掲出句の五十音順索引

 

*辞世句を自作する場合、照合により重複が避けられる。

*青色表示の句が対象である。下記数字は整理番号。

*本文での旧仮名遣いは、この索引では新仮名遣い扱いで五十音順に配列してある。

 

嗚呼夢だ花の泊まりも七めぐり  〇三〇

愛されし雅を思い出に散る柳  二五五

青きものはるかなるものいや遠き  二〇九

暁の浪に別るゝ千鳥哉  四八四

暁や水観ずれば蓮の音  一一三

秋暑くあめつち崩ゆる思あり  一三七

秋風や無尽蔵中無一物  二七三

秋近き風が吹くなり橋の上  一八六

秋の風味けはしや薬かみにけり  二八五

握手してこぶしに秋の涙かな  〇一三

朝顔にけふは見ゆらん我が世かな  四四八

朝がほは久しきものよ五十年  三一七

朝がほやしぼめば又の朝ぼらけ  一四二

朝霜や筇で画きし富士の山  三〇二

朝の蚊の窓のがれ行く涼しさよ  四一二

朝日わが寝床を包む明の春  一四八

浅ましき凡夫の声や青嵐  四五四

朝よりの深き曇りに鵙の声  三一八

あぢきなや浮世の人に別れ霜  一八一

紫陽花や水辺の夕餉早きかな  二〇五

明日の昨日がない今日の海の香  〇七二

汗一念大山詣われのみかは  二一四

汗に汚るる護符勿体なし治りたし  〇八八

後の月雨に終わるや足まくら  一四七

跡はみづとしの瀬を行く千鳥哉  三一六

あめつちにひれふすこころ淑気満つ  二八四

雨はれて蓮に真月の月夜かな  二三四

荒海へ船から投げる氷かな  三一〇

あらうれし行くさきとほき死出の旅  〇六二

存らふる力たのみに七草粥  〇七八

あら蓑の藁の青みやはつ時雨  四八六

ありがたきみくにの春にあはんとて  二四二

有明にふり向きがたき寒さかな  一一七

有る程の菊拠げ入れよ棺の中  二七〇

あれあれと狐指さす枯野かな  一七六

粟の飯さめて七十五年哉  四九七

 

いい雨が石の上にもふっている  三五一

癒えたしと泪眼にする小夜時雨  一九八

胃カメラをのんで炎天しかと生く  四七〇

生甲斐のなき世死に甲斐更になし  二二六

生きているしるし夜目にも灯が見える  四八一

生きてよし死ねばさばさば世話はなし 〇九七

生きて世に一灯を守る子規忌かな  〇七七

生作りめいて滝川豆腐くる  〇二〇

いざさらばむかひ次第に月の宿  二八六

いざゝらば冥途の鬼と一いくさ  四五六

意地だけで金もなければ墓もなし  〇一九

石枕してわれ蝉か泣き時雨  四一七

何処かで囃子の声す耳の患  一七九

一行の文となりてや帰る雁  二四一

一葉散る咄一葉散る風の上  四七五

一流星生きよといのち灯さるる  〇二一

一舟を窓にしてひたに黙ふかし  二三八

一生を一間足りない家に住み  二〇三

一生の舌打ちひびく清水かな  三八二

いつとても息引とるが身の歳暮  〇五四

暇乞ひ我が巳の春の来りけり  三五九

今ここで死んでたまるか七日くる  四五八

今死ぬと言うのにしゃれも言えもせず  三五三

今ぞしるその暁やはるの夢  三八五

今はまで源氏もとしもみをつくし  一五七

いまゝではいきたはごとをつきみかな  三三二

 

