブだ平等解放だ!口じゃ負けるぞ油注ぐな

 

十一月十五日 七五三祝い

坊や嬢この日ばかりはお澄ましで学習院を連れてきたよう

 

十一月十六日 幼稚園記念日

幼稚園?疎保護世代に用はなく尋常一年 サクラ ガ サイタ

*国民学校制が布かれた昭和十六年までは、ほとんどの子供が尋常小学校に初入学した。

 

十一月十七日 将棋の日

縁台将棋

詰められてチョイ待草はやるせなや金花銀花に影も長引く

1975年、日本将棋連盟が定めた記念日。

 

十一月十八日 著作権の日

世も末よ電子辞書化で出したらばコピペで略奪海賊横行

*大手から個人まで著作権侵害が目立ち、いま、虫食いのように権利破壊が進行している。

 

十一月十九日 一茶忌

筆まめがすぎて妻女(きく)抱く記録とはどうかすんでもいびつなりけり

*小林一茶(17631827)は信濃の俳人。句文集『七番日記』には妻の菊との交合記録が残され彼の筆まめ振りを披露。隠語で、筆=男根、まめ=女陰。

 

十一月二十日 毛皮の日

貴婦人も毛皮脱ぎすて素裸(スツポン)はブランド剥げしただの粗品よ

1990年、日本毛皮協会が「いいファー」に かこつけ記念日とした。

 

十一月二十一日 世界テレビ・デー

この国じゃスゲー・ウッソー・オイシイの三語知ってりゃバカタレ合格

1996年、国連の第一回テレビ・フォーラムで採決された。それにしてもこんな記念日制定は国連が首を突っ込む問題にあらず。お手当泥棒の、暇人揃いなんだな。

 

十一月二十二日 ボタンの日

この指やボタンに慣れた亀公がチャックに首を絞められ、あ痛ッ

*エロ漫画のネタになろう。粗忽者の実体験による一首だ。

 

十一月二十三日 勤労感謝の日

月月火水今いずこ

花木(はなもく)へ花の金夕(きんゆう)若返り花土(はなど)の世代咲くにさかれず

 

十一月二十四日 鰹節の日

初がつを食いそこねたる江戸っ子はカツブシ削りああ眠ったい

*末句「ああ眠ったい」は投げやり定型句。据句の締めくくりに行き詰まったとき使うと意外に効果が出る。

 

十一月二十五日 OLの日

BGは女性自身を売る呼名なりませぬぞとOLコール

*昭和四十年代、BGはバーガール(商売女)のイメージとの理由でOLにとって代わった。OLは『女性自身』1963年十一月十五日号で公募の上決定したもの。

 

十一月二十六日 ペンの日

賞に縁なき三文文士ひがんで

文壇は三十売れっ子長老で五十づらをば新人と呼ぶ

1935年のこの日に日本ペンクラブ創立を記念して設けられた。

 

十一月二十七日 更生保護記念日

ムショ帰り娑婆(シヤバ)の法律甘いぜと人権保護も反故(ほご)の泣き入

 

十一月二十八日 税関記念日

税関は港みなとでピンをはねキリの穴まで目を光らせり

*言うところの説明歌で、中身に欠ける。悪い作例としてあげた。

 

十一月二十九日 議会開設記念日

ドタバタと見よ国会の猿芝居恥は掻き捨て見料もタダ

 

十一月三十日 鏡の日

近未来に

世に二人要らぬと複製(クローン)迫り来てわが首締めるも一人のおれ

*記念日の由来は「いいミラー」の語呂合わせから成った。

 

十二月

十二月一日 一万円札発行の日

老らくの恋

愛してる惚れた恋した首ったけ焦がれ慕わし万札の束

*「万札の束」が先行語群のオチを束ねている。

 

十二月二日 全国防火デー

「火事出すな」お為ごかしのPR保険屋さんは焼けず太れり

 