うかうかと生てしも夜の蟋蟀  二二三

浮世の月見過ごしにけり末二年  一六九

鶯にだまされてゆく浄土かな  〇五〇

鶯に見舞ひうけたり枕元  一七四

鶯の鳴ねをあげよ米の春  二六四

うぐいすの鳴やわするる吾齢ひ  〇四六

うぐひすやわが絶命も妙なるかな  〇八五

動くもの終りはありて瘤柳  四八二

失いしことば失いしまま師走  一二五

美しき骨壺牡丹化られている  〇二四

美しきわが空ついに捉らえ得ず  四〇九

空蝉はもとの裸に戻りけり  三九九

梅でのむ茶屋もあるべし死出の山  二一三

梅はさく我はちりゆくきさらぎや  三四九

うらを見せおもてを見せてちるもみち  四八五

 

江津湖見ず会うは訣れの秋日暮  三二五

羨道をゆきふところの捜神記  四七七

 

おいたけて入奥涼し道の風  二五〇

おいでおいでよと幽霊の長廊下  二二五

老い呆けて賀状の嵩に掌合はすのみ  三九二

大きなるくさめ一つ秋のくれ  〇七六

起上りゆかむづ道の露清し  三九六

おく底もしれぬ寒さや海の音  〇八九

送り火のあとの月夜や松落葉  二二八

男じゃと言わせぬ今日の痛みかな  一二六

音もなく池のうたかた一つ消え  二七五

おのおのに逢へぬ侘しさ梅白し  四三七

おのれにもあきての上かやれ芭蕉  一四九

おぼろおぼろ引べき胸の月清し  三〇一

おもしろきこともなき世をおもしろく  二八二

おもしろや草葉のかげにかくれん坊  〇八〇

おもしろや左右の使の飛ぶほたる  〇七一

折々己れにおどろく噴水時の中  一二四

折るゝとも響きは残れ雪の竹  二九二

 

帰りなん故郷を指す鳥総松  四〇八

顔ひとつわれに近づく秋のくれ  〇七四

書て見たりけしたり果はけしの花  四一八

かくて冬妻にゆづらん吾がいのち  一三一

かくも名に咲きて野牡丹濃むらさき  〇六〇

影涼し水に弥勒の腹袋  二九〇

影のさまに我は暮れけり花ひと木  二四四

陽炎や其の更衣遠からず  一五五

霞草わたくしの忌は晴れてゐよ  三三九

片言の如くノリトはうやうやし  一五八

形こそ消ゆれ命は野に山に  〇二六

活界に、黒く、暗く、十八年  四二三

かつてんしや其暁のほとゝぎす  四八七

門の歯朶三日の土に落ちてあり  二一九

蚊にいとひいぬにくはれるかばねかな  〇七〇

蛾の眼すら羞ぢらふばかり書を書く  二八九

神の地を離れ仏の群に入り  三五八

刈萱にこの急知らす夕べかな  二九七

枯れいそぐものに月かくほそりけり  四六三

閑素とは藤村流の秋言葉  二七四

間断の音なき空に星花火  三四八

元朝のこころわするな死出の旅  一八〇

寒鳥の身はむしらるゝ行衛哉  二一二

寒風にもろくも落る紅葉かな  二七九

寒夕焼に焼き滅ぼさん癌の身は  二四六

 

きえる霜此世の役のをはりかな  一八三

木々を猿綛木肌は梅の冬らしい晴れ間  四一〇

菊の根の土に戻るや別れ霜  〇二八

如月やあたらしき笠きて帰る 二二一

気はかろし接木仕遂げてひぢ枕  〇五三

君が俥暗きをゆけば花火かな  〇〇八

客絶えて風鈴の音一しきり  三九一

九旬の無為をさげすみ雁帰る  二一六

今日ぞはや見ぬ世の旅の衣がへ  四三一

今日は猶真桑も涼し畠の月  三〇〇

けふよりはあのみちゆくそまんしゆ沙華  〇四一

行列の行きつくはては餓鬼地獄  三六二

切株に 人語は遠くなりにけり  〇七五

岐路いくたびわが生涯も風の中  一七八

金魚死んだまま退院も近くなり  〇九八

 

喰ひ慣れし葛も名残や松過ぎぬ  一二七

草むしり無念無想の地を拡め  〇四二

九十五齢とは後生極楽春の風  三九七

崩れてはかけ形なし雲の峰  三五〇

句の道の子等を支へに老の冬  一六〇

雲晴れて誠の空や蝉の声  一六七

黒船が何だ昭和八年だぞ  〇一四

 

鶏頭しよんぼり落葉時雨の黄昏るる  〇一六

消安し都の土ぞ春の雪  四九六

月雪の三句目を今しる世哉  四八三

 

恋しくば我塚出なけほとゝぎす  〇五七

高熱の鶴青空に漂えり  二六七

香のあるを思ひ出にして翻の梅  二五四

紅梅の色の変るを愛でにけり  四五一

蝙蝠に夕闇浅し町明かり  〇四九

紅葉は露のひぬまぞおもしろき  一五三

コーヒーが旨い夜氷の肩を寄せ  三一九

こがらしに雨もつ雲の行方かな  〇二九

木枯やあとで芽をふけ川柳  二五一

濃きうすき雲を得てほとゝぎす  三〇七

故郷への晴れや卯月の花鳥も  一三五

極楽といふてねるやは蚊帳のうち  三〇八

極楽に誕生の日はけふなれや  二一七

極楽の乗物や是桐一葉  一七七

極楽の道も明るし梅さくら  四二六

極楽へ一歩近づく笑顔する  〇二三

枯華微笑 仏とおなじ息をする  一五〇

心得ぬ予が留守を斯く寒襲ふ  三〇六

心から雪うつくしや西の雲  〇三五

こしらへてあるとも知らず西の奥  三七六

骨納めて湧く峰雲も男の墓標  三二二

今年また俳句極楽地獄かな  二三一

此一句衆議判なし木からしの  三〇九

此界に二度と用なし秋の風  〇五五

この鏡少しかしげば月満ちぬ  二三七

此時に身のきはまりや夜の霜  二三九

此日こそ死なば今年は雪の花  四七二

この道のよしや黄泉に通ふとも  四九八

こは翌を待ぬ氷室の宿なりけり  二四九

こぶし咲く昨日の今日となりしかな  四五七

壊れやすきもののはじめの桜貝  三二三

今生は病む生なりき鳥頭  三六一

今度行く先は零丁零番地  四四〇

 

咲もよしちるも芳野の山ざくら  四九三

咲けば散る身の行末や花世界  一〇三

誘はれて行くのは今ぞ花の旅  二五八

さ月来ぬ人も柳に倦みし頃  二二七

さまざまなかげもうつりし水のあや  四二七

さやうなら一語一語の冬の息  四六一

塹壕にいとしや命抱いて寝る  一五二

山椒魚棲む山また山を恋ふるがに  一一二

 