十二月三日 カレンダーの日

日暦(ひめくり)がめくられれれないこの月に幼な児はははや正月数えり

*らしさ演出のための意図的な字余り畳語歌。一覧のカレンダーでは、日々に薄くなっていく日暦の正月が近づくときめきは実感できない。

 

十二月四日 E・Tの日

セチ辛い世だ夢なんど涸れ果ててCを付け足しetc(ごみ)に化けたり

*E・Tとは The Extra Terminalの略で、米SF映画に登場の地球外生命体をさす。

 

十二月五日 国際ボランティア・デー

人の世は持ちつ持たれつ助け合いボランティアとは声が高すぎ

 

十二月六日 音の日

    品川の陋屋にて

昇り降りカタリコトリと鳴りひびく人は老骨家も陋屋(ろうおく)

 

十二月七日 クリスマスツリーの日

日本には松の飾りがあるだろに西洋かぶれは樅消しにせい

 

十二月八日 太平洋戦争開戦記念日

米英は(おに)畜生に名が変わりスパイ居るぞで子らは震えり

 

十二月九日 漱石忌

我輩もと漱石目指す文士らが売れずにぼつちやん沈める哀れ

*有名作品の題名を駄洒落でオーバーラップ。

 

十二月十日 世界人権デー

人権を売り物にするはみすぼらしほざきすぎだぞ義務はおろそか

 

十二月十一日 タンゴの日

爺だとてタンゴ踊った日もあるぞ今じゃ渋茶で団子食らうが

*音通洒落で仕立てた。

 

十二月十二日 漢字の日

     漢字博士とやらに

そのおつむ漢字ぎっしり詰め込んでゐの字ゑの字は落ちこぼしたり

*ひらがな音訓の正しい用法に習熟していない漢字自慢が多い、という現実をふまえて。

 

十二月十三日 兆民忌

金玉の袋広げて盃となし妓に飲ませたる超俗の哲

*知ったかぶりを誇示した「衒い詠み」の例。いわれを知らない読み手は、何のことやら戸惑うに違いない。作りを真似してもらいたくない番外作である。そのいきさつをざつと説明すると、明治の自由民権運動の親玉中江兆民(18471901)は芸者の一人をつかまえて金玉酒を飲ませた、との実見伝説がある。「若布(わかめ)酒」が女の恥部を盃にして男が飲むのに対し、金玉酒は陰囊を伸ばして窪を作り、そこへぬる燗酒を注いでが飲む行為である

 

十二月十四日 討ち入りの日

無念首三百年もきられしを赤穂あこうと騒ぐな阿呆

*愛知県吉良町民の立場に義憤を感じ、同情して出来た詠だ。元禄十五年十二月十四日、赤穂藩浪士らが吉良邸に闇討ちを仕掛けてから三百余年。毎年十二月十四日を迎えると、吉良町民は肩身が狭まり、無念の思いを耐え忍んでいるに違いない。「忠臣蔵なんかクソ食らえ」と、頭書の狂歌を吉良義央(よしなか)公の墓前に詠じては涙したい気持ちであろうに。史話のうえで、浅野長矩(ながのり)は義央公にいびられ、遺恨の刃傷に及んで切腹させられた。その仇討ちのため、彼の臣下四十七士が衆を頼んで上野介(こうずけのすけ)首級(しるし)をあげたわけ。以来四十七士は忠君の義士よ、武士の鑑よ、と祀り上げられてきた。なんのことはない、赤穂の殿様にしろ家来にしろ、料簡の狭い意趣返しではないか。