死を思う老残の影壁にあり  〇〇九

死が見ゆるとはなにごとぞ花山椒  一四〇

茂る日を知らで枯けり鉢の梅  三四四

蜆汁吾が病むといふをかしかり  四三九

死症には千ぐさの露の験もなし  三二九

辞世とはすなわち迷い唯死なん  三三三

辞世など残雪に香もなかりけり  四一九

自選して五句を遺さう薔薇真ッ紅  四二九

しづかなるゆふべのいのりいととんぼ  二八一

死なば世に冬のこぬまと言ひおけり  〇九五

死にそなふ電話一本梅雨はじめ  一一一

死ぬときは謙三として去年今年  二六六

死ぬること幸ひ銀河流れをり  三〇三

死ぬる目は尚面白し閑古鳥  一三四

死ねば秋虫の鳴いてる旅の空  〇八一

しのこした事はあしたにして眠る  〇四七

死の夢に蛍なだれてゐたりけり  四六〇

死もたのしみんなが泣いてくれるから  四〇一

霜月やあるはなきの影法師  二九五

じやがたらの花がぼつぼつ梅雨入かな  〇〇四

借銭の淵から天上辰の秋  一二〇

秋旦わが命運を尊とめる  二〇七

十薬の今日詠はねば悔のこす  一二三

春寒に入れたり迷路に又入れり  〇八七

生涯をささげて悔いず木の葉髪  三七九

正月四日よろづ此世を去るによし  〇〇五

障子張りぬくし純の白さにつつまれて  三三六

称名に月も消えたる枕かな  三七〇

しら梅に明る夜ばかりとなりにけり  四〇五

白梅でちよつと一杯や死出の旅  一〇九

白露におもへば長き我世かな  〇四五

白露や死んで行く日も帯締めて  四三二

白雪にすべり落ちけりまつしぐら  一三九

人生に八年貸して花の旅  一四一

心中にひらく雪景色また鬼景  三二六

死んでおいてすゞしき月を見るぞかし  三九〇

新米や茶粥喰ふて高まくら  三一二

新緑の吾が棲む杜を夢に見き  〇六一

親類へ医者がさゝやく袖しぐれ  一九九

 

水仙に昃り易さの日射なる  三五七

好きだからつよくぶつけた雪合戦  三九八

救われた漁夫と一生陽に焼ける  一一九

すさまじや寒夕月に星一つ  一〇五

芒原幼名を呼ぶ父母の声  四四四

すゝきふく風もやみけり秋の暮  四四二

涼さやぽくり隠るゝ都鳥  一一四

すずしさや命を聴ける指の先  二一一

涼しさや山是山水是水  一九七

鈴虫に死ぬべき覚悟うかがえず  一〇七

 

生死関頭法師蝉音痴らし  二三三

絶命をのどの氷片喝采す  〇八三

絶命の深き眼窩にすみれ咲く  〇八四 

絶命や何をあわてて雁帰る  〇八二

是非もなや名はあげぬれど草の露  一五一

先師の萩盛りの頃や我が死ぬ日  四九〇

川柳の壁疎開の躄しかと抱く  一二九

 

壮者なり眉目に年も押詰まり  四七四

僧のくれし此饅頭の丸きかな  二六九

底ぬけや返らぬ旅の頭陀袋  一一五

その上ミの秋風聞くや寝釈迦山  三六七

そのにほひ雪のあしたの野梅哉  〇六三

空さへてもときし道を帰るなり  一九六

空々と物のにほひや月の梅  二七六

それ爰が憚りと消る雪達磨  二二〇

尊皇の義軍やぶれて寂し春の雨  〇一七

 

大寒の壁本の壁ひしひしと  二三六

絶えもせず吾が庭に咲く曼珠沙華  四四五

叩かれて音の響きしなず菜かな  三八八

ただ頼む湯婆一つの寒さ哉  四三八

谷底の空なき水の秋の暮  三六六

楽しみや冥土の鬼と一勝負  二八三

旅了へてやはらかく踏む春の土  三七一

旅おもふわれも法師や西行忌  二一八

旅に病で夢は枯野をかけ廻る  三七五

魂を鞘におさめて征きました  〇四八

たましひのちりぎはも今一葉かな  三六〇

弾一つあたり候怱々頓首  〇九一

たもつ間もおもへばわづか雪仏  二四三

たらいからたらいへうつるちんぷんかん  〇三三

誰彼もあらず一天自尊の秋  二九三

短冊のけいこでもして死を待とう  三二八

たんたんの色も侍るぞ種ふくべ  〇三一

 

ちぎりおく松や幾とせわかみどり  一六二

茶の花の香や冬枯の興聖寺  一一八

朝暾のぽかりと薫ずわが鶏冠  〇一五

ちりぎはも賑やかでありはなの山  一九二

散りてゆく紅葉のはてや西の空  二四〇

散る梅に見上る空の月清し  〇六八

散る花の宙にしばしの行方かな  二七一

ちるものとさだまる秋の柳かな  四四一

散るもよし柳の風にまかせた身  二五七

 

ついに入院わが四十の酷暑かな  二九六

終にゆく岸の柳や法の児  四一一

杖かるし見ぬ山ぶみも丸頭巾  三四七

杖曳けば悪鬼の相のすでになし  〇九九

月は弥陀ぼさつや二十御来迎  三一四

月一つ我身ひとつの野辺のつゆ  三四六

月見して如来の月光三昧や  二三五

月も見て我はこの世をかしく哉  三一一

つく息の雲ともなるか月こよい  四九五

土金や息はたえても月日あり  〇五二

妻に礼言われて粥を食べ終り  三六三

妻の血液われには適はず冴返る  一七〇

夫のなき女いつまで生賜ふ  二八一

艶なるや我はめい土へ花あやめ  三八六

露草や赤のまんまもなつかしき  〇二二

梅雨の夜やうやくに二十句となりぬ  一五六

梅雨晴れや今も師恩にひたり居り  五〇三

 

出替に行くや浄土の今参り  〇五一

 

冬麗の微塵となりて去らんとす  二四七

とかくして折れるに出来た氷柱かな  三八七

時ならぬ薫りはうせて梅の散る  三四二

時ならぬ風に柳の幹は折れ  二六一

年の内の春にもあへぬ命かな  一六三

戸締りを頼むぞ我は先に寝る  二五六

どの顔もかおも瞼に入れて逝く  三七二

飛びこんで手にも止らぬ霰かな  三三七

鳥雲にわれは明日たつ筑紫かな  二二九

鶏の嘴に氷こぼるゝ菜屑かな  二二二

執る筆のはじめて涼し槙の雨  二九四

どん栗の落つるばかりぞ泣くな人  三四〇

 

なほ白し花野にさらす馬の骨  四九九

中椀の白粥みてり十三夜  三一五

鳴き捨てて行く馬淋し枯野原  二七二

亡き母と普賢と見をる冬の夜  〇一〇

啼もせで蓼に果つるか蓼の虫  一六六

夏影を命と抱いて寝る夜かな  〇五九

夏ぶとん折り腹の上父の歳  二〇四

夏痩せの身の雲に入る一詩かな  四六六

夏痩せの胸のほくろとまろねする  四一四

七転び迄で草臥仕舞也  一四六

七十やあやめの中の枯尾花  二七八

七十世を祗園ばやしに生きてなお  三五五

何悟る喝と一声秋の蝉  〇三四

何負けてたまるか目に見えぬ菌  一八四

なにもかもなくした手に四枚の爆死証明  〇一二

何も早や楊梅の核昔口  二六二

生卵病めばかなしき咽喉仏  一四四

名もかへず花の浄土へ宿ばかり  〇四三

何のまゝ残る葉もなし秋の風  三三一

 

逃水の行衛はいづこ枯尾花  二九一

虹を着て希望は一歩先を行く  四九一

西へ行く彼岸さくらや道案内  二六三

入道雲癒えよ生きよと窓覗く  二八八

庭草のしげるがままの雨月かな  三四三

 

盗人に鐘つく寺や冬木立  二七七

 

願くば無為の都を住所  一〇八

ねたきりのわがつかみたし銀河の尾  四〇三

音は常盤しばし紅葉ぬ松の蔦  四七六

眠らねば明け易きこと何ぞ早き  四二八

 

残す名は花根に帰る吉野町  二五九

残る露残る露にしへいざなへり  四八八

残る花はあろうかと見にいでて残る花のさかり  〇二五

野分してしづかにも熱いでにけり  四〇〇

 