 吉良側にだって三分の言い分がある。

 義央公に身を賭して仕えた忠義の臣もいたであろう。しかし彼等は「義士」と呼ばれたことはない。浅野側から見て敵、反目の徒というだけで、悪者にされてしまった。この事件を主題に扱った浄瑠璃『仮名手本忠臣蔵』においても、登場人物は異名に振り替えてこそあれ、立派な殿様としての浅野像(塩谷判官)を描くことで、四十七士を義士に仕立てた。一方の吉良像(高師直)はというと、ことさら底意地の悪い奸物におとしめられている。いくら創作(つくり)物とはいえ、こんな筋書きは意図的な差別であり、人物像を不当にゆがめたものにほかならない。創作の独走が歴史を捻じ曲げてしまった罪も大きい。21世紀いまだに、舞台やテレビドラマなどでは正義の味方(みかた)(づら)した赤穂義士とやらがカッポしているではないか。毎年十二月十四日の馬鹿騒ぎ、いい加減にやめるべきである。

断わっておくが、筆生は愛知県吉良町とは何のゆかりも関係もない、完全なる第三者である。

 

十二月十五日 観光バス記念日

おばちゃん連食い意地見せるバス旅行それまた放映もう食傷だあ

 

十二月十六日 電話創業の日

今もって電話馴れせぬダメ親父受話器に向かい折り目一礼

 

十二月十七日 飛行機の日

信じるか信じられない信ずべしどでかい機械が空に浮き飛ぶ

*航空力学をマスターした者なら、こんなたわけた狂歌など付き合ってはいられまい。

 

十二月十八日 源内忌

へそ下の三寸学も大家なりまたの名にいう屁羅賀(へらが)源内

*平賀源内(172879)は江戸中期の博物学者・戯作者。いわゆる屁学や魔羅論でも博識振りを披露した。お名前茶化しとでもいうべき一首。

 

十二月十九日 馬に親しむ日

パドックで馬の可愛さ伝わるもオケラにしたるJRA(どうもと)憎し

 

十二月二十日 霧笛記念日

姿なくいどころ示す音しやるほんにお前はどでかいお吹き

*いどころ=女房詞で「尻」をさす。居所との音通洒落。

 

十二月二十一日 遠距離恋愛の日

ツイッターを寝ぼけ眼で開いたらfuck me!とはとんだ挨拶

 

十二月二十二日 冬至

邪気の神かゆかぼちゃゆずるから熱いの一本つけておくれよ

*傍点は冬至の節季物。それらの読込み詠である。

 

十二月二十三日 天皇誕生日

本日は畏れ多しと襟正しおふざけ控え奉祝奏上

 

十二月二十四日 クリスマス・イブ

商魂が熱あげ騒ぐ寒空にそっぽ向き酌むベンチ酒美味()

 

十二月二十五日頃 忘年会シーズン

忘年じゃ酒と薬草茶(くすりゆ)チャンポンで肝心の臓天手古(てんてこ)を舞う

 

十二月二十六日 雪印の日

消費者の勘違いを利用してメグまれミルク立ち直りつつ

*記念日は中谷宇吉郎博士が雪の人口結晶を発見したのを記念して定められた。しかし乳製品における雪印の印象は消費者の心にしっかり根付き、不祥事で倒産後も雪印メグミルクとして建て直しを図り今では順調に経営している。

 

十二月二十七日 浅草仲見世記念日

銀色のケーブルカーから見下ろした仲見世映すいまセピア色

*記憶映像の再現。昭和十年代初期、浅草松屋の屋上に「スカイクルーザー」という愛称のケーブルカーが業平駅(現東京スカイツリー駅)との間を走っていた。

 

十二月二十八日 官庁御用納め

天下りみんなで下れば怖くない?そうは行かぬぞ来たる年には

 

十二月二十九日 シャンソンの日

巴里ならぬ銀座ペーソスただよわせ美女(シヤン)がささやく(ソング)ありしと

*平成二年のこの日、銀座のシャンソン喫茶「銀巴里」が幕を閉じた。

 

十二月三十日 地下鉄記念日

老輩は右往左往のメトロ穴モグラも(つくば)迷宮(まよいのみや)

 

十二月三十一日 除夜

ジングルのあとは第九で歳が明けしばし戻れやひっそり日本