俳人はすてるほどあり秋の月  三三八

入る順序次はわれなり墓洗ふ  二九八

はへよたてよ緑陰の尻砂にまみれ  三二七

墓の下の男の下に眠りたや  三三〇

墓の霜当座斗りぞ白宇留里  一七一

墓原や秋の蛍の二つ三つ  一四三

萩明り師のふところにいるごとく  四八九

蓮の葉の露と消えゆく我身哉  二五三

八十里腰ぬけ武士の越す峠  一〇〇

はつ雁やしらけてもとる空のしほ  四〇六

初蝉か我庭に来て鳴き初めし  〇六九

初春の点滴軽快におどり込む  〇九六

初夢のすでに煩悩具足せん  三五四

果は皆仏の道へ落葉哉  一三三

花生けて己れ一人の座を悟る  二〇六

花おぼろほとけ誘ふ散歩道  一六一

紫荊枝の元末余すなく  三六四

花に月に別れて遠き旅路哉  一三〇

花の色莟にちらと冬椿  四六四

花の雲空も名残りになりにけり  〇八六

花の願ひ花野の露となる身哉  三二四

花程に身は惜しまれず散る柳  二五二

花若葉月雪もみな阿弥陀仏  四八〇

春浅くまだ行き逢えぬひとはどこ  一〇四

春を病み松の根つ子も見飽きたり  一八五

春暮れて命の果のあらしかな  〇六六

春寒し赤鉛筆は六角形  四二〇

春の山からころころ石ころ  一八八

春の山屍うめて空しかり  一一六

春の山のうしろから煙が出だした  四一三

春の夜やガンをいだきてひとねむり  三四一

腹いたや苦しき中に明けがらす  四五三

半開の梅全からず是非もなや  四三四

 

比叡もけふ雲なき空や更衣  二一五

ひかりいでし雨の竪琴祭果つ  四六二

引よせて腰より下の柳かな  四二五

一息にこの味ひぞ春の水  一二二

人の死へ書く一片の診断書  一四五

人はみな火の上に生き萱刈れり  四〇二

人またでゆきゝさむしや夏の原  〇一八

人またでゆく気さんじや夏の原  〇九三

病臥九年更に一夏を耐えんとす  〇二七

病床にかくの如くに冬日射す  二八七

秒針に死ねない命持ちあぐみ  〇〇二

病人の見ておく医者の鼻の穴  四五〇

ひると夜を取りちがへ草ひばり鳴く  三七八

枇杷の核西に転びて旅終へし  四九二

 

風鈴の音には容喙せぬつもり  四五二

藤棚の下にひとりの浄土かな  二〇〇

二つ来て死を争ふや火取虫  三五六

仏壇はあとのまつりをするところ  四六七

冬ざれや戦あきて鳴く烏  一〇六

冬ぬくき影をかさねて父祖の墓  三六九

芙蓉咲く日夕べに死ぬるかな  一六四

振りかえる谷の戸もなし郭公  三七三

降るとまで人には見せて花曇  二三二

墳の杜よぎれるときのほととぎす  四四五

 

糸瓜咲いて淡のつまりし仏かな  一九四

紅椿敗けずに置いて婦人帽  一八七

 

朴散華即ちしれぬ行方かな  四一六

干足袋の日南に氷る寒さかな  〇六五

北極星またたく私はまたたかぬ  四二一

郭公その暁の沙羅双樹 一二八

ほのかなる鶯きゝつ羅生門  四七一

ほのぼのと雛の夜明けぞわが夜明け  五〇一

頬かすめとぶせきれいや愛欲す  三二一

頬杖ながし青林檎ひとつ置き  〇九四

 

前うしろ右も左もただ無なり  三八四

摩訶般若波羅蜜多心経秋一つ  三三五

まだ生きているのにたかる顔の蝿  〇三九

まだ続くよろこび今日の握手する  二二四

松朽葉かからぬ五百木なかりけり  二四五

真ツ直に跡ふり向かず浄土道  一八九

まめでゐよ身はならはしの草の露  三八三

松浦川雨月の千鳥二タ三声  〇七三

繭玉やかすむと見えて雪催ひ  四七八

 

身を平ら梅雨とどめんと若楓  三四五

見かえれば雨ばかりなり燕  一五九

短夜はむかしの夢のつづきかな  二六八

短夜やかくても同じ鐘の声  三〇五

短夜やわれにはかなきゆめさめぬ  四五九

見し夢のさめても色の杜若  二〇八

水の辺に来て春のゆく水の向うの山  四一五

水洟や鼻の先だけ暮れ残る  〇〇七

水冷し我が世ぞ筆に汲み終り  〇三七

見たきかな今年蓮は彼の岸に  二四八

未知のふかさへ寒暁みひらく子の瞳  一七三

緑なす松やいのちの惜しからず  四六九

水無月や与助は居ぬか泥鰌売  五〇〇

身について近き点滴遠き秋嶺  三六八

身の上の夏や蓮の一枚葉  〇九二

蓑を着てねぢむく我も角黍かな  三九五

身のはては舎利の光や花こゝろ  三八〇

み仏に鴨の湖あり浮御堂  〇五八

御仏は淋しき盆とおぼすらん  〇三二

耳しいて聞きさだめけり露の音  一九一

 

迎ふるや月のゆくへの酉の雲  四六八

麦焦がし地獄顔して主たり  四九四

麦のほに尾を隠さばや老狐  三二〇

むし暑さ寝た子をおこす友が来る  一二一

虫の居所も定まれば人も飽き  二六〇

無雑作に散り果てにけり銀杏の葉  〇九〇

胸涼しきえをまつ期の水の淡  四三三

村ぐるみ梅林祖の墓どころ  四〇七

 

名月のあとにも胸のひかり哉  一〇一

 

燃え易くまた消えやすき蛍かな  四三五

モガリ笛/いく夜もがらせ/花ニ逢はん  二九九

ものぐさといふは気儘や家頭巾  一五四

桃咲く藁屋から七十年夢の秋  四三六

靄沈む峡の月夜の栗の花  〇〇三

 

やがて散る花なり芥子のほろほろと  〇七九

瘠顔に団扇をかざし絶し息  一九〇

やつとひとりになれたデスマスクの笑い  四四三

病みぬいて鎮守の森の木の実降る  一六五

病むことの無念涙の夜寒に思ふ  三五二

病めば蒲団のそと冬海の青きを覚えて  〇三八

病める身の呼ばるるまでや日南ぼこ  一三六

病める眼に白雲こぞり夏果つる  〇〇六

 

遺言書けば風薫り涙滂沱なり  二〇一

夕けふり身は立枯のみねの松  二一〇

夕富士や春一番のふきかえし  四七九

雪折をはかなき占と知る夜かな  一七五

霜解けの猫の雑巾濡縁に  二八〇

雪解けや八十年の作りもの  一〇二

雪の上にほこりがたまる生きて居ればこそ  四七三

雪の降る町といふ唄ありし忘れたり  〇一一

雪はげし書き残すこと何ぞ多き  三七四

雪ふるや一人苦しみたちがたく  三七七

雪道やあとへひかるゝ逆草鞋  一八二

行雲にまて連だゝん時鳥  〇四四

行く先も又行く先もでくのぼう  一六八

行末の見えきし春を惜しみけり  三九三

行時は月にならひて水の友  四二四

柚子釜の香をありありと病臥かな  一三二

湯豆腐やいのちのはてのうすあかり  四三〇

夢返せ烏の覚ます霧の月  〇六七

夢か葉か散るしやらくさし最後の屁  一一〇

夢のなか枯れ土器の一つ飛ぶ  〇〇一

 

夜嵐のさめて跡なし花の夢  四六五

世を去りて無量寿得たり今日の旅  三一三

世をばふる更に時雨のやどりかな  二六五

夜を春にねらるるはずの注射かな  一九五

世かわる我は死ぬる盆の月  〇四〇

夜釣の灯なつかしく水の闇を過ぐ  四四六

夜の明けて花にひらくや浄土門  一七二

世の中の硯一と目に今日の月  〇五六

世やいのち咲く野にかゝる世やいのち  〇六四

 

陸を思ふ鴨やなにはの水ばなれ  一九三

流星の尾の切れたるは何ごとぞ  三三四                                                                                                                                                                   

臨終の庭に鶯鳴きにけり  一三七

 

 

暦日の膏雨降りそめ水草生ふ  二〇二

 

六月の夢の怖しや白づくし  三九四

六甲と話かはして端居せる  三八九

 

わがとしもよそしの花のあげく哉  五〇二

わが星のいづくにあるや天の川  二三〇

わか水やふゆはくすりにむすびしお  四四九

 翔つて干潟夕べの潮みちくる  〇三六

我もまた客となる身ぞ魂祭り  四二二